抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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第6期~この世の終わりみたいな新年~
6-01 明け増しておめでたい奴等


 母さんが泣いて大洪水を起こした大晦日も越して、新学期が始まる。早速冬服に身を包んで荷物を背負い、コスチューム入りのアタッシュケースを持って、爆殺卿(ばくごう)ロゼショット(しょうと)*1と共に待ち合わせの場所に行く。そこには左目に傷跡をが痛々しい笑顔で俺達を迎えるエンデヴァーがいた。

 

 エンデヴァー

「ようこそエンデヴァーの下へ────なんて気分ではないな

 

 途端に雲行きが怪しくなった。焦凍曰く許可は取ったのことだが、快諾といってなかった段階で想定しておくべきだった。

 

 エンデヴァー

「焦凍の頼みだから渋々許可したが!! 焦凍だけで来てほしかった!」

 

 重度のムスコン*2じゃねえか。虐待まがいの事も捻じり曲がった愛情表現だったんじゃねえか?

 

 爆豪

「きちィな」

 精

「同感だ。No.1ヒーローの正体見たりって感じだ」

 エンデヴァー

「焦凍本当にこの子たちと仲良しなのか!?」

 爆豪

「まァトップの現場見れンならなんでもいいけどよ」

 精

「以下同文」

 エンデヴァー

「友人は選べと言ったハズだ!」

 

 爆豪はどうか知らないが、俺は内心ではこのインターンはかなり期待している。内面や実力はともかく、No.1ヒーローの下となれば事件遭遇回数は多いだろう。今の俺には実戦での経験値が圧倒的に足りない。

 

 精

「つーことで早速コスチューム着させてもらいますね。デヴァーさんの炎で俺の顔に火傷ができたら、遊んで暮らせるだけの慰謝料請求しますんで」

 轟

「気が早くねぇか緑谷? 事件まだ起きてないだろ」

 ω-99

「コスチューム着ないでパトロールができるか? インターンで来ている以上、俺達はヒーローとして振舞わなきゃいけないんだぜ」

 エンデヴァー

「……威勢だけはいいな────申し訳ないが焦凍以外に構うつもりはない」

 

 不機嫌そうなエンデヴァーが文字通り顔から火を出し、歩道の手すりを飛び越えて飛び出す。

 

 

エンデヴァー

「学びたいなら後ろで見てい────」

 ω-99

「俺に構ってる暇あるんですか?」

 

 俺はすでにエンデヴァーの先にいた。エンデヴァーの動きを見て、反射的にOFASを発動して飛び出したからだ。ωセンスで情報を探る。

 

 

私は宇宙からの啓示を得た逃げよ逃げよ国民たちよ冥王の口角が弧を描いておる透明な玉に乗って宙に浮いているボケた老人がヤバいことを口走っている

 

 ボケ老人

「終焉の時は近い────!」

 

 老人が透明な玉をあちらこちらに飛ばしている。これならアレが活躍するだろう。

 

 精

極点領域(クライマックステリトリー)

 

 

黒鞭を大量に飛ばして絡めとる締めるとバリンと砕けたガラスだとっとと老人を取っ捕まえた方がいいマフラーに手をかける

 

 精

瓔珞草(ようらくそう)の檻」

 

 そのまま糸を引っ張り老人を雁字搦めにして地面に叩きつける。

 

 精

「一か八か1.9秒の領域展開……」

 ホークス

「あらら……そっちも俺がやろうとしたんですけどねー……先を越されちゃった」

 

 どこからともなくホークスが現れる。その背後では何人かの男が倒れている。この老人と手を組んで何かしようとしていたのだろう。

 

 ホークス

「あれ、ωくんじゃん? インターン?」

 精

「デヴァーさんの所で世話になることになりまして。そっちにも敵がいたんですね。気付いてなかったんで助かりました」

 ホークス

「そのエンデヴァーさんは?」

 精

「俺に手柄奪われてしょんぼりしてます」

 エンデヴァー

「誰がしょんぼりしているだって?」

 

 明らかに不機嫌そうな声が焼けるような熱と共に背後から発せられる。振り返ると心底気に食わないと言った顔をしたエンデヴァーが立っていた。

 

 精

「後ろから見て何か学べました?」

 エンデヴァー

「……成程、大口を叩くだけのことはあるようだな」

 

 ほどなくして爆豪と轟もやって来た。奴らにサムズアップを見せつけ、警察に喚き散らす老人たちを引き渡す。

 

 ボケ老人

「其奴こそが元凶じゃ!! 奴の放つ金色の光が!! 闇を!! 終焉を招くのじゃ~~!!」

 精

「はいはい、晩御飯は豚箱のクサい飯ですよ~。だから静かにしましょうね~、おじいちゃん」

 警官

「見たことないヒーローだけど新人さん? 大手柄じゃないか」

 精

「まだ仮免ですけどね、ヒーローなので当然です」

 

 後のことは警察に任せてインターンの続きをと思ったのだが、ホークスがエンデヴァーに『異能解放戦線』という本を渡している。なんかごちゃごちゃ説明しているが、マーカーを引いたとこだけでも読んで欲しいらしい。

 

 ホークス

「そうなればエンデヴァーさん、俺達も暇になるでしょ!」

 

 随分と楽観的なことを言っているが、その顔は笑っていない。それほどまでに深いことが描いてある本なのか。俺にも回してもらえないだろうか、ダメもとで頼んでみよう。

 

 精

「俺にも一冊貰えませんか? ホークスのマーカー要約付きの奴が良いです」

 ホークス

「そう来ると思って持ってきてました」

 

 懐からドドドドと本を出しパパパと受け渡される。早速ぱらっと読んでみる。簡単に言うと、異能を使って自己責任で完結する社会にしようというものだった。一理ある考え方だが、ホークスがあんな顔になるほどのものではなかった。落ち着いたらもう一度読み返して考察してみるか。

 

 

 ということでエンデヴァーの事務所に来て歓迎を受ける。

 

 炎の女性のサイドキック

「ようこそエンデヴァー事務所へ!」

 精

「マッサージしましょうか!? それとも椅子になりましょうか!? 何だったらデートでも────」

 轟

「ヒーローとして振舞うんじゃなかったのかよ」

 

 轟に氷漬けにされる。今度から轟の左側に立つようにしよう。

 

 爆豪

「少しは理性を働かせろエロ金髪」

 

 爆豪に首を絞められる。今度から爆豪の隣に立たないようにしよう。

 

 バーニン

「手を出す速さはだけは有望だな! 私の名前はバーニン! 今日から早速我々と同じように働いてもらうわけだけど!! 見ての通りここ大手!! サイドキックは30人以上!! つまァりあんたらの活躍する場はなァアい!!」

 精

「面白ェ。さっきみたいにプロのお株を奪うか、お茶汲みや事務仕事に徹しろってことか。轟、茶を淹れてやれ。この季節は寒いから90℃ぐらいが適温だ。爆豪、お前は書類持ってこい。持ってきた分だけ俺が捌いてやる」

 爆豪

「氷漬けの震えた声で偉そうに指示出してんじゃねェよ殺すぞ」

 轟

「お茶……緑茶でいいか?」

 爆豪

「だから何でてめェはエロ金髪の言うことを真に受けんだ少しは反抗しろ」

 

 とりあえずエンデヴァーの指示を待つということになり、氷を砕いてさっきの本を取り出す。再び読み返すと、マーカーの引き方に違和感を覚える。もっと良い引き始めや線を引いてもいい場所があるのに、まばらな線の引き方をしている。監獄で文書の検閲をしていた経験があるから、何か暗号があるのではないかと勘繰ってしまう。マーカーが引いてあるところをよく読む。好敵手、彼は、理解、解放せよ、私軍……一文字目に何かあるか? 好、彼、解、理、私……好彼解理私。漢文のように見えなくもないが、これでは意味が分からない。二文字目はどうだ? 敵、は、解、放、軍────敵は解放軍。マーカー部分の2文字目が繋がっている。『連合が』『乗っ取り』『数』『十万以上』『4か月後』『決起』『それまでに』『合図』『送る』『失敗』『した時』『備えて』『数を』と続いている。

 

 精

「……十万以上……どっかで見たことあるな……」

 

 スマホを取り出し、ある配信者のチャンネルを開く。そのチャンネル、九玉の理チャンネルの登録者数は最近になって十万人以上になった。これは九玉さんによる敵連合と解放軍の合併の副産物だったのだ。

 

 精

「……そもそも、何でホークスはこんな情報を手に入ることが出来たんだ?」

 

 確かホークスは公安のヒーローだったずだ。公安といったら情報集めのために何でもする組織だから、ホークスに敵連合や異能解放軍に入れという指示を出していてもおかしくない。その中でホークスは情報を手に入れたのだろう。しかし、壊滅に追い込むまでの情報がないから、今から備えてほしいとメッセージを送ったのだろう。しかも、ここまで回りくどい方法で送るということは、ホークスはかなりの監視をされているということだ。

 

 精

「……この本のことは胸にしまっておくか。俺がどうこうできる話じゃないし」

 爆豪

「さっきからブツブツうるせェんだよいつの間にクソデクになったんだ」

 轟

「ブツブツ呟くのが本来の緑谷なのか? 中々大変な癖を持っているんだな」

 

 とりあえず俺の中で整理が付いた所でエンデヴァーがやって来る。

 

 エンデヴァー

「俺達がおまえを育ててやる。だが、その前に貴様ら二人のことを教えろ」

 精

「名前は緑谷(みどりや)出久(いずく)です。16歳、学生です。身長が166㎝で体重は……んにゃぴ、よく分からないです。彼女はいます。トレーニングは────」

 エンデヴァー

「言い方が悪かった。"課題"やできるようになりたいことを言え」

 精

「その"課題"を見つけて、何が出来て何ができないのかを知るために来ました」

 

 俺には故郷での実戦経験があって一般的な治安維持活動はできる。しかも俺の"個性"は幅広く応用が利くものばかりだ。しかし、それらは俺の経験や想像の範疇を出ず、この世界で通用するとは思えない。この体と技術を緑谷に渡した目にも、自分の力量をしっかり見極める必要がある。

 

 

 しかし、それだけだったら他の事務所でもよかった。だから、俺はもう一つの目的を言い放つ。

 

 精

「そして……エンデヴァー、手前に現実を分からせるために来た」

 エンデヴァー

「……何だと?」

 

 エンデヴァーが顔の炎を大きく燃え上がらせ威圧してくる。それに屈することなく言葉を紡ぐ。

 

 精

「手前のことは焦凍から聞いている。はっきり言ってクソだ。クソ度合いなら爆豪といい勝負できる、いや、爆豪よりクソだ。人間として下の下の下、最低ラインを大きく下回っている」

 エンデヴァー

「貴様……自分の立場が分かっているのか?」

 精

「手前のサイドキックだ。その上で手前をヒーローとしてじゃなくて、一人の人間として見て言っている……これでご満足か?」

 エンデヴァー

「…………成程、見た目と歳で甘く見ていた俺の間違いだったようだな」

 精

「手前は全て間違っている。正せる所は今の内に正しておきな」

 

 俺とエンデヴァーの間に一瞬即発の空気が流れる。そこにヒヤリとした右手が割って入る。

 

 轟

「そこまでにしてくれ緑谷……言いたくはねえが、コイツがどんな奴であっても、皆からNo.1ヒーローに選ばれたことに変わりはねえ。まだ何も為していない俺達に見下す権利はねえ、と俺は思う」

 精

「俺はエンデヴァーよりも先に敵を捕まえたが?」

 轟

「まだ一回だけだろ。実力かまぐれ分かるまでは、学ばせてもらっている身として動くべきだ」

 

 轟の言うことは最もだ。ここは焦凍に免じて一旦大人しく引き下がろう。

 

 精

「……失礼な態度を取って申し訳ありませんでした。ただ、俺の方が上だと分かった瞬間、貴方を見下します」

 エンデヴァー

「……俺の方も少し大人げなかった、すまなかった。ぜひとも俺を見下せるように頑張ってくれ」

 

 全力で握手をして一時的な和解を成立させ、爆豪と轟の課題を聞く。爆豪は何ができないのかを知る事、轟はヒーローにたる人間になる事だという。どちらも素晴らしい課題だ。ぜひとも頑張って欲しい。早速エンデヴァーからヒーローとしての心構えを享受してもらう。

 

 エンデヴァー

「"救助"、"避難"、"撃退"……ヒーローに求められる基本三項だが、俺はこれらの全てをこなす。並列思考で迅速に動き、それを常態化させ積み重ねる。雄英で『努力』を、そしてここでは『経験』を山の如く積み上げろ。貴様ら3人の"課題は『経験』で克服できる。この冬に何回でも俺より速く敵を退治して見せろ」

 

 要は実践あるのみと言った所か。流石No.1ヒーローだ、物事を分かりやすく説明してくれる。

 

 ω-99

「言われるまでもありませんよ。俺は早くあなたを見下したくてうずうずしているんですから」

 バクゴー

「てめェが何しようが勝手だが、俺の足を引っ張ったら殺すからな!」

 ショート

「あまり力入れ過ぎんなよ緑谷。お前は一度親父より早く動けている。その感覚を思い出すだけだから、間違っても暴走すんなよ」

 

 バクゴーの感想はともかくショートの意見は大切だ。必要以上に力まず、かといって慢心しすぎず、最適な力加減で実戦に臨むべきだ。

 

 ω-99

「行くぞ────出撃(エンゲージ)!!!

 

 さあ、俺達のインターンの幕開けだ。

*1
轟だとエンデヴァーこと炎司と焦凍の区別がつかないため。

*2
息子コンプレックスの略。心理学ではイオカステーコンプレックスと呼ぶ。




土口とエンデヴァーがバチバチの関係ですね。これに関しては後々深堀していきます。
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