抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

45 / 109
4-07 バックトニック

 いつの間にやら眠っていたようで翌朝の5時に目が覚めた。深夜テンションならぬ早朝テンションで青山にウェイクアップコールを吹っ掛ける。

 

 精

「一杯ご馳走してやるぜ」

 青山

『……分かったよ』

 

 部屋を出ると一睡もしていないであろう死んだような顔をした青山がいた。

 

 精

「あれだけの話をしておいてぐっすり寝ていたら驚きだぜ」

 青山

「……何をご馳走してくれるんだい?」

 精

「それはついてのお楽しみってことで……」

 

 エレベーターを降り共有スペースのキッチンに立つ。そして冷蔵庫からレモンジュースとジンジャーエールとトニックウォーターを取り出し、氷を入れたシェイカーに入れて振る。出来上がったモクテルをカクテルグラスに入れ、ライムを一切れグラスに刺す。

 

 精

「お待たせいたしました。『バックトニック』です。おつまみにはミックスナッツをどうぞ」

 

 ある二つのカクテルを合わせてそこからドライジンを抜いたオリジナルモクテルだ。ちなみにミックスナッツはグラノーラクッキーを作った際に余ったものだ。

 

 青山

「……ジンバックとジントニックかい?」

 精

「ご名答。俺から青山に送る一杯だぜ」

 

 それぞれのカクテル言葉は『正しき心』と『強い意志』だ。

 

 精

「パパンとママンには話をしたかい?」

 青山

「話したよ……『優雅に委ねる』だってさ……」

 

 我が子のためを思ってやったことが我が子を苦しめる、親としては最悪の事だろう。なら自分たちの末路は我が子に委ねようというのだろう。子供の幸せが親の幸せであり、子供の望みが親の望みなのだから分からなくはない。

 

 精

「……で、答えは出たか?」

 

 俺の問いに青山はバックトニックを一気に飲み干して答えた。

 

 青山

「…………決めたよ。皆に打ち明ける」

 

 その目は小さく、それでも確かに燃えていた。

 

 精

「そうか……んじゃ、俺も一緒に行って説明するよ。でも、いきなり皆に打ち明けると混乱する。まずは朝一で澤先の所に行くぞ」

 

 校舎に入れるようになってすぐに職員室に行って澤先を捕まえる。

 

 精

「青山と俺で話したい事があるんです。しかも澤先以外には話せない話なんです」

 澤先

「……お前らのその目を見る限り、くだらない話じゃなさそうだ。部屋を借りて話そう」

 

 

 会議室を借りて青山が事の全てを話す。澤先は目を瞑ってしまった。受け持っている生徒がいきなり裏切り者ですと白状したらこうなるのも無理はない。

 

 澤先

「…………事情は分かった…………が、ここからどうするか…………」

 精

「とりあえず青山のパパンとママンを呼んで事実確認をした方が良いでしょう。青山は腹痛を拗らせて体調不良ということで休みにしてもいいかと」

 青山

「…………そうさせてもらえるとありがたいです」

 

 ということで本日青山は欠席という扱いでパパンとママンと一緒に事実確認をすることになった。青山の欠席を伝えると1-Aガールズ一同が心配をする。

 

 梅雨ちゃん

「青山ちゃん大丈夫かしら……」

 透ちゃん

「放課後皆でお見舞いしようよ! 皆の元気を分けたらきっとよくなるよ!」

 精

「どうやって分けるのかも気になるけど、気持ちだけにしておいてあげてほしいな。人前でトイレ行くの絶対嫌だろうから」

 お茶子ちゃん

「あー……私も人前では吐きたくないなあ……」

 響香ちゃん

「ウチも人前でハズいことしたら結構引きずるなぁ……」

 精

「皆の代表である俺が青山と会って色々言っておくよ。ついでに差し入れも渡したいから、何かあったら俺までよろしく」

 百ちゃん

「とりあえず温かな寝具と衣服は必要でしょうし……」

 三奈ちゃん

「今作らなくてもいいんじゃないかなヤオモモ!?」

 

 ボーイズも心配していたが割愛させてもらおう。ガールズの心配を一身に受ける青山への憎しみの八つ当たりだ。ということもあって放課後、青山の部屋に澤先を呼んで話し合う。

 

 精

「とりあえず何もなしに話すのも厳しいでしょう。一杯どうぞ。俺のオリジナルモクテル『バックトニック』です」

 澤先

「オリジナルでこの味か……今度ミッドナイトに教えてやってくれないか? あの人酔うとまずいカクテル作り出して困るんだ……」

 青山

「あの、そんな話してる場合じゃないかと……」

 

 それもそうかと情報共有をする。青山と青山の両親の話から3人がAFOに関わっていて、情報を流していたことは確定した。周りにバレないように暗号にして送ったり、青山が一人になって送ったりしたそうだ。

 

 精

「神野区の一件でAFOは死んだが、それでも打ち明けたら何が起きるか分からなくてできなかったと……バレないならそのままにしておきたかったよな」

 青山

「……無理やり気丈に振舞ってきたけど、それが仇になるなんてね……緑谷くんの勘の良さは本当にすごいよ……」

 澤先

「やったことはアレだが事情が事情だ。とりあえず明日の朝に1-Aの全員に話してみろ。教室で話すより寮で話したほうがいい。必要以上に聞かれていい話じゃないからな」

 

 明日のおおよその流れが決まったところで一同解散となる。俺が考えたところでどうなるわけでもないが、1-Aの皆は青山のことをどうするのだろうか。俺としては許して改めて仲間に迎え入れてやりたいところだ。

 

 

 運命の朝がやって来た。俺は1-Aガールズを、青山はボーイズを起こし共有スペースに集める。すでに澤先もおり、ただならぬ雰囲気に1-Aの目が覚めていく。全員揃ったところで澤先が先陣を切る。

 

 澤先

「青山から話がある。皆心して聞くように」

 

 青山がみんなの前に出て口を開く。

 

 青山

「僕は……AFOと通じていて皆の情報を売っていました」

 

 青山が語る衝撃の真実と青山が置かれた状況に皆は驚くことしかできなかった。その中で真っ先に動いた奴がいた。

 

 爆豪

「……てめェは自分が何やったか分かってんのか!?」

 

 爆豪が青山に掴みかかろうとするのを止める。

 

 精

「…………敵に攫われかけたお前が詰め寄るのは最もだ。だが、青山にも事情があったんだ」

 爆豪

「違う! コイツのせいで────…………いや、そうだな……悪ぃ、カッとなりすぎた……」

 

 恐らくオールマイトが終わったとでも言いたかったのだろう。だが、俺との一件を思い出し冷静になったようだ。

 

 透ちゃん

「で、でも……! みんな死んじゃってもおかしくなかったんだよ!? 何考えて教室にいたの!!? 寮で!! 皆と──」

 

 透ちゃんの前に立って発言を遮る。透ちゃんは合宿の際に敵のガスにやられて重傷を負ったのだから詰め寄るのも仕方がない。

 

 精

「待ってくれ透ちゃん…………青山に色々言いたいのは分かる……でも──透ちゃんは()()()()()()()()()()()()同じことをしないと言えるかい?」

 

 その言葉に透ちゃんは黙った。自分や家族や大切な人が人質に取られて、なお正当な行動をとれる人間はいるのだろうか。ましてヒーロー志望とはいえ高校生だ、できなくても無理はない。

 

 精

「……ここにいる全員に言えることだ。俺だって故郷の家族や子供や友達を人質に取られたら……この雄英高校を、いやヒーロー社会そのものを破壊する

 

 俺の発言にざわつき始める。

 

 飯田

「な、何を言っているんだ緑谷くん!? 君はそんな人じゃ──」

 梅雨ちゃん

「出久ちゃんならやりかねないわ」

 切島

「何言ってんだ蛙吹!? 緑谷はそんな薄情な──」

 精

「落ち着け。あくまで人質に取られたらって話であって現実にそうやるかどうかの話じゃない。それぐらい大切なものを人質に取られたんだって話だ」

 

 自分の大切な存在を守るために望まぬ悪事を強いられた、それがどれだけ辛い事か俺には想像できない。だからこそ俺は青山を庇う。

 

 精

「青山を許す許さないは個人に任せる。だが、この件を理由に青山を邪険に扱うのは俺が許さない……委員長としてクラスメイトを守るっていうのもあるが、()()()()()()()()()()が言わなきゃいけないことだろう」

 

 この言葉にざわつきがぴたりと止んだ。爆豪は誘拐未遂で済んだが俺はマジで誘拐され、事と次第によっては帰ってこられない可能性すらあった。

 

 精

「青山がどうなるかは追々決まる……それまでは各々の感性に従って付き合ってくれ。俺からは以上だ」

 澤先

「緑谷が言ったとおりだ。無理に仲良くしろとは言わんが、私刑は与えるな。あと、他の生徒にも伝えるな。まずは俺達(1-A)が受け止めきってからだ」

 

 俺と澤先の言葉に1-Aはなんとか状況を飲み込む──

 

 百ちゃん

「あの……一つだけよろしいでしょうか?」

 

 とはいかず、百ちゃんが質問をしてきた。

 

 

 百ちゃん

「発端は出久さんが青山さんから知ったということですが……どのようにして心にしまった秘密を知ったのでしょうか?」

 

 1-A一同が考えてみれば不思議だなと言わんように首をかしげる。ごまかす必要はない。むしろ誤魔化したらリクエストスイーツの刑が確定する。

 

 精

「ωセンスを使った状態で粘膜接触をすると相手の心が読めるんだ」

 実

「オイオイ、青山とキスでもしたって言うのかよ?」

 精

「……その通り」

 

 実が茶化したように真実を言ってしまったので頷くしかなくなった。一同が何言ってんだコイツというような顔でこちらを見る。

 

 精

「百聞は一見に如かずってことで……澤先、協力してもらえますか?」

 澤先

「……合理的だが倫理的ではないな……まあ、仕方がない。ミッドナイトの飼っている猫の名前を読み取れ」

 

 澤先が俺の顔の高さに合わせてくれる。俺は澤先の顎に手を当て──

 

 澤先

「緑谷?」

 精

「普通にやります」

 

 るのをやめてωセンスを発動し澤先の唇を奪う。

 

 澤先

(おすしおすしおすしおすしおすしおすし)

 

 あまりにもシュールすぎて吹き出して笑いながら唇を離す。この人来る直前にエナドリっぽい物飲んできたな?

 

 精

「"おすし"って……何でそうなったんですか?」

 澤先

「ミッドナイトが決めてな……心が読めるのは本当のようだな。読唇術は唇を奪って心を読むって意味じゃないはずなんだがな……」

 

 一同がマジかよコイツというような顔をしている。梅雨ちゃんが妙に目をキラキラ輝かせているように見えるのは気のせいだろう。

 

 精

「皆にはコレは使わないから安心してくれ。男子にやっても女子にやっても絵面がヤバイ」

 

 当たり前だろと呆れる人もいれば良かったと安堵する人もいる。梅雨ちゃんが露骨にがっかりしているように見えるのは気のせいだろう。

 

 お茶子ちゃん

「っていうと……デクくんのファーストキスは青山くんってこと?」

 

 その発言はマズい。リクエストスイーツリーチだ。

 

 精

「いや、敵連合に攫われた時に一回故郷に帰ってマイスイートハニーとこの体で一回キスをしている。だからファーストキスはマイスイートハニーのものだ」

 澤先

「お前の惚気話は構わないが遅刻しないでくれよ。予鈴まであと30分だ」

 

 そう言って澤先が寮を出ていく。結構な時間になっていたらしい。早い所一同解散して授業の準備を──

 

 1-Aガールズ

「「「出久(いずく、デクくん、出久ちゃん、出久さん)?」」」

 

 やっぱりダメだったみたいだ。

 

 精

「いや、その……お前のせいだ青山ぁ!」

 青山

「ええ!? ……いや……そうだよね……一緒に罰を受けるよ」

 精

「スイーツ作りは大変だぞ! 心してかかれ!」

 青山

「……うん、よろしくお願いするよ、緑谷くん」

 

 今晩のスイーツパーティーはそれはそれは豪勢なものになった。ギリギリ限界までスイーツを作った俺と青山だったが、ねぎらわれたのは青山だけだった。

 

 精

「しばらくは覚悟しろよ青山ぁ……いつかお前の口にカース・マルツゥ*1をぶち込んでやる……」

 青山

「そ、それはご遠慮願いたいね……☆僕お腹弱いから……☆」

 

 緑谷へ遺すメモの一つに『青山と一緒に本場のカース・マルツゥを食べる』を追加しておかないと。

*1
イタリア・サルデーニャ地方で生産されるチーズの一種。書くのもおぞましいので各々の責任で調べてもらいたい。簡単に言うとゲテモノチーズ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。