巨人が可哀想になる物語   作:桜散る度に増える社畜

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若干胸糞要素あり



太陽拳‼︎

訓練所への入団の朝、俺たちは身体の調子を確認していた。

つまり、軽い組手である。

エレン達は準達人クラスまで強くなった。

苦手な部分がまだ妙手クラスな為達人を名乗れない。

 

「エレン、ちゃんと感じろ。 お前は勘だけでここまで来てしまったんだ。 相手の呼吸を感じ、自分の攻撃が当たると確信したら感情を爆発させるんだ」

 

「わかった。 行くぜ‼︎」

 

今更だがこいつらは本当に人間なんだろうか?

数年で準達人クラスなんて才能があったとしても普通は無理なんだが……

 

「ミカサ、重心が崩れた時の対処が遅い。 制空圏を上手く使え、最終的には皮一枚で躱して反撃するのがお前の戦闘スタイルだ」

 

「貴方を相手に無茶を言い過ぎ…… だけど、甘えてられない」

 

更に言うなら虚閃や虚弾を使い分けて、響転で奇襲も可能ってお前等それでも人間かよぉ‼︎

俺? 俺は破面ベースだからおかしくない。

 

「アルミンは今持っている技術を効率よく使え」

 

アルミンに関しては羨ましいとしか言えない。

ヤミー並みの虚弾使ったり双児響転とか教えてない事までやってくる。

正直アルミンに教える事はもうない。

一人の戦士として対応出来るレベルだ。

筋力以外は……

 

「今日こそポウの刀を出させるよ」

 

「昔のアルミンの面影が無い……」

 

凄く泣きたくなった。

自己流瞬閧で全員を戦闘不能にして訓練所へ向かった。

 

 

 

 

 

キースside

 

私は今日ほど教官になった事を嬉しく思った事はない。

口減らしの為に戦いに赴き、裏切られながらも戦い続けたポウという少年が訓練兵としてこの場に立っていた。

彼と幼なじみらしき三人は既に戦いの心構えが出来ているらしい。

何をすればあそこまで鍛えられるのか……

特に金髪の少年は他の二人より頭一つ能力が高いみたいだ。

周りの観察の仕方が他二人と全く違う。

彼は軍師タイプなんだろう。

黒髪の少女は感情の起伏が殆ど無い。

冷静に物事を進める遊撃タイプか……

そしてイェーガー……

筋肉の密度が他二人と比べ物にならない。

前衛で巨人のうなじを次々と削ぎ落とす姿が目に浮かぶ。

私も教官としてそれなりに優秀だと思っていたんだがな……

耄碌していたらしい。

今まで送り出した訓練兵の実力を対人限定なら超えている。

私も負けてられないな‼︎

 

「それでは入団の儀を始める‼︎」

 

side out

 

 

 

 

通過儀礼が終わり、顔合わせするようだ。

俺たちは卒業後の希望配属が倍率の少ない調査兵団だからそこまで周りを気にする事はないんだがアルミンが怖い。

全員を観察して伸ばすとしたらどことかブツブツ言ってる。

それは教官の仕事だと突っ込みたいが怖くて無理。

 

「本当の死にたがり屋らしいな‼︎」

 

「あん?」

 

誰だぁ?

揉めてんのは…… 馬?

それとエレンか。

 

「なんだよ、夢を語ったら笑うのがお前の挨拶の仕方かよ」

 

アカン、ぶち切れてらっしゃる。

まぁ、少ししたら止めるか。

 

「はん、巨人の子供と一緒にいるからそんな死にに行くような夢を見る……⁉︎」

 

三人が全員で馬を手刀で貫こうとするもんだから一発は身体で受けなきゃならない。

つまり、かなり痛い。

こいつら最近は岩をヒビを入れずに貫くだけのクンフーはあるからな。

他の奴らは俺らの動きが見えてなかったらしくポカンとしてる。

馬は三人の殺気の中心に入るため失心と同時にお漏らししている。

 

「ポウ⁉︎ なんで止めるんだよ⁉︎」

 

「入団初日から人殺しになる気なのか? お前等を鍛えたのは俺の為に暴力を振るう為じゃない。 夢を叶えて欲しいからだ」

 

と言うよりこの馬面の意見はここにいる訓練兵達の意見だと俺は思っている。

だって誰も話しかけてくれないし(震え声)

 

「それでも納得出来ないなら俺が相手になる。 お前たちの間違いを身体で教えてやる」

 

「ごめん…… 頭に血が上ってた」

 

「ごめんなさい……」

 

「わかった。 今はこれで収める」

 

訓練兵の皆さんごめんなさい。

こいつら最近暴走するんで多分またこういう機会があります。

とりあえず心の中で謝る。

 

 

 

 

訓練初日から軽いメニューだ。

俺たちにとってはだが……

ランニングが始まった瞬間4つの足跡がくっきりと残るほどのスタートをする。

他の奴らを周回遅れにしながらゴール。

通過儀礼で芋を食ってた女の子はまだ走らされてる。

そのうち死にそうな感じだ。

何故か俺の身体は燃費が良いのでパンでも差し入れてやるか。

あれで死んだら夢に出る。

お次は対人訓練。

アルミンと金髪の可愛い嬢ちゃんでやりあってるが手加減がまぁ酷い。

目隠し、耳栓である。

それでも余裕があるので怖い。

エレンはガタイの良いあんちゃん。

エレンは響転を使わなくてもかなり早いので大技が決まる、決まる。

あれは相手に同情する。

ミカサは目付きの悪いちっこい嬢ちゃん。

実力に差があれど目付きの悪いちっこい嬢ちゃんは食らいついてる。

そして俺の相手がノッポ。

特筆して秀でた才能はない。

いわゆる器用貧乏。

更にビビってるから実力の半分も出せてない。

 

「あー、名前なんだっけ?」

 

「えっ? ベルトルトだけど……」

 

「ちょっとで良いから本気出してくれよ。 別にとって食う訳じゃないんだし。 そんなガチガチに固まってたら変な癖がつくぞ」

 

とりあえず動けるようにフォローしながら組手を再開する。

軽く談笑しながらやったおかげかだいぶ動きが良くなった。

そして組み合わせ交換で教官の指示で相手になったのがアルミンと組んでた嬢ちゃん。

近くで見ると余計にちっこい。

俺が馬鹿でかいのもあるだろうが……

 

「クリスタ・レンズです。 よろしくお願いします」

 

・・・育てても怒られないよね?

小動物が強くなるってロマンやん?

俺の意味深な笑みを見て震えるクリスタ嬢ちゃん。

 

「ポウだ。 一つ質問だけど強くなりたい?」

 

「強くなったら誰が認めてくれますか?」

 

うん?

なんか訳あり?

 

「私は誰にも認めて貰えなくて、誰にも必要とされなかったんです」

 

ふむ、難しい状況だし俺にも似た経験があるな。

少し厳しい事を言う事になるかな……

 

「うんとさ、強いって事はそれなりに責任も発生する。 そしてそれを利用しようとする奴らも腐るほどいる」

 

異質なら異質なほどに悪意に巻き込まれる。

だから、俺は率先して動いた。

利用され始めたら其処からは地獄の始まりだ。

 

「だからこそ言えるのは前を向いて自信をつける為に強くなれ」

 

「自信……」

 

「それに、下ばっか見てると折角美人に産まれたのに勿体無いぜ」

 

ニシシと笑いながら茶化す。

真剣に悩んで、絶望を受け入れてなおも人の役に立ちたいと言えるのは強さなのをこの子は理解出来ていない。

それをわからせるためにエレン達より厳しくいく。

自作の木刀で訓練を始める頃にはクリスタ嬢ちゃんは笑っていた。

 

 

 

 

 

晩飯の時間になっても走らされてるサシャ嬢ちゃん。

自分の意思で走ってるなら青春で終わりだが、芋を食ってた罰だからな。

良くも悪くも男女平等のこの世界。

可哀想にな……

女が生きるにはこの世界は厳しい。

それでも産まれてしまったのだから仕方ない。

教官に言われた時間までまだ時間はあるが、強制的に終わらせるか。

これ以上走ったら壊れちまう。

 

「おい、もう止めとけ」

 

「で…… でも、まだ時間が……」

 

馬鹿なんだか真面目なんだか……

自分の身体くらい理解しとかないと……

 

「もうふらついてるし明日の訓練に影響が出る。 教官には俺からも口添えしてやるからとりあえず水を飲め」

 

頭を抑えつけて強制的に座らせ、水の入った瓶を渡す。

それをサシャ嬢ちゃんは一気に飲み干す勢いで飲んで行く。

 

「ほら、パン食えるか?」

 

「ありがとうござい……ま……す」

 

やっと俺の姿が視界に入ったのか絶句している。

困惑しているので助け舟を出す事にした。

 

「俺は教官の所に行って説明してくるから、ゆっくりとパンを食べて風呂に入って寝ろ」

 

怖いのか声も出さずに首を縦に降る。

そんなサシャ嬢ちゃんの様子に少し心を痛めながら教官の所に歩いて行った。

 

 

 

 

深夜、一人で槍の訓練をしていると何かを蹴るような音が聞こえた。

気配を消して見に行って見るとそこには目付きの悪いちっこい嬢ちゃんことアニ嬢ちゃんがいた。

自主訓練にしては何かおかしい。

何かから逃げるように布を巻き付けた木を蹴っている。

あの子も訳ありか?

自らを痛めつけて何かを忘れる。

当然良い傾向では無い。

無いが…… 俺には止める権利はない。

サシャ嬢ちゃんの場合は罰則であり、限界がわからない初日目と言うのがあったから止めた。

しかし、自主的にとなると話は変わる。

すべては本人もしくは師の責任能力に関わる。

まぁ、少し話してみるか。

 

「こんな夜更けに精が出てるみたいだね」

 

「アンタは…… ポウだったね」

 

値踏みする様な視線。

槍に違和感を持つ視線。

そして既視感を持つ視線。

アニ嬢ちゃんに見極められるほど俺は甘くはない。

だが、何故既視感を持つんだ?

 

「アンタがあの三人を育てたんだって?」

 

「育てたってのはちょいと誇張してるな。 俺はやり方を教えただけだ」

 

それは本心だ。

育てたのはカルラさんであり、俺ではない。

 

「まぁ、それはアンタ次第だから良いんだけど一つ質問。 どうやったらあそこまで強くなれるんだい?」

 

「それは誰を基準にして言ってるんだ? それによって答えが変わる」

 

当たり前だが、人には向き不向きがある。

特にアルミンとエレンはきっかけさえあれば強くなるタイプだ。

アルミンを目指したいと言われたら無理と言うし、エレンかミカサを目指したいと言われたらそれ相応のメニューを作れば環境次第でこの子は化けるだろう。

この子の筋肉の発達具合を見る限り空手、ムエタイ、シラット、ルチャが合ってるだろう。

アルミンは我流だ。

 

「じゃあミカサって子かな。 同じ女だし」

 

「基礎を固めてから技を覚えるが正しいな。 アニ嬢ちゃんの場合まだ、基礎の筋肉が足りてない。 それとアニ嬢ちゃんはまだ女の子なんだから自分を女って言うな」

 

18才未満は女の子。

これは大事。

リリカルな魔砲少女は19才まで少女と言っていたが俺は認めない。

 

「変な所にこだわるね…… それにしても噂とだいぶ違うね」

 

「噂?」

 

何ぞそれ?

聞いた事無いんだけど。

 

「巨人の子供は悪に染まって残虐非道を繰り返してるってね。 でも、アンタはそんな人間じゃないみたいだ」

 

「確かにそこまで酷くは無いんだがな……」

 

言えない。

修行風景を見られてたとしたら噂が正しいとは言えない。

なんでだろ凄く罪悪感が沸く。

 

「アタシは戦士にならなきゃいけないのにね……」

 

戦士?

話が見えんな。

とりあえず目標見せれば楽になるのかね?

それなら技を一つ見せるか。

 

「よし、技を見せてやる」

 

「アタシにも出来る技にして欲しいね」

 

「本人の努力次第だからそんなもんは知らん」

 

話をして少しは楽になったのか笑いながら場所を移動する。

簡易的なサンドバッグを作り不動砂塵爆を見せる。

ポカンとしたあと出来るかと蹴りを貰ったでござる。




ジャンぇ……
すまんな、悪者が必要なんだよ……
補足説明
ポウが嬢ちゃんと呼ぶのは生前を含めると40手前だからです。
故に同年代は皆子供みたいなもの。
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