抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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8-10 One for one

 死柄木の過去を見る。死柄木、いや志村転弧(てんこ)は父の弧太郎(こたろう)が作った家のルールでヒーローの話をすることが許されなかった。その中で祖母である菜奈さんがヒーローであることを姉から知らされたが、姉に裏切られて父からひどい仕打ちを受けた。そこで"崩壊"に気付き、自分を認めてくれなかった家族を家ごと崩壊させた。そして一人で彷徨っていた所をAFOに拾われて敵として開花し、志村転弧から死柄木弔へと変わった。

 

 菜奈さん

(転弧……私のせいで……)

 

 自分が家族として弧太郎のそばにいれなかったせいでと菜奈さんが自責の念に駆られている。俺は菜奈さんの肩にそっと手を置いて言葉をかける。

 

 精

(菜奈さんのせいじゃありませんよ。子を守るために親が戦う……何も悪い事じゃありません。子供には理解できなくても、親になったら誰でも理解できることです)

 

 菜奈さんを慰める傍らで疑問が1つ湧いてきた。例外はあれど"個性"は両親や親族の"個性"に似たものが発現する。志村家側の"個性"は"浮遊"に近しいものと仮定した場合、転弧の母の"個性"が"崩壊"に近しいものということになる。しかし、過去を見た限りそのような描写はなかった。そもそも、転弧は5歳まで"個性"が発現していなかった状況から"崩壊"が発現し──────そのような事例を俺は目の当たりにしている。

 

 精

A()F()O()()()()()()()()はずだ)

 

 AFOの意識も紛れ込んでいるからAFOの過去も探れる。転弧と接触したのは十数年以内だから比較的早く見つかるはず──────あった。AFOは生まれたばかりの転弧から"個性"を抜き取り、弧太郎にヒーローへの抑圧を仕向け、頃合いを見て"崩壊"を転弧に与えていた。それは全てOFAを取り戻すために"意志力"で上回るためだった。つまり、志村家の悲劇を生み、転弧に全てを壊させようとするほどの"憎しみ"を植え付けたのは──────諸悪の根源OFAだったのだ。

 

 精

(……コイツも手前の目的のために罪のない子供を巻き込んでいたか)

 

 俺の心が激しく動き出す。治崎と同等の、いやはるかに凌駕する外道さに怒りが巻き上がる。

 

 精

(待ってろ転弧。お前の憎しみ、AFOの野望────全部ぶっ壊してやるよ

 

 

 現実世界に戻って早々AFOの顎に100%アイランドスマッシュを叩き込み打ち上げる。

 

 精

「──────I'll execute you,drop dead bary(物故ろしてやるぜ、ベイビー)

 AFO

「殴ってからいう言葉じゃないね……! それにヒーローを目指す者が殺害予告するのは良くないんじゃないかな……!?」

 精

「んなこと言ったらクラスメイトの一名がヒーローの道からドロップアウトしなきゃいけなくなる。あと屑畜生相手には殺人じゃなくて器物損壊が適応されるんでな」

 

 吹っ飛ばされていくAFOに追い付き、背中から"黒鞭"を放ちAFOの全身を縛り上げる。

 

 精

「手前の意識が無くなり次第"超再生"を譲渡して治してやる。だから早めに意識を手放すんだな」

 AFO

「"超再生"は発現より前の傷は治せな──────」

 

 言葉を遮るように100%アイランドシュートを腹に叩き込む。言葉が止まり歯を食いしばる程度のダメージしか入っていないようだ。しかし、確実にダメージにはなっているようなので問題ない。

 

 精

「それだけ頑丈なら手前の意識がなくなる方が先だろうよ──────さァ、交わり乱れて狂いましょう?」

 

 そこから拳と脚の連撃が始まった。"発勁"を織り交ぜての乱撃で、並の人間だったらミンチを通り越してペーストになっているはずだ。その連撃にもAFOの体は耐えている。これ以上の威力は出せないからこのまま押し切るしか────突如AFOの体が大きく膨れ上がって"黒鞭"の拘束を無理やりこじ開けてきた。

 

 AFO

「今はこの形が良いと体が判断したんだろうね。これに関しては僕の意思では制御することが出来ないから困るよ」

 

 "危機感知"が鳴る。5mほどになったAFOがありえない速度で腕を振るってきた。避ける間もなく腕に打ちのめされ吹き飛ばされる。ある程度の距離が出来たから"煙幕"を張って奇襲を────"煙幕"が出てこない。まさかと思い"ωセンス"で視力を上げAFOの腕を見る。腕には無数の手が見えていた。

 

 精

「あれでも手で触れた判定か……"変速"の反動が来る5分を凌げ────」

 AFO

「君を壊すのに5分もいらないよ」

 

 "危機感知"と同時に吹き飛ばされる。今度は何が奪われ────思う間もなく強烈に地面に叩きつけられる。

 

 AFO

「"危機感知"と"発勁"を貰ったよ。全部奪いたいところだけど、君のために"世界移動"と"変身"は残しておいてあげるよ」

 

 今俺に残っているのは"身体強化"と"黒鞭"と"浮遊"と"超再生"と"世界移動"と"変身"だ。その内、"超再生"は直接攻撃には使えず、"世界移動"は瞬間移動代わりにしか使えず、"変身"は血がないから使えない。つまり前者三つでどうにかしなければならない。対しAFOには"発勁"の火力、"危機感知"の回避力、"変速"の拡張性、その上他の"個性"もあるケツから言ってヤバい。

 

 精

「……一か九かだ! "ωセンス"!」

 

跳び上がって辺りを見回し聞き耳を立てるこの戦いに気付いて何所かにはいるはずそうでなくても全国にいるはず一匹だけで良い──────見つけた

 

 精

「喰らいやがれ!!! 100%アイランドシュート!!!」

 

 見つけたアイツに向かって全力で蹴りの衝撃波を飛ばす。これなら流石に気付くはず────

 

 AFO

「どこに向かって攻撃しているんだい? 僕はここだよ」

 

 AFOの手だらけの腕に巻きつけられ身動きが取れなくなる。そのまま締め付けられ全身の骨が砕け、"超再生"によってすぐ治る。そのまま"崩壊"を喰らい全身がひび割れるように激痛が走り、"超再生"によってまたすぐ治る。まさに死ぬほど痛い。その痛みに声が震える。

 

 精

「な、なんで"超再生"を奪わないんだ……」

 

 AFOが気味悪くニチャリと笑った。

 

 AFO

「このまま神野区に行って君を出来る限り惨たらしく殺すためさ。同盟が結ばれていようといなかろうと、君の死によって全てが終わりになる。君も、同盟も、ヒーロー社会も、この世界の全てが一度終わる────()()()()()()()()()()()()()()()()()……ケホッ、そう思えばこの息苦しさも心地よく感じるよ」

 

 "変速"の反動にすら適応した体になってしまったようだ。こうなったらもうどうしようもない。俺は目を瞑って溜息をついた。

 

 精

()()()()()()()()()

 AFO

「僕が負ける? 君にはもう三つしか"個性"が残ってないのに? ここからどうやって────」

 ???

Because I'm Coming(なぜなら、僕が来たからハメ)

 

 

 青い鉄拳が俺に巻き付いていた腕を叩き切り、そのまま黄色い鉄脚がAFOのアホ面にめり込む。音を置き去りにしてAFOが吹っ飛ばされる。俺は巻き付いていた腕を振り払い、やってきたハメドリくんにお願いする。

 

 精

「"個性"奪われちまったから血を飲ませてくれ。そして他の俺をここに呼んできてくれ。説明は後だ」

 ハメドリくん

「分かった。"超再生"あるから頸動脈からの直飲みイッキでやってくれ」

 

 この世の全てを馬鹿にしたようなアホ面ヘルメットから、坊主頭の緑谷の顔が露になる。その首元を噛み千切り鮮血をゴクゴク飲む。生温かな鉄の味が口から鼻へ喉頭へ食道へと駆け巡る。最高にローってやつだ。

 

 精

「うげぇ……トガちゃんの気持ちが分かって嬉しいよぉ……」

 ハメドリくん

「んなこと言ってないで"変身"しろよ。こっちはしっかり俺を呼び集めるから心配ゴム用だぜ」

 精

「頼むぜ……さて、変身と言ったらこれがいいよな! 緊キュウ♡変身(エネマシリンジー)! デカチンジャー!」

 

 コールを受けた俺の"変身"因子が活性化し、理屈はよく分からないが衣装ごと"変身"しハメドリくんになるのだ!

 

 ハメドリくん

「シコんにちは~!」

 

 そのまま裸になって"変速・五速"を発動し吹っ飛ばされたAFOを追いかける。膨れ上がった巨体を追跡するのは射精するよりも簡単であっという間もなく追いついた。そこではAFOが蹴られた頭を抱えてのたうち回って苦しんでいた。

 

 AFO

「な、何が起きているんだ……!?」

 精

「ハメドリくんこと俺の襲来だな」

 

 "個性"を奪われていった俺はこのままではどうやっても対応しきれないと判断した。誰かの手を借りたかったが誰にも手助けを頼んでいないし、わざわざ人目のつかない所を選んだから物好きでもない限り人っ子一人いないはずだった。しかし、先日から行われている"ハメドリくん大量発生ハメ"によって、どんな所でも頑張って探せばハメドリくんがいる状況になった。咄嗟にωセンスでハメドリくんを探し、蹴りの衝撃波によって"危機感知"を発動させてこちらに気付いてもらったと言う訳だ。

 

 精

「誰の手も借りるわけにはいかなかったから俺の手を借りた」

 AFO

「ま、まさかそんな方法で乗り切るなんて────ぐっ!? 

 

 立ち上がろうとしたAFOが膝をつく。頭の次は胸を抱え始めた。

 

 精

「そして今、お前に"超再生"と"煙幕"を譲渡した……"AFO"と反発する"個性"をその身に宿す、どうなるかはお前が一番分かっているんじゃないか?」

 

 "個性"同士の反発によるダメージは脳無ほどに強化された身体でも大きなダメージになる。コイツがキャシーとの戦いの後、回復するまで身を隠していたのが何よりもの証拠だ。膝をついたAFOに追撃の右フックを左頬に叩き込む。殴られた箇所よりも胸が痛んでいるようだ。

 

 精

「今度は"発勁"だ。今は火力よりも手数の方が欲しいからな」

 AFO

「だ、だが、その分僕の一撃は強力になって────」

 精

「そうはまんこが締まらないってもんよ」

 

 AFOの全身が四方八方からの"黒鞭"によって縛り上げられる。

 

 AFO

「ッ!? 何だコレは!?」

 精

「……流石俺だな。まだ数分と経ってないのにこれだけ集められるとはな」

 ハメドリくん

「"変速"使えば赤子の手でしこるようなものよ。ω-99にちなんで────99人呼んできたぜ」

 ハメドリくんの群れ

「「「ハメー!!!」」」

 

 空と雲ではありえない、原色的な青と白が視界を埋め尽くす。AFOから見ても、俺から見ても悪夢のような光景だ。

 

 精

「さてここでお前(AFO)に問題だ。これから何が起きるでしょうか?」

 AFO

「まさか────」

 

 AFOの顔からようやく笑みが消える。

 

 精

()()()()()()()()()()"OFA"を貰えるんだぜ? もっと嬉しそうな顔をしろよ」

 

 サンドバッグと化したAFOの顔面にテンプシーロールを叩き込む。一発ごとに"変身"以外の"OFA"を継承させる。無くなったら"変身"を解除して、ハメドリくんから梅雨舌で血を貰い再び"変身"して"OFA"を得る。そしてAFOを殴って継承させる。

 

 精

「"変身"! 継承! "変身"解除! "変身"! 継承! "変身"解除!」

 AFO

「止めろ! 僕が欲しいのは与一一人だけだ! こんなには要らない!」

 精

「知らなかったのか!? 魔王からは逃げられないが、魔王自身はもっと逃げられない*1んだよ!」

 

 散々人の"個性"を奪ってきた奴が自分が壊れる程の"個性"を受け取る、同情の余地はないが何とも皮肉な末路だ。

 

 精

「"OFA"を!!! 孕めオラァ!!!」

 AFO

「やめろおおお!!!」

 

 

 あれからかなりの回数を継承し、AFOの体は動かなくなっていた。呼吸はしているが体を動かす素振りを見せていない。菜奈さんの意識を渡しているから転弧の意識が砕ける事はないはずだ。ωスキャンで確認してみる。

 

 転弧

(人が多すぎて動き辛え……)

 

 歴代継承者の割合が多すぎて転弧の意識が出てこれないようだ。継承者の意識をうんこみてえに出せたら楽なのだがそうもいかない。人格の整理ならあの人に任せよう。

 

 精

「ハメドリくん達よ、同盟はどうなった?」

 ハメドリくん

「無事に成立しているぜ。このまま神野区に向かうか?」

 精

「頼む。九玉さんに会ってコイツの人格整理を整理したい」

 ハメドリくん

「了解。行くぜお前ら! ガラキングを取り戻してハッピーエンドと洒落こもうぜ!」

 ハメドリくん達

「「「ハメー!!!」」」

 

 ハメドリくん達の変態飛行によって神野区の同盟が結ばれたホールに到着する。丁度理の会とプロヒーロー達が手を取りながら出てくるところに遭遇したので、九玉さんに呼びかける。

 

 精

「九玉さーん! 終わりましたよー! それと力を貸してくださーい!」

 九玉

「む、緑谷か。お前と死柄木の様子を見るに……とんでもない事をやらかしたな?」

 エンデヴァー

「アイツはとんでもない事やらかすが、それに見合った結果を出す男だからな」

 

 ハメドリくんから降りて事情を説明する。

 

 精

「ということです」

 九玉

「委細承知だ。死柄木と誰かの人格を入れ替え、"OFA"を継承させてから戻せば元に戻るだろう」

 精

「だったら俺に任せてください。触れるだけで継承できるようになりましたから」

 

 ということで俺が転弧の体に入る。それと同時にたくさんの菜奈さんが俺に抱き着いてきた。

 

 菜奈さん達

「「「まさかこんな方法で転弧を助けるなんて……私だったら絶対に思いつかなかったよ」」」

 精

「どの奈々さんに手を出そ──────」

 男の歴代継承者達

「「「いい加減にしろ!!!」」」

 

 ということでハメドリくんの一体に全ての"個性"を叩き込み、入れ替わって元に戻る。呆然と横になって天を仰いでいる転弧に声をかける。

 

 精

「大丈夫か転弧?」

 転弧

「……お前からその名前で呼ばれると気持ち悪くてしょうがねえよ」

 精

「じゃあ……大丈夫かガラキング?」

 ガラキング

「……起き上がる気力がねえから起き上がらせてくれ」

 

 ガラキングが寝たまま右手を伸ばしてきた。俺はニヤリと笑ってその手を掴む。それと同時に"崩壊"が────起こることはなかった。

 

 ガラキング

「……は?」

 精

「あの"個性(崩壊)"はAFOが関わっているからハメドリくんに押し付けておいたぜ。どうだ? 人生初めての握手は? 悪くねえだろ?」

 

 自力で起き上がったガラキングが心底不服そうに溜息を一つ吐いた。

 

 ガラキング

「……何でここまでするんだ?」

 精

「俺がお前を救けたいと思ったからだ。何度でも言うが……()()()()()()()『やりたいようにやる』だけだ。One for all(一人は皆のために)だのAll for one(皆は一人のために)だの抜かす前に──────One fo one(自分は自分のために)が出来てねえと話にならねえだろ」

 ガラキング

「カッコつけて言うんじゃねえよ自己中ヤローじゃねえか」

 精

「当たり前だろ。俺はヒーローでも敵でもない──────『金色の狂犬』だからな」

 

 故郷でもこの世界でも変わることなく、例え何度失ってもそれであり続ける、それがこの土口精の死ぬまでやるべきことだ。

*1
実は意外といる。某深紅の帝王とか某鬼の王とか。

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