抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
地上に降りた我は早速戦いを始めたかったが、お互いの人質が危ないということに気付き四ツ橋に交渉をすることにした。
九玉
「こちらの三名を解放するから蟻爛を解放してほしい」
四ツ橋
「それをしたら君は瞬間移動で逃げてしまうだろう? そうさせないための人質なんだ」
大きな肩書に伴った頭脳を持っているらしい。ならば我にとって蟻爛と同等のものを人質にしてもらおう。
九玉
「もしここからの戦いで我が瞬間移動を使ったら敵連合を通報してよい」
四ツ橋
「成程……それならいいだろう。スケプティック、蟻爛を放してやれ」
九玉
「では、こちらも放すとしよう。行くが良い三人とも」
お互いの人質を交換する。蟻爛がよろよろと歩いてきて我に抱き着く。相当な拷問を受けていたのか右手の指が無くなっている。
蟻爛
「ったく申し訳ねェ……俺から情報漏れちまった……商売人失格だ」
九玉
「我の理に与するというなら許そう。それか禊企画でもやってもらうか」
蟻爛
「……ははっ、それで手を打ってもらえるとは思わなかったぜ……」
蟻爛の警護をジェントル達に任せ、再び四ツ橋と対峙する。体を黒く染め大きくして我を待っていた。
四ツ橋
「私の大切な同志たちにこのような仕打ちを……! 許さないぞ九玉……!」
九玉
「抜かせ。貴様達が手を出さなければこうならずに済んだのだ」
四ツ橋は我の相乗の摂理より一回り大きくなっているため、破壊力よりも素早さで立ち回った方がよさそうだ。破壊の渡烏で弾幕を張り遠距離から攻める。しかし、腕を振り払うだけで簡単に防がれてしまった。
四ツ橋
「所詮小さなエネルギーの弾! 私の"ストレス"を高めるだけだ!」
発言と後退している生え際から察するに、四ツ橋はストレスを力に変える"個性"を持っているのだろう。細々とした攻撃では奴に塩を送るだけだ。ならば壊滅の一閃ならどうだと掌をかざし爆発させる。
四ツ橋
「ちょっと熱いじゃないか! 苛立つなあ!」
これもダメか。ならばエネルギーの紅い剣で切れば────四ツ橋の大きくなった右腕から黒い何かが放たれる。咄嗟に剣で受け止めたが、バリバリと簡単に砕け散った。
四ツ橋
「咄嗟に防ぐとは中々やるじゃあないか……だが、これで打つ手なしだな?」
九玉
「抜かせ────『破壊の理』」
両手を四ツ橋にかざしエネルギーを放出する。流石に殺すほどの威力は無いが遠くまで吹き飛び────黒い腕が飛び出し我を握り締める。
四ツ橋
「私は君を殺す気でいるのに、君は私を温める気でいるのかい!?」
九玉
「……加減が難しいのだ」
全身に過剰にエネルギーを送り込んで爆発させ頭を切り離す。超再生持ちである我ならではの緊急脱出だ。
四ツ橋
「なるほど……頭を潰せば君は死ぬみたいだな?」
九玉
「我とて脳無、そこは変わらぬ」
四ツ橋
「脳無……様々な"個性"を持つ改造人間と聞くが、それを自由に使いたいと思った事は無いのかね?」
九玉
「ない。理を守るために使おうとしか思っていない」
その言葉を聞いて四ツ橋は土埃を舞い上げる程大きな溜息を吐いた。
四ツ橋
「君は本当に悲しいな。それだけの"個性"を持っておきながら、何故自由になりたいと思わない? その"個性"を自由に使える事こそが真の『理』だとは思わないのかい?」
九玉
「個々が何の制約も無しに自由を唱えればどうなるか分からないのか? そんな『理』は間違って────」
四ツ橋
「ならば『正しい理』とは何だい九玉くん?」
九玉
「善悪ではなく正誤で判断される事だ。その正誤は絶対的な力を持つ『
四ツ橋
「結局の所、力による"個性"の制圧だろう? 私はそれが間違っていると言いたいのだよ。
四ツ橋からピッっという音がして、地面からいくつかの物体が飛び出す。それらがみるみるうちに四ツ橋の全身を覆い、大きな鎧になった。
四ツ橋
「負荷増幅鋼圧機構"クレストロ"と言ってね。私のストレスを150%にしてくれるものだ。"個性"の開放による真の自由をお見せしよう」
増大されたストレスの全てを我にぶつけるように殴りかかって来た。一発一発が我の体を打ち砕き破壊していく。相乗の摂理と超再生でなんとか追いつくほどの威力で、抑えた破壊の理では全く止まらない。
四ツ橋
「人一人を従わせることも出来ない理で世界を糺せると思っているのか!? キレイ事を抜かしていたのはやはりそちらだったな!」
全身を滅多打ちにされる。超再生で傷は治るが痛みまでは治らない。止めと言わんばかりに顔面を思い切り殴られる。視界と意識が揺れる。逃げては敵連合の皆が危ない。しかし、立ち向かえるほどの力は我にはない。いや、あるかもしれないが人を巻き込みかねない。それでは我の理に反する。
四ツ橋
「力を持ち過ぎたが故の苦悩は私も分かる! だがな! 分かり合えなかった以上、どちらかが斃れなければならない! そして斃れるのは
偽りの理。その言葉に我の何かに火が付いた。
我は脳無だから生まれた時から物心はついており、同時にある男に仕えていた。その男は理不尽な規則を施工して世界を手中に収めようとした。だから我はその男から離反し、奴を止めるべく平行世界で力をつけていった。最初の頃は成長を実感できて嬉しかった。しかし、次第に世界を救うにはまるで足りないと痛感していくだけになった。我の目の前で滅びていく幾多の世界を体験していくうちに、我は世界を保つ理になりたいと思うようになった。全てを捨てて、理だけ受け入れることが出来たのなら、理になれると思って、その思いで奴を倒した。それでも理にはなれなかった。とあるヒーローと戦い、完膚なきまでに敗れたのだ。
とあるヒーロー
「夢も! 希望も! 大切な人も! 世界も! 全部守って正しい理なんだよ!」
その通りだった。何かを守るための理なのに、何もかもを捨ててしまっては意味がなかった。そのヒーローに諭されてから、我は守りたいものを守るということが理のあるべき姿だと思った。では、今の我が守りたいものとは何か。我は何を守るために戦っているのか。
死柄木
「んだよ『いろんなもの崩壊させてみた!』って。いつの時代の投稿者だよ」
荼毘
「『いろんなもの焼いてみた!』よりましだろ。あれは俺の炎で焼いて全部焦げてクソ動画になったからな」
コンプレス
「『魔術師にマジックやらせてみた!』は普通のマジック動画だったね。おじさんは面白かったけどね」
スピナー
「『スピナー・クライマー』は青い壁を登ったせいでフリー素材になってウケたといえばウケたが……」
トゥワイス
「俺のグレーマスクを変色させる『ゲーミングトゥワイス』のショート動画も結構ウケたな! もちろん、素材としてな! 俺で遊ぶなよ!」
マグネ
「『ガールズのメイク講座』は結構伸びたわよね。やっぱり女の子が出ないと数字が出ないのかしら?」
トガちゃん
「『トガちゃんのファッション講座』も第二回を希望されています。時代は女の子です」
ジェントル
「だったら『敵連合式ティーパーティー』はどうかな? ガールズトークもリスナーの皆は待っているだろう」
ラブラバ
「それなら『季節外れの水着回』なんてどうかしら? 美女揃いだからかなりイケると思うわ」
九玉
「なら『水着茶会』でいいな」
一同
「「「なんでそうなるの!?」」」
九玉
「茶菓子は我が作ろう。琥珀糖*1でいいか?」
一同
「「「作れるの!?」」」
脳裏によぎったのは何時しかの企画会議だ。頓珍漢なことを笑いながら話し、敵だからと恐れることなくやってBANされて────ああ。そうか。我が守っているのは『敵』だ。『敵』という『悪』なのだ。では『悪』を守ることが『理』に反するのか。そもそも『理』とは何なのか────
死柄木
「じゃあもう壊そう、一旦"全部"」
────全てを壊せば。我だけになれば。我が『理』になるのか。そうなれば全てを『理』に従わせることが出来るのか。理が力をもたらすのではなく、力が理になるのだと。絶対的な理が力になるのではなく、絶対的な力を持って理になるのだと。我が奴と同じになるまいと忌避していたことが一番の『理』だったのか。
九玉
「────理解したぞ……『理』とは……」
四ツ橋
「
漆黒の巨腕が我を狙う。煩わしい。鬱陶しい。なら────壊してしまえばいい。
九玉
「全てを従わせる絶対的な力なのだな」
全てのエネルギーを右の拳に集める。骨肉を焼き焦さんとするほどの熱が走り、煌々と紅く光り出す。
九玉
「まずは貴様から従わせよう」
その拳を衝動のままに振るう。我の腕と四ツ橋の装甲が溶けて砕けたが、我の腕はすぐに再生した。
四ツ橋
「ッ!? バカな!? クレストロが!?」
九玉
「先に言おう、我はもう加減はしない。伏せて守らなければ────
内から湧き上がる征服欲が止められない。理たる我に従わない目の前の存在が気に入らない。その心に応じて体の内からエネルギーが沸き上がる。細胞の一片どころか塩基配列の一対に至るまで熱く感じる。
九玉
「我こそ理だ。我に従わぬというなら────壊れてしまえばいい」
両腕を胸の前でバツを作るように構えエネルギーを溜める。
九玉
「"
両腕を広げ全身からエネルギーを放つ。地を紅く融かし、空を紅く灼き、森羅万象を理に伏さんとする勢いだ。その中で我は高笑いをして叫ぶ。
九玉
「我が名は九玉!!! この世の理だ!!!」
九玉くんの身体が紅く光った段階で嫌な予感がした。だからラブラバの"愛"を使って、何層もの全力の空気の膜でラブラバと蟻爛くんを守った。
ラブラバ
「何よコレ!? どうなっているのよ!?」
蟻爛
「九玉のヤツ、神野区の時よりもヤバいことしてるんじゃねえか……!?」
紅い何かの激流は街路樹、建物、車、果ては地面と辺りの全てを破壊していった。私も全力で守っていたのだが、それでもチリチリと自慢の髭が焦げる程だった。破壊が終わった時、その中心部には一人が立っていて、もう一人が地面に這いつくばっていた。
リ・デストロ
「……い、今のは一体……?」
這いつくばっているのは武装が無くなったリ・デストロで、立っているのは九玉くんだった。
九玉
「……成程、これが自由に"個性"を使うということか。貴様の教えも悪くはないな、いい勉強になった」
その顔はいつもの真剣ながらもどこか間の抜けた愛嬌のあるものではなく、無邪気ながらも邪悪に笑う子供のような純粋な笑顔だった。そのまま九玉くんはリ・デストロに歩み寄って、わずかばかり残った髪を掴んで片腕で持ち上げた。それを見てトランペットが大きな声で叫んだ。
トランペット
「皆さん! 最高指導者を救うのです!」
トランペットの声に解放軍の戦士たちが鼓舞され────九玉くんの灼ける様に紅い髪から覗く、紫水たるアメジストのような瞳によって戦士たちが一歩後ろに下がった。もはや誰も助けに行けないだろう。
九玉
「さて、どうしようかリストラ? 我が自由に"個性"を使った結果こうなったが、それでも自由を求めるか?」
リ・デストロ
「……ああ、もちろん求めるさ。それが異能解放軍の役目だからな。
力なく笑ったリ・デストロが諦めたように言葉を絞り出す。
リ・デストロ
「
その言葉を聞いた九玉くんが高笑いをする。紅く灼けた地平線にどこまでも響き渡るようだった。
九玉
「まずは……解放軍全員に九玉の理チャンネルの登録とメンバーシップ加入をしてもらおうか」
彼女を止められる人物はいるのだろうか。
あの一件から一週間経ち、我は異能解放軍のアジトにいる。スケッチブックの活躍によって泥花市の事件は『九玉が泥花市に来たが、犠牲を出しながらも市民がそれを撃退した』という事件になった。
スケプティック
「スケプティックだ。敵連合を受け入れ衣食住を提供している恩人に対してなんだその仕打ちは?」
あの後、敵連合の皆の所に行ったら皆がいた山が崩壊していた。何でもマキアとの戦いで死柄木が記憶を取り戻して覚醒し、"崩壊"が伝播するようになったらしい。そこで我はマキアに無慈悲な追い打ちを仕掛け、その我を死柄木が従わせるという芝居を打ったらマキアが死柄木を後継と認めた。
トランペット
「やめましょうスケプティック。リ・デストロがお決めになった方とその仲間です」
そして我はアジトの地下四階の大広間の玉座に座る。新調した黒のスーツに、リ・デストロからもらった漆黒のファーコートを身に纏い、リ・デストロの長くてうるさい前座を聞き流す。
リ・デストロ
「今より解放軍は九玉を最高指導者とし再臨を果たす! 異能解放軍及び敵連合は融合し新たな名を冠する!! 考案は私リ・デストロと連合九玉とスピナー! さァ! その名を! 九玉!」
我は紅い光を放ちながらコートをはためかせ宣言する。
九玉
「『理の会』────────『真の理の前に英雄ヒーローや敵ヴィランという枠組みはない』、『理の下に集った者達以上の意味を持たないことで目的を明確にする』、『又、壇上の荼毘、トゥワイス、トガちゃん、スピナーコンプレス、マグネ、ジェントル・クリミナル、ラブラバ、スケプティック、下典、トランペット、キュリオス、リ・デストロの13名を行動隊長に任命し傾向別に部隊編成を行う』。さァ皆の者よ────我々が理だ」
会員達から大きな歓声が上がる。
ジェントル
「あのー……一つ聞いてもいいかな……?」
黒の燕尾服とシルクハットによって、より紳士的な服装になったジェントルが我に質問してきた。
ジェントル
「私とラブラバの部隊ってもしかすると……」
九玉
「広告及び配信活動担当だ。我のチャンネルも大きくなり、大掛かりな企画もやりたいから専用の部門が必要だろう」
ラブラバ
「だと思ったわ……それじゃあ、早速企画会議を始めましょ?」
九玉
「もちろんそのつもりだ。リ・デストロ、会議室に温かいお茶と茶請けの用意をしろ」
リ・デストロ
「はい! 九玉様のお申し付けとあれば!」
さて、まずは何をしようか? 資金ができたのだから『○○を○○万円分食べてみた!』のような企画がやってみるか? としたら寿司が良いか? それともピザにするか? なんにせよ楽しみだ。