もしも東方projectの世界にシシ神がいたら 作:ジョン・N
後日談……というわけではなく、おまけの詩です。
各章の最後にあった【詠み人知らず『○○せっ記』より】って何?の答えがこれです。
詩
諏訪せっ記
――――作者:詠み人知らず
この島が まだ深い森におおわれていた頃
西から来た自然の神と 諏訪の山の神が出会った
朝と夜に姿を変える 不思議な獣
命を与奪する程度の能力を持つ 自然の神
ミシャクジを統べる 無邪気な姫
坤を創造する程度の能力を持つ 山の神
自然の神は森を育てる 山の神は里を導く
自然の神は生命を廻す 山の神は大地を揺らす
諏訪の妖怪は語り継いだ
シシ神と呼ばれた その金鹿が
いかに惨たらしく 美しかったかを……
諏訪の人々は語り継いだ
洩矢諏訪子と呼ばれた その祭神が
いかに力強く 慈愛に充ちていたのかを……
あり方は違えど シシ神と洩矢諏訪子は この地で共に生きた
シシ神の背に乗って 諏訪子は森を散歩する
草は萌え 水は澄む コダマは笑い 蛙は歌う
風祝も 大和の神も みな諏訪の地を愛した
ついに 妖怪と神々は この地を捨て 幻想の中へと消えていった
歴史に残らない物語を 感傷に浸った山の神は語る
命を奪い命を与える 美しい神よ
できるなら 諏訪の神々と共に お前を幻想に迎えたい
ここなら また共に生きていけるから
***
妹紅せっ記
――――作者:詠み人知らず
これは平安の物語の外で 残酷な運命を背負った少女の物語
不死者は人の世では生きられない
人々は藤原妹紅と呼ばれた その少女を拒絶し 歴史の外へと追いやった
苦しみを断つすべを 失ったものは
永劫に 生命を燃やし続ける
残酷な運命に翻弄された末
心優しき妹紅は 自らを呪った
呪いは焼けつき 決して剥がれはしない
それでも妹紅は 逞しく生きた あの若者のように
その歴史に残らない妹紅の歩みを 半獣の友は 人知れず記した
妹紅が いかに心優しく 不器用だったかを……
あの日かわした妹紅との約束を 竹林の狼は いつまでも覚えていた
死に場所を求める後ろ姿を コダマと共に見送った日のことを……
だが神々は知っていた
自然の神と 山の神は知っていた
妹紅のこころには まだ生きる意志があることを
共に生きよう 幻想に迎えるまで
そして妹紅は はるか幻想の果てで 月の姫と出会う
その瞳にやどるのは 復讐か 清澄か
だが共に生きよう 世界が終わるまで
***
影狼とコダマ
――――作者:詠み人知らず
森の木陰で あなたときみは見つめている
暗がりの中で あなたは怯え きみは笑っている
光る赤い爪をたてて カタカタと音をたてて
振り返ると 恥ずかしがって 身を隠す
知らんぷりしていると ついてくる
あなたの咆哮は 古き友のやさしさ
きみの共鳴は 古き森のゆたかさ
ゆれる陽炎と ひびく木霊
妖怪と精霊 それは良き森の案内人
あなたたちがいるから 心細くないよ
さあ 共にいこう 行先は御池か人里か
『諏訪せっ記』と『妹紅せっ記』だけだと、最低文字数が足りなかったので、
もうひとつ『影狼とコダマ』も追記させていただきました。
本作品は、これらの詩がいわゆるプロットでした。
詩を作るというのは初めてでしたが、イメージなど何かしらが少しでも伝われば幸いです。
追伸:
『もしもシシ神が幻想入りしたら』という物語も考えてはみましたが、
“異変”解決中にシシ神さまの首が飛ぶところまでで、考えるのをやめました。