──―いわゆるパンデモニウム勢が生息しているケテル城の近く、地獄の最下層である第7層「ゲヘナ」に棲んでいるとある大悪魔が存在した。その名前は「魔王アルシエル」
メガテンでは地面から顔の上半分だけを出し、王冠をかぶった姿をしているカルデア人が崇拝していた「黒い太陽」を象徴する暗黒の神である。一応パンデモニウム勢力に属する悪魔ではあるが、いわゆるソロモン72柱とは少し距離を置いた大悪魔……魔王である。
そして最近の彼は実に面白くなかった。とある黒札……副王代理から影響を受けたソロモン72柱は、何だかんだで多数のメシアンの覚醒者を手に入れ、皆でウフフキャッキャッと楽しくやっている。それに比べて、ゲヘナに蹲っているだけの自分は何だ? ただの引きこもりで指を加えて見ているだけ? 冗談ではない! 暗黒神である自分はあいつらと負けず劣らずの実力を秘めている。ならば、とりあえず人間どもを玩具にして面白おかしく暮らす。大悪魔である自分ならばそれは簡単にできるはずだ。
(フッ! 私は他の腑抜けになったパンデモニウム勢力とは違う! 娯楽に腑抜けて漫画家たちを保護するような奴等とはな!! 伊達に「魔王」の二つ名を持っているわけではないのだ!! 待ってろ人類! この私が効率的に管理統治を行ってやるからな!!)
アルシエルのLVは真・女神転生3でLV77。真・女神転生4ではLV66と大悪魔の名前に恥じないレベルである。
強大な分霊としてLV50ほどの分霊ならば十分太刀打ちはできるだろう。本当はLV70で行きたかったがMAGのことを考えると……である。
……しかし、そこで問題になるのは、『ガイア連合』である。あいつらに目をつけられるのは面白くない。噂では、あいつらは美女美少女をこの上なく好むらしい。
いわゆる『黒札』たちはシキガミを連れているが、ならば、『人間牧場』で大量の美女美少女を『作成』してガイア連合の金札や銀札に供給すればいい。ふっふっふ……完璧だな!! と地上に出て美少女を集めて『美少女生産計画』をアルシエルが考えている中、そんな彼に対して一人の黒札が訪ねてきた。
それは副王ベルゼブブの代行とも言える存在、黒札の一人【脳缶ニキ】*1と呼ばれる人間……人間? である。
同じゲヘナに住んでいる副王ベルゼブブの代行に逆らうほど、アルシエルも頭は悪くない。実際は同じ神話体系ではないが、副王たちとはいわばご近所さんである。逆らうほどアホでもないし、そもそも大天使の群れを薙ぎ払った脳缶ニキは、こちらをすら凌駕する力を持っている。逆らうわけにはいかない、とアルシエルは大人しく脳缶ニキとの会話を始める。
「いやあ、ウチの近場であれやこれややってるんで何してるのかなーと思いまして。あっこれお近づきの印の「テラカードリッジ」*2です。何個かどうぞ。何をするにせよ元手のMAGは必要でしょ?」
「ふむふむ……。美少女に目を付けたのはいいんじゃないですか? 黒札狙いもシキガミがいるから金札、銀札狙いもまあ妥当かと……えっ!? 人間牧場!?」
アルシエルが考えているのは、メシアンとほぼ同じの『人間牧場』である。人間の美少女、美人たちを捕えてきて、輪姦・乱交を行い、徹底的に心をへし折って快楽づけの肉奴隷……『家畜』に変える。
魅了(チャーム)漬け・快楽(ハピルマ)漬けにしてパニック状態にして乱交漬けにして逆らえなくさせて、バンバン家畜のように美少女を『生産』すればいい。それを餌に男の異能者たちをこちらに取り込むのも、労働者と戦力の確保ができて一石二鳥だろう。そして『家畜』が助けを求める『信仰』も魔王である彼には心地のいいものだった。彼もダーク・ロウに属する『魔王』。良心など欠片も存在しない。だが、そんな彼の目論見を、脳缶ニキはたった一言で打ち砕いた。
「あ~あ、がっかりだなぁ。暗黒神アルシエルともあろう神がメシアンと同じことやっちゃうんだぁ。ああ~! アルシエルって元はアシーエルって天使なんでしたっけ!? こりゃ失敬失敬!! そりゃ~元が天使ならメシアン過激派と同じになるのは当然ですよね!? いやー失礼失礼!!」
てへぺろ、と舌を出す脳缶ニキに対して、アルシエルは怒りにぶるぶると震える。『メシアンと同じ』この煽りは黒札だけでなく、悪魔でも普通に効いていた。
特に、パンデモニウム勢力と近い悪魔である彼には『元は天使』『メシアンと同じ』というのはまさに最適な煽り……いわば『効いてる効いてるw』な状態だった。顔だけの彼は怒りで顔を真っ赤にしてぶるぶると震えながら大声で叫んだ。
「できらぁッ!!」
「人間牧場なしでシェルター運営するって言ってるんだよ!!」
そのアルシエルの咆哮を聞いて、脳缶ニキは驚いた顔(嘘っぽい)をしながらお約束のセリフを返す。
「え!? 人間牧場なしでシェルターを!? そりゃすごい!! いや~流石は暗黒神ですね!! それじゃ頑張ってください。ああ、ちょうどいいんで元メシアン(記憶削除済み)の美少女とかおいていきますんで種馬……種腹? にでもしておいてください。それではアデュ~」
(よ……予定が狂ったぁああああ!! 大赤字やんけぇえええ!!)
どないしよ、と思わず頭を抱えるアルシエルだったが、ともあれ地上に浮上しなければどうしようもない。
本来は自分自身の縁があるカルデア王国……メソポタミア南部のバビロン辺りに浮上すればメシアの過激派にフルボッコのボッコボコにやられるし、(この地点ではまだメシアンと乱戦状態になっている)ヨーロッパ近辺にでも浮上したら、一応パンデモニウム勢力である自分はボコボコのボコにタコ殴りにされることは目に見えている。
地図を見ながらうんうん悩んで考えたあげく、彼が浮上を選んだのは『アイスランド』であった。
気候的には寒いが島ということもあって、ほかのメシアンたちからの攻撃を防御できるというのが極めて大きく、さらにイギリス……ブリテンのさらに後方にあるということで、ブリテン自体が防壁になってくれるというのもある。問題はさらに後方には、アメリカ……つまりクトゥルーの本拠地があるということではあるが、わざわざこちらまで大規模侵攻を行ってくる余裕は少ないだろう、と判断した。
そして島である『アイスランド』に浮上してみたアルシエルを待ち構えていたものは……。
「戦え! 神のために異端を葬れ!!」「我らが神オーディンよご照覧あれ!!」「助けてぇえええ!! 助けてぇええ!!」「お前たちは神の祝福を受けた人間なのです」「嫌だ! 脳缶は嫌だぁ!! 家畜人間も嫌だぁ!!」
うーん乱世乱世と、彼は軽くそれを受け流した。中心になっているのはやはり『メシアン』と北欧神話の神を崇める『多神連合』とのぶつかり合い。ヴァイキングに祖先帰りした獰猛な人間たちと、完全な秩序を示さんとするメシアンたちの混沌とした戦場であるアイスランドに、アルシエルはノコノコと顔を出してしまったのである。
(まずは美人・美少女を狩り集めないとならん。だがそれより以前に人間どもを支配下に置いて、クソメシアンともと野蛮多神どもと渡り合える戦力を保有しなければならない。さて、どうしたものか……)
中規模の街に突然出現した巨大な頭のみの大悪魔。ガイアレベル50の大悪魔にガイア連合の加護なしで逆らえるほど甘い世界ではない。メシアン、多神両方から狙われていた街はあっさりとアルシエルの支配下になった。
脳缶ニキから与えられたテラカードリッジ、そして、中規模な街を支配してそこから得られた信仰心MAGによって、何とかアルシエルは活動するための下地を作ることができた。だが、ここで予想外……いや、予想内というべきか……ということが起きた。
「アレは……アバドン!! アバドンだぁああ!!」
「倒せ!! 神の敵を!! 神敵を屠れぇえええ!! 神敵に屈した都市も殲滅しろぉおおお!!」
そう、メシアンたちはアルシエルのことを『魔王アバドン』と勘違いしたのである。実際、アルシエルはアバドンと同一視されることもあるから間違いではない。メシアンからしてみたら神の敵であることも間違いはない。
だが、誇り高き大悪魔からしたら実に不愉快そのものだった。そして神敵である襲い掛かるメシアンと天使の軍勢。そして彼らにとっての決戦兵器の一つである悪魔化したメシアンたち……メシアン【ターミネーター(LV30)】やメシアン【アテプト(LV40)】までもが天使と共に繰り出されてくる始末である。しかし、アルシエルにはそれに対抗できる能力が存在した。
「龍の眼光! ソルニゲル!! 全体攻撃!!」
それは魔王アルシエルの固有能力【ソルニゲル】*3である。ソルニゲルは万能属性攻撃で【全ての敵のHPを1】にするという極めて強力な能力を有している。しかもこのソルニゲルは回避する方法が一切ない上に必中かつ耐性無視なため大量の敵を一気に【強制的にHP1】にできるのだ。
さらに回復させないように龍の眼光によってソルニゲル→全体攻撃を行うことによって確実に相手を殲滅する。これが彼の必勝戦法である。
大地を埋め尽くさんばかりの無数の天使の軍勢とメシアンたち。だが、それらはアルシエルのソルニゲルと全体攻撃のコンボにより一瞬で殲滅させられることになった。ドドドド!! と無数の天使に対する全体攻撃を食らって消滅していく天使やメシアンたち。そんな倒した大量のメシアンや天使の魂、大量のMAGなどを大口を開けて吸い込んでいるアルシエルに対して、生き残った人々は大歓声を上げた。
「うぉおおおおおおお!!」
今まで押されに押されまくって、北欧神話の神々にすら頼っても殲滅されるであろう天使の大軍勢。それをただの一撃で粉微塵に粉砕したのだ。これで盛り上がらないほうがおかしいだろう。こうして、アルシエルはアイスランドの生き残りたちから強く信頼されるようになったのだ。
「よかろう! アバドンだというのならアバドンらしいことをしてやろうではないか!! 貴様らのシェルターごと丸呑みにしてやる!!」
アルシエルは『奈落の王』としての権能……アバドンとほぼ同じ権能によって、『奈落の王』として『シェルターそのまま丸呑み』を行うことができる。*4真・女神転生2のように体内から倒される可能性もある上に、この権能を使用するたびにアバドンへと近づいてしまうのであまり使用したくはなかったが仕方なかったといえる。そして、いとも簡単にメシアンシェルターを飲み込んで消滅させたアルシエルに対して、一般市民たちは大歓声を上げた。
「えーまいどー。メシアンの魂回収に参りましたー」
そんなこんなでメシアンを撃退したりメシアンシェルターを丸呑みしたアルシエルの元に、脳缶ニキがやってきてメシアンの魂徴収へとやってくる。アルシエルからすればメシアンの魂を取られるのは痛いが、メシアンの魂と引き換えに様々なアイテムと引き換えと考えればまぁ……となった。
「ひいふうみぃと……。おお!! メシアンの魂も天使の魂も大量ですね!! ちょっとぐらいならサービスしますよ!!」
アルシエルに飲み込まれたメシアンシェルターは、そのまま中にいる全てのメシアンたちは生きながらアルシエルによって消化され、メシアンたちの魂のみが溜まっていくことになる。生きながら消化されていくメシアンたちの恐怖と絶望のMAGは、脳缶ニキのテラカードリッジと同じ効果を齎し、アルシエルにとって大きな原動力MAGとなる。
だが、その一部を脳缶ニキに引き渡す事によって、彼は脳缶ニキから様々な交易品を受け取っているのだ。
「うむ、まずは食料。大量の人間たちの食料を用意してくれ。この地では寒くて農業? とやらができんらしいからな。海洋資源もクトゥルーの影響を受けているらしいし……。あとは何か温まる燃料も頼む。人間どもは少し寒くなっただけですぐに死ぬ軟弱な生き物だからな」
アイスランドは寒冷地であるため、基本的に農業をするのは難しい。そのため、基本的に豊富な魚介類と新鮮な羊肉が主とされているが、アメリカのクトゥルーの影響によって、魚介類も汚染・変化されている異形の魚がこちらにまで流れてくる……とはいうものの、全ての魚が変化しているわけではないので、十分に賄える範囲ではあるのだが、それでも人は魚だけで生きるわけではない。そのため、アルシエルは脳缶ニキ……ガイア連合を通して大量の食糧・並びに暖房を手に入れようとしているのである。
「了解~。まずは大量の食糧供給ドーン! さらに都市自体を覆う温暖結界に色々な暖房器具。これだけあれば何とかなるでしょ。これぐらい良質な魂をくれるのならちょっとぐらいサービスしますよ」
元々アイスランドは極めて地熱発電が行われている国である。そして、地熱とゲヘナに住まうアルシエルは極めて相性がいい。ゲヘナから噴き出た炎を誘導し、それを地熱変換、さらに地熱発電を行う発電所などを作成して、都市型シェルターの電力を賄う形にした。そして、その霊的システムを作り上げたのはほかならぬ脳缶ニキである。
ちょちょいのちょいで簡単に作り上げた脳缶ニキはそのまま都市部を覆う温暖結界を張ったり、ついでに地熱で野菜が育てられる温暖地帯なども作り上げていく。
……実際の所、錬金術に長ける脳缶ニキならば、アイスランドの寒さだろうが平気で大量に育つ農作物の種類は簡単に作成できる。だが、そうなったらガイア連合から独立して好き勝手し始めるだろう。食料供給やら物資支援をこちらで押さえる方がいいだろう、と彼は判断したのである。
「ともあれ、美少女とメシアン以外にも輸出できる資源を考えておいたほうがいいよ。今はいいけど島だからメシアンもいなくなるし」
「……それでアルシエルさん。どうせなら『傭兵稼業』とかしてみる気はない? 欧州戦線とか敵を蹴散らしてくれればこちらとしてもきちんと報酬は出すけど?」
アルシエルの【ソルニゲル】から全体攻撃は、いうなれば【大戦力殲滅】に非常に適している。欧州戦線での大規模天使の軍勢でさえも、【ソルニゲル】から全体攻撃や全体魔術を叩き込めば大量の天使の軍勢を削り取ることが可能だろう。MPの問題も【吸魔】によってある程度カバーできる。無数の天使の軍勢を殲滅するのに適している存在のため、時々欧州戦線やら色々な戦線に傭兵として投入されてマッカを稼ぐようになったのだ。
そのため、脳缶ニキはアルシエルを中心にする結界にするのではなく、都市を覆うガイア連合の結界を構築したのだ。
そして、安全な拠点と大量の食料などを手に入れたアルシエルはついに美女・美少女育成を始めた。
支配下の都市から美女・美少女たちを差し出すように命令し、保護下の人間たちは比較的素直に娘を差し出していた。娘が食糧にされるというのならともかく、衣食住を保護されてきちんとした教育などを受けれるのなら断る理由はない。脳缶ニキから与えられた記憶を失った美少女メシアン(元)や捧げられた美女・美少女たちを自分の娘である『アルシエルの娘たち』として教育しようとしたが……。
「きちんとメシを食え! メシを食わねばお前たちは生きていけんだろうが!! はぁ? 調理されていない麦や生肉はきつい? 調理道具がない? 全く仕方ない! 料理取り寄せるから待ってろ!! おいニスロク! こいつらに何でもいいから食わせろ!!」
「はぁ? こんな豪奢な服はいいのか? 馬鹿モノ! ガイア連合の黒札に気に入られるためには、「ごすろり?」だの「じらい?」だのカワイイ? 系の服や下着が必要不可欠!! (らしい)のだ!! いいから着ておれ!!」
「ね、熱!? 病気だと!? 病気って何だ!? バエル! バエル呼んでこい!! マッカならいくらでも払うぞ!!」*5
……まあ苦労の連続だった。教育以前の問題として、人間自体にあまり詳しいとはいえないアルシエルがそもそも単独で人間の面倒をみようとするのが間違っていたといえる。それをカバーしようとソロモン72柱に頼れば、足元を見られてそれなりのマッカを奪われてしまう形になる。このままではいかん、とアルシエルは庇護下の人間たちを雇い、彼女たちの身の回りの世話を行わせるようになったのだ。
(まったく人間どもは体は弱いし食料や寒さにも弱いし面倒くさい!!こんな面倒くさいことをしているメリットなど本当にあるのか?)
そんな風に思っているアルシエルだったが、自らの『娘たち』に彼は全力で礼節や気品、知性、プライド、モラル、気立て、魅力に加え、霊能覚醒、自衛ができる戦闘能力や魔術の引き出しに至るまで、丁寧に丁寧に育て上げていった。そんな面倒を見ている幼い少女の一人が、温暖結界内部で育った花を摘んで作成した『花輪』をにこにこと笑いながら巨大な頭だけのアルシエルに対して、はいどうぞ!と差し出してくる。
「アルシエル様! お花で花輪を作ったんです! はいどうぞ!」
「バ……バカモーン!! 貴様シェルターの結界の境界ギリギリまで行きおったな!! あれほど危険だと口を酸っぱくして言ってるだろうが!!今回は許すが次回は気をつけろ!!いいな!!」
しゅん……としている少女だが、その花輪を見てついにアルシエルは我慢できずにその場で思わず号泣を初めてしまった。
「う……うぉおおおおんおーんおーん!! 娘に!! 娘から花輪をもらったよぉーんおんおん!! 嬉しいよぉおおーんおんおんおん!!」
目からどばー!! とギャグみたいに大量の涙を流すアルシエルに対して、アルシエルの娘たちは大きな容器を用意してそこにアルシエルの大量の涙をどばどばと受け止める。
高位悪魔の涙など貴重な霊的資源である。アルシエルの娘たちは、これらの大量の涙を乾燥させてそこから『魔塩』を作成し、それを魔除けとして使用する。(普通の塩とは属性が正反対だが)何ならそのまま涙を『魔水』として使用するだけで、魔蟲ごときは近寄れないし、何なら低レベルの悪魔ですら解けるレベルである。
これをシェルター外にまくことで、この近辺を『アルシエルの領域』として周囲に知らせるのである。
……それはともかく、初めて花輪をもらったアルシエルは魔王の威厳など投げ捨ててひたすら感涙していた。そして、そんな風に頑張って娘たちを育てていき、彼女たちに愛着を抱き始めていたアルシエルは一つの疑問を心の中に浮かべていた。
(そもそも何で大事なウチの娘たちを黒札や金札や銀札どもの好みに育て上げなきゃいかんのだ? バカバカしい!! ウチの娘たちが向こうに合わせなきゃならない理由などどこにもない!!それよりもこの子たちの長所を伸ばすほうがいいに決まっている!!)
……なお「この地点で計画完全に破綻してるやんけ!!」と突っ込みを入れられない人間がいないことが彼にとっての不運だった……のかもしれない。ともあれ、娘たちには非常に甘いアルシエルだったが、ほかの人間たちに対してはそんなに甘くもなかった。
「何?未覚醒者たちが多くて無駄飯食らいばかり?ならば自我が薄い精霊……アーシーズやアクアンズあたりと合体させて悪魔人間化させればいいだろう。*6MAG生産は少なくなるが兵士……いや漁師としてはちょうどいいしな。どんどん合体させていくか……。」
「あの……父様。それはあまりに……。」
「し、仕方ないな!最大限貴様らクソ弱人間どもにも配慮してやるからな!!いいか覚えておけよ!!お前たちのためじゃなくて娘が頼んだからだぞ!!娘に感謝しろよ!!」
「うぉおおおお!!くたばれぇえええ!!娘たちのため!!娘たちのためぇええ!!」
「龍の眼光! ソルニゲル!! 全体攻撃!!」
脳缶ニキの要請によって、欧州戦線などに投入されるアルシエルは、ソルニゲルという大規模軍勢対策によってメシアン軍勢を殲滅するという傭兵稼業に時々駆り出されていた。この傭兵稼業こそが彼の主な収入源であり、それによって大量のメシアンや天使の魂、マッカなどを手に入れてシェルター運営に稼ぐ。それが彼の仕事だったのだ。
この戦術の欠点は、テトラカーンなどを張られると攻撃が跳ね返されHP1のまま生き残ることではあるが、それでもHP1になった天使やメシアンたちは他のデビルサマナーや悪魔たちのいい餌となって狩りつくされていった。
彼は自身の固有のスキル『ソルニゲル』だけで十分に食っていけるほどの強力なのである。そして、そんなアルシエルに対して脳缶ニキはふと問いかけてくる。
「ところで、そろそろ娘さんたち育ちました?こっちでガイア連合の適当な金札紹介してもいいですよ?」
「あーえーうん。まあもうちょっと!もうちょっと……ね!!」
言葉を濁すアルシエルに対して、脳缶ニキはあっ(察し)と思わず察する。(これはもう完全に絆されてるかもしれんね。まあいいか!!こっちには関係ないし面白そうだし!!せいぜい高みの見物させてもらいますか!!)と脳缶ニキは心の中で呟いた。
ともあれ、何だかんだで育ち切った『アルシエルの娘たち』の一人とガイア連合のとある金札の一人は結婚することになった。大悪魔に育てられた美少女ではあるが、きちんと礼節や人間性も保持されており、霊能もある程度は存在している。いわゆるお見合いではあったが、お互いラブラブになって、早期に婚約は決定した。
ガイア連合の金札と結ばれてガイア連合との関係を構築。さらに強いコネを得られたと、アルシエルの思惑通りに進んだ。進んだのではあるが……。
「お……」
「おーんおんおん! おーんおんおん! 嫌だよぉおお! 手塩にかけた娘を何で他の男に渡さにゃならないんだよぉお!! 娘の結婚とかやだやだやだぁああああ!!おーんおんおんおん!!」
巨大な顔が泣きわめきながら、大量の涙を流して顔だけでのたうち回るのは実に「見苦しい」の一言だった。体があれば手足もじたばたするだだっ子モードになっていたに違いない。ともあれ、『アルシエルの娘たち』の評判は高まり、金札や銀札の人々も嫁に迎える人はそれなりにいたが……そのたびにアルシエルは泣きわめく事になったとさ。めでなくありめでなくなし。
〇アルシエル。
一応パンデモニウム勢力だが、72柱たちとは少し距離を取っている……いわばご近所といえる大悪魔。
カルデア人が信仰していた、地獄の最下層である第7層「ゲヘナ」に棲んでいるとされる暗黒の神であり、『アバドン』と合一にみられることもあるので、アバドンと同じ権能……『シェルター丸ごと飲み込み』も可能。
万能属性で相手のHPを1にする極めて強力な権能『ソルニゲル』と『龍の眼光』を使用して、ソルニゲルでHP1にした相手を龍の眼光で確実に始末するのが王道。
自分が手塩にかけて育ている美女・美少女たち……『アルシエルの娘たち』には非常~~に甘いが、ほかの人間たちにはそんなに甘くない。……がアルシエルの娘たちがその辺口添えしてほかの人間たちを保護してくれるので、わりと普通の大規模シェルターになっている。
簡単にいうと『プリ〇セスメーカー』にドハマりした状態。娘たちに対しては非常に甘すぎるぐらい甘い。72柱とかから見たら「何やあいつキモ……」ぐらいの目で見られているだろうが、本人は別に気にしていない。
〇アルシエルの娘たち。
アルシエルが手塩にかけて育てた美女・美少女たち。
礼儀作法、神話知識、霊能、美貌、気品など最高峰になるまで惜しげなく教育を施し、できるかぎりの化粧品やアクセサリー・衣服なども与えているため、評判は非常に高い。
アルシエルへの信仰を表すため、黒色の服やアクセサリー、チョーカーなどを身に着けることが多い。
……元はガイア連合の金札、銀札たちに対する政略結婚やハニートラップのために育成した人材であるが、アルシエルがすっかり育成にハマってしまって情に流されまくった結果『大事な娘をどこの馬の骨ともわからん奴らにはやらん!!』とすっかり本来の目的を見失った親バカになった。
結婚も『アルシエルに対する宣誓』になるので、もし娘たちに対してDVなり肉奴隷扱いした場合には『宣誓違反』となって呪いが降りかかる形になる。(銀札程度なら普通に呪いが降りかかりそう。)
黒札や金札が結婚した娘たちにDVとかしたらガイア連合にめちゃくちゃクレーム入れて離婚させる方向にいきそう。