抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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3-04 クソガキは分からせてやらないといけない

 合宿も三日目に突入する。今日は虎さんに前日の5割増しでバチボコに扱かれてマヂ死にそう。

 

 虎

「ピクシーボブが言っておった……お前は悪い男だと……!」

 精

「だ、だったらピクシーボブさんは……ズルい女ですよ……」

 虎

「良い男は女のせいにしない!」

 精

「それはそうですねぇ!」

 

 今のは失言だった。気を引き締めないと。

 

 ズルい女

「ねこねこねこ……今日の晩はねぇ……クラス対抗肝試しを決行するよ!」

 精

「肝試しか……あんまり得意じゃないんだよね……」

 常闇

「ほう……お前にも苦手な物があるとはな……」

 精

「いや、気配察知出来ちゃうからうまく驚けないんだよね」

 

 例外がいるとはいえ故郷の一番隊に所属しているならできて当然だ。

 

 精

「それに本気で驚かした相手が汁という汁を出して倒れたんだよね」

 響香ちゃん

「何やったらそうなるの……」

 

 糸で拘束した所に狼の被り物をして喉に甘噛みをしただけなんだけどな。ともかく夕飯も作り終えてお楽しみの肝試しのペア決めになる。

 

 精

「何で俺が一人なんだよ!?」

 尾白

「くじ引きだから……誰かが必ずこうなる運命だから……」

 

 女子と一緒になってかっこいい所見せましょう? っていう展開じゃないのかよ。まあ実が女子と一緒にならなかったから良しとしよう。あいつが女子と一緒だったら何が何でも俺と一緒にしてやって──体にとんでもない敵意が刺さる。森を見ると黒煙が上がっている。

 

 漢女な敵

「飼い猫ちゃんはジャマね」

 

 ピクシーボブが敵に倒されている。

 

 実

「何で……何で敵がいるんだよォ!!!」

 

 俺の脳裏にとある考えがよぎったがそれは後回しだ。

 

 トカゲっぽい敵

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!! 我ら敵連合開闢行動隊!!」

 

 分かりやすく名乗りを上げてくれてありがたい。

 

 虎

「何でもいいがな貴様ら……! その倒れてる女……ピクシーボブは最近いい男ができたと喜んでてなぁ……やっと女の幸せが掴めそうと嬉しそうにしていたんだよ……そんな女の顔キズモノにして男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ!!!

 

 こんなに虎さんがかっこよくて頼れる人に見えるのは初めてだ。でも、その男って俺の事じゃないですかね?マンダレイの指示の下、委員長である俺が皆を引率することになりそうになった。しかし、俺にはやるべきことがある。

 

 精

「飯田! お前に引率を任せる! 委員長命令だ!」

 飯田

「緑谷くんはどうするんだ!?」

 精

「クソガキは分からせてやらないといけないんでなあ!!! マンダレイ!!! 洸汰君の所に行ってきます!!!」

 

 OFAS10%でひみつきちに駆け出す。ひみつきちでは洸汰君がローブを着た筋肉モリモリマッチョマンの敵と対峙していた。敵の攻撃から洸汰君を守る。

 

 精

「間一髪だな……!」

 洸汰

「何で……!!」

 敵

「んん? お前は……リストにあったな」

 

 今の回避でケータイが壊れた。応援がほしかったが一人でどうにかするしかなくなった。振り返って洸汰君の様子を見る。恐怖に怯えボロボロと泣いている。

 

 精

「よく聞けクソガキ──昨日温泉で見た光景を必死で思い出せ

 洸汰

「は……? 何で……?」

 精

「コイツを倒した後に話してもらうからだよ。1-Aガールズの裸を見たのはお前だけだからなあ!!!

 

 

 敵がけらけらと笑う。

 

 敵

「勝つ気でいるのかよ! しかも女の裸が知りたいって! お前本当にヒーロー志望者か?」

 精

「一応ね。ヒーローになれば色々と便利だし」

 敵

「緑谷ってやつだろおまえ? ちょうどいいよ、おまえは率先して殺しておけってお達しだ……じっくりいたぶってやっから血を見せろ!!!

 

 敵がローブを脱いで左腕を筋肉で大きくする。そういう”個性"か。構えて避ける。

 

 敵

「良い反応してんな! そうそう、知ってたら教えてくれよ、爆豪ってガキはどこにいる? 一応仕事はしなくちゃあ……よ!」

 

 追撃も難なく躱す。爆豪の場所なんか知らないが、何が目的だ?

 

 敵

「答えは"知らない"でいいか? いいな? よしじゃあ……遊ぼう!

 精

「俺に男と火遊びする趣味はねえんでな!」

 

 俺の蹴りと敵の蹴りがぶつかり衝撃波が走る。俺の方が堪えきれず吹っ飛ばされる。

 

 精

「なるほど……パワーとスピードは手前の方が上か」

 敵

「俺の"個性"は筋肉増強!! 皮下に収まんねえほどの筋繊維で底上げされる速さ!! 力!! おまえは俺の完全な劣等型だ!」

 精

「本当にそうかな? まだまだ本気じゃないかもよ?」

 

 こいつ脳まで筋肉で出来ているんじゃないか? 馬鹿正直に全部べらべら喋ってくれる。

 

 敵

「分かるか俺の今の気持ちが!?」

 精

「ガキをいじめて楽しいって所か?"個性"が泣いてるぜ?」

 敵

「笑えて仕方ねえよ! 実現不可のキレイ事のたまってんじゃねぇよ!」

 精

「実現可能なキレイ事だ。女の子の裸は何よりもキレイなんでな」

 敵

「自分に正直に生きようぜ!!」

 精

「誰よりも正直だと思うぜ!!」

 

 敵が左腕を肥大させて殴りかかってきた所を、光多君が小石を投げて注意を逸らす。一瞬の油断が命取りだ。

 

 精

「そんじゃ、本気を出しますか」

 

 俺は煙幕を張って姿を隠す。そして両手を開いて構える。

 

 敵

「今度はかくれんぼか! んなもん俺の"筋肉増強"で──」

 精

「糸が紡ぐは狂犬の檻。悪意の舞う魔獣の森──さぁ、四肢が動かなくとも踊れるか試しましょう?

 

 煙幕に紛れて展開した糸のように細い黒鞭を引く。シュルリとスパリと何かが切れる音がする。そして敵がガクリと倒れる。

 

 精

「筋肉を動かすには腱と繋がっている必要がある。どれだけ強靭で膨大な筋肉であっても、筋肉である以上それは覆せない……黒鞭でお前の腱を切った」

 敵

「……は?」

 精

「俺は解剖生理学を嗜んでるんで体格が分かれば十分よ。名付けて――昇天人形化(ヘヴンドールメイカー)

 

 煙が晴れると無様にうつ伏せになっている敵がいた。

 

 精

「洸汰君の両親の事件を調べたが……お前が犯人なんだってな?」

 敵

「ハハハ……だったらなんだってんだ……?」

 

 俺は右の人差し指で放った糸にした1本の黒鞭を敵の首に巻き付け、先端を左手で握り締め洸汰君に歩み寄る。

 

 精

「この糸を引っ張れば君の両親の仇が討てる」

 洸汰

「……!」

 敵

「おいおい……ヒーロー志望者がガキに殺しを勧めるのか……!」

 精

「殺人者に咎める権利はねえよ……で、どうする?」

 

 両腕を差し出された洸汰君は明らかに狼狽えている。

 

 洸汰

「こ、"個性"で人を殺したら……敵になっちゃうだろ……」

 精

「勉強しているようで関心だ……じゃあこうしよう」

 

 一度黒鞭を引っ込め、首に巻いていたストールを糸にして敵の首に回しかける。

 

 精

「これだったらただの殺人だ。しかも『金髪のお兄ちゃんが黒い糸でやった』って言えば、俺のせいにできる」

 敵

「お前……本当は敵なんじゃねえのか……!?」

 精

「俺の原点(オリジン)()()()()()『やりたいようにやれ』なんでな。その結果に善悪がついてくるだけだ」

 

 再び糸を洸汰君に差し出す。

 

 精

「で、どうする? なんだったら君が『殺せ』って言うだけでも俺はやるぜ?」

 洸汰

「そ、そんなの────」

 

 

 マンダレイが言った言葉を思い出す。

 

 マンダレイ

「洸汰、あんたのパパとママ……ウォーターホースはね。確かにあんたを遺して逝ってしまった。でもね、そのおかげで守られた命が確かにあるんだ」

 

 だからなんなんだ。

 

 マンダレイ

「アンタもいつかきっと出会う時が来る。そしたらわかる。命を賭してあんたを救う、あんたにとっての────……」

 

 緑谷コイツが僕のヒーロー? 確かに命を賭して助けてくれたけど、人を殺すように勧めてくる奴が?

 

 洸汰

「そ、そんなの────僕のヒーローじゃない!!!

 

 緑谷が驚いたような顔をしている。

 

 緑谷

「おいおい、助けてくれた恩人に向かってそれは────」

 洸汰

「僕の知ってるヒーローは人を殺していいなんて言わない! 困ってる人を助けるのがヒーローだろ!」

 緑谷

「困っている人を助けるためだったら殺したっていいだろ?」

 洸汰

「よくない! 僕のパパとママはどんな時だって人を殺して助けたりしなかった! 人を殺しちゃったらヒーローじゃないんだ!」

 

 勢いそのままに全部ぶちまける。

 

 洸汰

「どんな時でも困っている人を助けて! どんな時でも絶対に人は殺さない! それが僕の知ってるヒーローだ! だからお前はヒーローじゃない!

 緑谷

「……クックック……ハーッハッハッハ!!!

 

 僕の言葉を聞いて緑谷が大声で笑いだす。

 

 緑谷

「俺がヒーローじゃない!? そんなの当たり前だぜ! 俺は自分のことを一度たりともヒーローだと思ったことはない! だから──」

 

 緑谷が一瞬で近づいて僕の頭を鷲掴みにする。

 

 洸汰

「パパ……! ママッ……」

 緑谷

「──その気持ちを忘れるんじゃねえぞクソガキ

 

 そしてにっと笑って離した。

 

 緑谷

「お前には立派なヒーロー像があるじゃねえか。俺なんかと違ってヒーローになれるさ」

 洸汰

「へ……?」

 緑谷

「このヒーロー社会で生きるならそういう原点(オリジン)が大切なんだ。それを忘れなければ、パパとママみたいな立派なヒーローになれるさ」

 

 パパとママは人を助けていった凄いヒーローだった。僕だって憧れてた時期はあった。でも、皆がパパとママが死んでも褒めていたからこの世界はおかしいと思った。でも────

 

 洸汰

「ヒーローって……やっぱり凄いんだ……」

 緑谷

「お前ぐらいのクソガキは無邪気にヒーローに憧れていたほうがお似合いだ」

 

 コイツはヒーローじゃないのに、ヒーローの凄さを教えてくれた。

 

 

 洸汰君が"個性"や超人社会を憎んでいるのは、この世界のヒーローがどういう存在なのか理解していないからだ。模範的ヒーローであった洸汰君の両親を思い出させるために、あえて敵まがいのことをした。おかげで無事にクソガキを分からせてやることができた。

 

 敵

「お涙ちょうだいの感動話は終わった──」

 精

「今まで黙っててくれてありがとうな。お礼に一発で楽にしてやる」

 

 敵の顎を蹴り、意識を飛ばす。脳まで筋肉で出来ていたら耐えられただろう。

 

 精

「さて……お前には温泉での光景を話す前に、ヒーロー活動をしてもらう。お前の"個性"で消火活動を頼みたい。出来るか?」

 

 洸汰君が頷く。早速おんぶして施設まで送ろう。森を走る途中、澤先を見つけたので一通りの事態を伝える。

 

 精

「俺は爆豪の所に行きます。だから戦闘許可下さい」

 澤先

「……認めたくないがお前の実力がこの場で必要だ。良いだろう。あとマンダレイに()()伝えろ」

 

 洸汰君を澤先に預けてマンダレイの下に駆け付ける。ついでにトカゲの敵の武器をぶっ壊す。

 

 精

「マンダレイ! 洸汰君は無事です! そして澤先からの伝言です!! 『A組B組総員──プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて戦闘を許可する!!』とテレパスで伝えてください! あと爆豪が狙われてるんでそれもお願いします!!」

 マンダレイ

「わ、分かったわ! でも君は戻りなさ──」

 精

「俺にはまだやらなきゃいけないことがあるので!!!」

 

 急いで爆豪の下に駆け付けないと。おそらく奴らの目的は爆豪を攫うことだろうから。




なんとも荒療治な方法ですね。なお、洸汰君が『殺せ』と言ったら精は「お前のパパとママが見たらなんて言うだろうな?」と言って説教を始めていました。最初から殺すつもりはなかったですが、それぐらいの場でないと洸汰君には伝わらないと思ったんですね。
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