抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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第二期最終回です。


2-16 九玉:エンカウント

 闇のブローカー義爛の紹介の下、我はとあるバーにやってきた。鎧の下の我が紫の眼がバーにいる人間を捕らえる。金髪に二つ結びの女子(渡我被身子)火傷痕が痛々しい男子(荼毘)手で顔を隠した男(死柄木弔)頭部が霧の男(黒霧)……

 

 渡我

「トガです! トガヒミコ、生きにくいです! 生きやすい世の中になってほしいものです! ステ様になりたいです! ステ様を殺したい! だから入れてよ弔くん!」

 

 生きにくいから世界を変える、思想や欲望はともかく真っ当だ。

 

 荼毘

「今は『荼毘』で通してる」

 死柄木

「通すな本名だ」

 荼毘

「ヒーロー殺しの意志は俺が全うする」

 

 他者の思想を引き継ぐ、おかしなことではないが妙な違和感がある。

 

 死柄木

「どいつもこいつもステインステインと……」

 九玉

「まて、我まで一緒にするな……我が名は『九玉』。この世界の者ではない」

 死柄木

「まともな奴いねえのかよ……だめだおまえら」

 

 死柄木がこちらに向けて手を伸ばす。我はその手を誰よりも早く掴む。黒い鎧が"崩壊"していく。そして我の姿が露になる。長く紅い髪、紫水晶を訪仏させる瞳、豊体と言っていい体格、そして──炭よりも黒く染まった体。

 

 渡我

「うわわ、意外とセクシーです」

 荼毘

「その前に言うことあるだろ。あんた人間か?」

 死柄木

「その真っ黒な全身……脳無か?」

 九玉

「そうだ。故に我になる前の記憶はない」

 

 我の身の上の話をしよう。我はここではない別の世界で生み出された脳無だ。世界に秩序をもたらすべく生きていたが、『宇宙一のヒーロー』に敗れ元いた世界の平和を取り戻そうとしていた。その時に関わった平行世界の人間を、我の"個性"の一つ『世界移動(ワールド・シフト)』を使い元の世界に戻していたのだが、その中の一人である土口精を戻す際に"個性"の加減を間違えてしまい、この世界の緑谷出久と入れ替わることになってしまった。

 

 九玉

「我の目的は……緑谷出久だ。敵連合に所属すればいつかは出会えるだろう?」

 

 故に我の目的はただ一つ、この世界にいる『土口精が入っている緑谷出久』を元に戻すことだ。

 

 死柄木

「なるほど……一番やばいと思っていた奴が一番マトモだな……九玉、お前は採用だ。だがあとの二人は」

 黒霧

「落ち着いて下さい死柄木弔……あなたが望むままを行うのなら組織の拡大は必須……」

 

 黒霧が死柄木に何かを耳打ちする。すると死柄木は不機嫌そうに部屋を出ていった。

 

 九玉

「……若さゆえの不安定さだな」

 渡我

「殺されるかと思った!」

 荼毘

「気色ワリィ……」

 黒霧

「渡我さんと荼毘さんはもう少し待ってもらってもよろしいでしょうか? 必ず導き出すはずでしょう。あなた方も死柄木自身も納得するお返事を……」

 

 一同解散という流れになったが我はバーに残り黒霧に話しかける。

 

 九玉

「一杯貰ってもいいか?」

 黒霧

「歓迎としてご馳走しましょう。何にしますか?」

 九玉

「かーるみらくるを頼む」

 黒霧

「カルーアミルクでしょうか? もちろんいいですよ」

 九玉

「……かたじけない……」

 

 我はいわゆるカタカナ語が苦手だ。6文字を超えると怪しくなる。我の"個性"も最初はワード・フトシだと思っていたほどだ。

 

 

 色々すっきりした期末試験も終わり、澤先の合理的虚偽によって1-Aみんなで林間合宿に行けることになった。ということで準備のために木椰区ショッピングモールにやって来た。

 

 精

「ショッピングモールに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ~」

 お茶子ちゃん

「ショッピングモールに来たみたいじゃなくて来たんよ」

 梅雨ちゃん

「緑谷ちゃんにいつものキレが戻ったわ」

 

 お茶子ちゃんと梅雨ちゃんのツッコミが気持ちいい。皆目的のものがバラバラなため自由行動となる。さて、キャンプ用品一式を買って──

 

 ???

「お──雄英の人だスゲー! サインくれよ!」

 

 黒いフードを被った白とも銀ともとれる髪色の男に絡まれる。

 

 精

「サインくらいSPECIALTHANKS……だから色紙出して──」

 

 男から明らかな敵意を感じる。一歩身を引く。

 

 ???

「おいおい、サインぐらいいだ──」

 精

「特別サービスしてやるよ。あの店と店の間とかどうだ?」

 

 人混みの流れに逆らい人目のつかない場所に移動する。

 

 精

「……で、あんた誰だ?」

 ???

「ひどいなあ……()()()()()()()忘れるなんて……」

 

 フードを取って顔が明らかになる。赤い目に血走った白目。さらっとした唇。ヤバイ。マジで覚えがない。

 

 精

「……悪い、本当に誰だ? なんか見覚えはあるような気がするんだけど……」

 ???

「コレがあれば見覚えがあるんじゃないかな?」

 

 男がポケットから手を取り出す。そしてそれを顔につける。

 

 精

「あっ!!! 手マンや────」

 手マン

「騒ぐな大声を出すな」

 

 喉元に四本の手が当てられる。確か触れたものを壊す"個性"を持っていたはずだ。

 

 手マン

「あと死柄木弔だ。卑猥にさせるんじゃない」

 精

「……卑猥にさせるんだったら『自主規制』*1マンだろ」

 

 さてどうする。人目のつかないところでコイツの"個性"を喰らったら行方不明扱いになるだろう。

 

 精

「まさか俺に敵連合に入れって勧誘か? かわいい女の子がいたら考え──」

 死柄木

「だいたいなんでも気に入らないんだけどさ、今一番腹が立つのはヒーロー殺しさ」

 

 雄英襲撃も保須の脳無も全部ヒーロー殺しの話題にかっさらわれて、死柄木に目が向かないのがご不満らしい。

 

 死柄木

「俺と何が違うと思う? 緑谷」

 精

「んー……信念の深さかな」

 

 死柄木と関わった襲撃事件でコイツは簡単に諦めようとしていた。もしあの場にステインがいたら、何が何でもオールマイトを待っただろう。

 

 精

「お前が何を目的としてやってるかは知らないが、あまり熱が伝わらなかった。対しステインは明確な目的とそれを実現させかねない執念があった。悪に貴賤を付けるのはアレだが……ステインの方が注目されるのは当然じゃないか?」

 死柄木

「流石雄英生……ズバッと言ってくれるなあ……」

 

 まだ策が思いつかない。ここは時間稼ぎさせてもらおう。

 

 精

「んじゃ、今度は俺からの質問な。お前は何のためにオールマイトを殺そうとしているんだ?」

 死柄木

「オールマイトがムカつくから以外に何があるんだ?」

 精

「そのマイトへのムカつきの原因だよ。オールマイトに彼女を寝取られたか?」

 死柄木

「……オールマイト(あのゴミ)がヘラヘラ笑っているからだよ……ああそうさ……! 救えなかった人間など居なかったかのようにヘラヘラ笑ってるからだよ!!

 精

「どんな奴にも救えなかった人間ぐらいいるさ。その上で笑うって言うのは……滅茶苦茶難しいことだ」

 死柄木

「あ……?」

 

 死柄木が何言ってんだコイツという顔で俺を見る。

 

 精

「折角だし……敵である死柄木弔じゃなくて、ここで知り合った一般人ガラキングとして話してやるよ」

 ガラキング

「ガラキング……お前の命名センスどうなってんだよ?」

 精

「まあまあ、俺が救えなかった人間の話をしてやろうってんだ。ちっとは参考になると思うぜ?」

 

 

 俺は故郷の妹に約束をしておきながら、その約束を果たせずに死なせてしまった。交通事故とは言え、妹を救えなかった事実に変わりはない。その失意に駆られた中、先輩から『やりたいようにやれ』という言葉を受けて立ち上がり強くなっていった。

 

 ガラキング

「……で、それが何だっていうんだ?」

 精

「この話には続きがあるんだ」

 

 ある出来事をきっかけにもう一度妹と会うことがあった。だがその妹は俺の知る妹ではなくて、愛と憎しみと復讐に動く悲しい存在になっていた。最後の最後に抱きしめることはできたが、それまではただ俺の妹を演じさせてしまった。

 

 ガラキング

「……死んだ妹に会った? お前頭おかしいんじゃないのか?」

 精

「平行世界ってやつだ。信じる信じないは勝手だが……そんなことがあっても俺は前を向いて進むことを決めた」

 

 救えなかったからこそ。()()()()()『やりたいようにやれ』を貫いて生きていく。それが妹への手向けであり答えだ。

 

 精

「ガラキングの話を聞くに……()()()()()()()()()()からムカついてるんだろ? この"個性"社会やその代表であるオールマイトに」

 ガラキング

「……お前なんなんだ? 本当に高校生か?」

 精

「ここまで来たら話しちまうか。見た目は緑谷出久だが中身は土口精っていう人間なんだ。故郷から連れ去られて、なんだかんだあってこうなっちまったんだ」

 ガラキング

「まて……さっき平行世界って言ったか?」

 精

「ん? ああ、信じてくれる?」

 

 ガラキングがカラカラと笑いだす。

 

 ガラキング

「なるほどなあ……アイツの言っていたことは本当か……! としたら敵連合はとんでもないことになるぞ……!」

 精

「アイツ? 誰だ?」

 ガラキング

「お前に言っても分からないだろうから言ってやるよ……九玉って奴だ……!」

 精

「っ!? 九玉さんが敵連合にいるのか!?」

 

 ガラキングがぴたりと笑うのを止めた。

 

 ガラキング

「……知り合いか?」

 精

「知り合いも何もこの世界に飛ばされた元凶だよ! あの人が故郷に戻すって言ったのにこうなって苦労して──」

 お茶子ちゃん

「デクくん? 誰かと話してるの?」

 

 何故かお茶子ちゃんが来た。いつもだったら大歓迎だが今は見て見ぬふりをしてほしい。

 

 精

「そうそう! ダチのガラキングと会って話していてさ! だから──」

 お茶子ちゃん

「その人の顔の手……もしかして死柄木弔じゃ……」

 精

「そ、そんなわけないじゃん! ほら! ヒーロー殺しのアイマスクみたいに、死柄木弔のハンドマスクがあるんだよ!」

 

 コイツからもっと情報を聞き出したいがこれ以上は無理そうか。

 

 ガラキング

「なんだ連れがいたのか。ごめんごめん」

 

 ガラキングが俺の首から手を離す。奴もこれ以上の会話は無理と判断したか。

 

 精

「……ガラキング!! 次会ったらもっと色々話そうな!!」

 ガラキング

「最後までそれで呼ぶのかよ……まあ、色々話してやるよ」

 

 そう言ってガラキングは人混みに消えた。

 

 精

「お茶子ちゃん……警察とヒーローへの通報お願い。アイツ死柄木弔だった」

 お茶子ちゃん

「わ、分かった!」

 

 死柄木弔と話して分かったことがある。あいつもきっと"個性"社会の被害者なのだろう。溢れるほどヒーローがいるのに助けてもらえなかった。救いの手を差し伸べられなかった人間は容易く狂ってしまう。

 

 精

「……俺のために『やりたいようにやれ』……か……」

 

 

 ばーでわれはくろぎりとはなしている。

 

 九玉

「だからわれはちつじょになりたくてぇ……せかいをただしたくてぇ……」

 黒霧

「そうだったのですね……九玉さんも大変な思いをしたのですね……」

 九玉

「でもまもれなくてぇ……それで『うちゅういちのひーろー』にたすけてもらってぇ……われのはなしをきけえくろぎりいいい!!!」

 死柄木

「戻ったぜくろぎ──おいなんだこの酔っぱらいは」

 

 どこからともなくしがらきがあらわれる。

 

 九玉

「きいてくれしがらきいいい!!! くろぎりがわれのはなしをきかないんだあああ!!!」

 死柄木

「うーわ、うっざ……何飲ませたんだ?」

 黒霧

「カルーアミルクを2杯だけです……まさかここまで酔うとは思いませんでした……」

 九玉

もういい!!! いやがらせしてやる!!! "そうぞうせよ!"!! "くろぎりはばくてんする"!!!」

 黒霧

「え、おおお!?」

 

 くろぎりがたなにむかってばくてんする。たながこわれてびんがわれてゆかいだ。

 

 九玉

うははは!!! われをたのしませ――ぐう……

 死柄木

「寝やがった……大丈夫か黒霧?」

 黒霧

「け、怪我はないですが……ああ、私のコレクションが……」

 

 翌日、目を覚ますとバーが荒れていたが何があったのだろうか? 黒霧に聞いてみたところ、貴女にしばらくお酒は出さないと言われてしまった。とりあえず分かったことは、脳無の身体でもアルコールは良くないということだ。

 

 九玉

「我だ。九玉だ。ついに我ら敵連合が動き出す。そして土口精も己の目的のために動き出す……第3期も必ず見るのだ」

*1
愛を持って撫でる行為




ナイスバディ赤髪カタカナ苦手酒ヨワ脳無と属性過多の九玉さんです。
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