ECOASが出来上がるまでのお話(予定)
某ガンダム娼館ネタでお大盛り上がりのTLを見ていたら、娼館から身請けした将校の話を練っていたのを思い出したので、ついでに落とすだけ落とします。

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なお連載するかは気分と反応次第。


0079年8月 ルナツー近傍宙域

 待機状態のコクピット内は、メイン、サブモニターともに輝度を落としているために薄暗かった。

 

 もとよりコクピットとはそういうものだが、人一人収めるのがようやくの空間に操作系を詰め込んでいるため、居住性は最底よりは少しマシという程度。そこに数時間も詰め込まれ、ただ待つというのは、気分のいいものではない。

 

 もちろん彼は軍人であり、待機時間との付き合い方も十二分に学んでいるが、もとは歩兵として教育を受け、情報部としての勤務が長かった身にとり、この息苦しさに似た不快感はなかなか堪える。

 

 ルーシャス・シンクレア大尉は、自由に足を伸ばすことも叶わぬ鉄の棺桶の中で身動ぎし、新設の部隊用にわざわざあつらえたのだという、特殊素材を織り込んだノーマルスーツが肌に張り付く感覚に顔をしかめた。

 

 運用用途が特殊な新設部隊。その運用想定上、身にまとったノーマルスーツの仕様は理解できるものだったが、インナーの吸水/処理機構の刷新による着用感の変化はいただけな い。

 

 が、しかし、巨大な組織である地球連邦軍であっても、緒戦から続くジリ貧な戦局に押し込まれて疲弊仕切った今現在。新規かつ専用の装備品を供与される贅沢な身の上だけは認めねばならない。

 

「わがままは言えんな」

 

 誰に宛てるでも無くつぶやき、指先でほとんど新品同様のコンソールを撫でた。ついこの間まで使用していた鹵獲品のザクIとは違う、完全に連邦製の操作系統。

 

 先行量産機の名目で製造された試験機体、RGM-79Eのコクピットは、少なくとも男の持つちゃちな自尊心を満たす程度の役割は果たしてくれていた。

 

 

 最新鋭のおべべの試験運用を任される程度には、新設される部隊は期待されているということか。もちろん、緒戦の圧倒的な性能をまざまざと見せつけられてなお、軍首脳の一 部は未だにMSに懐疑的であることもルーシャスは知っていた。

 

 であるからして、むしろ試験運用は期待の真逆である可能性も――。

 

  小さな電子音が無意味な思考を断ち切った。 サブモニターに表示されたタイマーが予想される遭遇までの残り時間が僅かであることを示していた。ルーシャスは指先でコンソールに起動キーを入力し、機体を待機状態からシフトさせる。

 

 機体にエネルギーが通い、小さな振動がシートを揺らした。待機状態で低輝度モードに落とし込まれていたモニター類が一斉に立ち上がり、星々が散らばる漆黒を背景にシステ ムチェックが始まる。

 

 出撃前に一度行ったシークエンス。不要部分を省き、最低限の項目だけを走らせる。火 器管制システム、機体制御系、動力伝達問題なし。

 

 サブモニターにワイヤーフレームで表示された機体が映り込み、チェックを完了した部分からグリーンの表示が踊りだす。 装備した火器類との接続も良好、センサー類問題なく稼働中。出力も許容値で安定。

 

チェック項目を目視で確認する規定手順を終え、診断プログラムを終了させた。 デジタル表示の時計が封止終了まで1分を切った事実を示すのを見やり、ルーシャスはモビルスーツと呼ばれる、巨大なヒトガタの中で目を閉じた。

 

 わずか数ヶ月前、自分はこのモビルスーツによって連邦宇宙軍の主力艦隊が蹂躙されるのを見た。

 

 コロニーの落下阻止失敗、宇宙軍総戦力の過半を喪失する惨事。あのころは、まさか自分がこのモビルスーツのパイロットになるなどとは思いもしなかった。

 

「宇宙軍総司令部付きの情報将校が、いまやパイロット、か」

 

自嘲の笑みを刻み、予定時間を示す電子音に目を開く。

 

「カトラス01からカトラス各機」

 

 ルーシャスは自身の感傷に付き合うことはせず、通信回線を開けて呼びかけた。あらゆ る電磁波を妨害するミノフスキー粒子が戦場に持ち込まれ、戦闘の様相は一変したが、今この宙域の濃度は戦闘濃度には達していない。

 

 よって、通常無線でも至近距離なら交信可能だが、通信は機体同士を接続するケーブル を介していた。秘匿回線であっても、電波を出せば痕跡を察知される可能性がある。

 

『カトラス02、聞こえている』

 

 副長に続き、部下の応答が帰ってくる。ルーシャスはそれよりも、メインモニターにちらつき始めた小さく白い光源へ目を向けた。その光は一定の方向へと移動している。ソフ トウエアを起動し、ベクトル分析にかけると、進行方向と概算速力が表示される。

 

 ルナツー宙域から離脱しつつあるそれ。速度とノズル光の解析結果は、ジオンが誇る傑作モビルスーツ、MS-06F の可能性が高いと告げている。当然、敵味方識別装置に情報は上がらない。

 

「進路予測どおりだ。機数4、方位243から接近」

 

 パトロールを兼ねた実機演習からの帰途、ルナツー宙域に偵察に入ったザク2個小隊と の偶発戦闘の報告を聞いたのが少し前のこと。6機中2機は撃墜したものの、情報を収集し終えた4機が離脱したそうだ。

 

 結果、実弾を装備してパトロールに出ていたこちらに伏撃の任が与えられたというわけだ。

 

 同行していた補給艇はすでに制宙戦闘機の護衛を受けて離脱しており、宙域には自分 たちしか残っていない。

 

『こちらも確認した。15秒で向こうの索敵距離に入る。プランは』

「伝達通りやれ、直下に到達と同時に偽装解除。詰めて叩く」

 

 撃ち漏らすなよ、とささやきながら、ルーシャスは RGM-79E の安全装置を解除した。 武装はブルパップマシンガンと最近試作されたシールド一枚。近接用武装は過去に撃破したザクから奪い取ったヒートホークのみ。しかも規格の違いから、ただの打撃武器にしかならない。

 

 4機で編隊を組んだザクのノズル光が大きくなり、更に距離が縮まる。小隕石やデブリに機体を括り付け、偽装用のネットで覆い隠した機体が敵に発見される可能性は低いが、 緊張が全身を力ませるのを感じた

 

 ザクの編隊はまっすぐこちらの足元――宇宙においてその表現が正しければ、だが――へと突っ込んでくる。作戦目標を達した以上、母艦との合流が最優先。先を急ぐ彼らが直下へ達する寸前、ルーシャスは通信を発した。

 

「やるぞ」

 

 コンソールで偽装網の爆薬ボルトを起爆、弾け飛んだネットをよそに、フットペダルと操縦桿を操作して機体方向をザク編隊へ。両脚で身を寄せていた隕石をけとばすと同時にペダルを踏み込む。

 

 つい先日オーバーホールしたばかりの機体、スラスターの吹き上がりは上々。自動で切断された有線ケーブルを置き去りにして、先行量産型の機体を一気に直下の敵編隊頭上へと突っ込ませる。

 

 連邦の追撃を振り切り、ようやくひと心地つけたところだったのだろうか。ザクの反応は僅かに遅いように思えた。それを冷静に読み取りはしても意に介する理由もなく、ルーシャスは直上の反応に頭部を向けたザクの一機めがけ、操縦桿のトリガーを絞った。

 

 先行量産型ジムの手にしたブルパップマシンガンが吠える。腕部のショックアブソーバを挟んでも減じきれないリコイルがコクピットを揺らし、徹甲榴弾の火線がザクを捉えた。

 

 漆黒の宇宙空間を背景に着弾の火花が散り、頭部の付け根から胴体へめり込んだ弾頭が炸裂する。それで撃墜とは判断せず、速力を維持したまま5発のバーストを更に2セットぶち込む頃には、残った3機のザクがこちらへと砲口を据えていた。

 

 が、こちらの合図と同時に飛び出した部下が火線を張れば、彼らにルーシャスを迎撃する余裕はない。慌てて散開したモスグリーンの巨人の脇を高速でフライパス。

 

 すれ違いざま、動力炉に重大な損害を負ったらしい一機目が眩い爆光とともに弾け飛んだ。映像解析によって生み出される爆音を聞きつつ、ジムの脚を振って質量移動、機体を反転させながらスラスター出力を最大に押し上げる。

 

 宇宙空間に砲撃の曳光とスラスターの白い尾が伸びる。一機撃破、形勢は4対3でこちらが有利。しかし油断はできない。モビルスーツ運用において、連邦とジオンには大きなノウハウ蓄積の差がある。

 

『ちょこまかとよく動く!』

 

 ノイズ混じりの副長――ハンス・ローウェルの罵りが飛び込んできた。戦闘地域ではなく、艦艇も居ないこの宙域。部下の独白が次々とヘルメットのスピーカーから流れる。

 

 最高速度での侵入、撃破後即反転。航空機には不可能なクイックターンを決めた身体を襲うGに奥歯を噛み締めて耐えつつ、ルーシャスは残弾半分を割ったブルパップマシンガンを、僚機に襲いかかる2機のザクの片割れへ据えた。

 

 レーザーによるロックオンを伴わない、完全にマニュアル操作の照準。警告音もなしに襲いかかった90ミリ徹甲榴弾の雨に膝をもがれ、ザクがよろめきつつ機体を左右に振って高速機動。

 

 そのまま距離を取り、態勢を立て直そうとしているようだ。

 

『サンキュ!』

「手負いの相手をしろ」

 

 ハンスの声に無機的な声で応じ、ルーシャスは即反転による二度目の奇襲をかけたこちらへ、120ミリの砲口を据えたザクに意識を向けた。ハンスは指示通り、脚をもがれた一機へと追撃をかける。

 

 残りの2機は打ち合わせ通り、残るザクに2対1で当たって堅実な戦いを演じていた。それを冷静に観察する余裕もなく、ザクの120ミリが火を吹く。シールドでそれをいなし、姿勢制御用推進機を点火、機体を横に流してデブリの陰に飛び込む。

 

 何時沈んだのかもわからぬサラミスの残骸の一部、ザクの火線がこちらを追い、装甲板の亡骸をぶち抜いた。ルーシャスはブルパップマシンガンの弾倉を入れ替え、こちらを撃破せんと上方へ回り込んだザクの火線から逃れるべく、デブリを蹴飛ばす。

 

 こちらを捉えそこねた砲弾が尾を引き、撃破しそこねたと判断したザクが機体を小刻みに振り、螺旋を描くように回転しながら迫る。追い打ちの火線をシールドと機動でそらし、更に迫るザクが右手にマシンガンを手にしたまま、もう片手でヒートホークを抜くのを見た。

 

 動きが素早く判断も早い。ベテランかと判ずる間に、距離が詰まる。パイロット同士の力量差が最も顕著に出るのは至近距離での戦いだ。それくらいのことはルーシャスにも分かっているが、まだ残弾のあるザクから無理に距離を取れば、そうかからずこのシールドが限界を迎える。

 

 判断は一瞬、行動はコンマ一秒。操縦桿を操り、フットペダルを小刻みに操作して後退を演じる。距離を取ろうとしたこちらにザクが120ミリを据えた瞬間、ルーシャスはジムの脚を丸め、スラスター噴射と同時にキー入力でパージしたシールドを蹴飛ばした。

 

 こちらへ吶喊するザクは突然蹴り飛ばされたシールドに虚を突かれ、飛び込んできたそれにマシンガンを弾かれる。その間に脚部スラスターに推力を回し、機体を縦に一回転させたルーシャスは、火器を弾かれ、叩きつけられた質量に勢いを殺されたザクへ照準。

 

 5発に設定されたブルパップマシンガンが2度火を吹き、火線の束がザクの胴体を捉える。徹甲榴弾が装甲を食い破り、内で炸裂すると、ザクは着弾で踊るそのボディを沈黙させた。

 

「残敵報告」

 

 これで2機目、内心につぶやきつつモニターに視線を走らせる。すでに火線も爆光も見えない。味方がやられたか、敵を全滅させたか。万が一に備え、スラスターで機体を流す。

 

『03、04ともに健在。撃破1』

『02も撃破1』

「こちら撃破2。片付いたな」

『10機撃墜、おめでとう、大尉』

 

 レーダーによれば周辺宙域にアンノウンは見られず。しかし周辺のミノフスキー濃度が上昇しつつある。回収に来た母艦が接近しつつある可能性があった。その場合、戦闘も察知されている可能性がある。

 

『ミノフスキー濃度上昇、回収が来たかもしれんな。どうする』

「どうもこうもない」

 

 ルーシャスは端的に応じ、ザクに蹴飛ばした盾を見た。慣性によって流されていくそれは、すでにほとんど用をなさないほどに破損している。

 

「こちらの任務は、開発機の情報を持ち帰られるのを阻止することだ。向こうも威力偵察失敗とみれば深追いはすまいさ」

 

 帰るぞと吹き込む。了解と応じた部下の声は、ミノフスキー粒子が濃度を増したことによってノイズ混じりになりつつあった。

 

 散布下であっても近距離の交信は可能だが、連携が取れるとしても、軽武装の4機で戦闘艦艇とやり合う気はない。母艦を護衛するためのモビルスーツの存在は十分に考えられる。

 

 航行管制装置が、広大な宇宙に浮かぶ天体の位置をカメラで読み解き、ルナツーへの帰途を示す。ルーシャスはそれに従ってジムを移動させながら、モニターの端、複雑な模様を浮かべた惑星へ目を向けた。

 

 地球、自分の生まれた星。海の青、大地の色、それを上塗りする雲の白さ。あと数日で試験機体の運用任務が終わり、一度あそこへ呼び出されることとなる。

 

 コロニーが落ちて以来、降り立つ機会のなかった生まれ故郷は、いまどうなっているのか。戦闘が終わり、アドレナリンの抜けた脳みそが生み出す感傷に身を委ね、ルーシャスは母港へと機を飛ばす。

 

 時は宇宙世紀0079、8月。

 

 後に勇名を馳せるガンダムが、運命のパイロットに出会う以前のことである。

 




ルーシャス:
連邦宇宙軍情報部
娼館から身請けした妻を持つ(これのおかげで思い出した)

コロニー落下阻止作戦参加

レビル救出の立案と実行(部隊は壊滅)

試験創設部隊指揮官を任じられパイロット教育を受ける

ざっくり経歴はこんな感じです。

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