抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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2-09 休日なのに休まらない

 俺の休日は一杯のココアから始まる。ココアをじっくりと、甘く、濃く、香り豊かに練る。出来上がったココアは昇りゆく朝焼けを眺めながら、お気に入りの『The Entertainer』をスマホで再生しながら口の中で転がす。そして目をつぶり、思い耽る──

 

 精

「暇ないよなあ……まずは爆豪に事情説明するか……」

 

 爆豪に電話をかけ──

 

 爆豪

『今すぐ家来やがれクソデク!!! てめェとは話さなきゃ──』

 

 一度切る。朝の5時だぞ? かける方より出る側の方が元気なことあるか? 秒で爆豪から着信が来る。

 

 爆豪

『切ってんじゃねェよクソデク!!! 1時間以内に来なかったらぶっこ──』

 

 これ脅迫で訴えたら勝てるんじゃないか? ともかく行かないと俺の身が危ない。母さんにメッセージを送って早速出かける。走って行ける程度の近所でよかった。早速インターホンを連打で鳴らす。19連射インターホンはどんな奴でも出て来ざるをえな──

 

 爆豪

「うっせぇわバカ!!! クソガキかてめェ!!!」

 精

「んじゃ公園に行って話でもしようぜ」

 爆豪

「あと何だそのだっせェ金色のジャージは!?!?!?」

 精

「それについても公園で話をしようぜ」

 

 爆発的にうるさい幼馴染を連れて公園のベンチに腰掛ける。折角話すのだからジュースを奢ってやろう。俺はコーラで爆豪は天然水だ。

 

 精

「この金色のジャージは入学祝に母さんに買っ、ゲフゥ……どこまで話したっけ?」

 爆豪

「どうでもいい話で躓いてんじゃねェ殺すぞ!!! あとてめェだけジュースにしてんじゃねェ!!!」

 

 うるさいがいいツッコミだ。これで音量が1/4になればいいのだが。

 

 精

「えーっと……入学祝に買ってもらったんだ。羨ましいだろ?」

 爆豪

「いいから昨日の()()について話せ!!!!!!!」

 

 これ以上は本当に殺されかねない。本題に入るとしよう。

 

 精

「ルーティンって知ってるか?」

 爆豪

「スポーツ選手とかがやる集中力を上げる所定の動作……だったか?」

 精

「それの一種──」

 爆豪

「たった一言であそこまでになることはあり得ねェだろ。人としての理性を疑うような状態だった」

 

 コイツ本当に頭いいな。しょうがないから事実を言うか。

 

 精

「……『この言葉を聞いたら我を失うほど怒る』っていう刷り込みだ」

 

 厳密に言うと違うのだがこれが事実だ。故郷ではこれを発動した後、元に戻す言葉も再生される装備があったのだが、この世界ではそれは当然ない。

 

 精

「怒りによる身体機能の向上と思考を挟まない本能的行動による最速の反応……それが()()の正体だ」

 爆豪

「確か……『お兄ちゃん』だったか? 随分なシスコンヤローだな」

 精

「妹のためになら命すらどうなってもいい、なんて思っていた時期もあったんでな。だからシスコンは否定しない」

 

 このあたりは説明したところで中々伝わり辛い。爆豪の中で受け入れられる形になったならそれでいい。

 

 精

「まあ……()()はしばらく使わねえ、というか使えねえ。見境なく攻撃しちまうのはヒーローとしてナンセンスだ」

 爆豪

「早く制御できるようになりやがれ。あの状態のてめェを1秒でも早くブッ倒してェ」

 精

「あと()()使うと頭痛く──ああ、この体なら大丈夫か」

 

 元の俺の体は訳あって慢性外傷性脳症*1を患っており、あまり頭を使うようなことをすると頭が痛くなる。アレ自体は思考はしないのだが交感神経を過剰に刺激するため神経細胞、ひいては脳に多大な負担がかかるため頭が痛くなる。

 

 爆豪

「てめェは元居た世界で何があったんだ?」

 精

「事故で家族を全員亡くして、頭に治らない病を負って、2回故郷が滅ぼされかけた」

 爆豪

「……同情を誘うための嘘ってことはねェな……」

 

 思ったよりも重い返答を返されたのか、爆豪は天然水を一気飲みして黙った。朝早くの公園に黙った男子2人なんて死んだ母ちゃんがときめきそうだ。爆×緑の同人誌が書かれる前に沈黙を打ち破らないと。質問に答えたのだからこちらも質問するとしよう。

 

 精

「お前は今まで出久に何してきたんだ?」

 爆豪

「無個性だから見下し続けてきた」

 

 それが当然だと言わんばかりにすっと答えてきた。これが"個性"社会の闇か。

 

 精

「"個性"が無きゃ人として扱わないと──」

 爆豪

「"個性"があろうとなかろうと俺が一番になるから他の奴らはどーだっていい」

 

 ここまで突き抜けているともはや尊敬すら覚える。道徳的観点から言ったら最低だろうが、この一本通った筋は爆豪の強みだろう。

 

 精

「ま、それでいいんじゃね? 強い奴が一番になる、世界の理だ。でも──」

 

 飲み終わったコーラの缶をグシャリと握りつぶす。

 

 精

「手前がその考えを持つ以上、他の奴がその考えを持って手前をぶっ潰しに来ても文句は言えねえぞ?」

 爆豪

「ったりめーだろ。だから俺は負けねェ」

 

 その覚悟はあるようだ。なら問題はない。自分の意見を言うだけ言って、他者の意見は受け付けないなんてクソ野郎だったら一発ぶん殴っていた。

 

 精

「話したいことは話したから帰る。休み明けたらまた一緒に頑張ろうなー」

 爆豪

「一緒にすんじゃねェ殺すぞクソデク」

 

 あの性格をどうにかしないとアイツはいつか大問題を起こしそうだ。とりあえず帰ろう。帰って体育祭の復習だ。

 

 

 母さんが7回も気絶しながら撮ったという体育祭の映像を見る。高画質で録画されていたから見やすくてありがたい。

 

 精

「……こう見ると"個性"の扱いがなっちゃいないな」

 

 俺だけ他の生徒に比べて"個性"の使い方がぎこちない。初めてのSMでいきなり縄による拘束プレイをしようとしているような、初めての『自主規制』*2で立ち松葉*3をやるような、どこか危なっかしさが目立つ。

 

 精

「まあ"個性"が発現してからまだ数か月ってことになってるしな……まだまだ経験が足りないか」

 

 本来なら"個性"は4歳ぐらいで発現し、共に生きていくことになる。10年もあれば手足のように扱うことができるだろう。今の俺にとって"個性"は体の一部というよりは武器の一種だ。その考えを変えないと"個性"社会では生きていけなくなるだろう。

 

 精

「そのヒントが映像にあればいいいと思ったんだけどなー……」

 

 どの戦いを見ても戦闘の反省点を見つけることはできても、"個性"の扱いを変えるようなものは──

 

 精

「ん……この時の俺、自然に扱えているな……」

 

 それは爆豪との戦いで()()を発動した時だった。あの状態なら余計なことを考えずに本能的に行動するから動きは良くなるだろう。しかし、それだけでは説明がつかないことがある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()し、()()()()()()()()()。OFAを使っている時の動きだ。

 

 

 精

「何が起きて──」

 

 高画質で見ていたから分かった。()()O()F()A()()()()()()()()()()──瞬間俺は天啓を得た。

 

 精

「なぁるほどなぁ…………」

 

 例えば物を掴む時。物の位置を認識して、腕を伸ばして、指を広げてと一々考える人間はなかなかいないだろう。最初はそうかもしれないが段々と、ただ物を掴むと思って腕や手が自然と動くように。この世界において"個性"とはそういうものだ。だったら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 精

「いきなり限度30%でやったらヤバそうだから……5%ぐらいから始めてみるか」

 

 OFAを全身に発動させるイメージを想像する。故郷の友人も似たようなことをしていたな。あれは勃起のイメージを全身に行き渡らせるというイカれた発想だったか。確か漢勃(おとこだ)ちという名だったのでそれにあやかって名付けるとしよう。

 

 精

"OFA 勃ち上がれ(スタンドアップ)"

 

 想像が現実になった時、体に力が漲るのを感じた。軽く素振りをしてみただけでそれなりの風が巻き起こる。

 

 精

「……まずはこの感じを体に慣らすか。2日の休みはこれで過ごすか」

 

 まずはこの状態でお菓子でも作ってみるか。母さんに言ってキッチンを借りる。まずは手を洗──ちょっと蛇口を捻っただけで全開になってしまった。マイトがあの姿で弁当持ってたのってすごかったんだな。とにかく手を洗い蛇口を閉める。

 

 精

「クッキー焼くか。それなりに日持ちするし学校でもお裾分けが簡単だし」

 

 まずはオーブンを170℃まで予熱しておく。金属製のボウルに小麦粉、砂糖、油、若干の塩、バニラエッセンスを入れて混ぜる。一纏まりになるぐらいの硬さになったら麺棒で薄く延ばす。そしたら包丁でいい感じの四角に切り分ける。型抜きは手間暇のがかかるし洗い物が面倒だからキャンセルだ。切り分けたクッキーをキッチンペーパーの上に等間隔で並べ、温まったオーブンに入れて15分焼く。

 

 精

「とりあえず20人分ぐらいは作るか」

 

 力の制御も兼ねてクッキーを作りまくる。ボウルが歪んだり、麺棒が折れて母さんに買いに行ってもらうなどのトラブルがあったが何とか20人分焼き終えた。

 

 精

「ついでにココアも練るか。優雅なおやつタイムになりそうだぜ」

 

 ココアも練って母さんと優雅なおやつタイムを──

 

 母さん

「出久はいつ戻ってくるのでしょうか?」

 

 クッキーとココアの味が吹き飛ぶような質問が飛んできた。その心配と質問はもっともなものだからとやかく言うつもりはない。

 

 精

「現状手掛かりがゼロです。手段も思いつきません。もう少し自由に動けるようになって──」

 母さん

「うう……! 出久……! きっと一人で心細いだろうに……! 母さん心配だよおおお!!!

 

 母さんの目から涙が滝のように出てくる。この人の"個性"はちょっとしたものを引き付けるぐらいらしいが、これが本当の"個性"じゃないだろうか。

 

 精

「大丈夫ですよ。もし俺の故郷に飛ばされたとしたらひどい目には遭いませんよ。常夏の楽園ですから」

 

 多少落ち着いたとはいえ『自主規制』*4し放題な場所だ。年頃の男子が行ったらこっちの世界に帰ってきたくなくなるだろう。しかも俺は結構な地位で妻子持ちだ。理解してくれる奥さんだから奥さんとの『自主規制』*5は当然、奥さん以外と『自主規制』*6しても許してくれる。さらには中身が人の中身が入れ替わる出来事も経験済みだ。事情を説明すれば易しく接してくれるだろう。

 

 精

「と言っても俺も故郷に戻りたいですからね……ヒーロー目指しつつ戻る方法も考えますよ」

 

 故郷を思い出しただけで股座がいきり立つ。早速自室に帰って『自主規制』*7だ。この力で『自主規制』*8したら相当気持ちいいんじゃないだろうか? それも試さないと。

*1
頭部に繰り返しかかる衝撃によって脳細胞が徐々に変性していく進行性の神経疾患。

*2
俺の故郷(ry

*3
難しい体位の一つ。画像を調べてみると結構アクロバティック。

*4
上記に同じ

*5
上記に同じ

*6
上騎に同じ

*7
息子を慰める事

*8
上記にオナ自

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