抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
OFASスタンドアップはまだまだ練習中だがそれでも学校には行かないといけない。雨の中、電車に揺られながらスマホを見る。
精
「ヒーロー殺し"ステイン"ねぇ……被害者のインゲニウムってヒーローも可哀想なもんだ」
体育祭の日、保須市であるヒーローが重傷を負うという事件が起きた。どんな場所でも社会に反抗するやつはいるものだ──
男A
「ヒーロー科の緑谷くん!」
精
「ん、どうも」
男B
「体育祭良かったぜ! 惜しかったなァ!」
精
「いやぁ……まだまだですよ」
女A
「2位でしょ!? かっこよかったよー!」
精
「んじゃ、デートしません? ヒーローたるものファンサは大切でしょうから」
ギャルA
「キャハハ! 分かりやすーい! 女の子にちやほやされたいのー?」
精
「この緑谷出久が女の子にちやほやされるためにヒーローをやっていると思っているんですか?その通りです。俺だって男の子ですから。ちなみにギャルだったら大歓迎ですよ?」
結構な人気者になっていたようだ。電車から降り歩いて、雄英の門をくぐると後ろからバシャバシャと何かが近づいてきた。
天麩羅
「何呑気に歩いているんだ!! 遅刻だぞ! おはよう緑谷くん!!」
合羽に長靴といういかにもな天麩羅がやって来た。
精
「うっそ、もうそんな時間!? サンキュー天麩羅ぁ!」
OFASで走って天麩羅を置き去りにする。ちなみに全然遅刻ではなかった。予鈴5分前に席についていた。朝一から"ヒーロー情報学"の授業が始まる。澤先曰く特別だから気を引き締めて──
澤先
「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」
1-A一同
「胸膨らむヤツきたああああ!!」
澤先が髪を逆立て威嚇し教室が静まり返る。プロの指名と職場体験の関係で決める流れになったらしい。ちなみに俺のプロからの指名は1919件だった。轟や爆豪の方が上なのは"個性"の扱いや血統を加味してだからだろう。指名先から職場体験先を選ぶことになるが、ヒーローとして活動するために名前を決めろというわけだ。
澤先
「まァ仮ではあるが適当なもんは……」
ミッ先
「付けたら地獄を見ちゃうよ!! この時の名が! 世に認知されそのままプロ名になっている人多いからね!!」
精
「すみませんトイレ行ってきます我慢できません!!!」
答えも聞かず制止も振り切ってトイレの個室に駆け込む。朝一にあの姿は刺激的すぎる。すっきりしたところで教室に戻る。実がウソだろって顔をしている。俺ぐらいになれば30秒もあればすっきりでき──
ミッ先
「……授業が始まる前に済ませておくように」
ミッ先が複雑な顔で俺をたしなめてきた。18禁ヒーローだからそういうのに敏感なのだろうか。だったらその衣装をどうにかしてほしい。あなたのせいでコスチュームの過度な露出が規制されたたしいじゃないか。もう一回トイレに行かなきゃけなくなる。煩悩を払うためにもヒーロー名を考えないと──15分経ってぽつぽつと発表する人が出てきた。
腹痛君
「
三奈ちゃん
「エイリアンクイーン!!」
そういうのを辞めろってミッ先言ってなかったか?
梅雨ちゃん
「
可愛くていいじゃん。こういうのでいいんだよこういうので。
熱血赤髪
「
かっこいいけど正式な書類出すとき面倒じゃないか?
轟
「ショート」
なんだそのコードネームは。本名をそのまま使うなよ。故郷のクソゲーのスデクリムクゾンの主人公かよ。
爆豪
「爆殺王」
めっちゃいいのにミッ先が却下した。ピッタリだと思うんだけどなあ。
天麩羅
「天哉……」
天麩羅だからって天丼すんなよ。あとヒーロー名のお披露目なんだから暗い顔すんなって。となると俺と爆豪が残ったか。大トリを飾りたかったが爆豪が今日中に決めれるとは思えない。だから俺は前に出てその名を提示する。
精
「"
故郷でのコールナンバーにかっこいい二つ名を付けた名前だ。
ミッ先
「ω-99……意味を聞いていいかしら?」
精
「ωはギリシャ文字の最後の文字で、99は二桁の数字のラストナンバーです。転じて……『敵が見る最後のヒーロー』って意味です」
ミッ先
「オシャレでかっこいいわね!」
精
「あと驚いて目が飛びてる顔文字に見えません? クライマックスの表現にもいいかなーって」
ミッ先
「遊び心も忘れていない! 合格よ!」
服のセンスはさんざん言われるが、名付けのセンスは良いのが俺だ。ミッ先からの太鼓判を貰い、ここに"金色極点 ω-99"が誕生した。
ヒーロー名も決まったので職場体験先を決める。1919件の指名は嬉しいがこの世界のヒーローの知識なんてほぼない。誰かと相談して決めよう。
精
「実、俺のリストの中でエロイ女性ヒーローどれぐらいいる?」
梅雨ちゃん
「緑谷ちゃんらしくて安心すら覚えるわ」
実
「マジかよ……リューキュウにMt.レディにミルコに……えっミッドナイト先生からも指名入ってんじゃん!?」
ミッ先は良くお世話になっているので他の名前の挙がったヒーローをスマホで調べ──
精
「エッ!?*1 エッ!?!?*2 エッ!?!?!?*3 日替わりで全部の事務所行っちゃダメかな!?!?!?」
実
「ダメに決まってんだろ……」
精
「くっそー!!! 俺が後4人ぐらいいれば!!!」
お茶子ちゃん
「デクくん……めっちゃ素直やんね……」
これが女性プロヒーロー……同人誌あるかな? 後で調べよ。ともかく家で
マイト
「わわ私が独特の姿勢で来た!!」
マイトが直角にお辞儀しながらやって来た。
精
「何だよ。俺は指名先を選ぶので忙し──」
マイト
「OFAを知る方から指名が来ている」
とりあえず聞くだけ聞いた方がよさそうだ。指名を入れたのは"グラントリノ"というヒーローだ。かつて雄英で一年間だけ教師をしていて、マイトの担任をやった方らしい。
精
「で、美人?」
マイト
「いや……とうの昔に隠居なさったご年配の男性だ」
精
「じゃあいいや。OFAはマイトが調べりゃ──」
マイトがガチで震えている。そのグラントリノに死ぬほど扱かれたのだろう。だったら実力も申し分ないはずだ。学べることは多くあるかもしれない。
精
「……しゃあねえなぁ……今回ばかりはオッパイお預けだぜ」
マイト
「本当に申し訳ない……」
精
「じゃあ今から送るリストの女性ヒーローの成人向け同人誌買ってきてください。1対1の純愛モノだけですよ? できれば下の毛がばっさばさに生えてるやつで」
マイト
「……君は私のことを何だと思っているんだい?」
精
「教育下手のNo.1ヒーロー」
マイト
「……的確だね……」
ということで職場体験の当日、改良されたコスチュームを持ってミルコさんの、じゃなくてグラントリノの事務所に向かう──
精
「──その前に飯田。ちょっとだけ話いいか?」
その後ニュースを調べたら被害者のインゲニウムは飯田の兄だった。そして職場体験のヒーローリストの中に保須市のヒーロー事務所があった。ここから一つの想像ができる。
精
「行くんだろ、保須市」
それも──
精
「
その言葉に飯田が明らかに反応した。あの堅物も人間だ。そういう感情を抱いたって当然だろう。しかし、ヒーローは私怨で動いてはならない。それを踏まえた上で飯田はこの選択をした。なら──
精
「
俺だってかつては故郷に復讐しようとした。自分が復讐するのはよくて、誰かが復讐するのはよくないというのは俺の理に反する。なら最低限の忠告をして背中を押すべきだ。
飯田
「…………」
黙って去って行く飯田を見送って俺も新幹線に乗る。駅弁って意外と悩ましいものだ。アタリハズレの振れ幅が大きいし、1個だけじゃお腹一杯にならない。だったら中一杯にさせる駅弁の方が好きだ。
着いた事務所はクソオンボロだった。いきなり入るのも面白くないので、体育祭で身に着けた"
精
「失礼します。雄英高校から来た緑谷出久です。一週間よろしくお願いしま──」
小柄な人間がケチャップの海に倒れている。この人がグラントリノか。転んで倒れてそのままなの、としたら変な所を打って意識が無いの──
グラントリノ
「誰だ君は!?」
ムクリと起き上がって俺に尋ねてくる。
精
「雄英から来た緑谷出久です!」
グラントリノ
「何て!?」
精
「緑谷出久です!!」
グラントリノ
「誰だ君は!!」
精
「土口精です!!」
グラントリノ
「なぜ違う名前を言った!?!?」
精
「聞こえてるじゃねえかよクソジジイ!! あとマイトから知らされてねえのかよ!!」
年の割にはなかなか舌戦が上手いな。こういうボケたふりをしている老人は厄介だ。
グラントリノ
「飯が食いたい」
精
「何が食いてえ!! 作ってやる!!」
グラントリノ
「たい焼きがいい」
精
「型あるか!?」
グラントリノ
「ない。冷凍ので十分だ」
精
「ああそうかい!!」
OFASで動いて冷凍庫を開け、たい焼きを電子レンジに等間隔で並べてチンする。
グラントリノ
「──ほぉ、OFAを手にしたばかりにしては中々出来るじゃないか」
雰囲気が変わった。老練の人間が醸し出す特有の威圧感を感じる。
グラントリノ
「打ってきなさいよ! ワン・フォー・オール! どの程度扱えるのか知っときたい!」
精
「……コスチューム着ていいですか?」
改善したコスチュームを身に纏う。刀の柄が
精
「さて……まずは"個性"の扱いから見てもらいましょうか。マイトと比べてどうなのか……しっかり判断してくださいね!」
グラントリノ
「威勢だけはいいな受精卵小僧!」
初日から実戦とはなかなかいい職場体験になりそうだ。