抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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第4期~喜怒哀楽クライマックス~
4-01 面白いことやってが一番きつい無茶ぶりだとおもう


 澤先曰く、インターン受け入れの実績が多い事務所に限り1年生の実施を許可するとのことだ。早速ミリオ先輩と会って、サーさんの事務所を紹介してくれる約束をした。そして週末、サーさんへの手土産を準備し、女子達へ一緒にいれないことへの詫び菓子を寮の共有スペースに置いて、サーさんの事務所へ向かう。

 

 ミリオ先輩

「君が門前払いされたくないのなら……これからサーと会って話し終わるまでに、必ず一回サーを笑わせるんだ」

 精

「任せてください。デカいクーラーボックスはそのためにありますから」

 ミリオ先輩

「よし……なら行こう! あのドアの先だ! 強くなりたいなら己で拓け!」

 

 ドアを抜けるとそこでは女性ヒーローがくすぐり拷問を受けていた。

 

 精

「あー……そういう趣味だったかあ……だったらそういう系のエロ漫画描いてきたのに……」

 

 俺とミリオ先輩に気付いたサーさんがこちらを見る。眼鏡越しでもかなりの迫力だ。これを笑わせるのは一筋縄ではいかなそうだ。早速ジャブを放つ。

 

 精

「お初にお目にかかります。俺、雄英高校1-Aの委員長兼特待生の緑谷出久と申します。まずはサーさんとの出会いを記念して……一杯振舞いたいと思います」

 

 挨拶もほどほどにクーラーボックスからシェイカーと氷を、バッグから紙コップ紙皿とクッキーでマシュマロを挟んだお菓子を取り出す。

 

 精

「まずは一杯飲みながら話しましょう?」

 

 シェイカーに氷を入れ、オレンジジュース、パイナップルジュース、レモンジュースを1:1:1で注ぎシェイクする。そして紙コップに注ぐ。お菓子を紙皿に並べてサーさんに差し出す。

 

 精

「お待たせしました。『スモア・フォー・ユー~ユーモア・フォース(ユーモアの力)仕立て~』です。チェイサーはシンデレラ*1です。それでは……チンチン」

 ミリオ先輩

「ぶっ……急に何を言うんだい緑谷くん!?」

 サーさん

「フランスやイタリアでの乾杯を意味する言葉だ……スモアとシンデレラはおいしいが、その程度の下ネタで笑わせるつもりならユーモアが足りないな……」

 

 下ネタはOKか。子供から笑いを取るなら下ネタが一番合理的だからな。だったらアレをやるか。

 

 精

「それじゃあ……マジ物の下ネタを見せますよ」

 サーさん

「ほう……ここには女性のサイドキックもいるが?」

 精

「下ネタの一つや二つで動揺していたらプロ失格ではありませんか?」

 サーさん

「……やってみろ」

 

 スマホを取り出し、前に音声を作った際に休憩がてら作ったとある音楽を再生する。軽快な音楽が流れる。

 

 ミリオ先輩

「何かの音頭っぽいけど……」

 精

「んんっ……『お前ら待たせたな、いよいよ性乱大合戦だ』」

 サーさん

「……イレイザーヘッドのモノマネか?」

 

 サーさんはすぐに分かってくれたようだ。ならやってやろうじゃないか。

 

 精

「『ちんちん、鎮魂の金が鳴りゃ~♪ まんまん、満腔が熱くなるぅ~♪ 元気まーんまん♪ 性器パーンパン♪ 夜は更けてくちんちんと~♪』」

 一同

「「「!?」」」

 精

「『『自主規制』*2出して『自主規制』*3ハメてよよいのよい♪ あズッコバッコズッコバッコズッコンバッコン♪ オナりイくならパコらにゃあんっ♪ あぁんっ♪』」

 

 俺の故郷に伝わる4545年の伝統があるドスケベ音頭を澤先の声でやり切った。振り付けも完璧だ。首に巻いたマフラーを得意げに靡かせる。

 

 ミリオ先輩

「ぶふっ……! イ、イレイザーは絶対そんなこと言わない……!」

 女性ヒーロー

「こ、ここまで下ネタでゴリ押しされると、逆に笑えてくる……!」

 

 2人の反応は悪くない。さて、サーさんはどうだ?

 

 サーさん

「ふざけているのか?」

 

 ガチギレだ。これじゃあドスケベ音頭じゃなくてドスベリ音頭だ。

 

 精

「これが真面目に見えたら病気ですよ?」

 サーさん

「ヒーローの権威と品位を貶める様な真似など、ユーモア以前の問題だ。お引き取り願おう」

 

 ここでお引き取りになるのはマズい。しょうがない、最後のプランだ。

 

 

 精

「それじゃあ……"未来が見れる"サーさんを捕まえられたら面白くないですか?」

 サーさん

「……ネタ切れで実力行使か? それもできないことを言うとは相当苦し紛れだな」

 精

「そうですかね? やってみなくちゃわかりませんよ?」

 サーさん

「なら3分だ。3分で私を捕らえられなければ──」

 精

「このカップ焼きそばができるまでに捕らえますよ。給湯器何処にあります?」

 

 俺がバッグから取り出したのは『俺の塩』というカップ焼きそばだ。故郷では『私の潮』という名前でSex(セックス)Hairyuu(はいりゅぅ)♡に売っていたのだが、1分で塩焼きそばができる革命的な商品だ。

 

 サーさん

「……ミリオ、バブルガール、お湯を入れてきてほしい」

 ミリオ先輩・バブルガール

「「えっ、あっ、はい!」」

 

 2人が部屋から出たのを確認する。

 

 サーさん

「さて、これで──」

 精

「先手必勝」

 

 いきなり煙幕を張る。これで俺の姿は見えなくなったはずだ。黒鞭を一気に展開する。

 

 サーさん

「私の"予知"は『景色』ではなく『姿』を見る……視界を遮ったところで無駄だ」

 

 その発言は本当のようだ。煙の中だというのに俺の黒鞭を容易く避けている。

 

 サーさん

「どうした? 秘策が通じなくて焦っている姿が見えるぞ?」

 精

「ウソだろ……!? こんなはずじゃあ……!」

 サーさん

「やはりOFAはミリオに継がせるべき────ッ!?」

 

 サーさんがが明らかに動揺している声を出した。俺はニヤリと笑う。

 

 精

「どうしました? もしかして──『サーさんを捕まえて俺が喜んでいる姿』が見えました?」

 

 俺は思い切り両手を引っ張っる。ビシイと何かが糸に捕縛される感覚が伝わって来た。黒鞭で煙幕を晴らすとサーさんが糸で縛られていた。

 

 サーさん

「バカな……!? 何をどうやって……!?」

 精

「ファッションの変化に気付かないようじゃモテませんよサーさん?」

 

 俺は糸に変わって無くなったのにも拘らず、マフラーを靡かせる動作をする。

 

 サーさん

「解けると()()()()()()()()()()()()()()()()か……()()()()()()との相性は最悪だな……」

 精

「俺が勝てないと思った相手はミリオ先輩だけです」

 

 ドアがガチャリと開いてミリオ先輩とバブルガールが戻って来た。2人共信じられないという顔をしている。

 

 精

「1分経ちました? すぐ伸びちゃうんで早くお湯捨ててきてくださいね」

 

 サーさんの拘束を解いて促す。サーさんは諦めたように笑った。

 

 サーさん

「……いいだろう。君の実力だけを認め、この事務所でのインターンを許可しよう」

 精

「それ以外は認めてくれないんですか?」

 サーさん

「なら料理の腕も認めよう」

 

 どうやら人間性やユーモアのセンスは認めてくれないらしい。その辺りは個人の価値観を尊重しよう。

 

 

 

 サーさんが何か話してくれるようだ。カップ焼きそばを食べながら聞くとしよう。

 

 サーさん

「象徴無き今、人々は"微かな光"じゃなく"眩い光"を求めている」

 精

「そうですか。サーさん湯切り下手ですね。ちょっとベシャッとしてますよ」

 

 それでもおいしいのだからこのカップ焼きそばはすごい。ズルズルとわざとらしく啜ってサーさんに見せつける。

 

 サーさん

「人の話を聞いているのか?」

 精

「別に"眩い光"じゃなくても、"ドス黒い闇"でもいいと思いますよ。()()()()()()()()()()で、ヒーローでも敵でもいいんですよ」

 サーさん

「……随分な物言いだな。貴様は敵が社会を支配してもいいと思っているのか?」

 精

「ヒーローが敵に負けたらそうなっても仕方ないでしょう。ただ、簡単にそうさせないのがヒーローの仕事でしょう?」

 ミリオ先輩

「……緑谷くん、本当に高校生じゃないんだね。考え方が達観しすぎているよ」

 サーさん

「なんだと……?」

 

 マイトはミリオ先輩には俺の正体を説明しておいたらしいが、サーさんには『無個性の少年に継がせた』ぐらいしか説明してなかったようだ。サーさんに色々話して納得してもらう。

 

 精

「マイトも困ったものですよね……碌に話してくれないんですもの……まあ、俺の場合はあまりにも聞いてないというのが正しいんですけど」

 サーさん

「…………とりあえず今日のやるべきことはやった。インターン活動については翌日説明しよう」

 

 ということで翌日、サーさんの事務所にやって来て任務を受ける。死穢八斎會という小さな指定敵団体の捜査で、パトロールがてらの監視ということだ。ペストマスクがかっこいい治崎という若頭が何かしようとしているらしいが、証拠がなく踏み込めないそうだ。

 

 サーさん

「我がナイトアイ事務所が狙うのは奴らの犯行証拠(シッポ)……くれぐれも向こうに気取られぬように」

 精・ミリオ先輩

「サー・「イェッサー!!」っス!!」

 サー

「『サー』?」

 バブルガール

「『っス』?」

 精

「ああ、俺の癖みたいなもので……あんまり気にしないでください」

 

 ということでススっとコスチュームを着てパトロールに出かける。ヒーローとして活動するのでお互いのヒーロー名を紹介する。

 

 ω-99

「俺は"金色極点(ゴールデンクライマックス) ω-99"です」

 ルミリオン

「かっこいいね! 俺は"ルミリオン"!! "全て(オール)"とまではいかないが"百万(ミリオン)"を救う人間になれるよう命名した!」

 ω-99

「周辺情報の確認は俺に任せてください。装備で確認しますので……」

 

 インカムとゴーグルで索敵を怠らない。おかげで路地裏から誰かが走ってくるのが分かった。

 

 ω-99

「ルミリオン、そこの路地裏から走っている何者かが来ます」

 ルミリオン

「流石だω。いつでも戦闘が起きてもいいように構えて──」

 

 路地裏から飛び出てきたのは銀髪で、角が生えていて、両手両足に包帯を巻いた女の子だった。

 

 ω-99

「……病院から抜け出してきたのかな? お嬢ちゃん、病院は怖い所じゃ──」

 治崎

「うちの娘がすみませんねヒーロー……遊び盛りでケガが多いんですよ困ったものです」

 

 ついでに治崎も出てきた。こいつ子持ちだったのか。だったら育児トークで盛り上げるか。

 

 ω-99

「分かりますよ。俺も……年の離れた妹がいまして。お兄ちゃんだからと手伝ったんですけど、まあ大変で……お子さんの名前は?」

 治崎

「エリです。ほらエリ、帰るぞ」

 

 ヤクザに子供がいたって別に問題ないだろう。エリちゃんを治崎の下に返し──エリちゃんが俺のコスチュームをギュッと力強く握る。

 

 エリちゃん

「いかな……いで……」

 

 目に涙を湛えている。明らかに治崎に対して怯えている。これは何かあるだろう。

 

 ω-99

「……エリちゃん? ヒーローに会えてうれしいのは分かるけど、パパを困らせちゃダメだぞ? そうだ、もし今度会ったらエリちゃんに面白いことしてあげるよ! だから、今日の所はバイバイしような?」

 

 何かあるのは間違いないが証拠がない。深追いしてサーさんの捜査に影響を出してはいけないので、エリちゃんをはがして治崎に渡す。

 

 治崎

「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません……」

 ω-99

「いえいえ。子供がやったことですから。では、See you next time」

 ルミリオン

「まだ見ぬ未来に向かおうぜ相棒!」

 

 俺とルミリオンはこの場を後にする。ある程度離れた場所でルミリオンから講評を受ける。

 

 ルミリオン

「中々いい対応だった。よく深追いしなかったね」

 ω-99

「…………歯がゆいものですね」

 

 俺は拳を握り締める。

 

 ルミリオン

「分かるよ……ヒーローだからこそ踏み込んじゃいけない場面だったから──」

 ω-99

「あんな屑でも殺すことが許されないなんて」

 ルミリオン

「……へ?」

 

 握り締めた爪が掌の肉を抉る。血が出て、それなりの痛みが走る。しかし、それでも俺の胸にある感情は収まらない。

 

 ω-99

「治崎の野郎……エリちゃんに虐待まがいのことをしていやがった」

 

 すぐさまナイトアイに連絡をして合流する。状況を軽く説明しするとナイトアイが謝りだした。

 

 ナイトアイ

「事前におまえたちを"見て"いれば防げた……」

 ω-99

「本当にそうですよ……おかげで……手に怪我しちゃいましたから……」

 ナイトアイ

「……今日の所は二人共事務所へ戻っていろ。その状態ではまともに活動できないだろう」

 

 こうしてインターンの初日は終わった。

*1
カクテルの一種。ジュースだけで作るためノンアルコール。

*2
男性器のこと

*3
女性器のこと

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