抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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2-13 鞭と言ったら縛りプレイ

 立ち上がった飯田の不意打ちのおかげで多少状況が有利になった。

 

 精

「友達の復讐を手伝うのもまた一興! 気を抜くんじゃねえぞお前ら!」

 ヒーロー

「応戦するより逃げた方がいいって!!」

 精

「そしたらあなたと飯田が危険でしょう! 少なくとも俺じゃないとまともに戦えないですって!」

 

 先ほどからヒーロー殺しの動きが変わった。焦りを帯び始めているが、それゆえに本気になっている。方向さえ間違っていなければ尊敬に値する執着心だ。

 

 精

「飯田のレシプロが残っている間にケリをつけるんだ! 轟は飯田のエンジンを冷やしてサポート頼む!」

 

 OFA10%を纏ってヒーロー殺しの周りを飛び交う。すれ違いざまに右手でチューベローズを叩き込む──

 

 ステイン

「甘い」

 精

「手前の考えがか!?」

 

 瞬間に手を開き隠し持っていた硬貨をステインの顔に向けて弾く。同じ暗器使いとして何かを感じ取ったのか、見切られて硬貨が奴の背後を走る。

 

 ステイン

「貴様の考えがっ……!?

 精

「こういうプレイは好みじゃねえんだよ……昇天絞首刑(ヘヴンハンギング)

 

 俺は左手の黒鞭で回り込むように引き寄せていた硬貨を左手で引っ張る。同時に硬貨に結び付けておいた糸を引っ張る。ステインの首に糸が食い込み、気道と頸動脈を絞める。

 

 ステイン

「ぐっ……!」

 

 ヒーロー殺しと言えど首を絞め続ければ苦しくなる。耐えきれず隠し持っていたナイフで糸を切られる。

 

 精

「その一手がほしかった」

 

 糸を切った瞬間、30%の拳の衝撃波と飯田のレシプロバーストシュートがヒーロー殺しに叩き込まれる。空中で折れた刀を飯田に刺そうとしていたが、轟の炎に焼かれて氷に叩きつけられて動けなくなった。

 

 精

「よし……武装解除して縛ってプロに引き渡そうぜ。縛るのは俺に任せろ」

 

 戦いの場所がゴミ置き場だったこともあり、お目当てのロープが見つかった。折角だし『金色の狂犬』お得意のアレやりますか。

 

 轟

「随分手馴れているな……」

 飯田

「だが、普通の縛り方ではないな……?」

 ヒーロー

「……最近の子供は進んでるなあ……」

 

 これはあくまで見た目だけだ。これを施した上で手と腕を拘束する。これで準備万端、早速大通りに出てプロヒーローに渡そう。

 

 グラントリノ

「む!? お前!!! ここにおったか!!!」

 精

「良い実戦経験ができましたよ。なにせ"ヒーロー殺し"捕まえましたから」

 

 大通りでばったり出会ったグラントリノに手柄の報告をする。それに続いて轟が呼んだであろうプロヒーローたちも到着する。これで一件落着────

 

 飯田

「二人とも……僕のせいで傷を負わせた、本当に済まなかった……何も……見えなく……なってしまっていた……!」

 

 飯田が泣きながら謝る。

 

 精

「……委員長権限で命ずる。俺に天丼を、轟に天ざる蕎麦を腹いっぱいになるまで奢れ。それで許す」

 轟

「委員長がこう言ってくれてるんだ、しっかりしてくれよ」

 飯田

「……うん……」

 

 言質取ったからな。特待生権限でどれだけ安くなってるか思い知らさせて────凄まじい敵意を感じる。咄嗟に地に伏せる。が、それでも掴まれる。

 

 精

「翼の生えた脳無!? 手加減不要──」

 

 30%の力で蹴ろうとした瞬間、脳無が動かなくなる。

 

 ???

「偽者が蔓延るこの社会も……徒に"力"を振りまく犯罪者も粛清対象だ……ハァ……ハァ……」

 

 何と"ヒーロー殺し"が脳無を殺し、俺を助けた。

 

 ステイン

「全ては正しき社会の為に」

 

 エンデヴァーも到着しプロヒーロー勢ぞろいの番面で、ヒーロー殺しはヒーロー達に向け語りだす。

 

 ステイン

「贋物……正さねば……誰かが……血に染まらねば……! "英雄(ヒーロー)"を取り戻さねば!! 来い、来てみろ贋物ども……俺を殺していいのは本物の英雄(オールマイト)だけだ!!

 

 プロや大の大人が立ち竦むほどの気迫を放つ。俺も流石に一瞬怯んだ。だが──

 

 精

「亀甲縛りされてる変態がかっこつけるんじゃねえよ」

 

 俺はがら空きの顎にアッパーを叩き込む。亀甲縛りを施された"ステイン"の体が宙を舞う。

 

 精

「……本物の"英雄(ヒーロー)"か……」

 

 地に倒れたステインは意識を失い動かなくなった。後から聞いた話だが、この時のステインは折れた肋骨が肺に刺さっていたそうだ。そんな重症の中で立ち向かった奴の執念はすさまじいものだ。そこだけは認めざるを得なかった。

 

 

 保須市総合病院に入院して一夜が明けた。轟と飯田は結構な怪我をしていたが、俺は左指のかすり傷で済んだ。

 

 轟

「あの場をかすり傷一つで切り抜けたお前って化け物か?」

 精

「俺が化け物……? 違う、俺はω-99だ……」

 飯田

「轟くん、仲間を化け物呼ばわりするのは良くないぞ」

 精

「明確に殺意を向けられて生き延びた飯田も、十分人間離れしてると思うけどな」

 

 なんだかんだ話しているとグラントリノとヒーローとスーツを着た犬面人がやって来た。

 

 グラントリノ

「保須警察署署長の面構(つらがまえ)犬嗣(けんじ)さんだ」

 面構

「君たちがヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね」

 

 ワンて。その身なりと肩書からワンて。場が場だったら大笑いしてたぜ。ただ、警察のお偉いさんが直々に来たということは結構な話が始まるのだろう。

 

 面構

「ヒーロー殺しだが……火傷に骨折となかなかの重傷で現在治療中だワン」

 

 それで軽傷だったら驚きだ。トラックに轢かれても意識を失うだけだった俺の先輩じゃあるまいし。

 

 面構

「資格未取得者が保護管理者の指示なく"個性"で危害を加えたこと……たとえ相手がヒーロー殺しであろうともこれは立派な規則違反だワン」

 

 以前の授業で"個性"の歴史について勉強して知ったことだが、超常黎明期に警察は統率と規格を重んじ"個性"を"武“に使わないことに決めた。容易く人を殺めかねない"個性"をヒーローが武力行使できるのは、先人達がルールやモラルを守ってきたからだ。

 

 精

「でしょうね。退学処分は免れないよなあ……短い青春だったなあ……でも、いい教訓になったと受け止めま──」

 轟

「何言ってんだよ緑谷!? 規則を守って見殺しにすればよかったって言いたいのかよ!?」

 精

「そういう話じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って話だ」

 

 俺の所属していた治安管理委員会の大原則は『法や条例に則る』だ。それを破った者には然るべき罰がある。減給、降格、謹慎……果ては除隊。厳格な規則と罰の下で治安、ひいては社会が成り立つのだ。

 

 轟

「―……人をっ……助けるのがヒーローの仕事だろ」

 

 轟の言っていることは最もだ。しかし──

 

 精

()()()()()()人を助けるのがヒーローの仕事だろ」

 

 だからこそ大前提は守らないといけない。俺たちはまだヒーローの卵だ。いずれヒーローを目指す者としてヒーローの前提を、社会の前提を守らなければならない。

 

 精

「『やりたいようにやれ』……だからこそ正しく行うべき──」

 面構

「待つんだワン二人とも……これはあくまで()()()()()の話だワン」

 

 面構さんが面白ろそうな話を切り出してきた。

 

 精

「……口裏合わせですか?」

 面構

「君は鋭いワンね……ヒーロー殺しの火傷痕からエンデヴァーの功績にできるワン」

 

 流石警察のお偉いさんだ。善良な市民を助けるためなら、そういう手段も選択肢として出てくる。

 

 精

「それでお願いします。俺たちは前途ある若者なので」

 飯田

「さっき短い青春だったと言っていなかったか……?」

 

「コイツ…………」

 

 規則に則っているあれば汚い手段も平気で使う。人生を上手く楽しくやっていくのなら、これぐらい図々しくなった方が良い。

 

 面構

()()()()()で君たちが受けていたであろう称賛の声は無くなってしまうが……せめて共に平和を守る人間として……ありがとう」

 精

()()()()()()()に大人が苦労するのは世の常ですから。こちらからもありがとうございます」

 

 話の分かる人で良かった。これで俺の青春はまだまだ続いていきそうだ。

 

 精

「っていうことがあったのよ。心配かけてごめんねお茶子ちゃん」

 お茶子ちゃん

『ううん、デクくん達が大丈夫ならよかったよー……』

 

 野郎だらけのムサい空間から抜け出しお茶子ちゃんと話す。脳内再生ができるお茶子ちゃんの声だが、生お茶子ちゃんは格別だ。

 

 お茶子ちゃんの所のヒーロー

『ウラビティちゃん基礎トレやるよ』

 精

「っと、お忙しいところ悪いね。学校で会ったら色々話すよ」

 お茶子ちゃん

「うん! じゃ! またね!」

 お茶子ちゃんの所のヒーロー

『……コイバナ?』

 精

「今はまだ違います」

 お茶子ちゃん

『ちょ、デクく』

 

 やっぱり女の子との会話って心が躍る。

 

 

 職場体験も最終日になりグラントリノに別れを告げる日が来た。

 

 精

「短い間だが世話になったぜグラントリノ。おかげでかなり"個性"が成長した。あのヒーロー殺しにもそれなりに立ち向かえた」

 グラントリノ

()()()()()()()()()()()()相手にだ……まァ……左手のかすり傷だけで済んじまった以上立ち向かえたと言っていいだろうな」

 

 これでも故郷で結構な修羅場を潜り抜けてきたんだ。

 

 グラントリノ

「それに世話をされていたのはこっちだった気もするがな。きちんとした三食におやつまで付いてきて……手放すのが惜しいぐらいだ」

 精

「次合う時の料理の腕は保証しかねますね。なにせ、いつ元の緑谷出久になるか分かりませんから」

 グラントリノ

「……ああそうか。元の緑谷出久を連れ戻すのが目的だったか。どうやったらできるか俺にも見当つかねえが……頑張れよ」

 

 言われなくても頑張るつもりだ。皆目見当もつかない暗中模索だが、なんとしてでも成してやる。

 

 グラントリノ

「小僧! 誰だ君は!?」

 精

「懐かしいな……緑谷、いや、土口精」

 グラントリノ

「違うだろ」

 

 なるほど。粋な計らいをしてくれる爺さんだ。

 

 精

金色極点 ω-99だ。死ぬまで覚えておいてくれ──」

 

 ヒーローとして生きる──そう思うと心のどこかがキュッとする。何故だろうか。ステインの思想に触れてしまったからだろうか。

 

 精

「──その前にボケて忘れそうだな」

 グラントリノ

「余計なお世話だ」

 

 考えても仕方がない。まずは学校に帰って皆と色々話したい。




次回、土口のヒーロー像が明らかになります。
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