抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
あつい。えんでう゛ぁーとがらきんぐがたたかっている。
エンデヴァー
「全体通信こちらエンデヴァー!!! 病院跡地にて死柄木と交戦中!! 地に触れずとも動ける者はすぐに包囲網を────」
じゃあいかなきゃ。でも、からだがうごかない。だって、なんのためにうごけばいいかわからないから。もうおれにはなにもない。
死柄木
「ワン・フォー・オールを」
がらきんぐがおれにむかってくる。ふれたらころされる。でも、いまさらどうなったっていいや。だって、もう、やくそくはたせないし────
???
「させるか」
だれかががらきんぐをなぐりとばした。あざやかなあかいばくはつがめにやさしくない。まるできゅうぎょくさんみたいなあかいろだった。
九玉
「みたいなではない。我そのものだ」
精
「…………へ?」
九玉
「まるで幽霊を見たような顔をしているな? 我は我だ。触って確かめてみろ」
まっくろなはだにおれのてがふれる。すこしあついけど、たしかにそこにある。
精
「……本物?」
九玉
「……んん、こんぎょく~♪」
精
「本物の九玉さんだあ!?」
あまりの衝撃に思考能力が戻る。だから質問せずにはいられなかった。
精
「何で生きているんですか!? さっき"崩壊"に巻き込まれて溶けたんじゃ!?」
九玉
「巻き込まれた? 我はさっきまで山荘にいたが、マキアが目覚めたからここに瞬間移動して────」
死柄木
「邪魔するなよ九玉」
ガラキングの手が九玉さんに伸びる。反射的にガラキングの顔面にAFOS50%の右ストレートを叩き込む。ドゴンと凄まじい音が響いてガラキングがぶっ飛んだ。それを見て九玉さんが話を再開する。
九玉
「────そもそも、我は"超再生"を持っている。"崩壊"を喰らったぐらいでは大したダメージにもならない」
精
「そうかもしれないですけど、俺の目の前で溶けたんですよ!?」
九玉
「おそらく、"二倍"で生み出された分身だろう。一定以上のダメージを受けると溶けて消える、"二倍"で生み出された分身の特徴だ。氏子が死柄木の護衛のために生み出したのだろうが、我が死柄木殺害を企んでいるのを知らなかったようだな」
さっきの九玉さんが"二倍"を持つ脳無がいると言っていたから、この推理で間違いないだろう。
精
「となると……九玉さんに協力すれば元の世界に戻してもらうっていう約束は……」
九玉
「分身の我とそのような約束をしたか。いいだろう、
死柄木を殺す。俺はそれに加担することになる。元に戻るためにとはいえ、そんなことできるのか────今は迷っている場合じゃない。俺は頬叩いて気合いを入れ直し、インカムを全体通信に切り替える。
ω-99
「こちらω-99! 本物の九玉と合流しました! これより死柄木を最前線で止めます!」
ここが俺の
ω-99
「幾重にも辛酸を舐め、七難八苦を越え、艱難辛苦の果てに、満願成就に至る────『金色の狂犬』、押して参る」
俺は"浮遊"を使って飛び上がり、エンデヴァーと合流した。
ω-99
「ご迷惑おかけしました! 今は元通りです!」
エンデヴァー
「なら失態を取り返す活躍をしろ! 奴は常人を超えた身体能力を持っている!」
俺が50%の力で殴っても吹っ飛ぶだけだったから間違いない。そしてホークスと九玉さんの話から"死柄木は幾つもの"個性"を持っている"はずだ。だが、重要なのはそこではない。俺が朧気ながらにガラキングから聞いたあの言葉が気になる。
死柄木
「お前を殺してやるよ! 緑谷!」
その張本人が跳んできて右手を伸ばしてきた。だったら本人から探ってみよう。
ω-99
「名付けて────
口を開いて舌から黒鞭を伸ばし、ガラキングの首に巻き着ける。そしてそのまま引き寄せ────勢いよくキスをする。歯と歯がぶつかって痛いが、怯んでいる場合ではない。俺はそのままωスキャンで読み取る。
死柄木
(なにしてんだコイツ……!?)
???
(僕の力でワン・フォー・オールを手に入れるんだ死柄木……)
うそだろ。コイツは──俺の顔にガラキングの左手が触れる。
夢を見る。立っているガラキングの横からAFOが生えている。めちゃキモイと言っても過言ではない。
死柄木
「お前正気か? あの土壇場でキスするかよ?」
AFO
「まさかこんな風にOFAを手に入れられるなんてね。流石の僕も予想できなかったよ」
俺だってガラキングの中にAFOがいるなんて予想できなかった。あのオール・フォー・ワンという呟きの元凶はコイツだったんだ。何か言ってやりたかったが口がうごかない。それどころか体がまともに動かない。
菜奈さん
「君はまだこの世界で動けない。私たちが何とかする」
菜奈さんが俺の頭に手を置いてガラキングwithAFOと対峙する。それを見てAFOが嬉しそうに笑いながら指を差す。
AFO
「見ろよ弔! 凄いぜ死人だ! 君の祖母にして無能で哀れな志村菜奈がそこにいる!」
精
「こんな綺麗でエロイ人を馬鹿にするな! あと死人なのは手前もだろ金玉ヘッド!」
なんか喋れてしまったし立ち上がれてしまった。ここは精神世界だから心が強ぇ奴なら動けるのかもしれない。その様子を見て菜奈さんが心底呆れたように困惑している。
菜奈さん
「えぇ……? 擁護してくれるのは嬉しいけど……えぇ……?」
精
「あっ、エロいって言った事はマイトに内緒にしてくださいね? アイツ10分ぐらいなら筋肉モリモリマッチョマンになれるらしいので……」
死柄木
「見ろよ先生。凄えぜ大馬鹿野郎だ。こんな状況でもOFAが奪われることに対して何も思っちゃいねえ」
精
「奪ってもいいがよ、多分死ぬぜ?」
俺の発言にガラキングが堪えきれずに笑い出した。そんなにおかしいことを言ったのだろうか。
死柄木
「誰が死ぬって!? まさか俺が!? マスターピースになった俺が!?」
その発言に違和感を覚える。まさかコイツどういう状況で目覚めたのか分かっていないんじゃないか? 俺は確かめるべく情報を与えてみる。
精
「九玉さんから聞いたがよ、お前未完成で目覚めてるらしいぜ?」
死柄木
「……今何月何日だ?」
精
「……咄嗟に思い出せねえが、4月にはなっていないぜ?」
死柄木
「うそだろ……?」
精
「俺みたいに驚いている所で申し訳無いが、完成してない体でOFAを継承すると体が爆発四散するらしいぜ?」
死柄木
「うそだろ……?」
精
「それでもOFAいる? いるなら元の世界に戻り次第お前に髪の毛食わせるけど……」
ガラキングがAFOの顔を見る。
死柄木
「何でそういうこと言わねえんだよ先生!? このまま奪っていたら死んでたぞ俺!?」
AFO
「私も今知ったんだ……まさか器が完成していなかったなんて……」
死柄木
「勝手に俺の中に入り込んでまでやることが自滅!? あんたは何がしてえんだよ!?」
AFO
「弟の意志が宿っているOFAが欲しかったんだよ……」
死柄木
「気持ち悪いこと言うなよ!」
ガラキングとAFOがギャーギャー騒ぎ出した。決着がつくまで暇そうだから菜奈さんとイチャつくとしよう。菜奈さんの体にペタペタモミモミ触る。がっちりと骨太の身体ながら、女性の象徴はしっかりと出ている、オブラートに包んで言ってドスケベボディーだった。
菜奈さん
「この状況で凄いことするねキミ? 一応OFAが奪われようとしているんだよ?」
精
「奪われたら菜奈さんともう会えなくなるじゃないですか。だから今の内に菜奈さんボディーを堪能しないと。それに精神世界だからドスケベセックスしても中出ししても問題ないじゃないですか」
菜奈さん
「本性を少しは隠しなよ……英雄色を好むとは言うけど限度があるでしょ……」
精
「で、どの体位が好きです? 四十八手どれでもできま────」
俺の口元が黒鞭で塞がれ、4人の男に取り抑えられる。
五代目
「旦那ァ! もうちっと状況を考えた方がいいんじゃねェか!?」
六代目
「万縄先輩の言う通りです。油断も隙も多すぎです」
四代目
「命の危機に瀕すると生殖行為への欲が本能的に出ると聞くが……いくら何でもだな」
精
「放せコラ! 俺は土口精だぞ!」
五代目
「なんじゃそれは!? そもそも男4人に勝てるのか!?」
精
「馬鹿野郎お前俺は勝つぞ! ガラキングに年下の叔父叔母を見せつけるんだ!」
初代
「それまでここにいるつもりかい?」
こちらもこちらでギャーギャー騒がしくなってきた。
精・死柄木
「「とにかく! 俺のやりたいようにやらせろ!」」
俺とガラキングのハモリに一同が硬直する。その隙に拘束を振り払い、お互いに睨み合う。
精
「改めて聞くけど、OFAいる?」
死柄木
「いらねえ。先生の言うことを聞くなんてうんざりだ。俺の意志で俺の夢を果たす」
精
「言っとくが、俺は元の世界に帰るために全力でお前を倒す。しかも、それをアシストするようにプロヒーローも九玉さんも協力する」
死柄木
「関係ねえ、全部ぶっ壊す」
発言の力が増していくごとに、世界にひびが入る。
精
「……なんでそんなに壊したいんだ? 変えるだけじゃダメなのか?」
死柄木
「変えるために壊すのさ。一旦全部壊して、そこから新しく始める」
淳之介
『俺が……ドスケベ条例をぶっ潰す!」
その死柄木の執念に、かつて復讐に燃えていた淳之介君の姿が重なった。
精
「……俺はお前に何があったのかも知らないし、どうして敵になったのかも分からない。ただ、それだけの事情があったってのはなんとなく分かる」
死柄木
「同情してるのか? だったら俺を手伝ってくれよ?」
精
「その上で言わせてもらう。お前は間違ってる」
死柄木
「ヒーローから見たら敵なんか誰でも間違ってるだろうよ」
精
「違う。ヒーローとしてじゃなくて、
俺は俺の『やりたいようにやる』。だからよほどでもない限り、誰かの『やりたいようにやる』を邪魔することはない。それでも、俺と誰かの『やりたいようにやる』同士がぶつかる時がある。そうなったら俺の価値観で相手の『やりたいようにやる』を判断して、良いなら見逃し悪いなら止める。
精
「お前の復讐することそのものは間違っていなくても、全てを壊すというやり方は間違っている」
死柄木
「そうでもしなきゃ変えられないとしたら?」
精
「そうしなくても世界は変えられる。お互いに手を差し伸べ合って、心から分かり合えれば世界は変えられるんだ」
死柄木
「分かり合えなくていい。できないから"ヒーロー"と"敵"なんだ」
空間がボロボロと崩れる。もう限界か。だったら、せめて一言残さないと。
精
「俺がお前を分かってやるから! 俺がお前の手を握ってやるから! 手を伸ばしてくれよ!」
死柄木
「じゃあお前から手を差し伸べてみろよ! 掴んでやるからさあ!」
俺は死柄木に向けて手を伸ばす。届くことなく引き剥がされていくが────死柄木は確かに手を伸ばしていた。
???・???
「何をやっておるんじゃお前さんは!」
「何やってンるんだ手前ェは!」
2人の男の声とともに頭をシバかれる。一人は年寄りでもう一人は爆発的にうるさい。誰だと顔を上げるとよく知った顔のグラントリノと爆豪だった。
ω-99
「いってえ……何って……死柄木から情報を得たんですよ……」
爆豪
「情報を得るどころかOFAを奪われそうになってたじゃねェか!」
グラントリノ
「死柄木はAFOの"個性"を移植されておる! イレイザーの"抹消"がもう少し遅かったら最悪の事態になっておったぞ!」
グラントリノの言う最悪の事態は、俺にとって最悪の事態ではない。そもそも今の死柄木はOFAを奪うつもりはないから起きえない。むしろ、マスターピースの死柄木を殺されることが最悪だ。手を差し伸べると言っておきながら差し伸べられない、そんな経験はもうごめんだ。
ω-99
「九玉さんは!?」
グラントリノ
「九玉の奴やらエンデヴァーと一緒に死柄木と戦っておる。死柄木が倒されるのも時間の問題じゃろう」
グラントリノが指さした先では赤い炎と紅いエネルギーが死柄木を覆っていた。あのままだと灰になるのも時間の問題だろう。それでも、あいつは手を伸ばしていている。それに気付いているも人はたくさんいても、その手を掴もうとしている人はいない────────俺は静かに目を閉じ、血の味がする程唇を強く噛んだ。
ω-99
「……助けたいと思っちまった。だから──手を差し伸べないと」
俺はOFA50%で死柄木に向かって跳び、伸ばしている右手に黒鞭を巻き付けた。死柄木が俺の方を向いた。俺は目を合わせて力強く頷い────ものすごい力で死柄木に引っ張られる。俺が近づいてきた事にエンデヴァーと九玉さんが気付き、死柄木への攻撃を止めた。
ω-99
「この作戦のアリアドネの糸は────俺の『やりたいようにやる』だからな」