抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
我は今、マキアの背でマキアと巨女の取っ組み合いを眺めている。何が起きているのか全く分からないので、隣にいるトゥワイスに聞いてみた。
トゥワイス
「……つーことがあって、皆でマキアの背に乗って死柄木の下に向かってんだ」
スケプティック
「どの面で言っているんだトゥワイス? お前がホークスを引き入れたからこうなったんだぞ?」
キュリオス
「あと"皆"って言わないで頂戴。リ・デストロ様や下典やトランペットが乗っていないじゃない」
マグネ
「それじゃあ敵連合の皆と一部幹部に訂正するわ」
コンプレス
「こっちの手には無限に"二倍"できるトゥワイスが居て、ホークスも捕らえている……ほぼ勝ちだね」
トガちゃん
「そのホークスっていうヒーローの血もちうちうできたので攪乱の準備も完璧です」
スピナー
「上ではそんなことが起きてたのか……俺は逃げるので必死だったぜ……」
ジェントル
「私達の華麗なコンビネーションは動画に収めてある。この戦いが終わったら皆で見ようじゃないか」
ラブラバ
「私の解説と編集でかっこよさマシマシでお送りするわ!」
皆が色々言ってきて大変だが、皆でマキアに乗って死柄木の所に行くから護衛をしてほしい、ということで"二倍"で我を作ったとのことだ。本物の我はすでに死柄木の下に行ったらしい。なら問題はないだろう。皆を死柄木の下に送り届けるのが今の我の仕事だ。
九玉
「ナイトアイが撤退命令を出したと聞いたが……どう見てもヒーロー達が止めに向かってきているぞ?」
下典やリ・デストロがヒーロー達を妨害しているが、ヒーロー達は一向に退こうとする気配がない。何が起きようと己の仕事に命賭すべしという者がいる始末だ。その最中、木のような忍者のようなヒーローが、痴女のようなヒーローを背にこちらに向かってきた。
九玉
「我がどうにかしよう。壊滅の連閃」
紅いエネルギーの剣を振るい爆発を起こし、2人のヒーローを吹き飛ばす。それなりの高さから落ちたので安否が不安だが、これで障害は無くなっ────ある程度進んだところで轟音と共にマキアの身体が沈んだ。どうやら地面のヒーロー達が何かしたらしい。マキアが立ち上がるまでの時間を稼ぐべく、我はトゥワイスに視線を送った。
九玉
「トゥワイス、先にやったアレをお披露目しようではないか」
トゥワイス
「アレだな! どれだよ! お前らカメラの準備しておけ!
これが俺の新必殺技"
その声と共に無数のトゥワイスと無数の我が生み出された。
九玉
「我達よ! 今こそ理を知らしめる時! 地に降りて理のカンペグループを見せるのだ!」
キュリオス
「それが言いたいならカンプグルッペ*1でしょ! しっかりカンペをグループで見なさいよ!」
スケプティック
「今のもカメラに収めてるからな! 編集しないぞ!」
2人のツッコミに反して我達が地面に降りてくる。それを見たヒーロー達の顔が青ざめていく。何かの瓶を持っているが関係ない。我達は声を合わせて名乗りを上げる。
九玉達
「「「我が名は『九玉』、この世の理たる者……英雄達よ、理不尽にひれ伏すがよい!」」」
木霊する我達の声が戦場を震え上がらせる。我としては彼奴等を殺すつもりはないが、彼奴等からしたら我は最大の脅威だろう。どう立ち向かってくるか見物だ。
爆発で迎撃させられた私とシンリンカムイは敵達を追跡しようとしたけれど、多くの敵達がそれを阻んできた。
敵A
「俺がやる」
敵B
「アレはいい女だ……服破かせねえ様にしねえとな……」
敵C
「ひん剝くのは死んだ後のお楽しみだな、ヒッヒッヒ!」
卑下た笑いを受けべながら敵達が迫って来る。私はシンリンカムイに容態を確認する。
ミッドナイト
「動ける?」
シンリンカムイ
「受け身の際に腕と足をやってしまいました……動けないです……」
あの高所から何とか着地できたのは、シンリンカムイが手足を目一杯広げて木々に絡ませたからだ。このままでは私の"眠り香"に巻き込んでしまう。だからといってこの人数を"眠り香"無しで凌ぐのは無理がありそうだ。考えている間にも敵は迫っている。
敵D
「ヒャッハー! 俺が女を頂く────」
飛び込んできた敵の頭に判子がめり込んだ。そのまま敵はばたりと倒れ、ぴくぴくと痙攣しだした。
ナイトアイ
「状況が状況なのでな……加減はしないぞ?」
静かに、何より激しく怒りを燃やしているナイトアイがやってきた。これなら凌ぎ切れるかもしれない。
ミッドナイト
「ナイトアイ! シンリンカムイが動けないの! 増援が来るまで何とかするわよ!」
ナイトアイ
「九玉に比べれば可愛いものです。さて、私達の未来は視るまでもないが……お前達が負ける未来も視るまでもないな」
いつ終わるか分からない防衛線が始まった。シンリンカムイをナイトアイに任せて、2人を巻き込まないように"眠り香"を使う。ナイトアイも人一人を背負っているとは思えないほどの動きで敵を倒していく。
敵E
「かかれかかれ! 奴らはたったの三人! しかも一人はお荷物だ!」
敵F
「キヒヒ! 早く女を滅茶苦茶にしてやりたいぜ!」
それでも敵が多すぎる。ナイトアイは山荘での戦いである程度消耗しており、私自身も落下のダメージは無視できないものだった。このまま戦えば最悪の事態も考えなくては────
???
「弁えろ色欲魔共が」
その声と共に敵達が吹き飛ばされる。その声の発生源には────ギガントマキアの上にいたはずの九玉がいた。
ナイトアイ
「九玉!? なぜキサマがここに!?」
九玉
「何故も何も落ちた2人の安否が不安でな。手負いのナイトアイだけでは少々不安だろうから、我が手助けしてやろう」
この九玉という存在は一体何を考えているのだろうか。いくら緑谷くんを元に戻せる唯一の存在だからとはいえ、ヒーローとして見逃せないほどの悪行を企んでいる。なのに、こうやって平然と善人面で助けようとしている。
ミッドナイト
「……貴女は一体何を企んでいるの?」
九玉
「ナイトアイには言ったのだが、敵とヒーローの共存できる世界だ。正義や悪のような個人によって変わるものではなく、不変で絶対的な
ミッドナイト
「……ただの恐怖政治じゃない。それに人がついていくと思うの?」
九玉
「従わぬ者は不要だ。理なき自由はいつの日か破綻する。だから理が必要なのだ。その理たる我に従っていれば安全とそれなりの自由が保障される……平和そのものではないか?」
ナイトアイ
「……理不尽だな」
九玉
「恒久的平和など本来ならありえないものだからな。理不尽の最たる例だろう。話は一旦止めだ。伏せないと死ぬぞ」
会話を打ち切るように九玉の身体が紅く光り出す────死ぬ。私は本能的に死を感じ取って地に伏せた。ナイトアイも同じようにシンリンカムイと一緒に地に伏せた。
九玉
「"
辺りから凄まじい爆発音と水分を多く含んだ破裂音と悲鳴に近い断末魔が響く。少しでも体を起こせば巻き込まれるだろう。止むまで伏せているしかない。
九玉
「抗うものには死を! 従うものには生を! これが! 理たる我の力だ!」
いつしか様々な音が止み、辺りには血肉の焼けたおぞましい匂いが漂っていた。顔をしかめながら起き上がると────赤黒く荒れた大地に、漆黒の理が立っていた。
九玉
「……さて、露払いは済んだ。残りのヒーローを助けるのはお前達だ。頼んだぞ」
そう言って九玉はどこかに消えてしまった。もし、彼女がその気なら私達ごと殺していただろう。私達が生きているのは、彼女の計画に必要だからなのだ。彼女が望むのは敵とヒーローの共存できる世界────私は一縷の望みに掛けて通信機を起動させた。
正直に言う。オイラはモテてえからヒーローを目指したんだ。そしたら同じクラスの緑谷がいきなり6人も彼女を作りやがった。それは最高のオカズを提供してくれたから許す。だが、今この1000年に1度レベルの最悪の状況はそんなんじゃとても受け入れられるものじゃねえ。
九玉A
「ほう、様々な武器を作り出して戦うのか。撮影の備品準備に使えそうないい"個性"だな」
九玉B
「ぐっ、痺れ────」
九玉C
「分身の我を溶かすほどの電気か……カメラのバッテリー問題は解決できそうだな」
九玉D
「キノコか。食べられる物は生やせるか? あるいは罰ゲームに使える毒キノコはどうだ?」
ミッドナイト生先を爆発で吹き飛ばすような奴が、オイラたちの"個性"を遊び半分で配信向きかどうか判断してくるような奴が、文字通り無数にいる。目覚めたらなかったことになる悪夢であってほしい。
ミッドナイト先生
『こちらミッドナイト! そっちの状況はどう!? 応えられる人は応えて!』
ミッドナイト先から連絡が来たので反射的に応答しちまった。
グレープジュース
「こちらグレープジュース……九玉が無数にいます……遊び半分でオイラたちの"個性"を判断しています……」
ミッドナイト先生
『────作戦は中止! インターン生もプロヒーローも今すぐに退いて!』
退いてと言われても逃げ切れるのか? 確か瞬間移動するんじゃないか? そんなのから逃げれるのか? もう詰みじゃねェのか? 何をしたって無駄で────
緑谷
「……この世界の平和は託しますぜ、未来のヒーロー達」
アイツはオイラたちに平和を託すと言った。そしてオイラたちはそれに頷いて約束した。今ここで死んだらアイツとの約束を果たせなくなっちまう。ダチとの約束を果たせない男なんて────ダサい。たとえ今は無様に逃げたとしても、生き延びていつか平和にできるなら────めっちゃカッケェ。オイラの都合のいい解釈かもしれねェが、アイツの言った事ってこういうことだと思う。だからオイラは意を決して叫んだ。
グレープジュース
「皆逃げろ!!! 逃げて
オイラの生への執着に皆がなんとも言えない顔でこちらを見てきた。
八百万
「何を言っているのですか実さん!? 今ここで逃げたら街の人々は────」
ミッドナイト先生
『グレープジュースの言う通りよ! そもそも相手が本気を出したら街どころか世界を破壊できる! それを今していない以上、皆には生き延びられる可能性があるの! 未来ある若い命を不必要に捨てる必要はないわ!』
ミッドナイト先生の悲痛な叫びに皆が戸惑い始める。あのデカい敵が動きだすのも時間の問題だ。
ホークス
「皆! 逃げるんだ! 俺でも勝てなかった相手なんだ!」
どこからともなく現れたホークスも撤退を勧め始めた。プロヒーロー2人にここまで言われたら、この場の全員がその指示に従うしかなかった。皆でデカい敵の直線上から垂直になるように避難する。
マキア
「主のもとへえええ!!!」
デカい敵が動き出し、木々をなぎ倒しながら街へ向かっていった。おかげでオイラたちはプロヒーロー含め誰も死なずに生き延びた。
九玉達
「「「……役目は終えた。我達はここで消えるとしよう」」」
オイラたちに撤退の決断をさせた元凶たちがお互い同士を殴り始めた。次第に溶けて数が減っていき、ついには最後の1人となった。その1人がオイラたちを一瞥してにやりと笑った。
九玉A
「……うまくいったな、トガちゃん」
その声に反応してホークスが高笑いをした。
ホークス
「うまくいきましたねぇ! これで皆で死柄木くんの下に行けます!」
ホークスの姿がドロリと溶けて、裸の金髪ダブルお団子の女の子の姿になった。さっき九玉が言っていたトガちゃんという子なのだろう。こんな時でも女の裸を見れたことの喜びがある自分が憎い。
トガちゃん
「因みに本物のホークスは私達が捕らえました! ホークスが今後どうなるか気になる人は……九玉さんのチャンネルやSNSをチェックしてくださいね! 以上、九玉の理チャンネルのカアイイ担当トガちゃんでした!」
そう言ってトガちゃんなる子が九玉の喉元をナイフでぶっ刺し、自身の首にもぶっ刺して溶けて消えた。後に残されたオイラたちはただひたすらに呆然としていた。
グレープジュース
「……本当に正しかったのかな……オイラたちの決断と行動は……」
ミッドナイト先生
『大丈夫よグレープジュース。あの強大な敵を前にして、誰一人欠けることなく生き残ったのは────』
不意に後ろからギュッと抱きしめられる。柔らかい何かがオイラの頭のもぎもぎをもにゅもにゅしている。
ミッドナイト先生
「────間違いなく胸を張っていい事よ」
ミッドナイト先生に抱きしめられてその温かみが伝わる。大きな胸の柔らかさが直に伝わる。オイラは思わず振り返って、ミッドナイト先生に思い切り抱き着いた。胸の中が色々な物でごっちゃごっちゃになって、とにかくただひたすら泣きたかった。
グレープジュース
「ミッドナイト先生えええ!!! オイラ、オイラあああ!!!」
ミッドナイト先生
「大丈夫よ峰田くん……皆も無事に生きていてくれて本当に良かったわ……皆は何も悩む必要はないわ。今回の責任は、私達大人がしっかり引き受けるから」
今はその言葉に甘えて泣くことしかできなかった。
トガちゃんの分身を使った作戦によってヒーロー達を退けることが出来た。計画通りに町を破壊する様をカメラに収めながら死柄木の下に向かう。
キュリオス
「いや、何が計画通りよ!? あの三人は!? 置いてけぼりよ!?」
スケプティック
「貴様……最初から切り捨てるつもりだったな!?」
トゥワイス
「まあまあいいじゃねえか! 良くねえよ! 寂しかったら俺が分身を作ってやるからさ!」
マグネ
「私達は水着回で測ったからいいけど……理の会新規組は測ってないんじゃないかしら?」
コンプレス
「となると……分身は作れなさそうだねえ」
スピナー
「……ご愁傷様だな。あのハゲ頭が拝めないとなるとちょっと寂しいぜ」
トガちゃん
「……」
ジェントル
「いくら計画のためとはいえ……少々やり過ぎな気もするな……」
ラブラバ
「そうね……もう少しいい方法があったんじゃないかしら……」
九玉
「臆するな。復興など無限の人手があれば容易く行える、しかし、荼毘の抹殺はそうもいかぬ。時に非情にならねば夢など叶えられ────」
マキアの向かう先の空が紅く灼ける。恐らく本物の我が何かしたのだろう。それと同時に、マキアの歩みが早くなる。
マキア
「主が……! 主が危ない……!」
九玉
「だろうな。急がねば……お前の主は死ぬぞ」
我の発言に皆がきょとんとする。ここまでくれば我の計画を打ち明けてもいいだろう。
九玉
「死柄木が不完全に目覚めた今────