「出久ハンカチ持ったの?ティッシュは?」
「大丈夫だよ母さん、全部昨日のうちに済ませたから!」
「それならいいわ。せっかくの入学式だもの、バッチリ決めていかないとね。……出久、超カッコいいわよ!」
「……うん!いってきます!行くよ!」
『わかってる』
入学初日少し早い時間に出久は出発する。バイクは雄英高校に預けて今はないので電車での通学だ。
「あー不味い、時間がない」
『本当に広いなここ、出久そこ左』
『助かる』
広い敷地に戸惑いながら、夏月に案内をしてもらい走る出久、早くでたのに遅くなっているのは乗っていた電車なヴィランにジャックされたからだ。そのヴィランは何故か自身の脚を攻撃し自首をするという前代未聞の解決となったため、そこまで遅れはしなかった。
『そこだ』
「付いた!」
「机に足をかけるな!先輩方や机の制作者に申し訳ないと思わないのか!!」
「いちいち思ってられんわ面倒くせえ!テメエ何様だコラ!」
「かっちゃん、降ろそうよそこは」
「あ゙ぁ゙?てめぇもか?」
「おや、君は開始早々に仮想敵を殲滅した……」
「緑谷出久、そこのかっちゃん……爆豪勝己くんと同じ学校」
「そうか、ぼ……俺は飯田天哉、私立聡明中学出身だ!」
爆豪の素行の悪さを注意していた飯田に自己紹介をする出久、そして同じA組にいる知人たち。
「あっ!出久さん!」
「百さん!」
「ふ〜ん知り合いいたんだ」
「耳郎さも久しぶり!」
「なんであいつだけ!」
出久が女子に囲まれていて、一人小さな男子が嫉妬心にのまれていた。
「出久くんも合格してたんですね」
「トガちゃんも久しぶり、血は?」
「今は大丈夫です、また言います」
「そっか……ところでこの人は?」
「気づいたものがいるとは言え、静になるまで10秒もかかりました、時間は有限君たちは合理性にかけるね……担任の相澤消太だ、よろしくね。そして早速だが
言われるがままにグランドに出ると、B組もそこにいた。
「全く、初日くらい」
「いいじゃないか、わかりやすい、今から君たちにやってもらうのは個性把握テストだ」
「「「「個性把握テストー!?」」」」
「入学式は?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間はないよ。雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側も然りだ」
着替えてグラウンドにやってきた僕らを待っていたのは、体力テストだった。
これから始まる入学式をやる暇はないと切り捨て、まるで通常授業がすでに始まっているかのように進んでいく。
「緑谷、中学のハンドボール投げ幾つだ?」
「えっと…52です」
「そうかなら個性を使って投げてみろ。円形から出なければなにしてもいい」
「はい…」
出久が腕を回しながら円の中に入っていく。
「はっ!」
「……802.8m」
発剄のみで投げるがかなり飛ぶ。ここに、OFA、生命強化が重なったりするが、様子見ということだ。
「後でまた投げてもらうから話を進めさせろ。さて、こいつに投げさせたのはこいつは自身の個性を細かく理解しているうえで目に見えてわかりやすい訳では無いが、実技試験の首席だからだ。参考にも目標にもなるだろう。……自分の最大限を知る。それはヒーローの素地を形成する合理的手段だ。まずはそれをこのテストで知ってもらう」
そう説明がされると、途端周りから歓声が上がった。
「なんだこれ!すげー面白そうじゃん!」
「すごい記録ね。私も負けていられないわ」
「個性思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」
「……面白そうか。ヒーローになるための三年間、君らはそんな腹積もりで過ごすつもりでいるのかい?」
「「「「え……?」」」」
軽い気持ちで盛り上がったのが先生の逆鱗に触れたのだろうか。相澤先生の纏う雰囲気がガラリと変わり、とんでもないことを言いはなつ。
「よし今決めた。このテストでトータル成績が最下位の者、ヒーローの見込みなしとして除籍処分とする、除籍はA.B別だ」
「「「「は……?はああああああッ!!?」」」」
A.B両方から驚きの声が上がる。
『あの眼、本気だな』
『まぁ遊び半分で出来るものじゃないからある意味正解だろうな』
『わかるものなんです?』
『なれだな、遊び半分でやっているやつは、よく逃げる』
『……参考にならない』
『まぁ、そのうちわかるようになるさ』
「ちょっと待ってください!最下位除籍って……入学初日ですよ!?いや、そうじゃなくっても理不尽すぎます!」
「残念だがこの程度の理不尽、まだまだスタートラインってところだ。事故に災害、
突然の除籍勧告に生徒達は必死に抗議をしている。それも当然だろう、せっかく苦労して雄英に入れたのに除籍されるなんてあんまりにも酷い。せめて普通科への強制移籍ならまだチャンスはあるのだが、、これじゃあ皆の言う通り理不尽すぎる。
しかし相澤は聞く耳を持つことなく、こっから本番だからはやくしろと急かしていく。いきなり除籍は絶対嫌だと、皆必死で気合いを入れ直している。もちろんそれは出久も同じだ。
「最初は50メートル走だ」
『俺の〈変速〉を使え四速でいい』
『はい!』
「緑谷、1秒24」
続く握力は、〈発剄〉で破壊、エラー。八百万は万力で破壊していた。立ち幅跳びは〈浮遊〉で無限を出し、反復横跳びは、普通にやって54回。
なお一位は意外にもブドウ頭の少年である。彼が頭からもいだボールは弾力性があるのかそれを左右に設置して、その間をすごい勢いで反復してなんと記録114回を叩きだした。
「あの個性面白いな。頭のボールを取る度にすぐ生えてくるし。しかもあのボールを見てて気づいたけど、粘着力もあるのか?ブドウのように一ヶ所に固まったかと思いきや跳ねることも出来る。しかも個数制限もなさそうだしデメリットは髪の毛の消耗か頭皮のダメージかな?どっちだろうどっちにしてもあの個性強いぞ壁にくっ付けてよじ登ることで崖際の救助も出来るし敵の捕縛にも使えるし弾力があるから落下時クッション代わりにも出来るし下手をすればこの中で応用力と言えば上位に位置するぞ今の時代個性を服に組み込むヒーローもたくさんいるからうまく組み込めば汎用性の高い装備もかなりの種類が出来る彼がそこ気付いて鍛えれば絶対強くなるぞ体格が他より劣るけどむしろそれは閉所に有効で落盤事故なんかのブツブツブツブツブツブツブツ……」
『戻ってこい』
出久のいつもの癖に出久を知る者以外はドン引きして、東雲に止められる
「な、なあ。なんかむっちゃこええけどあれってオイラ褒められてるんだよな……?むっちゃこええけど」
「う、うん。応用力が高いって褒めてるノコね。……ちょっと怖いけど」
「お、おう……まあ首席にそこまで褒められんのも悪くねえか?むっちゃこええけど」
上体起こしは、〈黒鞭〉を〈生命促進〉で生やした木に縛り引っ張って、79回、腹筋は使わずにほぼ腕の力のためかあまり伸びてはいない。長座も〈黒鞭〉を使い伸ばしていく。周りもずるだなんだと言ったが、相澤の一喝で全員黙る。数値は無限だった。
続いて持久走。終盤付近で1500mも走らせるというわりとイヤらしい配置だ。
「すみません、質問ですけど」
「なんだ」
「入学前にサポートアイテムでバイクを作ってもらったんですけど、使用許可は…」
「なしだ、個性で生み出すのはありだがな、」
「なるほど」『となると、〈変速〉を使うしかないか』
出久は〈変速〉で四速をまた使い、40秒、最後にボール投げをもう一度。今度は〈発剄〉と〈血命造形〉で〈斗流血法・カグツチ〉の刃身ノ四・紅蓮骨喰作り出す。ボールを黒鞭でちょうどいい高さに固定し、思いっきり振り抜く、
「5237m」
「四桁とか、行くもんなんだ」
「八百万、22118m」
「わあー、5桁とかすっごお。大砲とかってありなのか?」
「個性で作ったものだから問題はない。……麗日、∞」
「なるほど、重さがないから横への力しかかからない、落ちることはないのか」
「はいみんなお疲れさん。結果を口頭で説明すんのは時間の無駄だから一括開示で発表するぞ」
全種目を終えて、結果発表という名の除籍宣告がついにやってきたことに皆は震えた。この中から二人、早々にいなくなるという結末はこれからの学校生活に恐怖をもたらすだろう。
開示された結果を皆確認する。
「オイラ最下位……」
「ちなみに除籍は嘘な」
「「「「はっ?…………」」」」
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「「「「はっ、はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」
結果の開示と同時に、相澤は除籍は嘘だと鼻で笑う。これを聞いて叫び声があがり、ぶどう頭の少年、峰田にいたっては発狂とも言えるほどの安堵の雄叫びをあげていた。
「あんなのウソに決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ……ねぇ出久さん!」
「いや…多分本気だよ、生半可な気持ちじゃあヒーローにはなれないそういった意味があると思う、後は伸びしろがあると判断したとかかな…」
「よくわかるな、さて久しぶりだな緑谷、個性フルで使え、説明はいましたほうがいいだろ」
「はい!〈御霊卸〉」
「……え?」
「「「「え、えぇぇぇぇぇぇ!!!人が出てきたぁぁぁぁぁ!!!」」」」
相澤の言葉に出久は霊を全員その場に呼び出す。急に現れた者達に轟、爆豪、相澤を除く全員が驚きの声を上げる。
「あっそうだ、それぞれの個性も後で聞くから」
「分かった、とりあえず自己紹介だな」
〈死命連装〉の説明で残りの時間は終わった。出久を知るものは、桜、菊、暁音、に警戒の意思が生まれた瞬間でもあった。