機動警察パトレイバー:魔法少女、特車二課に着任す   作:ゆきざかな

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第7話:初出動、その詠唱にて応えよ

 朝。特車二課のオフィスには、いつもと変わらぬ空気が流れていた。

潮の香り、整備班の作業音、そして湯気の立つ渋いお茶の香り。みんなのやや騒がしい会話。

変化があるとすれば――その穏やかな喧騒の中に、最近になって新しく、一人の少女の声が少し混ざるようになったことだろう。

 

その緩やかな「いつも」を破ったのは、後藤隊長の入室だった。

 

「本庁の課長から連絡きたよ。出動命令だ。湾岸第十四埠頭付近工事現場にて、レイバーの立てこもりだってさ」

 

 静まりかえった空気が、一転する。

それまで何気なく皆が持っていた湯呑が急かすように机へ戻され、椅子が弾かれるように引かれた。

全員が一斉に持ち場へ動き出す。あらゆる所作が、訓練された流れのなかで正確に動いていた――ただひとりを除いて。

 

 ミーシャ・アウレリアは、その場に立ち尽くしていた。裾の中で左手をぱかぱか閉じ開きしながら、目を丸くしている。

目の前で手際よく動き出す隊員たちの姿が、現実感を失った映像のように見えたのだ。

 

「え……えっ? あの……私は? 確かまだ訓練のはずじゃ……?」

 

 右手に持った湯呑みを机に戻すことも忘れたまま、彼女は戸惑いの目をみんなに向けた。

 

「予定では……今日は午前に軽い訓練をして……術式の確、確認を……はぅ!?」

「ほら、ミーシャちゃん、こっち来て」

 

 泉が迷いの余地を与えないように手を取る。

半ば引きずられるようにして、ミーシャはその細い足で連絡通路を駆けていく。

 

 ミーシャの視界には、整備棟の光がだんだんと強く差し込んでくるのが見えた。

冷たい朝の空気と、レイバーの油の匂いが入り混じるその空間で、誰もが迷いなく動いている。

 

 太田と進士は、すでに機体チェックと装備確認を終え、モニターを覗き込んでいた。

ミーシャの足が自然と止まる。

 

「い、いつの間に準備を……?」

「いつでも出られるようにしてんのよ、うちは。そんなもん」

 

 遊馬が当然のように答える。手には指揮用タブレット、顔には軽口を交えた笑顔。

だがその目の奥の光は、完全に現場の人に切り替わっていた。

 

 泉が、ミーシャのコンクリートのように固まった緊張をほぐすために、笑いながら肩を軽く叩く。

 

「最初に訓練してから、なんて甘い配属、うちにはなかったよ?

私たちなんて、イングラム来たその日に上野公園でテロリストレイバー止めたもん*1

「え? えぇぇぇぇ?」

 

 ミーシャの顔に浮かんでいた不安が、驚きにかき消される。

その表情は徐々に困惑から感嘆へ、そして次第に尊敬の色に染まり始めていた。

 

太田がヘッドギアをわきに抱えながら、いかにも太田らしい発破をかける。

 

「臆するなよ。お前も今日から本物の警察官だ!

喜べ、訓練よりも実戦の方が、すぐ慣れる。第二小隊は、現場叩き上げが多いからな!」

 

 その語気には激励と誇りが混ざっていた。

小隊の誰もが、彼女の初出動を特別ではなく当然として扱っていた。

 

「ミーシャちゃんなら平気平気。案外、肝すわってんのバレてっからな?」

 

 遊馬がすれ違いざまに、軽口を叩く。

その気楽な言葉に、ミーシャの肩から少しだけ力が抜けていくのが、泉の目にも見えた。

 

「あ……術式構成は――今朝の提出書類通りです……

レイバーの制圧なら準備術式の中でも《グリース()》と《ウェブ(蜘蛛の糸)》を使用する可能性が高いです」

 

 不安定な声ではあったが、語尾には明確な思考が宿っていた。

 

「わかりました。バックアップは僕が何とかします。アウレリアさんは術式展開に集中してください」

 

 進士が即座に応じる。会話の応酬が、訓練ではなく実戦のリズムで進んでいく。

 

 整備棟の奥から足音が近づく。

後藤が、片手に書類を持ちながら姿を現した。

彼はその場に立ち止まり、隊員全員を見渡してから、言った。

 

「……さて、今日は全員出るが、今回の出動の主役は――アウレリアだ」

 

 その一言で、室内の意識が一点に集まる。

ミーシャがひるんだように一歩引くと、後藤の声が続いた。

 

「正直に言えば、初めての出動で一本成果を上げたい」

 

「成果、って……上に報告するため、ですか?」

 

 遊馬の声には、わずかな棘が混ざる。

 

「ま、そんなとこだな。術者運用の実証ってやつさ。上の連中は、数字でしか納得しないからな。

今の体制が正直、どこまで持つか分からんのよ。将来の保証なんて、誰もしてくれないってことさ」

 

 言葉の端に滲んだ後藤の重さに、全員の空気が静まる。

 

「案外――後がねえのよ」

 

 冗談のような、でも冗談ではない。後藤の目がそう物語っていた。

 

「だから、全力でやる。アウレリアの術式はすでにマニュアルに沿って運用できる。今日、それを証明する。

――初陣巡査。大丈夫だ。こっちにはお前の術式がある。お前には、こっちの背中がある」

 

 その言葉を聞いたミーシャは、ひと呼吸おくようにそっと目を閉じた。

そして静かに目を開き、こくんと小さくうなずいた。

 

「行きましょう。任務開始です、術者アウレリア巡査」

 

 熊耳が呼びかける、その声に気を取り直しミーシャはようやく自分の足で歩き出した。

彼女の初実戦は、訓練の模擬戦闘号令よりもずっと早く訪れた。

だが、特車二課第二小隊にとって、それは――いつも通りの始まりだった。

 

 

 

 

 湾岸の風にさらされる鉄骨むき出しの高層ビル建設現場に、異様な重低音が響いていた。

剥き出しの構造骨が朝日を受けて赤錆びた光を反射する中、

重量級作業用レイバー、菱井HL-98「ヘラクレス21」が、その巨体で地面を踏みしめるたび、鈍い振動が地面を伝って足元を揺らした。

頭上の梁が揺れ、クレーンが嫌な金属音で軋ませる。

 

 それを囲むは特車二課第二小隊、

イングラム1号機と2号機は、すでに山崎の操縦するキャリアの搬送台から立ち上がり、冷たい海風の中で白い装甲をきらめかせていた。

指揮車のそばでは、熊耳と遊馬、後藤隊長がタブレット越しに現場データを確認している。

そのすぐ隣で、ミーシャ・アウレリアが広げた現場の見取り図に指を走らせていた。

そんな包囲網に対して苛立ちをぶつけるように、スピーカー越しの男の怒声が響く。

 

「いいよなあ!? どうせ、俺がいなくたって誰も困らないんだろ!? だったら、このクソみたいな人生ごと壊してやるよ!」

 

 建設現場の梁の間に響き渡るその声には、追いつめられた人間の焦燥が混じっていた。

レイバーのマイク越しでも、その絶望の熱がひりひりと伝わってくる。

 

 切羽詰まった感情が混じった声に、後藤は指揮車に肩肘を突いたままの姿でぼやく。

 

「あーあー、自暴自棄になるのは勝手だけどさ……何でわざわざレイバー乗るかねぇ」

 

 熊耳が手元の資料端末を見ながら、犯人の情報を読み上げる。

 

「搭乗者判明しました、名前は佐々岡忠。42歳。この工事現場の下請け作業員。

数日前から無断欠勤、妻の不倫騒動で自宅に火をつけかけたとの通報履歴あり」

「最悪だな……」

 

 遊馬が顔をしかめ、進士は閉口した。

 

 奥の建屋内では、ヘラクレスが狂ったように鉄骨を殴りつけている。

金属の甲高い響きと火花が飛び散るたび、周囲の鳥が騒ぎ出す。

現場周辺は一時退避命令が出されていた。

 

「アウレリア巡査、速やかに制圧するには搭乗者の無力化で行くのが一番良いとおもいます。

今回の術式にちょうどいいのがありますね」

 

 進士が提案すると、ミーシャは目を上げ、言葉ではなく確かな視線で応じた。

そして革のポーチを手探ると、必要なコンポーネントの配置を確かめ、ひとつひとつ指先で触れていく。

 

「……やれやれ。奥さんに浮気されたらレイバーで暴れる。

そんなことで世界壊すなよって、言いたくもなるな」

「理由はどうであれ犯罪は犯罪です。確保しましょう」

 

 遊馬と熊耳がそれぞれ指揮車から声をかけると、白き2機のイングラムが駆動音を立てて歩を進める。

機械工学の結晶たるその機体は、巨体に見合わず人間のように軽やかだった。

 

2機のイングラムは、ゆっくりとヘラクレスを挟む形で工事現場に侵入する。

 後藤の声が無線に入る。

 

「いいか、全員。これは家族の崩壊から始まった、悲しい暴走だ。だがそれでも、俺たちの仕事は一つ。

――市民のために治安を守れ」

 

 その無線とともに作戦が開始された。

 ヘラクレスは、まだ柱を殴っていた。鋼鉄は何度目かの悲鳴を上げている。

だが、その暴力の流れに、ほんの小さな異物が差し込まれた。

 

「あぁ!? 警察様のおでましってか? このヘラクレスはそんな警察レイバーになんかまけ……?」

 

 ヘラクレスの搭乗者が声を止める、風景に違和感を感じたからだ。

それは15メートル先の鉄骨の隙間から覗く異彩を放った人影。

警官の制服を着ているがとても小さくか細い。そして側頭部に突起物がついているように見えた。

 

 その瞬間、進士の隣に立つミーシャが、小さく息を吸い、詠唱を紡いだ。

風に溶け込むような清澄な声が、現場の張り詰めた空気を静かに揺らす。

 

秘されし門よ、我が声に応えよ(エン=エサリエル、シルマ・ナ・エッサ)」――《ノック(開錠)

 

――コン! コン!

 

 その詠唱と共に、とてつもなく大きなノック音が工事現場にこだました。

そして――驚くことに、ヘラクレスのハッチが何の前触れもなくガコンと開いた。

 

 搭乗者・佐々岡の顔が覗く。

酔いが残っているのか、目は赤く、頬が火照っていた。

何が起こったのか、まるで理解が追いつかないといった様子だった。

 

 そこへ、ミーシャの第二の詠唱が続く。

手を掲げながら、ポーチから取り出した黄色の砂を指先で舞わせる。

小さな体にありったけの威厳と集中を込めた声は、この工事現場を祝福する祝詞のように響き渡っていた。

 

秘寂の槍よ、意識を曇らせよ(エステ=ランナ、リーン・オンタ・ローメ)」――《スリープ(眠り)

 

 その瞬間、佐々岡の肩ががくりと落ちた。

魔力による干渉により一瞬にして眠りに落ちたのだ。

 

 術式の予告を受けている泉と太田のイングラムは、すでにヘラクレスに接近し包囲を完了していた。

イングラム2号機のマニュピレーターがレイバーの肩部を抑え、

1号機の電磁警棒が、ヘラクレスの外郭の隙間から差し込まれ動力部を破壊し、火花が走り主電源が沈黙する。

 

 やがて術式の効果が静かにほどけ、まどろみの底から男が目を覚ます。

しばし虚空を見つめたのち、ぽつりと、呟いた。

 

「……何やってんだ、俺は……」

 

 その声には、酔いの醒めた後に残る虚しさと、じわじわと押し寄せる罪悪感が滲んでいた。

泉が通信越しに、柔らかい声で語りかける。

 

「おじさん、そんなことでヤケになっちゃ、だめだよ」

 

 そのすぐ後に、太田がぴしゃりと被せる。

 

「甘すぎるぞ泉。こういう奴は、しっかり締めておかないとまたやる」

 

 ミーシャの初出動は――拍子抜けするほど、あっさりと終わった。

 誰も撃たず、誰も傷つかず、イングラムの装甲にも一つの擦り傷もない。

ただ一機、暴走したヘラクレスの動力部だけが、静かに、何の音もなく停止していた。

 

 それだけの結末。

だが、それは――異邦者がこの世界に刻んだ、最初の足跡だった。

 

 制服の袖を風に揺らしながら、ミーシャ・アウレリアは小さく深呼吸した。

自分の詠唱が、術式が、確かに一人の人間と一機のレイバーを止めた――

その事実が、胸の奥にじんわり染み込む、ミーシャはその事実を、心の中で何度もそっと愛でていた。

 

 遠くで泉が、小さく手を振っている。

太田は何も言わず腕を組み、頷くだけだった。

 

 

 

 陽射しはまだ高く、鉄骨の隙間から差し込む白光が、地面の砂埃と油染みを斑に照らしていた。

空は少し霞んだ薄青。コンクリートの反射が強く、風は乾いて肌にまとわりつく。

現場の片隅。クレーンの足元に据えられた仮設の小机の前に、ミーシャ・アウレリアは静かに腰を下ろしていた。

術式の展開を終えてから、まだそう時間は経っていない。

手のひらには、ほんのわずかに緊張の余熱が残っていた。

 

 そこへ、ほとんどスキップのような軽い足音が近づく。

声をかけたのは泉だった。

 

「おつかれさま、ミーシャちゃん。初出動、お疲れ様」

 

 声は、いつもの泉らしく元気で優しくて、明るく灯るランプのようだった。

その響きを聞くだけで、ミーシャの胸の中に、ぽっと温もりが宿る。

彼女の前では、自然と笑みがこぼれてしまうのだ。

 

「ありがとうございます。……終わって、ほっとしました……」

 

「ちゃんと、効いてたよ。術式。うまく決まって、イングラムも傷つかずに済んだ。ほんと、助かったよ」

 

 泉は満面の笑みを浮かべ、大げさにウィンクすると、ミーシャの隣に腰を下ろした。

鉄骨に、二人の影が並ぶ。

 

 そのとき、ずしん、と地面を踏みしめるような足音が近づいてきた。

 

「……アウレリアさん」

 

 姿を見せたのは、山崎と進士だった。

山崎の大きな手には、ホカホカの湯気を立てた缶飲料が三つ。

冷えきった現場の空気に、それはちょっとした救いのように見えた。

 

「温かいほうがいいかと思って、ミルクティーにしました。好みに合うかわかりませんが……よかったら」

「あ……ありがとうございます……」

 

 ミーシャは両手で缶を受け取ると、そっと耳を揺らした。

缶のじんわりした熱が、指先から手のひらへ、そして奥へ奥へと沁みてくる。

 

「進士さんありがとうございます。的確な提案でした」

 

 素直に頭を下げたミーシャの声には、作戦前に漂っていた緊張の気配はもう微塵もなかった。

 

「いやー、アウレリアさん、僕の方こそ助かりましたよ。何せバックアップには嫌な思いでしかないですから」

 

 進士の言は冗談めかしてはいるが、言葉の端に過去の現場経験の苦さがにじんでいた。

そして缶のプルタブを開けながら、ちらりと視線を動かす。

 

 その先にいたのは、少し離れた場所で遊馬と座り込んでいる太田。

立てた膝に肘を乗せて、現場を眺めながら何やら押し黙って考え事に集中している。

 

「これなら胃薬なくてもなんとかやって行けそうです」

 

 進士は太田から視線を戻すと、目を輝かせるように言葉を継ぐ。

 

「しかし、楽しいです術式。いろんな組み合わせでいろんなことができるから。

まるでプログラムの組み合わせのようですよ。これはなかなか面白い」

 

 知的好奇心を刺激されたのだろう。進士の声には、いつになく熱がこもっていた。

 

「そういってくれると嬉しいです……これからもよろしくお願いします」

 

 進士が視線を向けた先――太田は、未だ言葉を発しないままだった。

片膝を立て、無言で現場を見渡す姿は、どこか肩透かしを食らったような雰囲気を漂わせている。

 

「……なあ、遊馬」

 隣でペットボトルを空にしようとしていた遊馬が、わずかに片目を上げて彼を振り返る。

 

「いやさ。あれくらいだったら、俺らだけでも今までも何度でも制圧できていただろ?」

「ふむ?」

 

 遊馬は少し身を乗り出してかがみ太田との顔の高さをそろえる。

こういう時のこの人は、案外本質を突くんだよなという顔する。

 

「そりゃ、酔っ払いの乗るヘラクレスなら、狙い撃ちして関節潰すなり、挟んで押さえつけて終わりさ。

今まで何度だってそうやって片付けてきた。けど――今回は、違った」

 

 太田の言葉に、遊馬の瞳に興味の灯が宿る。

現場の喧騒はすでに落ち着き、泉たちの控えめな談笑をバックに太田の声が響く。

 

「なんつーか、スムーズだったろ……あっけないほどまである」

 

 太田は表情を変えず、停止したヘラクレスをぼんやりと見つめた。

今回の対応が拍子抜けするほどすんなり終わったことに、彼の中でまだ実感が追いついていない。

 

「……まあ、ミーシャの《ノック》と《スリープ》が良い仕事してたのは間違いないな」

「そう、それよ」

 

 太田は真剣な面持ちで、グイっと人差し指を立てた。

 

「格闘がなかった。俺のイングラムも、装甲一枚かすり傷もつかなかった。相手も最小限、建物もほとんど無事。

……こんな事件、俺の記憶にはそう多くねえ」

 

 遊馬はあごを指でなぞりながら、下唇をわずかに上げる。

 

「……ってことは、珍しく穏便に済んでよかったって話か?」

 

 太田の目には、明らかに昂揚の光が宿っていた。

 

「いや、逆だ」

 

 その一言とともに、太田は立ち上がる。

陽の傾きに背中を照らされ、どこか演説でも始めそうな勢いだ。

 

「考えて見ろ、あの術式。あれを使えば、これぐらいなら突っ込まなくていい。レイバーが壊れない。ってことは……」

 

 言葉の続きを読んだ遊馬が、太田に右手の指をさしながら応じる。

 

「……危険な相手でももっと無茶できる?」

「そうだ!」

 

 太田の声が力強く響いた。声量も熱も、抑えきれずにあふれ出している。その勢いのまま、太田は両拳をぐっと脇に構えた。

 

「つまり、あの術式がサポートに回ることで、俺たちはより踏み込んだ制圧ができる。

撃てば滑らせ、突けば転ばせ、囲めば封じれる。

だったら、これまでやれなかったこともできるようになるんじゃねえのか?」

 

 遠くで泉がこちらを見ながら、何か呆れたように苦笑していたが、太田は意に介さない。

 

「こちらが接触する前に、相手のハッチを開け、相手を眠らせたり。相手だけを転倒させたり。透明化で偵察できる技術。

――これが現場で使えるってわかったら、戦術はもう一段階、進化するんだよ!

前見たくブロッケンみたいな軍事用レイバーが出てきても、どんと来いというわけだ」

 

 遊馬はため息をつきながらも、どこか感心したような目で太田を見た。

 

「……意外とちゃんと考えてんだな」

「当たり前だろうが!」

 

 憤慨したように声を上げた太田だったが、その言葉には誇りと矜持で満たされていた。

 

「俺はなあ……イングラムが無駄に壊されるのが一番癪なんだよ。

パトレイバーは荒事が起きてなんぼだ、壊れたって仕方がない、むしろ勲章だ。

でもな、無傷で終われるってことは、次にもすぐ出られるってことだ」

 

 遊馬は笑いを噛み殺しながら、片手を軽く挙げる。

 

「太田さん、今日のアンタ、なんか……真っ当すぎて怖ぇな。悪いもんでも食った?」

「誰がだ!!」

 

 太田が吠えるように追いかけてきたその直後、遊馬は軽やかに駆け出した。

ふたりのじゃれ合いをよそに、周囲では撤収作業が静かに始まっていた。

イングラムにシートが被され、現場の喧騒がゆっくりと日常の色を取り戻していく。

*1
サンデーコミックス1巻 第1話 ザ・ライトスタッフ【あっ軽い人々】




《ノック》 ―― 開錠
呪文レベル:2レベル
キャスト時間:1アクション
詠唱時間:1アクション
射程:60フィート
コンポーネント:詠唱(V)
持続時間:即時
効果
範囲内の扉や箱、宝箱、枷や南京錠など、一般的なやり方または魔法的な手段により
中のモノを利用できないようになっている物体一つを指定する

目標が魔法的でない錠前で閉ざされていたり立て付けが悪くて開かなかったり
閂で閉ざされているのなら、錠前は開錠され、立て付けは直り、閂は外れる。
魔法的な閉鎖(アーケイン・ロック等)は、10分間だけその効果を無効化する。
発動時、「ノック音」と呼ばれる大きな音が響き、最大300フィート先まで聞こえる。


《スリープ》 ―― 眠り
呪文レベル:1レベル
キャスト時間:1アクション
射程:90フィート
コンポーネント:詠唱(V)、身振り(S)、材料(M:砂ひとつかみ、バラの花びら、コオロギの羽根)
持続時間:1分(集中なし)
効果
範囲内のクリーチャーを魔法の眠りに誘う
発動時に5d8をロールし、その合計値が「この呪文が作用するクリーチャーのヒット・ポイント(HP)の総計」となります。
射程内の任意の1点を中心に、半径20フィート内にいるクリーチャーが対象。
現在HPが低い順に、合計値からそのクリーチャーのHPを差し引きながら、順番に眠る。
合計値が足りなくなった時点で、それ以上のHPを持つクリーチャーには効果は及ばない。

眠ったクリーチャーは、呪文の終了まで、またはダメージを受けるか、
誰かがアクションで揺り起こすまで気絶状態になる。
アンデッドや魅了状態に完全耐性を持つものはには無効。
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