抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
口上を言い終わると同時に"変速・
精
「いくら人目のつかない所とはいえ、"崩壊"させていい訳じゃないんでな!」
AFO
「空中戦を仕掛けるのは良い判断だね。もっとも、良い判断をし続ければ勝てるとは限らないけどね」
AFOが空中で衝撃波を放ち受け身を取った。元よりキャシーと互角以上の空中戦を繰り広げていたから、地上だろうと空中だろうと戦いには影響がないだろう。
AFO
「九玉くんの"個性"は無くなったけど、
奴の手から指が膨れ上がるように枝分かれしながら生えてきた。手に指が生えているのはよくある事だろと言われそうだが、そこからさらに生えてくるのは普通では考えられない事だろう。
AFO
「これは成長、ただの肉体、髪が伸びることと同じ、爪が伸びることと同じ……深化していく"個性"に身体を対応させるべく人が獲得した新たな形、超人社会の行きつく先、殻木の提唱した特異点……蓋をし、来たるべき未来から目を背けてきた君には分からないさ」
精
「名実ともに手マンになっちまったな」
AFOが苛立ったように舌打ちをする。自分の発言の真意が俺に届いていないと受け取られたからだろうか。ただ、俺は余裕を装っているだけでバッチリ届いている。アレは"個性"ではなく突然変異であり、"個性"をよりうまく扱うための身体変化であり、あの手の全てで"崩壊"と"AFO"を使用できるということだ。
精
「お前が俺の故郷に来たらチンコいっぱい生えんのかな?」
AFO
「随分と余裕そうじゃないか! この手から逃れられると思っているのかい!?」
上から振り下ろされる手を横に飛んで回避する。空を切った手が地面に触れることはなかったが、その衝撃波で木々が舞い上がる。これを利用しない手はない。打ち上がった木々を黒鞭で掴み、AFOに向けて投げつける。
精
「デカい手を振ればその隙もデカくなるってもんよ。シオマネキ見たことないか? 俺の故郷じゃ潮を招くで縁起がいいんだ」
投げられた木はそのままAFOに当たり、文字通り木っ端みじんになった。それほどの威力で投げたにもかかわらず、AFOは何も意に介さず手を振り上げてきた。再び横に飛んで避けて────枝分かれした手から放たれた衝撃波が直撃した。
AFO
「手数は多い方が便利なんだよ。僕という人間は一つのゴールに対して幾つものルートを予め作っておく。厳密にはいざという時に使えるルートを何年も……何十年も前から作っておいて、そいつをゴールに結びつけるのさ」
精
「手数は多くても友達はいなかったみたいだな。今この場に助けに来る奴がいないのが動かぬ証拠だ」
AFO
「友だち……いるもん……みっくんとともちゃんが転ちゃんは優しいからって言ってくれたもん!! モンちゃんだって僕としたがるもん!! 僕ちゃんと友達いるもん!!」
AFOが急にガキっぽくなってキレだした。この言い方はAFOでも死柄木でもないが、一体誰のものなのだろう。
AFO
「……それを言うなら君にも友達はいないみたいだね。誰も助けに来てくれてないじゃないか」
精
「当たり前だろ。来るなって言ってるんだからな」
話は昨日に遡る。AFOを追う作戦は秘密裏に進めるということになっているが、1-Aの皆や先生達には確実にバレるだろう。なので寮に皆を集めて伝えた。案の定非難轟々だったが、爆豪が一喝して場を仕切り俺に詰め寄った。
爆豪
「またてめェ一人で何かしようとしてやがったか。何で俺達を参加させないか教えろ」
精
「この作戦で重要なのは人目につかず遂行することだ。関わる人数が多ければ多い程同盟から人の目を離しちまう。あの同盟は民衆を納得させる仕掛けが幾つも用意されているが、どれもこれもリアルタイムで見てもらうからこそ意味があるんだ」
生の人間の発言程人の心を動かす物は無いが、媒体を介すにつれてその力は薄れていく。かつて故郷を救った文乃ちゃんの発言も、ありのままをライブ配信で届けたからこそ故郷を救えた。逆に編集や偏見報道を重ねた平行世界の秋野ちゃんの報道は一時的に大衆を騙すことは出来たが、最終的には防人老人による印象操作によって無き物になった。
精
「集まった目線を逸らさないためにAFOを人目のつかない所に誘う、そして最小限の人数で奴を倒し死柄木を救ける、それがこのこの同盟における俺の仕事だ」
俺の作戦を聞いて皆は何も言えなくなっていた。俺を思って何かをしたらそれが俺の邪魔になってしまう。そのジレンマに苛まれているのだろう。その沈黙を打ち破るように爆豪が俺の肩に手を置いた。
爆豪
「……同盟締結とAFO討伐を同時に達成するにはその方法しかねェんだな?」
精
「俺の中ではその結論に至った。代案や改良案があるなら提示してほしいぐらいだ」
爆豪
「……失敗したら殺す」
精
「AFOの前でしくじったら死ぬだろうよ。お前に殺されるまでもないわ」
俺と爆豪の物騒なやりとりを聞いて澤先が盛大にため息をつく。
澤先
「お前が何をしようと
精
「大丈夫です。むしろ来るなと頼んでいるんだから来ないでください。これは"OFA"を完遂するためであり、俺がこの世界での心残りを消すためでもあるんです」
爆豪
「どっちもてめェの問題じゃねェかよ」
精
「当たり前だろ。
平行世界どころか異世界に飛ばされようと、そこでとんでもない力を手に入れようと、何があろうと俺は土口精であり土口精でしかない。だから新たな同盟を結んでこの世界を変えたい。だから土口精として"OFA"と"AFO"の因縁に決着をつけたい。
精
「だから…………
俺は皆に向けて頭を下げた。ヒーローに向かって助けるなと頼むのは酷な物だろう。しかし、そうしなければできない事なのだ。
梅雨ちゃん
「出久ちゃんは相変わらずね。私達がどんな思いでいるかも知らないで、出久ちゃんの都合で勝手に進んでいって、本当に困った人だわ」
相変わらずオブラート無しで安息香酸デナトニウムを飲まされたような梅雨ちゃんのお言葉だ。
梅雨ちゃん
「だから出久ちゃんを応援したくなっちゃうのかしら」
三奈ちゃん
「このメチャクチャだけど、何とかしちゃう感じが安心するよね」
耳郎ちゃん
「それで何とかしちゃうことが多いから質が悪いっていうか」
透ちゃん
「きっと元の世界でもハチャメチャやって問題解決してきたんだろうね」
百ちゃん
「無理が通れば道理が引っ込むが具現化したようなお方ですものね」
褒められているのか呆れられているのかなんとも言えない発言だ。
お茶子ちゃん
「だから……私たち応援するよ!! だって、『頑張れ!!』って感じのデクだもん!!」
精
「俺、この戦いが終わったらお茶子ちゃんと結婚するんだ」
一同
「「「死亡フラグっぽいこと言うなよ!!!」」」
真剣な雰囲気はどこへやら、皆が笑いながら俺を送り出してくれた。俺はこの笑顔を守りたい。心の底からそう思った。
精
「手前には来るなと言って本当に来ないような友達がいるかAFO!?」
AFO
「いるもん!! いるったらいるもん!!」
どうも奴の中には死柄木でもAFOでもない何かが紛れ込んでいるようだ。そいつの正体を掴み刺激して表に出せば優位に立てるかもしれない。となったら狙うのはωスキャン、要はキスだ。文字通り無数の手をかいくぐり抜けて、"OFA"を奪われずにキスをする。無理かどうかなんて考えない。やるしかないからだ。
精
「出し惜しみするぐらいなら一気に出し切ってやる! "OFAS100%"+"変速・
両手の掌底の連打による衝撃波で衝撃波を相殺し、"危機感知"で取りこぼした衝撃波を避け、少しずつ奴に近づいていく。
AFO
「この速さは駆藤の"個性"か……! 時空を超えて僕を阻むか……!!」
AFOに苛立ちが見える。どうも二代目に因縁があるらしいがそんなの俺の知った事ではない。ついに奴の懐まで潜り込めた。
精
「──+"発勁"……アイランドスマッシュ
腹部に全力の左掌底を叩き込む。AFOが血を吐きながら吹っ飛ぶ。
精
「まだ終わりじゃねえぞ! アイランドスマッシュ
掌底と同時に結び付けた黒鞭でこちらに引き戻し、今度は全力の右掌底で胸の中心を打ち抜く。この世の理を超えた二連撃にAFOの動きが一瞬止まる。その隙を突いて
AFO
("分裂"する……! 『死柄木』でも『AFO』でもないもの……志村か!)
そういえば死柄木は菜奈さんの孫だから性は志村だ。そしてさっき転ちゃんと言っていたから志村転、あるいはそれに近しいものが本名のはず────
AFO
(油断したね)
"危機感知"が発動し咄嗟に身を退いたが一手遅く、足から生えた指に一瞬だけ触れられてしまった。崩壊こそしなかったが、"OFA"を奪われた可能性がある。咄嗟に発動できる全ての"OFA"を発動して地面に逃げる。"黒鞭"と"煙幕"と"浮遊"と"身体強化"は確認できたが、移動速度が落ちていた。
AFO
「まずは一番厄介な駆藤の"個性"を貰ったよ。これで僕の機動力という弱点が補える」
上空から頭が痛くなるほどの"危機感知"が鳴り響く。見上げると地を陰らせるほどに手が枝分かれしていた。
AFO
「何度も言うけど手数は多い方が良いんだ」
そして衝撃波の豪雨が降り注いできた。咄嗟に黒鞭で全身を覆って即席の鎧を作ったがそれでも押しつぶされそうになる。"超再生"が無ければ
精
「……一部だけ奪うことが出来るのなら……そして奪ったのが"変速"だとしたら……残ったのが"黒鞭"と"発勁"だから……」
AFO
「そちらには打つ手なしかな? このまま君をここで足止めし続ければ──────ぐっ!?」
俺の予想通りAFOが苦しみだして衝撃波が止んだ。俺は"発勁"で溜めた"黒鞭"を死柄木の両手両足の付け根に巻き付けた。
精
「"変速"は五分で反動が来て呼吸が出来なくなる。そんだけ手を多くしていたら酸素が足りなくなるんじゃねえか? だから楽にしてやるよ────肢体が散っても踊れるか試しましょう?」
力の限り"黒鞭"を締め上げAFOの両手両足を切り飛ばす。奴に"超再生"がないのは先からの戦いで把握済みだ。遠くから正午を告げる鐘が聞こえた。神野区では同盟を結ぶ話し合いが始まるだろう。その場にAFOが現れることは無くなった。
AFO
「まさか……ここまでするなんてね……」
精
「手前がまた手を生やすまでの間、死柄木について調べさせてもらうぜ」
"黒鞭"を引っ張りAFOを引き寄せる。そしてそのまま唇を重ねて舌を入れる。今回は過去を調べるためにかなり濃厚に接触する必要がある。このことが1-Aガールズにバレないことを祈りながらωスキャンで死柄木の過去を探る。この時の俺は死柄木の事をほとんど知らなかった。敵になった理由も、全てを壊したい理由も、AFOに利用された理由も。