廣井従弟の介護日記   作:ヒャル

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 今回はイライザ回。
 虹夏ちゃんの次くらいに男を勘違いさせては「ごめん、そんなつもりじゃなくって」ってハートブレイクさせてくるタイプじゃないかと思う(



第四話

 ピンポーン

 

「れーと~~遊びに来まシタヨ~」

 

「…おはようございます、イライザさん」

 

 今日の訪問者は我が家の和室を酒海に沈めたカスの谷の酒クズ…ではなく、イライザさんだ。

 用意しておいたスリッパを履いてもらい、部屋の中へと通す。

 

「きくりはお出かけデスカ~?」

 

「別にここはきくり姉さんの家じゃないんですけど……今日は朝から飲み屋街に出かけてます」

 

 今回は電車に乗っているわけじゃないから救援要請が届くことはないと思うが…

 念の為スマホの電源を切っておく。

 

「今日はブイオをやるんですよね?」

 

「ハイ!アルちゃんみたいなプレイを目指しますヨ!」

 

 きくり姉さんのバンドメンバーの一人として知り合ったイライザさんだが、その後どちらもVtuber“音戯アルト”のリスナーであることが発覚し特に仲良くさせていただいている。

 今回は、最近の配信でプレイしていたブイオを自分でもやってみたいとのことで、持っている俺のところに遊びに来たのだ。

 

「身近にアルちゃん仲間がいるのは、すっごく嬉しいデスヨ~」

 

「…俺もですよ。個人勢の推しの仲間を見つけるのは大変ですしね」

 

 ……昔であればこんな綺麗な女性を自宅に上げるなんてハードルが高すぎて難しかっただろうが、こっちに戻ってきてからきくり姉さんが頻繁に来るせいで人を家に上げることに慣れきってそんなに抵抗を覚えなくなっていた。

 このことについてはきくり姉さんに感謝……は、しなくていいか。

 

「ダウンロードはしてありますけど…日本語版のままで良かったですか?」

 

「アルちゃんも日本語版でプレイしてたヨ。私も日本語版でチャレンジデス!」

 

 そう言ってコントローラーを握りしめるイライザさんの目は子供のようにキラキラしていて……彼女がSICK HACKの末っ子と呼ばれる所以がよく理解できた。

 

 

「ヨッ!ホッ!このくらいで手間取ったら…アルちゃんのバディは務まらないネ!」

 

 仮初の平穏が砕けるプロローグが終わり、ゲームのプレイヤーキャラがゾンビで溢れる村に放り込まれたが、FPSゲームの得意なイライザさんはハンドガンで次々と敵を倒していく。

 

「…そろそろ大物が出る頃でしょうか」

 

「ウン、アルちゃんの配信ではそれでダメージ受けてマシタ。ここは別のルートを……ッ!?」

 

 音戯アルトのプレイとは別のルートを進んでいくと、ジャンプスケア的に飛び出してきたゾンビにびっくりさせられる。

 

「ちょっとビックリしまシタ…れーとは大丈夫デスカ?ホラー苦手でしたよネ?」

 

「…ホラーが苦手なんて話しましたっけ?」

 

 ホラーが苦手なんて情けない話をした記憶はないし、ホラーゲームも人がプレイしているのを見ているだけなら平気なので、音戯アルトのホラーゲーム配信でも普通にコメントしているのだが。

 

「きくりが言ってたヨ。親戚の子がカメラで除霊するゲームしてるのを見てて、れーともやりたくなって買ったけど怖くてプレイできなかったとカ」

 

「……余計なことを……」

 

 やはり志麻さんと協力して、無理矢理にでも断酒させるべきだろうか…

 

「れーと、気にしなくてモ問題ナッシング!ちょっとくらい欠点ある方が人気になるヨ。アニメの鉄則デス!」

 

「いやそれは、完璧なキャラやカッコいいキャラの話であって。俺は別に……!?」

 

 否定しようとすると、イライザさんにいつも下ろしている前髪をぐいっと押し上げられる。

 

「れーと、いつも隠してるだけでとてもかっこいいデスヨ?」

 

「い、いやまぁ目鼻立ちは整っている方ではあるかもしれませんが……」

 

 顔の良さである程度許されているところがあるきくり姉さんの従姉弟だけあってと言うべきか。一応、俺の顔立ちは平均より上の方ではあると思う……自分で言うのも何だけど。

 それを分かった上で普段は前髪で隠しているのだが…イライザさんには以前ここでアニメ観賞会が長引いた時に、風呂上りで顔を出している姿を見られてしまったのだ。

 

「せっかくキレイなんだから顔出せば良いノニ。もったいないヨー」

 

「……いやその、変に目立ちたくないですし。知らない女性に声かけられたりしても困りますし」

 

 道を歩いているだけでチラチラ見られるのは落ち着かないし、知らない女性にいきなりイソスタやってますか?とか聞かれて滑らかに対応できるほどのコミュ強ではないのだ、俺は。

 

「…じゃあ、私しかいない時は顔出してもいいヨネ。……ダメ?」

 

 そう言って俺を見つめてくるイライザさんの顔には、欠片も悪意が含まれていない。

 

「…イライザさん以外いない時だけ、ですからね」

 

 志麻さんもきくり姉さんもイライザさんには甘いけど、自分も敵わないなぁと思いつつ前髪をかき上げる。

 

「…うん、れーとの顔、私は好きデス!」

 

「……あんまり軽々しく好きとか言っちゃ駄目ですよ……」

 

「……?」

 

 本当にこの人は……

 

 

「そして、ゆくゆくは一緒にコスプレに行きマショー!」

「それは流石に勘弁してください」

 

 

 

(…っと、もういい時間か)

 

 おしゃべりをしながらイライザさんのプレイを見守っていると、いつの間にか時計の針が12時を指していた。

 

「…イライザさん、ちょっと席を外しますね」

 

「ウン!」

 

 ゾンビと格闘しているイライザさんをその場に残して、一旦キッチンに移動する。

 

「こっちは夕飯に使う予定だから鶏肉と……あと中途半端に残ってるチーズを使っちゃうか」

 

 両面に塩コショウした鶏肉をそぎ切りにし、フォークで何度か突き刺して火が通りやすいようにする。

 少しずつズラして耐熱皿に並べ、ラップをしてレンジでチン。

 

「えっと牛乳牛乳……」

 

 その間に耐熱ボウルに牛乳とちぎったスライスチーズを入れ、こちらはラップをせずにチン。

 加熱が終わったら混ぜ合わせて鶏肉の上にかけることで、お手軽クリーム煮の完成だ。

 

 あとは付け合わせにサラダと……朝食に出したバターロールの残りを添えればいいか。

 

「…イライザさん。お昼できましたから、キリの良いところで中断できますか?」

 

「ご飯作ってくれたんデスカ?今ショップデスからすぐ行きマス!」

 

 ちょうどセーブポイントだったらしく、ゲームを中断したイライザさんがすぐにやってくる。

 

「「いただきます(マス)」」

 

 2人揃って挨拶をしてから食べ始める。

 

「美味しい…チキンとチーズの味が染みるヨ……れーとのご飯をいつも食べてる、きくりがうらやましいネ…」

 

「大げさですよ。…でも、ありがとうございます」

 

 感動した様子で、イライザさんが鶏肉のクリーム煮を食べ進めていく。

 その目には光るものが…って、涙?

 

「イライザさん……さてはまた散財してもやし生活していますね?」

 

「アハハ……」

 

 誰からも愛されるイライザさんの欠点はきくり姉さんに匹敵する金遣いの荒さで、ソシャゲ課金やらグッズや同人誌の買い過ぎやらで度々もやし生活を送っているのだ。

 今回のように俺の部屋にゲームをしに来るのは、自分でゲームを買うお金がないというのもある。

 

「……良かったら夕飯も食べて行ってください。カレーの予定でしたから、元々多めに作るつもりでしたし」

 

「……良いノ?」

 

「……俺も、やつれているイライザさんは見たくないですし。俺はまた面白いアニメを紹介してくれればいいですから」

 

「…ウン!れーとの好きそうな、とっておきのアニメを探しておきマス!」

 

 そう言って満面の笑みを浮かべるイライザさんは、やはり綺麗だった。

 

 

 

「うわーん!財布落としたのに玲斗くんはスマホの充電切れてるし、志麻にも見捨てられた~~!!」

 




 顔の良さでギリギリ許されてる(許されてない)廣井の従姉弟だけあって、玲斗くんの面の良さは山田に匹敵します。
 ただし陰キャな上に山田ほど図々しくないので有効活用する気はまったくない。
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