抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
一旦皆でアイスを食べて空気をリセットする。
精
「今からする話は俺の推理の域を出ない、という前提で聞いてくれ」
エンデヴァー
「……何の話をするつもりだ?」
百聞は一見に如かず、俺はスマホを取り出し九州での荼毘の動画を皆に見せる。
荼毘
「初めましてかな? エンデヴァー」
荼毘
「また今度なNo.1ヒーローさんよ、また話せる機会が来るだろう。その時まで……精々頑張れ死ぬんじゃねえぞ轟炎司!!」
焦凍
「コイツは……親父が九州で会った敵か」
精
「名前は荼毘。蒼い炎を出す"個性"を持っている」
爆豪
「オッサンの上位互換じゃねえか」
精
「いや、あまり火力を上げると体が焼けちまうらしい。神野で戦った時に目撃したからな」
そして次にピザパの動画を見せる。
荼毘
「俺は24で成人済みだから飲んでもいいだろ」
夏さん
「24って、意外と若いんだな」
冬美さん
「私もまだ23で若いからね!」
エンデヴァー
「敵から学べることがあるとでも言いたいのか?」
どうやらみんなピンと来ていないようだ。なので俺が情報を整理していく。
精
「この荼毘って敵は24歳で蒼い炎の"個性"を持っています」
焦凍
「それぐらいどこにでもいるんじゃねえか?」
精
「その上でエンデヴァーに対して執着心があります」
爆豪
「有名税って奴だろ」
精
「……エンデヴァー、燈矢さんって何年前に何歳で死んだ?」
エンデヴァー
「……俺が居ない間に燈矢のことを知ったのか。 11年前、13の時に亡くなって────」
そこで一同が何かを察したようにハッとする。
精
「もう一つ質問だ。どんな"個性"だった?」
エンデヴァー
「……蒼い炎を出す"個性"だった」
ここまでくればどんな奴でも分かるだろう。
精
「もし燈矢さんが生きていれば、荼毘の条件にぴったり当てはまる」
エンデヴァー
「貴様! いい加減にしろ!」
エンデヴァーが机を叩き割らんばかりに拳を振り下ろす。
エンデヴァー
「燈矢は
何故かエンデヴァーが一瞬言い淀んだが気にしない。俺は飄々と言葉を続ける。
精
「俺の推理の域を出ないって言っただろ」
エンデヴァー
「いくら推理だからと言って、死んだ人間が蘇って敵になるなどありえないだろう!?」
精
「
エンデヴァーの威勢が止まった。恐らく見ていないか、見たとしても一部だけなのだろう。
エンデヴァー
「……だとしたら……なぜ敵になって戻って来たんだ……」
精
「全部手前のせいだろ。燈矢さんに見向きもしねえで焦凍ばかりにかまけて……子供が真っ直ぐ育つには親からの愛が必要なんだ。事故で親を失った俺が一番実感している。端的に言えば、手前が憎いから復讐してやりたいんだよ」
荼毘は明らかにエンデヴァーに執着している。山火事に巻き込まれたが何とか生き延びて、父への復讐のために敵になった。あり得なくはないどころかよくありそうな話だ。
精
「俺は燈矢さん=荼毘の証拠を出した。今度は手前が燈矢さん≠荼毘の証拠を出す番だぜ、エンデヴァー」
エンデヴァーは震えながらうつむいて、虚ろにぼやき始めた。
エンデヴァー
「馬鹿な……そんなの……ありえない……」
精
「『ありえないことを除けば、残ったものがどんなに信じられなくても真実だ』……そのありえないになる証拠を出せよ」
エンデヴァー
「燈矢は……燈矢は死んだはず……」
精
「それは手前の意見であって証拠じゃねえ。意見や感想では情報は否定できない。否定できない情報は……否定できるまで事実だからな」
今この時を持って燈矢さん=荼毘の説が事実となった。家族ですら否定できないのに、他人がどうやって否定できるだろうか。
ただでさえ地獄のような雰囲気になっているが、ここからが本当の地獄だ。俺はさらに追い打ちをかける。
精
「その荼毘は九玉の理チャンネルの一員である……これが何を意味するか分かるか?」
夏さん
「燈矢兄は
冬美さん
「それじゃあ、
精
「いつかやるでしょうね。No.1を失墜させるためにはこれ以上ない武器ですから」
自分を見捨てた存在が幸せになっていたら、何が何でもその幸せを壊したくなるだろう。俺も平行世界の妹にそのような復讐をされたから容易く想像できる。
精
「これを避けるには二つの方法がある。一つは荼毘並びに荼毘を知る敵全てを短時間の内に殺すこと。ただ、相手はどこにいるか分からない十万以上だから現実的じゃない」
焦凍
「つーかヒーローが殺しで問題解決したら終わりだろ」
勿論この案を採用するつもりはない。だから俺はもう一つのプランを提案する。
精
「もう一つは……
爆豪
「暴露させないために公表するって本末転倒じゃねェか」
本質が見えてない爆豪に対してチッチと指を鳴らす。
精
「敵によるあることない事盛りまくった誇大爆弾より、本人による事実だけの公表の方がダメージは少なく済む……地獄を見ることになるのに変わりはないがな」
どのみちダメージを避けられないのなら最小限にするというのも大切な判断だ。しかし、No.1にこだわり続けてきた男が、その座を捨ててまでできるとは思えない。
精
「俺が思いついたのはこの二つだ。どちらかを選ぶか、この二つ以上に効果のある案を思いついて実行するか……どうするエンデヴァー? No.1ヒーローなら"Puls Ultra"してみろよ」
エンデヴァー
「…………俺に……どうしろというのだ……」
エンデヴァーは机に伏してぼやくことしかできなかった。オールマイトを超えるためにやってきたことが、自分の持っている全てを奪おうとしてきている。その現実が受け入れられないようだ。
精
「それじゃあ時間制限を付けよう。3月末までに事が動かなかったら……俺がこの情報をホークスに伝える」
爆豪
「何でここでヘラ鳥の名前が出てくるんだよ」
精
「ホークスは敵連合と通じていて一挙手一投足を監視されている。この『異能解放戦線』って本が何よりもの証拠だ。マーカーが引かれている所の二文字目が繋がって暗号になっている」
焦凍
「……マジか。気が付かなかった」
精
「そんなホークスに俺の推理を言えば敵連合に、最終的には荼毘に伝わる。そうしたら嫌でも事が動き出すからな」
俺によるタイムリミットの宣告に夏さんと冬美さんが何か言いたげだったが、二人を押し切って結論を言う。
精
「全部エンデヴァーが悪いんです。誰がどう暴露しようがその事実は変えようがありません」
2人はエンデヴァーの方を心配そうに見る。
エンデヴァー
「……すまない……本当にすまない……」
夏さんが譫言のように呟くエンデヴァーの肩を掴んでブンブン揺さぶる。
夏さん
「すまないじゃねえよ! 謝ったってどうにもならねえだろ!」
冬美さん
「止めなよ夏くん……!」
いたたまれなくなった冬美さんが駆け寄って夏さんを止めようとする。
冬美さん
「そんなこととしたってどうにもならないでしょ!?」
夏さん
「────ッ! じゃあどうしろっていうんだよ!」
冬美さん
「そ、それは……」
精
「何もしなくていいんですよ。親の不始末は親だけで完結させるべきです。子供は親を信じてゆっくりしていればいいんです」
俺は2人の間に割って入って宥める。
夏さん
「今の
俺は嫌な雰囲気が漂う家の外に目線を送る。夏さんが何を言いたいんだと言いたげなので直接言う。
精
「…………まあ、外に行って頭を冷やしてきてください。今の夏さんは熱くなり過ぎです」
夏さん
「誰のせいでこうなったと思ってるんだよ!?」
精
「エンデヴァーです」
何も言い返せなくなった夏さんは部屋を出て行った。俺を責めるのは見当違いだし、エンデヴァーを責めてもまともな受け答えはしてこない。どうしようもない怒りを当たり散らす先がないのだろう。
取り残された俺らは俺を除いて何をどうしたらいいんだという顔で固まっていた。何もしなければこのまま時が止まる、ということもなく無駄に時間が流れるだけだ。俺はすっくと立ちあがって場を動かす。
精
「んじゃ、学生達は帰りますか。おいエンデヴァー、いつまでもウジウジしてないで車出せ」
爆豪
「……どんな神経してりゃその態度が取れるんだよ」
精
「事故で家族を失えばこうなる」
焦凍
「……そういわれたら俺達は何も言い返せねえよ」
精
「冬美さん、もしも行く宛がなかったら俺の家に来てください。母さんにはお嫁さんだと言って話を付けておきますから」
冬美さん
「……こういう時はもっと笑える冗談を言ってほしいな……」
雰囲気は全く和まなかったが、この地獄から一旦離れることは出来きそうだ。家を出てエンデヴァーが手配した車に乗る。車の中では一切の会話なく、ただただ窓の外の街や車の光を眺めるだけだった。
運転手
「何があればこんな地獄を煮詰めたような雰囲気になるんだい!!」
精
「うーん……火遊び?」
運転手
「ケェ────!! まさかエンデヴァーの娘さんに手を出したのかいジャリンコ!?」
精
「俺じゃないですよ。エンデヴァーの火遊びで────運転手さん、トランク開けてください!」
俺はOFASを発動して持って車から飛び降り、黒鞭で開かれたトランクからアタッシュケースを取って転がる。一般人ならトマティーナものだが、俺は鍛えているから大丈夫だ。
精
「……やっぱ"危機感知"って不便だわ。俺が敵意や悪意を意識しない時なんて、家族の前のオフの時ぐらいだからな」
俺の目の前には道路の白線を纏って、夏さんを簀巻きにしている敵がいた。俺はコスチュームを纏って敵に話しかける
ω-99
「その人を放せ。何かしたら数倍にして手前にやり返す」
敵
「お前は及びじゃない! 俺にはエンデヴァーが必要なんだ!」
ω-99
「過激なファンか? 今のエンデヴァーはまともじゃないから取り合ってくれない────」
俺の後ろから熱を感じる。振り返ると炎とコスチュームを纏ったエンデヴァーがいた。
エンデヴァー
「……貴様は……"エンディング"か……」
エンディングと呼ばれた敵が高笑いし、夏さんの顔に白線の矢印を突きつける。
エンディング
「俺を覚えていてくれかエンデヴァー! この男を殺すから頼むよエンデヴァー! 俺を殺してくれ!」
敵の挑発にエンデヴァーはただ茫然と立っているだけだった。
エンデヴァー
「……それは出来ない頼みだ……」
エンディング
「脳無は殺せても人は殺せないか!? でも俺もあの人形と同じさ生きてんのか死んでんのか────」
ω-99
「子供がピンチなのに立ち止まってんじゃねえよクソ親父」
俺は金色領域を展開し敵を滅多打ちにする。夏さんを縛っていた白線は粉々になり、敵はピクピクしながら地面にうつ伏せになっていた。俺は敵を黒鞭で締め上げて拘束して、夏さんに駆け寄る。
ω-99
「……すみません。流石に息子がピンチになればお父さんらしいところ見せてくれると思ったんですけど、アイツはどこまでもクソ親父でした」
夏さん
「……俺が襲われるって分かってたみたいじゃないか……」
ω-99
「あんな悪意丸出しのが近所にいたら、流石に俺は気付きます。家からでも奴を察したので少し利用させてもらいました」
夏さん
「……君、本当にヒーロー志望者か? 市民をわざと危険な所に向かわせて、それを助けて手柄を得るって……マッチポンプじゃないか」
ω-99
「マップチンポですよ」
シリアスなガチトーンで言った下ネタに夏さんが思わず噴き出した。被害者のメンタルケアを終わらせたところで俺はエンデヴァーに詰め寄る。
ω-99
「何で動かなかった?」
エンデヴァー
「……俺が助けたら、この先夏雄が俺に何も言えなくなってしまう────」
ω-99
「何考えてんだよバカ」
俺はエンデヴァーの頬を引っ叩いた。スパアンという音と共にエンデヴァーが尻もちを着く。俺はエンデヴァーの胸ぐらを掴んで立ち上がらせる。
ω-99
「自分の子供の危機に何悠長に考えてんだよ! まずは動けよ!」
エンデヴァー
「……俺は夏雄のことを思って────」
ω-99
「思うだけなら誰だってできるんだよ! 思って行動を起こさなきゃ何もならねえんだよ! 大体、手前の思っていることもやっていることも夏さんのためになってねえんだよ!」
俺はエンデヴァーへの不満を一気にぶちまける。
ω-99
「手前はNo.1ヒーローである前に親なんだよ! 親は子供の前ではしっかりとしたところ見せなきゃいけないんだよ! 何でか分かるか!?」
エンデヴァー
「……子は親の背中を見て育つから────」
ω-99
「違えよ! 子供が一番最初に見るヒーローだからだよ! 誰よりも自分を愛して、誰よりも自分を守ってくれて、誰よりも自分を大切にしてくれる! これがヒーローじゃなかったら何だってんだ!?」
エンデヴァーは俺の叫びに何も言い返してこなかった。
ω-99
「俺は最初に手前に言ったよな!
エンデヴァー
「……なぜ……そこまで言えるんだ……貴様はまだ学生────」
ω-99
「逸らすんじゃねえよ!!! そうやって逸らし続けてきたから学生でも分かることが見えなかったんだろうが!!!」
エンデヴァー
「……ッ!」
ω-99
「手前の!!! 責任だろ!!!
俺はエンデヴァーの過去なんて万年No.2だったぐらいしか知らない。コイツにもそれなりの事情があるのかもしれないが、No.1になるために父親という責務から目を逸らしていたようにしか見えない。だから今ここではっきりと宣言してやった。『お前は逃げ続けてきただけだ』と。
ω-99
「……遅めの育休を取って家族と話し合え」
俺はエンデヴァーを投げ捨てる様に放した。力なくうなだれるエンデヴァーがぼそりと呟いた。
エンデヴァー
「……すまなかった」
ω-99
「俺に謝って何になるんだよ。まずは夏さんや冬美さんや焦凍……そして奥さんと燈矢さんにも謝れ」
そうこうしている間に警察が来た。締め上げていた敵は何時の間にか気を失っていた*1ので、エンデヴァーに放り投げた。
ω-99
「手柄は手前にやるからビンタの件は内緒にしてくれよ。またインターン禁止になっちまう」
そう言い残してコスチュームをケースにしまい、爆豪と焦凍が待つ車の中に乗り込んだ。
爆豪
「……なんでいつもああやってまともに振舞えねェんだ?」
精
「ギャップがある方がモテるだろ?」
焦凍
「女に鼻の下伸ばしてるお前と親父に説教していたお前が同じ人物だってことが信じられねえ」
精
「男ってのは……元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ」
爆豪
「てめェの場合はどっちが本性なのか分からねェんだよ」
焦凍
「どっちも緑谷の本性かもしれねえな」
それはどうだろうなとはぐらかして轟の右肩に頭を乗せる。
精
「疲れたから氷枕にさせてくれ。お前の右肩ひんやりして気持ちいいんだよ」
焦凍
「……そうか。もう少し冷やしてやろうか?」
爆豪
「そのまま氷漬けにしてやれ。そうすりゃコイツが面倒事を起こすことはねェ」
俺はそのまま目を閉じて少し微睡むことにした。起きた際にどうなっているかが楽しみだ。
この地獄はまだまだ続きますが、このまま続けると重いので次回は日常回です。