抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
二日目のAM5:30。皆が寝惚け眼の中、俺はしゃっきりぽんと目覚めている。
精
「皆だらしねえな……これだから若者は」
お茶子ちゃん
「デク君が早起きすぎるんよ……ていうかデク君同い年だよね……」
精
「皆に目覚めのキスをしてもよかったんだぜ?」
梅雨ちゃん
「緑谷ちゃんならともかく峰田ちゃんならやりかねないわ……」
実
「オイラだって男にはやらねえよ……」
澤先
「くだらないこと喋ってる暇があったら鍛えろ」
澤先が登場し場の空気が引き締まる。この合宿の目的は全員の強化及びそれによる"仮免"取得だそうだ。
精
「ヒーローって免許制なんだ……」
ロゼショット
「お前変な所で知らない物あるな」
ロゼショット*1に言われるということは相当な常識なのだろう。と言うことで早速"個性"伸ばしの訓練が始まる。
マンダレイ
「煌く眼でロックオン!!」
ラグドール
「猫の手手助けやって来る!!」
虎
「どこからともなくやって来る……」
ピクシーボブ
「キュートにキャットにスティンガー!!」
プッシーキャッツ
「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」」」
なかなかいい口上だ。故郷に帰ったらまた新しい口上を考えるか。ワイプシの皆様の協力の下、訓練を受ける。俺の"個性"は発動型の一種の増強型をベースにした複合型らしいので、虎さんの我ーズブートキャンプを受ける。
精
「ハッハー! 俺の独壇場じゃんかよ!」
早速OFAS10%を発動する。楽しくてしょうがない。
虎
「言うではないか……打って来い」
精
「10%アイランドスマッシュ!!」
ただただスマッシュ言うのも芸がないので故郷の『島』を名付けた。
虎
「よォォォしまだまだキレキレじゃないか!!」
虎さんが人間じゃない動きで避ける。"軟体"ってそこまでできるのか。
虎
「筋繊維が千切れてない証拠──」
精
「んじゃ、千切れさせるぐらい本気にさせてくださいよ」
虎さんのキャットパンチを軽く受け止める。虎さんがにやりと笑う。
虎
「ならば……我が直接相手してやろう……! 吐いた唾飲むんじゃないよ!」
精
「プロ相手は3度目なので遅れは取りませんよ!」
そして──
虎
「なるほど……言うだけはあるな……! 我も本気を出してしまった……!」
精
「や、やっぱプロはすげえや……」
1時間ほど渡り合ってボコボコにされた。攻めようにも予測できない動きで回避され、守ろうにも見切ることができず受けるしかない。人間の動きをしない相手はどうも苦手だ。持っている"個性"全てを使っても敵わなかった。
精
「あとはコスチュームと"個性"の組み合わせだから……体育着じゃこれが限界──」
虎
「言い訳する暇があったら体を動かす!」
精
「ぐはぁ!」
故郷の先輩が教官をやっていた時を思い出す。アレから罵詈雑言の意味不明さが無くなって、暴力が多くなった感じだ。時間になるまで虎さんにバチボコに扱かれた。
今晩の夕食は俺達が作るみたいだ。早速手を洗って腕をまくる。
精
「体動かすのキツイから黒鞭で──」
ピクシーボブ
「緑谷くんは手出し禁止! 君一人で全部出来ちゃうから!
真っ当な理由だがめっちゃ私欲入ってるじゃん。まあいい。折角だからガチでカレー作りますか。まずは黒鞭で玉ねぎの皮を剝き、鞭を細めてみじん切りにしてフライパンで炒める。
ラグドール
「もう入れちゃうにゃん!?」
精
「飴色に炒めた玉ねぎはルーにコクを与える」
ちなみに飴色になるまでは40から50分炒める必要がある。その間は焦げないように適度に混ぜながら、ニンジンやジャガイモを良ーく洗って切って鍋で炒める。このあたりで飯盒に火をつけてご飯を炊く。
虎
「ほう、皮ごと入れるか……」
精
「皮ごと食べた方が栄養摂れますから」
野菜と言うのは皮にまで栄養がある。良く洗って土や汚れを落として皮ごと食べよう。根菜についている土にはウェルシュ菌がついていることがある。嫌気性*2で煮込み料理の食中毒の原因にもなるためしっかり落とそう。野菜に火が通ったら肉を入れる。
マンダレイ
「昨日も見たけど本当に手際がいいわね……」
精
「キャンプで飯作るもの慣れてますから」
故郷の訓練の賜物だ。飯盒の火を調整しつつ鍋の具材に火が通ったら、水を入れて煮込んで灰汁を取る。ある程度灰汁をとったら飴色になった玉ねぎとルーを入れて煮込む。このあたりで飯盒の火を止め、ひっくり返して蒸らす。こうすると炊きムラが少なくなる。カレーが煮え、ご飯を蒸らし終わったら盛りつけて完成だ。
精
「お待たせしました。『カレーライス~汗と涙と青春の合宿仕立て~』でございます」
ピクシーボブ
「いただきます! おいしい! 結婚して!」
虎
「ピクシーボブ……美味いのは認めるが急ぎ過ぎだ」
ラグドール
「いやマジでおいしいにゃん! お店で出せるレベルにゃん!」
マンダレイ
「本当に私達の事務所に入れちゃおうかしら……」
マンダレイさん、あなたが止めなかったら虎さんしかストッパーいなくなりますよ?
澤先
「本当に美味いな……ランチラッシュさんのとこに弟子入りしたらどうだ?」
ブラ先
「悔しいが……認めるしかないな……」
先生たちも何言ってるん──視界の端で洸汰君が一人でふらりとどこかに行く。子供一人じゃ危ないだろう。カレーの宅配サービスもしてやるか。
洸汰君の足跡を辿って高台に到着した。
精
「腹減ったろ? 食うか? うまいぞ?」
洸汰
「てめェ! 何故ここが……!」
精
「追われたくなかったら足跡を消しな。痕跡一つありゃ追跡可能だ」
どうも秘密基地らしいから出ていってほしいらしい。
洸汰
「"個性"を伸ばすとか張り切っちゃってさ……気味悪──」
精
「両親がヒーロー活動で死んだからって"個性"を否定すんなよ」
だが、俺としては引けない理由がある。
洸汰
「…………マンダレイか!?」
精
「疑惑は最初からあったがな」
洸汰
「…………頭イカレれてるよみーんな……馬鹿みたいにヒーローとか敵とか言っちゃって殺し合って"個性"とかいっちゃって……ひけらかしてるからそうなるんだバ──カ」
やはり洸汰君はヒーローや"個性"、超人社会そのものを否定している。
洸汰
「なんだよもう用ないんだったら出てけよ!」
精
「用があるから残ってんだよ」
俺は光多君の横に座ってカレーを食べながら話し始める。
精
「俺もこの社会はおかしいと思っているさ」
洸汰
「は……?」
精
「自分を犠牲にして、それが無条件に称賛されて、死んでもそれが名誉だと言われる……戦国時代かっつーの」
洸汰
「……じゃあ、何でお前はヒーローを目指して──」
精
「そもそもヒーローになるのが俺の目的じゃない」
俺の目的は『元々の緑谷出久と再び入れ替わって故郷に帰る』であって『ヒーローになる』ではない。『ヒーローになる』は
精
「でもな……その社会に生きている人間がどんな思いで生きているのかも知らないで、最初っから否定するのは良くないと思う」
故郷で起きた事件を思い出す。俺の友人は故郷に生きる人間の思いも知らずに故郷を壊しかけた。そのことを友人は今でも反省している。他者が許そうと、自分が許してはいけないといつも言っているのだ。
精
「この社会を受け入れろって言うつもりはないけど……もうちょっと社会を学んだ方が良い。その上で否定するっていうならご自由にしてくれ」
カレーをかきこんで胃に収める。結構おいしかったな。おかわりあったっけ。
精
「これで用は済んだから出てくよ……あ、カレー食っちまった。悪い。おかわりあったら持ってくる──」
洸汰
「うるせえズケズケと!! 出てけよ!!」
流石にキレられた。勝手に持ってきておいて勝手に食われたらキレるだろう。俺だってキレるかもしれない。
精
「あ、そうだ。詫びと言ったらアレだが俺の秘蔵のスケッチ見る?」
洸汰
「いいから出てけ!!」
昨日の深夜に俺の"個性"をノートにまとめながら描いた、1-Aガールズの裸婦スケッチだというのに。折角だから今日の俺のオカズにでもさせてもらうか。いや、実の性犯罪防止のために渡しておくか。あいつのことだし今夜また覗きとかするだろ。
夜中になって実がいなくなったのであとを追う。腕相撲? そんなことより俺は重大な任務があるんだ。早速実を見つける。
精
「おいコラ実……」
実
「ゲェッ、緑谷……!?」
精
「……これで我慢しろ」
俺は実にスケッチを渡す。
実
「っ……! お前……!」
精
「ミンナニハナイショダヨ」
実
「おう……! 早速トイレに行ってくる……!」
一応黒塗りの修正を入れておいたし、顔には目隠しの黒線も入れておいた。大丈夫、バレなければイカサマでも犯罪でもない。バレたとしても実が勝手に描いただけと押し付ければいい。帰ってきたら枕投げの大騒ぎになっていた。"個性"禁止? "個性"強化の合宿で"個性"禁止とはB組も随分ぬるいことを言うな。
物間
「だったら本気でやろうじゃ──」
精
「確かお前補講だろ? 失せろ屑畜生馬鹿男」
俺のノンデリ発言に物間が消沈した。その隙にB組の枕を黒鞭で奪い、顔面に叩きつける。
精
「俺の勝ち。なんで負けたか明日までに考えていおいてください。ほな、おやすみなさい」
と言って眠ったはいいものの、深夜の物音で目が覚める。
精
「なぁにやってんだいいだぁ……?」
飯田
「み、緑谷くん……! 起こしてしまって済まない……!」
なんでもメガネ探しをしているそうだ。ωセンスを使ってさっくり見つけるか。
外からする物音が気になるので、飯田にメガネの場所だけ教えて音の発生源に向かう。
ピクシーボブ
「さーて、勝ったら緑谷くんを斡旋してもらうわよ……!」
澤先
「生徒の将来賭けて麻雀する教師が何処にいるんですか……」
なるほど麻雀か。ちょっと興味があるから参加しちゃおう。
精
「だったら本人が賭けたらOKってことでどうですか?」
澤先
「緑谷……聞こえちまってたか……」
精
「一局打たせてくれたら黙っておきますよ」
ブラ先
「しかし、子供が深夜に麻雀など……」
精
「ヒーロー活動に朝も昼も夜も深夜もないでしょう? それにここぞの勝負強さはヒーローにも必要でしょうから」
マンダレイ
「口が達者ね……これは強敵かも」
精
「おっと手積みの麻雀卓ですか……自動卓がよかったなあ……」
ピクシーボブ
「あらあら、大人の麻雀と言ったら手積みよ?」
俺を起家として始まるようなので牌をある程度眺めて記憶し、素早く積み上げる。そして器用にサイコロを振って俺の目の前に山が残るようにする。そして──一瞬でツバメ返し*3をする。そして困った顔で理牌する。
ピクシーボブ
「あらあら? アレだけ言っておいてルールが分からなかったりして?」
精
「いや~それがですね。和了ってるんですよ」
九萬3枚2ピン3枚9ピン3枚東3枚中2枚の手牌を開く。
精
「まいっちゃいますよねェ、これは天和です」
天和、四暗刻のダブル役満でグッドゲームサンクスだ。澤先を除いた大人たちが驚愕している。
ブラ先
「嘘だろ……?」
マンダレイ
「対面だったけど分かんなかったわ……」
ピクシーボブ
「……イレイザー、見えた?」
澤先
「絶対やると思って見ていましたが……あれは事前に警戒してなければ分かりませんよ」
精
「……イカサマ無しでもう一回やります? できれば脱衣麻雀で」
澤先が止めに来たがブラ先こういう生徒は指導しないと、と乗ってくれた。ピクシーボブとマンダレイは妙な顔で黙っていた。ちなみに分かりやすい打ち筋を刈り取る形で、ブラ先をパンイチにして俺がトップで勝った。
ブラ先
「嘘だろ……プロが子供に……」
精
「プロはプロでもプロヒーローでしょう? 麻雀力には関係ないですよ」
澤先
「お前本当にいやらしい打ち方するな……平気な顔で愚形でリーチかけやがって……」
マンダレイ
「かと思えば三面待ちをダマテンするし……」
ピクシーボブ
「遊びで混一色の七対子とかやらないでほしいわ……読めるわけないでしょ……」
故郷で麻雀と言ったら脱衣麻雀だったので、俺は麻雀が滅茶苦茶上手い。飛ばして裸にした人の数知れず、付いた通り名は『剝こうぶち』だ。