抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
AFOが土を払いながら立ち上がる。流石に人間大のマキアの力では大したダメージにはならなかったようだ。
AFO
「彼女の"変身"は"個性"までは再現できないはず……」
精
「再三"OFA"に苦しめられた手前が忘れるとはな。しょうがねえから種明かししてやるぜ」
時は一昨日、九玉さんに秘密の作戦を進めたいと伝えていた時に遡る。
九玉
「我はこの事態に乗じてマキアに奴を探し当てようとさせていたが、お前は何か考えていたか?」
精
「奇遇ですね。俺も同じこと考えていました」
世界の全ての目というのはAFOの目も含めてだ。ここに至るまで痕跡をほとんど残さなかったAFOが、同盟を結ぶというだけで出てくるとは思えない。むしろ同盟による共同捜索網を凌ぐため、より人目のつかない所に行くだろう。そんなAFOを探し当てれる手段は一つしかない。蛇腔病院と群訝山荘の約80㎞の距離でも、匂いだけで死柄木の下に向かったギガントマキアだ。
九玉
「トゥワイスに頼んで死柄木を生み出して指示させれば────」
精
「それだとマキアは動かないと思います。病院山荘決戦の時の死柄木に従っているはずですから」
俺の想像の域を出ないが、マキアは九玉さんとAFOが混在していた時の死柄木を知っているはずだ。アレに従っているのだとしたら、ただの死柄木にはもう従わないだろう。せめてAFOが入っていないと話にならない。
九玉
「ではどうするのだ? マキアでないと探せないのだぞ?」
精
「俺がマキアになります。トガちゃんから"変身"を引き継いだので出来るはずです。今からそちらに向かいますね」
言うや否やでアジトに到着する。さっき大層なことを言って別れたトガちゃんと目が合ってしまった。
精
「……見なかったことにしようか」
トガちゃん
「……私は何も見ていませんし何も聞いていません」
九玉
「やっている場合か。早くマキアの血を飲んで奴の居場所を────」
トガちゃん
「私の"変身"だと"個性"までは再現できませんよ?」
何とトガちゃんの"変身"で再現できるのは姿だけだという。言われてみれば、"個性"まで再現できるなら九玉さんになって今よりすごい蹂躙が出来ているはずだ。
九玉
「……どうするか?」
精
「諦めるのはまだ早いですよ。なにせ、"OFA"ですからね」
"OFA"継承者の"個性"は代を重ねるごとに強力になっていく。
精
「変身するって言うと……礼先輩の好きなアレっぽくやりますか。
腰に巻いているエアベルトに手を当てて念じる。すると俺の体は見る見るうちにマキアになった。
マキア
「すっげえ! マジで変身じゃん!」
九玉
「驚くのはいいが"個性"の方はどうだ?」
マキアは"犬"という"個性"によって匂いを感知しているらしい。異形系の一種らしいのでパッシブスキルが如く発動しているはずだ。鼻を鳴らし嗅覚を鋭くさせる────俺はある匂いを感知し廃工場を歩いていく。
九玉
「何を追っているのだ?」
マキア
「俺の予想が合っていれば……スンスン……この引き出しだな」
引き出しを開けると小さな赤いリボンが可愛らしい白の下着を見つけた。
九玉
「このサイズは我やマグネではないな……」
マキア
「トガちゃんのに決まってるじゃないですか。トガちゃんの血っぽい甘い匂いがしっかりと感じれました」
トガちゃん
「何してるんですか」
いつの間にか後ろにいたトガちゃんに頭を叩かれた。"危機感知"が作動しなかったので、変身中は変身した人物の"個性"しか使えないようだ。
トガちゃん
「いや、冷静に分析しないでください」
マキア
「ゴメンゴメン。悪気はあったけど匂いで探すのにいい練習台かなって」
九玉
「しっかり煮沸して洗っていたのだが匂いが残ってしまっていたか。もう少し洗濯の腕を上げねばな」
マキア
「服を長年着続けると洗っても人の匂いが残ったりするんですよ。少なくともこのパンツは1年は履き続けたものだね」
トガちゃん
「気持ち悪いです。しかもしっかり当ててるからなおさらに気持ち悪いです。もしかして匂いフェチって奴ですか?」
マキア
「それは俺の妹。俺のフェチは足裏と陰毛だよ」
トガちゃんが九玉さんの後ろに隠れてドン引きしている。この流れでトガちゃんが1日風呂キャンしていることを言ったら絶交されそうなので黙っておこう。
マキア
「ともかく"個性"も再現できているみたいです。死柄木の匂いを嗅げば追うこともできると思います」
九玉
「分かった。後でトゥワイスに頼んでおこう。トガちゃん、マキアの血をシリンジに入れて渡してくれないか?」
トガちゃん
「了解です。悪用厳禁ですよ」
トガちゃんからマキアの血を受け取り、トゥワイスさんが生み出した死柄木の匂いを覚えた。これで準備万端だ。後は同盟を結ぶ日になるのを待ち、AFOが人目のない所に移動するのを待てばいい。
経緯を聞いたAFOが手を叩いて笑っている。してやられたと言った所なのか、それとも"変身"が解けて裸になったことに笑っているのか。なんにせよ奴には笑っていられる余裕があるということだ。
AFO
「君がこの世界の人間じゃないというのは聞いていたけど、まさかここまで常識はずれなことをしてくるとはね。面白くて仕方がないよ」
精
「育ってきた環境が違うから常識も違うだろ。手前の常識で俺を判断してほしくないな」
AFO
「これは失礼。一度は君としっかりと話してみたかったんだ」
精
「俺が手前と話す機会はここしかないか。少しぐらいなら話してやってもいいぜ」
不謹慎だというのは重々承知しているが、ラスボス戦前の会話というのはテンションが上がる。まして異世界の魔王だ、二度と無いような対談が繰り広げられるだろう。
AFO
「君から見て僕は
精
「雄英で習った限りだと敵だが、
AFO
「その理由を聞いてもいいかな?」
精
「手前は手前の『やりたいようにやれ』をやっているだけだ。犯罪者ではあるだろうが、敵であるとまでは言えないな」
俺の発言を聞いてAFOは満足そうに笑っている。
AFO
「面白い答えだね。次の質問だ。君にとってこの世界は正しい世界かい?」
精
「不適切問題だな。そもそも正しい世界の定義が定まっていない。俺の故郷を基準にするのか、かつて居た監獄を基準にするのか、お前が定義を説明するのか、さあどれだ?」
AFO
「なるほどそう来たか。それじゃあ、君は自分ならこの世界をよりよくできると思っているかい?」
精
「思っているね。まずドスケベ条例を作って、"個性"によるプレイを開発して、日本を新時代のドスケベ大国にしてやるね」
今度はくだらなそうにフッと笑われた。
AFO
「僕と協力したら君の夢は叶うかもしれないね。どうだい、今から僕と同盟でも結ばないかい?」
精
「手前には黒くて太くておっきな
AFO
「それは残念だ。最後の質問にしよう。君は
この世界に来て幾度となく悩まされた問題だ。しかし、この世界で生きていくうちに答えを見つけた。
精
「ありきたりな言葉になるが……ヒーローってのは目指してなるものじゃなくて、いつの間にかなってるものなんだ。俺は自分の事をヒーローだと言うつもりはないが、
以前、セレンとレイラからお父さんは我が家のヒーローだと言われて泣き崩れたことがある。礼が心配して点滴を持ってくるほどの号泣だった。だからといって俺はヒーローなんだと胸を張ることはなかった。結局の所、
精
「別に職業としてのヒーローを目指すことを悪く言うつもりはないが……アレは本来の
AFO
「やっぱり君との話は面白いね。今度は僕が話す番だ」
AFOが自身の過去を語りだした。"個性"が異能と呼ばれている時代、奴は弟が読んでいたコミックに影響を受けて"皆が自分の為だけに存在する世界"を夢見た。それと同時に唯一の家族であった弟を自分のものにしたかった。そのためにありとあらゆる行動を重ねていった結果がAFOという巨悪だと言う。
AFO
「僕の話を聞いた感想を聞かせて欲しいな」
精
「力を持って生まれた奴が壮大な夢を見て頑張っていただけだ、としか思えないな。俺だって力を持って生まれていたらそれなりの夢を見て、それなりの努力をしただろうからな。手前の考えややってきたことが間違っているとは思えないが──────俺の『やりたいようにやれ』を阻むって言うなら戦うしかないな」
俺はAFOに向けてファイティングポーズをとる。
精
「もしもボタン一つ掛け違えていたら、手前と敵対しないどころか協力していた可能性もあっただろうな」
AFO
「それは僕も思うよ。僕と君は本質的な部分が似ているからね。それに君の描く理想の世界でも、僕が魔王になる事は出来そうだからね」
精
「前から思っていたんだが、魔王を倒すのはヒーローというよりも勇者じゃないか?」
AFO
「ジェネレーションギャップって奴さ。それに魔王と勇者も敵とヒーローの関係性と同じだろう?」
精
「後半は納得いくが前半が度し難いな。手前は幾つだよ? 俺は40手前だが、100とか200とかだろ?」
AFO
「何せ黎明期から生きているからね。きっと"個性"の歴史の講師として活躍できると思うよ」
AFOが両手を広げて高笑いをする。そして"危機感知"が作動する。脳無に近い超人的身体能力、幾つも奪い植え付けられた"個性"、何より自身の夢に向かう確固たる意志、どれをとっても今までのどんな相手よりも手強いものになるだろう。
精
「言っておくが俺の目的は死柄木を救ける事だ。そのためには
AFO
「それを言うなら僕の目的は魔王になる事だ。そのためには君を倒さないといけない。命乞いをすれば命だけは助けてあげるよ」
精
「トガちゃんに"変身"を返さなきゃいけないんでね。"OFA"も見逃してくれると嬉しいんだけど?」
AFO
「色々余計なものがついているけど、元々は僕が与一に与えたものだから返してもらうよ」
勝手に与えておいて勝手に奪うとは大層なことをするものだ。もっとも、平行世界の俺は妹にそれをやっていたから失跡も何も出来たものではないが。
精
「んじゃ、最終決戦らしく口上を言わせてもらうぜ──────切って結ぶ蒼碧の檻を打ち破れ!!! 睦言に狂乱する悪鬼を噛み砕け!!! 礼賛以って三途の川を渡り世界を糺せ!!! 精卵交わりて生まれる命の限りを尽くせ!!! 俺は土口精!!! 『金色の狂犬』だ!!!」
キャシー
「ミスター土口、十代目は私じゃないのかい?」
精
「アレは継承に関してのテストなのでノーカウントということで……」
キャシー
「キャスリーン・ベイトのトで十代目の条件は満たしているんだがな」
精
「因みに俺の十一代目要素は土口の土を分解して十一だそうだ。これを見越して俺の名前は土口精になったのかもな」
神剣
「違いますよ?土口くんの名前の本当の由来は作者の『抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ?』のグランドルートで判明します。よろしければご覧ください」
キャシー
「清々しい程のダイレクトマーケティングだな」