抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
俺はいつかこの世界からいなくなる。だから俺が居た証として日記をつけている。大事件を書き記すのも大切だが、何気ない日常も書き記すべきだろう。これまでにあった日常をページをめくりながら思い出す。
今日は日曜日。神様は休むかもしれないが俺は休んでいられない。なにせ、今日は耳郎ちゃんと一緒にいる日だからだ。AM6:30、朝ごはんの仕込みが終わったので耳郎ちゃんを起こしにいく。
精
「耳郎ちーゃん。朝ご飯の時間ですよー? 一緒にHEVEN OR HELL Let's Rock しよー?」
耳郎ちゃん
「呼びづらいでしょ呼び方!? あとRockはともかくHEVEN OR HELLって何するつもりなの!?」
薄紫と黒の横縞シャツを着た耳郎ちゃんが良いツッコミをしながら出てきてくれた。
精
「天国と地獄を同時に味わえる朝ご飯……かな? 辛旨って塩梅によってはどっちになるか分からないじゃん?」
耳郎ちゃん
「なんでそんな危険な物を朝から作るの……まあ、食べるけどさ」
一緒に共有スペースにおりて朝ご飯の準備をする。フライパンにオリーブオイルとニンニクと唐辛子を入れて香りと辛みと抽出する。そこにケチャップを加えて混ぜ、半分におったパスタを絡め、焦げ目がつくまで両面を焼く。焼いたらお手製トマトソースを何回かに分けて加え、パスタが柔らかくなるまで煮込む。胡椒で味を調えて、気まぐれでバジルを乗せたら完成だ。
精
「お待たせしました。『スパゲッティ・アッラッサッシーナ~死ぬほど美味仕立て~』です。飲み物は冷たい牛乳です。辛かったら遠慮なく飲んでださい」
耳郎ちゃん
「あー、暗殺者のパスタ? 一時流行ったけど、今更? 出久って妙なセンス持ってるよね……いただきます」
耳郎ちゃんがフォークでパスタを巻き取って口に運ぶ。
耳郎ちゃん
「あ゛ー! 見た目通りに辛い! でも、後からトマトとかハーブとかのいろんな香りが! でもやっぱり辛いよ!」
耳郎ちゃんがコクコクと牛乳を飲み干した。おかわりの牛乳と一緒に、とろけるチーズで作った即席レンチンチーズソースを持ってくる。
耳郎ちゃん
「フォローできるのはすごいけど、最初から辛さ抑えてほしかった……うん、チーズソースかけたらいい感じになった。トマトの酸っぱさとチーズのコクと辛さの奇跡のバランスができた」
精
「だったらカルボナーラとかにした方がよかったかな……でも、ロックなパスタっていったらこれしかなくてさ」
耳郎ちゃん
「出久の中でロックってどんなものなの?」
精
「破壊的で破天荒、新境地を切り開く開拓者の精神、かな。はい、耳郎ちゃん、あーん」
耳郎ちゃんからフォークを貸してもらってあーんをする。イヤホンジャックをグルグルさせて恥ずかしがっていたが、意を決して頬張った。とってもかわいい。
精
「因みに恋をすると甘味に敏感になるんだって。このパスタも甘く感じたんじゃない?」
耳郎ちゃん
「いや、流石に無理だよ……牛乳は甘く感じたけど」
精
「パスタが辛いからね。相対的に甘く感じると思うよ」
耳郎ちゃん
「そこは恋してるから甘く感じたんじゃないって言うところじゃないの……?」
そうかもしれない。
朝ご飯も終わって二人で耳郎ちゃんちゃんの部屋で何をしようかという流れになる。白黒チェックにバンドの楽器が並ぶ
精
「部屋王の時から思ってたんだけど……弾いていい?」
耳郎ちゃん
「いいけど……何弾けるの?」
精
「一通り弾けるけど、キーボードはルール上ピアノとして扱うから省略させてもらうね。まずはドラムセットから行こうか」
俺は意気揚々と180BPMを刻む。バスドラム、フロアタム、スネア、トム、ハイトット、クラッシュシンバル、ライドシンバルが拍動をブチ上げるビートを刻む。30秒ほどのソロパートだったが、耳郎ちゃんはお口あんぐりで驚いていた。
耳郎ちゃん
「やっば……練習すればプロ行けるよコレ……」
精
「んじゃ、お待ちかねのエレキギターいきますか」
チューニングを済ませギターをかき鳴らす。キュイーンと痺れる音が鳴る。そこから俺はライトハンド奏法でお気に入りの『The Entertainer』を披露する。観客がいたら万雷の拍手モノの演奏を披露し、耳郎ちゃんの方を見る。口に両手を当ててマジの驚きを見せている。
精
「リクエストとアンコールはいつでも受け付けるよ。もちろん、セッションも大歓迎さ」
耳郎ちゃん
「じゃあさ、ちょっと軽く一曲合わせてくれない? 『Hero too』って曲なんだけどさ」
精
「やだ『Hでeroすぎる』なんて……耳郎ちゃんったらハレンチ……」
耳郎ちゃん
「変に区切るな! ウチボーカルやるからドラムやって!」
ということで1セッション行う。なんていい曲なんだ。学園祭でやったら間違いなく盛り上がるだろう。涙で譜面が見えない。だが、このセッションを台無しにするわけにはいかない。何とかドラムを叩き切り、ベランダに出て涙を放出する。毎回思うが、緑谷の涙腺ってどうなっているんだ。絶対そういう"個性"があるとしか思えない。部屋に戻ると若干引き気味の耳郎ちゃんが俺に質問してきた。
耳郎ちゃん
「出久は何がキッカケでロックを知ったの?」
精
「ローリング・ストーンズかな。で、クイーンとかボン・ジョヴィとか……最近じゃBUMP OF CHICKENかな」
耳郎ちゃん
「めっちゃ前のロックじゃん……出久って本当は何歳なの……?」
精
「ギリアラサーかな。平行世界だから古い新しいの基準は違うけどね」
とは言ったものの、故郷でも俺の楽曲センスは古いと言われている。何でだ? ローリング・ストーンズの『Paint It Black』は名曲だろ? あれ俺の事を言ってる歌詞だし。
耳郎ちゃん
「いや、あれ曲調から分かるけど結構暗い歌じゃん。ハチャメチャな出久を連想できる曲じゃないと思うけど……」
精
「BUMP OF CHICKENの『I』を自分の事だっていう奴よりはマシじゃない?」
耳郎ちゃん
「そ、その発言はマズいんじゃない? 何がどうマズいかはうまく言えないけど……」
俺も何かマズい雰囲気を感じ取った。この話題は止めにしよう。
精
「折角だからPaint It Blackを披露してあげようか? 俺のロック魂を見せてあげるよ」
耳郎ちゃん
「アレでロック魂見せるの……? 否定はしないけど、ハイウェイスターとかの方が良くない?」
ドラムを代わってもらい、今度は俺が歌う番になる。物悲しいギターから入り、耳郎ちゃんのドラムが後を追う。かつての俺を思い出し、魂の衝動のままに歌う。あの日の俺は────────全てを緑髪のような黒色に塗りつぶしたかった。
精
「I wanna see it painted black! painted black! Black as night! black as coal! I wanna see the sun! blotted out from the sky! I wanna see it painted! painted! painted! painted black!」
全力で歌い、へたりこんだ俺に耳郎ちゃんが駆け寄って心配してくれた。
耳郎ちゃん
「だ、大丈夫……? すごい迫力だったけど、一歩間違えたら戦闘訓練みたいに暴走しそうな勢いだったよ……?」
精
「ちっとロック過ぎたね……良い曲だから感情が暴れて仕方がないのさ。でも、問題ないよ」
耳郎ちゃん
「…………にしては感情が籠りすぎだったけど、まあ、出久がいいならいいんだけどさ」
精
「ちょっと疲れちゃったから、休憩がてらに耳郎ちゃんの絵を描いていいかな?」
耳郎ちゃん
「もちろんいいけど、ポーズのためにギター持っていこうか?」
ということで俺の部屋に案内する。
耳郎ちゃん
「すごっ……女子の部屋より甘い匂いするじゃん……」
精
「だからと言って……ほら、男子の匂いをさせるよりかはまだいいでしょ?」
次郎ちゃんが部屋の隅にまとまっているギチパンのゴミ袋を見て何かを察した。
耳郎ちゃん
「あー……出久なりの配慮ってことね……一瞬夢見た自分がバカみたいだった……」
耳郎ちゃんの配慮に感謝してPCを立ち上げる。
精
「さてさてさーて……折角だからアグレッシブな一枚にしたいんだよね……」
耳郎ちゃん
「出久の中のロックがハードロックだからなんとなく分かるけど……モザイク処理が必要な奴は止めてね?」
精
「えっ、5カ所モザイク入れるつもりだったんだけど……」
すでに俺のPCの中ではラフ画に5カ所のモザイクがかかっている。
耳郎ちゃん
「3つは想像できるけどあとの2つはどこなの……」
精
「両手」
俺の回答が意外だったのか耳郎ちゃんは腕を組んで考え始めた。
耳郎ちゃん
「両手にモザイク……? ……ああ、中指立ててるのか……中指だったらいいか……いや、よくないって!」
あのサインは中指を立てて男性器を象徴しているサインだから、実質ふたなりの絵になってしまう。耳郎ちゃんはふたなりが地雷らしいから止めてあげよう。
耳郎ちゃん
「いや、そういう意味じゃなくて! 仮でもヒーロー目指してるからってこと!」
精
「相変わらず耳郎ちゃんはいい反応してくれるなあ……お茶子ちゃんはもう慣れちゃって反応してくれないんだよね……」
改めて耳郎ちゃんを描き直していく。モザイクを入れない暴力的なポーズと言えば何だろうか? 俺の中で一番の暴力の印象があるモノと言えば──────刀だ。武器と言えば刀となるぐらい、俺の中では刀が暴力の印象になっている。としたらあのポーズしかない。一気に描き上げていく。
精
「出来た……サイコーにロックだぜ……」
耳郎ちゃん
「モザイク無しで出来た────-ひゃぁ!?」
その絵を見て耳郎ちゃんが驚いて尻もちを着いてしまった。描きあがったのは雄英の制服を着た耳郎ちゃんが、黒のエレキギターを刀のように構えている上半身の絵だ。両手でヘッドとネックの境目を持ち、イヤホンジャックを妖艶に絡ませ、ボディを切っ先に見立てて見せつける様に抜き身にしている。瞳孔を開きやや上目遣いで軽く笑っているその顔は、獲物を前にした化け物のような恐怖がある。
精
「名付けて『死線が奏でる嬌声』って所かな。故郷の先輩が見せてくれたポーズを耳郎ちゃんで再現したんだ」
耳郎ちゃん
「こういうジャケットあるからなあ……しかも、タイトルもロックらしくちょっと過激ぐらいでちょうどいいし……出久ってなんでいつもこうじゃないのかなあ……」
精
「アルバム出したらこの絵使っていいよ。もちろん裸が良ければ裸差分も────」
耳郎ちゃん
「いらない」
はい。
夕食を終え、再び耳郎ちゃんの部屋に行く。夜になって男女が1つの部屋に2人、何が起きてもおかしくない。
精
「ぶっちゃけ耳郎ちゃんは俺とどこまでの関係を期待している?」
耳郎ちゃん
「うーん……別れることを前提とするとなあ……でも、正直に言うと出久の事はめっちゃ好きだし……うーん……」
イヤホンジャックをグルグルさせており、かなり悩んでいるようだ。ここは『金色の狂犬』らしくリードしてあげよう。
精
「まずはキスから始めない? キスまでは俺からしてもいいってことになっているからさ」
耳郎ちゃん
「き、キス……そ、そうだよね……キスしないとそれ以上のことできないもんね……」
若干お目目グルグルになっている耳郎ちゃんが唇を差し出す。俺はその唇に────人差し指を重ねた。何が何やらという顔で耳郎ちゃんが尋ねてきた。
耳郎ちゃん
「い、出久……? ウチはいいって────」
その瞬間に唇を奪う。初心で純真な耳郎ちゃんにこれを決めるのはもはや絶頂モノの快楽だ。唇を放すと耳郎ちゃんの顔がみるみる茹で上がっていき、ボッっと蒸気がでた。
耳郎ちゃん
「ぁぅ……ぃ、今のはズルい……」
精
「俺って結構攻めるタイプなんだ……折角だからさ、耳郎ちゃんにだけの特別なことしてもいい?」
耳郎ちゃん
「な、なに……え、えっちな事はダメだからね……?」
精
「エッチな事じゃないけど……ちょっと過激かも。嫌だったらすぐやめるから言ってね」
事前の断りを入れて、俺は耳郎ちゃんの左の首筋に歯を当てる。ちらりと横眼に見えた耳郎ちゃんの顔は、動揺と困惑が見えて、でも嫌がっている素振りは全くなかった。
耳郎ちゃん
「は、歯型つけるの……? 聞いたことはあるけど、出久って結構ヘンタイじゃん……」
精
「
まるでイヴを唆す蛇のように悪いことを教える。何も知らないからこそ、過激を基準にできる。ぐっと口に力を入れて噛みつく。耳郎ちゃんの身体がぴくんと跳ねる。
耳郎ちゃん
「んんっ……い、たい、けど……ヤじゃない……」
痛みと快楽に震えて口から涎が垂れている。これ以上力を入れると血が出てしまうので口を離す。くっきりと綺麗な落胤が首筋に押された。
耳郎ちゃん
「はぁ……はぁ……これ……ヤバい……癖になる……ウチも出久にやっていい……?」
もちろんだと首筋を伸ばす。耳郎ちゃんが不慣れを表すように震えながら噛みつく。
耳郎ちゃん
「んっ……ふぅ……ぐぅ……」
一生懸命な痛みが肩から脳に痺れるような快楽をもたらす。故郷の人間では決して出すことできない、未経験の青さが織りなす至高にして唯一の────ガリッっという肉々しい音と共に鋭い痛みが走る。指をあてがうとぬるりと生暖かい何かが溢れていた。
耳郎ちゃん
「ッ!? ごっ、ゴメン! やり過ぎちゃった!?」
精
「……だから良いんだよ。耳郎ちゃんにしっかりと教えてあげるからね」
夜は始まったばかりだ。恋とは時に常識を燃料に炎を上げるものだ。耳郎ちゃんとの恋の方向性がぐしゃりとねじ曲がったが、それもまたロックな恋だと俺は思う。
日記帳を閉じて思い耽る。
精
「ああいうアブノーマルなプレイもまた一興だよなあ。アレは耳郎ちゃんだけにしておかないと。他の子の癖まで歪めたらちょっとインモラルすぎるからね。いつの日か耳郎ちゃんにピアスを開けてあげたいけど、そういうのはもっと大人になってからにしないとね」
この日記帳の中身ももっと面白くなっていくだろう。俺の青春はまだまだ続いていく。
やっぱ深夜に書くととんでもないことを思いつきますね。