アッサリ終わるけど……
金属音が鳴る。
相手の刀を折るつもりで斬り合う。
そこから先が無かろうとも俺達は今を楽しんでる。
アルミンは本当に強くなった。
だから、手加減はしない。
そう思ったら巨人が降ってきた。
いや、意味わからん。
「なんだ⁉︎」
「巨人が降ってきたぞ」
「ブチ殺し確定だな」
とりあえず邪魔したんだから死ね。
せっかく楽しんでたのに……
「さて、行くぞ弟子達。 久々の蹂躙だ」
巨人が動き出す。
殆どが逃げるが知能がある奴は決死の覚悟で突っ込んでくる。
虚閃と虚弾を使い分けながら殲滅して行く。
やたらとマッチョな巨人が虚閃を弾きながら突っ込んで来た。
キモい。
「アルミン達はあのマッチョと戦うな‼︎」
指示を出して戦況を支配しようとするが殺すスピードより投げ込まれるスピードの方が早い。
「延びろ『鬼灯丸』」
殴りかかってきたので上手く鬼灯丸をしならせて受け流す。
マッチョの巨人の後ろにクリスタが居る⁉︎
マズい。
「貫け、千枚通し」
高速で回転させながらドリルのようにマッチョの巨人を貫く。
クリスタを連れて一旦下がる。
説教する時間が無いので拳骨を落とす。
無事で良かったがあれはいただけない。
俺が二手遅かったら死んでいた。
救うのは嫌いじゃないが、無理をして死んでほしくはない。
とりあえず痛みで冷静にさせたが良く周りを見るとなんだか浮き足立ってる奴が何人か居る。
死人は出てないが正直不安だ。
イラッとした。
相手は最終決戦。
こちらは何故か周りを見てない。
巨人失礼もクソも無いが……
ふざけてる。
「息吹け『巨腕鯨』」
ドンッという音と共に巨大化する。
鬼灯丸は身体の中に入り素手になる。
それに伴って声もデカくなる。
「聞け……」
地獄の底から響くような声にちょっとショックを受けたがそれどころじゃない。
とりあえず全員を冷静にさせないと。
「貴様等は戦いを舐めてるのか? 死ねばそれで終わりだぞ。 それを周りを気にせずに自分の好き勝手動いて…… これまでの修行を無駄にするのか⁉︎」
巨人の上半身を握り潰しながら怒鳴りつける。
当たり前の事を忘れてるこいつらは一旦怒鳴りつけないと気が済まない。
拳を振り下ろして更に巨人を潰す。
巨人から見たら地獄だろう。
噛み付いても千切れない。
ぶつかっても動かない。
怒鳴りつけてから全員の動きが変わった。
そしてアルミンが吹っ切ったように叫ぶ。
「咆えろ『蛇尾丸』」
マジか⁉︎
まさか蛇尾丸かよ。
なんかBLEACHの師弟が揃ったな。
こっちでも師弟だが……
アルミンを筆頭に次々と憑き物が落ちたように戦う弟子達。
それで良い。
命は有限だ。
負けてられないな。
響転で一気に轢き殺して行く。
技とは呼べないがそれでも簡単に殺せる。
しかし、人間の進撃は急に止まった。
俺の胸から手が生えた。
そう見えただけで実際は手刀で貫かれた。
「あれ?」
思考が停止した。
後ろを見るとこれ以上絞れないほど引き締まった筋肉をした5m級が俺に攻撃していた。
こいつは桁が違う。
刀剣解放を止めて下がる。
その時無理矢理腕を引き抜いた所為で内臓が傷付いた。
痛手だ。
ただの負傷なら気にしないがブレードでも傷付かない俺の身体を違和感を感じさせずに貫いたのが問題だ。
こいつは硬度も筋力も技術もアルミン達以上だ。
瞬時に脳内麻薬を分泌させて頭を掴み一気に戦場から引き離す。
なんだこいつは?
「なんだお前は…… 本当に巨人か⁉︎」
何故だ……
何故俺はこの巨人を見て懐かしさを覚える?
いつだ?
いつこの巨人になれる人間を見た?
クソッ……
思い出せ。
こいつは…… この人は……
「強くなったなポウ」
あぁ……
そうだよな。
何を勘違いしていたんだろう。
誰が言った?
誰が発表した?
誰が疑うなと教えた?
あの日も……
最初に巨人が攻めて来た時も……
初めてエレンが巨人化した時も……
この人は居なかった。
「何故なんですか? グリシャさん」
「もう父さんとは呼ばないか……」
涙が流れる。
あの時救ってくれ……
俺に薬学を教えてくれた。
俺に再び家族を作ってくれた。
それなのにどうして?
「答えろ、グリシャ・イェーガー‼︎」
「最初は内地の連中に嫌気がさした。 救った命には治療費をケチられるどころか勝手に救ったから払う金は無いと言われ。 救えなかった家族からは罵倒された」
それは独白だが俺には懺悔に聞こえた。
行き場の無い怒りと無念を語った。
「仕事だから救ったのは否定しない。 だが、死ぬギリギリまで放置していざ死ぬのが確定してから呼び罵声を浴びせる。 そんな命を見ようとしない連中に憎しみを持った」
グリシャさんはそっと空を見上げ両手を広げ自らの救えなかった命を身体で表した。
その姿は酷く儚い。
吹けば消えてしまいそうだ。
救える命には限りがあるのは俺にもわかる。
反則的な回復能力があってもそれは公には出来ない。
公にしてしまえば内地や憲兵に飼い殺しにされる。
「そして私はユミルの民と会話する事が出来た。 家族には手を出さない約束をしてある契約をした」
確証は無いがなんとなく予想はついた。
恐らく……
「それが人間の巨大化と巨大化してしまった奴等の進化だ」
「人類を売ったのか?」
「あぁ…… そして私はもう引けなくなった。 子供を巨大化させ、ユミルの民を生贄にして人類を売った」
それがどれほどの苦悩かはわからない。
だが正しいとは言えない。
カルラさんは食われそうになった。
そしてそれは狙われていた事でもありそうだ。
「奴等は最初から裏切るつもりだったらしい。 それに気付いたのはカルラが食われそうになった時だよ」
「そして裏切った報復に巨人のトップを殺してその座に居座った」
「私は狂い始めた。 いや、もう狂っていたのかもしれない。 地下には巨大化を可能にした薬を大量に作った。 そしてそれを最終的には井戸に流し込み内地以外の全員を巨大化させるつもりだった」
「それが最初の巨人の侵攻後のアンタの行動か……」
グリシャさんも巨大化を解いた。
そして涙を流しながら絶叫した。
「あぁ、そうだ‼︎ 私は大罪人だ‼︎ 本当に守らなければならないものを蔑ろにして、狂った自分を正当化する為だけに行動した‼︎」
「その結果知りたくもなかった俺の実力を知った」
「もっと早くに気付くべきだったよ。 巨大化は人間の一つの可能性だって事を…… それでも引けなくなった私は巨人の研究に没頭したよ。 気付けたのは巨人は巨人を喰らう事で進化が早まる事だけだった」
生まれつき膨大な力を持った俺と知能を犠牲にした力を持った巨人の差か……
裏切って手に入れた知識がそれじゃあ虚しいよな。
それでも許せるわけじゃないが……
「だから、知能を持った巨人には同族を喰わせて強化した。 それでもポウに簡単に殺されたが…… それでも実力は見れた。 私は喰らい続けて並の巨人100体分の力を得た」
「そうかよ。 それで? 手に入ったのが力だけで何が変わった?」
「何も変わらなかったさ…… 狂った自分も家族を犠牲にした自分も人類を売った自分も。 それでも進み続ける‼︎ それが私に課せられた罪だ‼︎」
「じゃあ負ける訳にはいかないな。 誓ったんだ…… エレンの味方でい続けると…… アンタが切り捨てたカルラさんにな‼︎」
一気に卍解して睨み付ける。
グリシャさんも再び巨人になる。
傷は治せて居ないが時間がない。
エレン達が巨人を全滅させて近づいてくる前に終わらせる。
「私は裏切り、裏切った罪を終わらせる為に……」
「俺はカルラさんや弟子達にこれ以上の戦いをさせない為に……」
「お前は……」
「ここで……」
「「死ね‼︎」」
お互いに必殺をぶつけ合う。
気を抜けば死ぬ。
見逃せば死ぬ。
回復能力の差でこちらは腕か足を失えば負ける。
相手はうなじを守り抜けば勝ち。
ここでの攻め方は……
撹乱。
霊圧の糸を気付かれないように貼り付ける。
そして少し距離を取る。
「縛道の二十一、赤煙遁」
煙を目くらましにして後ろに回り込む。
ぶっつけ本番は怖いが賭けだ。
「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ…… 縛道の六十一、六杖光牢」
上手く縛ったつもりだったが右腕が自由なままだった。
そして右腕を振り、勢いよく殴られた。
これがもし、全身が自由で力が上手く伝えられていたら終わりだった。
これがもし、踏み込む事が出来て勢いが更にあったら終わりだった。
そう、残像に当たったんだ。
強風が吹き煙が晴れると上半身の無い残像と無傷の俺が居た。
詠唱だけで完全に位置を特定するのには少し時間がかかる。
その隙に詠唱を完成させつつ出血を止めて双児響転を使い腕を避けた。
これでチェックメイトだ。
「縛道の六十三、鎖条鎖縛。 更に縛道の七十九、九曜縛」
六杖光牢で詠唱したのは凡その位置を知らせる為。
油断してもらいたかった。
それが成功して心底ホッとしている。
「言い残す事は?」
「何故泣いている?」
「親殺しをする前に泣くなと言ってんのかよ」
こんな思いをする為に強くなったわけじゃない。
こんな思いをする為に家族になったわけじゃない。
数年前の家族で笑いあった日々を再び手に入れたいと心のどこかで願っていた。
それは叶わなくなった。
それどころかカルラさんに夫を殺した事を伝えなければならない。
憎まれるだろう。
人類を売ったとしても夫を殺した俺を恨む事でしか心を保てない筈だ。
俺はどこかで気楽に考えていた。
きっとなんとかなるって驕っていた。
間違いだ。
どうしようも出来ない。
気楽に鍛えて、気楽に弟子をとり、気楽に…… 巨人を殺し続けた。
密度の濃い数年だったが……
甘えていた。
弟子達は期待に応え続けて来たのに俺は教えて最終的には殺し合いを楽しみに生きていた。
責任を取ろうてしていなかった。
多分…… グリシャさんは別の道を進んだ俺だ。
弟子を鍛える事で逃げた俺とは別の俺なんだ。
初めて暴力を振るわれたあの日。
怖くてたまらなかった。
今までで出会った人が誰か一人でも欠けたらきっとグリシャさんと同じ道を進んだ。
認めよう。
俺の弱すぎる心を……
俺は殺されてから死が怖かった。
死ににくい身体を手に入れて強がっていたんだ。
「私の家の地下には巨大化の薬と巨大化を解除する薬がある。 残った巨人を救ってくれ」
「あぁ…… 約束するよ。 さよならだ‼︎」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら最後の一太刀を振り下ろした。
家族にしてくれてありがとう。
全部終わらせるからあの世で罪を終わらせて待っていてくれ。
俺の三人目の父よ。