抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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2-06 おめでたい奴

 お茶子ちゃんの涙を受け止めきった俺はお茶子ちゃんにサムズアップで答える。

 

 精

「んじゃ、そろそろ時間だから行ってくる!」

 お茶子ちゃん

「うん! 頑張ってねデクくん!」

 

 お茶子ちゃんの激励を受けた以上負けられない。轟をどうやって倒すか──

 

 ???

「おォいたいた……」

 

 燃え盛る大男がいた。誰だ? なんかで見た覚えがあるんだけど……

 

 精

「えっと……クソ親父、じゃなくて……ベンドバーか」

 ベンドバー

エンデヴァーだ。焦凍の奴め……妙な反抗をしおって……」

 

 ああそうだった。クソ親父のエンデヴァーだった。俺の"個性"がオールマイトに匹敵するとかなんとか言っていたがどうでもいい。

 

 精

「俺忙しいんで。じゃ」

 エンデヴァー

「ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ」

 

 轟がクソ親父という理由がよく分かった。コイツは自分の息子を、自分の目的を果たすための道具にしか思っていない。こういうクソは本当に嫌いだ。とりあえず厳しく一言言っておくか。

 

 精

「手前の力でオールマイト超えられないからってに子供に託したのか。だからNo.2なんだよクソ親父」

 エンデヴァー

「……なんだと?」

 精

「だがもっと可哀そうなのは────その託した夢が俺によってぶっ壊されることだな。手前の息子を慰める準備をしておきな」

 

 背中から熱い何かを感じたが振り返らない。そんな暇があったら早く轟を──

 

 騒音公害

『特待生と推薦枠がぶつかる!! 正しく両雄並び立ち今!! 緑谷対轟!! START!!』

 

 

 試合開始と同時に氷が迫る。出し惜しみは良くない。100%の力で指を弾いて氷をぶち砕く。小指が折れて痛いが十分な収穫だ。次の氷は──

 

 精

「ぶっ壊すほどシュート!」

 

 30%の力で蹴り抜く。見事に氷を打ち砕き脚も無事だ。これで氷対策はある程度できた。しばらくは情報収集に徹しよう。

 

 轟

「耐久戦か……すぐ終わらせてやるよ」

 精

「折角だから長く楽しもうぜ!」

 

 三度の氷を蹴り砕く。轟本人が氷を足場にしてやって来た。一旦上に飛んで逃げ──

 

 轟

「させるかよ」

 

 踏み込んで氷で俺の脚を氷で覆う。この規模なら指の30%で砕ける。すぐさま砕き迎撃態勢を整え轟を見る。アイツの右半身が震えている。最近勉強して知ったが"個性"も身体能力なだけあって、右だけ使っていくと体温が下がるらしい。左で温めれば解決できそうだがそれをしない。クソ親父の完全否定と言う奴か。なら、俺式の完全否定に持ち込ませてやろう。

 

 轟

「俺が押し始めた……終わりにしよう」

 精

「……おめでたい奴だなあ?」

 轟

「……何?」

 精

「半分の力で俺に勝てますってか? 障害物競争も騎馬戦も勝てなかったのに? せめて()()でかかって来てから物を言えよ!!」

 

 轟の顔が険しくなる。相変わらずイケメンなのがむかつく。

 

 精

「プルプル震えちゃってますなあ! 寒くてトイレ行きたくなっちゃいましたか!? 通路入ってすぐそこですよ!?」

 轟

「全力……? クソ親父に金でも握らされたか……? イラつくな……!」

 精

「喧嘩は売ったけど金払ってもらえなかったぞ! 万引き犯だぞお前のクソ親父!」

 

 鈍くなった轟の腹部に10%のパンチを一発お見舞いしてやる。もろに入って見事に動揺している。これならいける。

 

 精

「俺は女の子にモテたいからヒーロー目指してんだがよ! そのために全力で頑張ってるんだ! 他の奴らだって全力なんだ! そんな中で全力を出せない手前が物事を成し遂げられるわけねえだろ!」

 轟

「何でそこまで……」

 

 食いついてきた。畳み掛ける。

 

 精

「手前が何を思ってここに立っているか俺は全く分からねえしどうだっていいがよ!! 全力も出していないのに完全否定なんてふざけるんじゃねえよ!!」

 

 そして思いっきり叫ぶ。

 

 精

「だから全力になるって言うなら一緒にやってやるよ!!! クソ親父の完全否定!!!」

 轟

「親父を──……」

 精

「いつまでもクソ親父に縛られてんじゃねえ!!! お前の!!! 力だろ!!! ()()()『やりたいようにやれ』よ!!!」

 

 

 その言葉で轟の右半身に炎が走る。ようやく本気になったらしい。

 

 エンデヴァー

「焦凍ォオオオ!!! やっと己を受け入れたか!! そうだ!! いいぞ!! ここからがお前の始まり!! 俺の血を持って──」

 精

「うっせえから黙ってろクソ親父!!! だから息子から既読中々つかねえんだよ!!!」

 

 俺の一言にエンデヴァーが黙った。轟だってあんなのに既読なんか付けなくないだろう。俺だったら1.9時間は既読を付けない。

 

 轟

「……どうなっても知らねえぞ」

 精

「奇遇だな。同じことを言おうと思っていた」

 

 迫ってくる氷を30%の跳躍の突進で突っ切る。そして右足に100%の力を込める。轟が左手を振りかざすと同時に右足を思い切り踏み込む。耳を劈くような音が響く。

 

 澤先

『空気の瞬間的膨張による爆発……この規模で起きてよくこの会場無事だったな……』

 騒音公害

『オイこれ勝負はどうなって……』

 

 煙の中からおめでたい紅白頭が見えた。そこにいたか。()()()()()()()()()()()()()()

 

 ミッ先

「……あれ、緑谷くんは──」

 精

「お茶子ちゃん式流星群パンチ!」

 

 俺による上からの奇襲の左ストレートが轟の顎を捕らえた。

 

 騒音公害

『えー!?!?!? どっから現れた!?!?!?』

 澤先

『おいVTRよこせ。流石に審議だ』

 

 俺は100%の力で跳びあがって爆風を回避し、空中浮遊で索敵をした。ルール説明で空中浮遊に関して規制がされていなかったから問題ないだろう。あの爆風と煙の中、地上の轟ではまともな索敵はできないだろうから奇襲を考えた。そして落下の勢いをプラスした左ストレートで轟の顎を殴り抜けた。見事に決まり轟は意識を失った。

 

 騒音公害

『マジかよ!?!?!? あの一瞬でここまで考えやがったのか!?!?!?』

 澤先

『試合のルールで高さによる場外はなかったからな……本当に賢しい奴だ……ヒーロー志望でよかったよ……』

 ミッ先

「……問題なしと判断します! よって轟くん行動不能! 緑谷くん──……三回戦進出!!」

 

 歓声が響き渡る。嬉しい限りだが右足がクソ痛い。担架のロボットに運ばれてリカバリーガールの元に連れて行かれる。

 

 精

「点滴でも砂糖水でも飲みますから治癒お願いします」

 リカバリーガール

「……最善は尽くすよ。でも、場合によっては辞退してもらうからね?」

 

 脚にディープキスを受けて何とか動けるようになった。疲労感が半端じゃない。轟と戦った方が全然マシだ。

 

 精

「次の試合直前まで休ませてください……」

 

 角砂糖を砂糖水で流し込みながらリカバリーガールに許可をもらう。

 

 リカバリーガール

「寝るなら口をゆすいで──」

 

 そんな短時間で虫歯にはならない。すぐに目を閉じて少しでも休む。1-Aの何人かが心配で来てくれたようだが、俺を起こさないでくれ。死ぬほど疲れている。あっ、でもお茶子ちゃんは居ていいよ。出来れば一緒に添い寝してあっダメですかそうですか。じゃあ不貞寝してやる。

 

 

 俺はクソ親父の欲求によってオールマイトを超えるためだけに作られた存在だった。そのために幼い頃から厳しい教育をうけ、虐待まがいの事もされた。だが一番許せなかったのは母さんを病院送りにした事だ。だから奴の"個性"である左の"個性"を使わないで1位になって、奴を完全否定したかった。

 

 緑谷

「轟とクソ親父の間に何があったかは知らないが……クソ親父の"個性"が気に食わないんだろ? だったらそれも使って全力で戦ったけど負けました、の方が完全否定っぽくないか?」

 

 緑谷(アイツ)は奴の名前もまともに覚えていないほど何も知らなかった。なのにそれらしいことを言ってきた。

 

 轟

「……訳の分からないことをいってるんじゃねえ」

 

 本当に訳が分からなかった。

 

 緑谷

「全力を出せない奴が物事を成し遂げられるわけねえだろ! 」

 

 普段は女に鼻の下伸ばすようなふざけた奴のくせに、言うことは真っ当だった。

 

 緑谷

「お前の!!! 力だろ!!!()()()『やりたいようにやれ』よ!!!」

 

 その言葉が俺の忘れてた記憶を思いださせた。

 

『いいのよおまえは血に囚われることなんかない……なりたい自分になっていいんだよ』

 

 子供の頃母さんに言われた言葉。親父が嫌でもヒーローになりたいと思っていた、俺の背中を押してくれた言葉。その言葉が奴を忘れさせてくれた。

 

 轟

「緑谷……ありがとな」

 

 俺の全力をぶつけた。胸の中の何かが落ちた気がした。

 

 緑谷

「お茶子ちゃん式流星群パンチ!」

 

 最後の最後までふざけ切った奴だ。だから少し緑谷のことを見直し──目覚めたらそこはリカバリーガールの保健室だった。

 

 緑谷

「──すっきりしたか轟?」

 

 やけにげっそりとしている緑谷が俺の顔を覗き込んでいる。

 

 轟

「……分かんねぇ。ただ、あの時あの一瞬は親父を忘れた」

 緑谷

「そっか。少しは前に進めたようで何よりだ。俺も足の骨を折った甲斐があったぜ」

 

 まさかコイツはそのために俺をあんなに煽ったのか?

 

 緑谷

「憎しみを抱くのは人間として当然さ。それが動機であることを恥じる必要はない。でも、憎しみしか見えなくなって未来が見えなくなるのはダメだ」

 

 まるでそういう人物を見てきたかのように緑谷が話す。俺と同じ年のはずだが、過去に何かあったのだろうか?

 

 轟

「お前、結構留年してるのか?」

 緑谷

「……同い年だろバカ。相変わらずおめでたい頭してんな」

 

 角砂糖と点滴を飲みながら緑谷が笑っている。

 

 緑谷

「俺はもうひと眠りさせてもらうぜ。準決勝は誰と当たるかなあ……天麩羅よりもあの茨の聖女ちゃんがいいなあ……そんで勝って惚れられて教会でプロポーズしたいなあ……」

 

 おめでたい頭をしてるのはどっちだ、と言いたかったが緑谷らしくもあるから止めた。

 

 轟

「……天麩羅ってなんだ?」

 緑谷

「天哉だよ。うろ覚えで天麩羅って言ったら気に入ってくれてな」

 

 俺の場合だと何になるのだろう? ショートケーキにでも──

 

 緑谷

「ショートケーキにはならねえぞ? 流石に簡単で短かったら覚えられる。お望みならケーキって呼んでやろうか?」

 

 普通に轟か焦凍でいいと伝えたら、いいあだ名考えておくと言われた。次に何と呼ばれるのか少し楽しみになった。




勝っちゃいましたね。今後どうなるでしょうか。
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