抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
引っ張られた勢いのままに死柄木の顔に拳を叩き込む。再び死柄木が吹き飛ばされて一瞬の隙が出来たので、俺は九玉さんにωスキャンで知ったことと、俺が死柄木を助けたいことを話した。
九玉
「今の死柄木にはAFOの意志があると……今すぐにでも殺してやりたいところだが、お前の頼みとあっては仕方がないな。ただ、もう少しでマキアと理の会の幹部がここに来る。巨体で暴れるマキアに無限に我を生み出せるトゥワイスまでここに来たら、戦況は一気にひっくり返る。そうなったら死柄木を助けるどころの話ではなくなる」
いくらダメージを与えれば消えるとはいえ、無数の九玉さんを相手をするのは骨が折れるどころか木っ端微塵になる話だ。
九玉
「マキアが来るまでに誰も何も思いつけなかったら……死柄木の命の保証はできぬ。それは覚悟してほしい」
ギガントマキア達が来るまでに、死柄木を殺さないようにしつつ助ける方法を考える。いくら俺が望んだこととはいえ、未だかつてない無理難題だ。俺に出来るのだろうか────震える俺の肩に熱い手が置かれた。
エンデヴァー
「……良いか緑谷。我々ヒーローは助かりたいと思っている人を助けるのが仕事だ。救済ではなく混沌や破壊を望む者までを助ける必要はない。プロヒーローでも助けられない存在はいる、それを忘れるな」
精
「エンデヴァー……」
今、死柄木は何を望んでいるのだろうか。破壊なのか救済なのか。
死柄木
「お前の尺度で考えるなよ傲慢だぜ?」
戻ってきた死柄木が左拳を構えている。俺は右手で受け止める。衝撃で土埃が巻き上がるほどの威力だ。それでも俺は死柄木を助けたいという気持ちは揺るがない。
死柄木
「諦めろよ? ここで俺を殺してヒーローになれよ?」
精
「誰かを犠牲にして名誉を手に入れるぐらいなら……俺の心に従って汚名を被った方がよっぽどマシなんでな……!」
死柄木
「前から思っていたがよ、お前ってヒーロー向いてないんじゃねえか?」
精
「俺は自分がヒーローだと思った事は一度たりとも無いさ……!」
どうすればコイツを助けられる? 全身を貫くような憎しみと殺意を持っている以上、全ての骨を砕いたとしても立ち上がり、死ぬまで意識は失わないだろう。だからと言って下手に拘束して無力化したら、諦めから自害を選んだっておかしくない。死柄木にとっての勝ちは俺が死柄木を助けられないことであり、その際の被害や自身の状態は関係ないのだ。
死柄木
「俺を助けたいんだろ? 早く助けろよ? 早くしないと────」
死柄木の右肩がバキャと割れる。超再生を"抹消"された上で戦い続けた反動が体に出てきているのか。
死柄木
「
俺は通信機をを起動してイレイザーヘッドにつなげて叫んだ。
精
「"抹消"を解除してください! 九玉さんまで巻き込んじゃってます! 俺が元の世界に帰れないです!」
死柄木
「残念だったな。通信機は俺の"電波"で使えなくなってんだ」
死柄木の左拳が俺の顔面を真正面から捉える。ボギグキとめり込んで鼻の骨が折れる音が脳に響く。痛いし血が呼吸を邪魔するがそれだけだ。それは怯んでいい理由にならない。俺は黒鞭で死柄木の全身を縛り上げ、猿轡のように口を封じた。
精
「今の叫びが届けば……!」
俺は全力で死柄木の体を締め上げ骨を砕いた。
死柄木
「痛ってえなあ! 痛みでショック死しちまうぜ!」
笑いながら叫んでいる死柄木だが、右肩の傷が少しずつ治っていっている。恐らく、俺が黒鞭で死柄木を捕らえたのを見て"抹消"を切ってくれたのだろう。それに合わせるように炎の鞭が死柄木をさらに捕らえた。
エンデヴァー
「これで少しは考える時間が出来ただろう! 死ぬ気で考えろ!」
精
「ありがとうございます! ωセンス! 」
精
「ダメだ! 何も思いつかねえ! せめて時間があれば!」
俺の死柄木を助けたいという思いは先ほど芽生えたものだ。数分程で決めた、もはや何も練られていない行動がうまくいくはずない。
九玉
「時間を作ればいいのだな?」
九玉さんが俺に触れる。平行世界で長時間考えればどうにかなるか。いや、いま世界移動したらまずいこのまま世界移動したら死柄木ごと移動してしまいかねない。九玉さんもそれに気付いてすんでの所で止まった。
九玉
「この世界にいたまま時間を作れと……厳しいな」
死柄木
「所詮お前の理なんてそんなもんさ九玉ぅ! 泥花では俺みたいにぶっ壊せばどうにかなったかもしれねえが、今この場ではもはやどうする事も出来ねえよ!」
悔しいが死柄木の言う通りだ。どんなに強大な力を持っていたとしても、強すぎるが故に助けることが出来ない。
九玉
「……お前みたいに、か……緑谷、一か八かの作戦が思いついた。もし失敗したら躊躇いなく死柄木を殺せ」
九玉さんはそう言って、死柄木の頭を鷲掴みにした。
九玉
「転移」
ただ一言言っただけで何も変わらなかった。もしかして平行世界に行って何かしたのだろうか────その一瞬の空白で死柄木が拘束を解いて、右手で九玉さんに触れた。
死柄木
「上手くいった」
次の瞬間、死柄木と九玉さんの姿が消えた。そして、いつかの神野区のように空が紅く灼けた。何が起きたのか全く分からなかったが、なんとか頭を働かせてωセンスで情報を探る。
???
「こちらだ緑谷」
その声のする方向を見ると────右手が紅黒く光っている死柄木がいた。
死柄木
「なんとも姑息な手だが……これで時間を作ることは出来た。とりあえず後の話は我の配信を見ておけ」
そうして九玉さんっぽい喋り方をする死柄木はどこかに消えた。その後、何体かの脳無が現れたが全てプロヒーローが機能停止に追い込んだ。それ以外特にこれといった事は起きなかった。九玉さんの言っていたギガントマキアもこなかった。
精
「…………何が起きているんだ……?」
それしか頭になかった。考えようにも情報が多すぎる。
イレイザーヘッド
『こちらイレイザーヘッド! どうなった緑谷!? 状況を説明しろ!』
言われたとおりに状況を説明しないと。でも、俺もよく分かっていない。とりあえず起きていることを説明しないと。
精
「……こちら緑谷。元の世界には戻れていません。そして、死柄木と九玉さんがどこかに行きました」
これ以上どうしようもなくなったので作戦終了が言い渡され、動ける人は救助活動にあたるように指示が出された。俺は何も考えたくなかったから真っ先に飛び出した。ωセンスで人探して────
精
「
お茶子ちゃん
「デクくん……」
お茶子ちゃん
「もうやめてよデクくん……」
お茶子ちゃん
「デクくんが壊れちゃうよ……!」
だめだ、たすけ、ないと。まだ、たすけないと。た、す。ケ、ナ、イ。と──────
夢を見る。歴代継承者が玉座に座っている。以前そっぽを向いていた二代目と三代目も今回は着座している。
初代
「ごめんね大変な時に」
二代目
「……」
三代目
「……」
四代目
「これも
五代目
「いやまァタイミングの問題さぁ」
六代目
「こんなに早く再開するとは思わなかったね」
菜奈さん
「……今度は手を出すなよ?」
精
「そこにマイトがいるんで出しません」
マイトっぽいオーラがそこに座っている。これの状況で手を出したら怒られるだろう。今回は大人しく話を聞くとしよう。初代曰く、OFAが成長して継承者同士でコミュニケーションが取れるようになり、先の戦いで無理やりAFOに引っ張られたことで俺の前に現れやすくなったという。
精
「菜奈さんだけ来ることってできます?」
菜奈さん
「あのなあ……」
四代目
「それよりも重大な話がある。君は私の享年と死因を聞いているかね?」
歳は40だったはずだが、死因の方はマイトがくれた情報には書かれていなかった。それを察した四代目が答えを言ってくれた。
四代目
「老衰だそうだ」
精
「40で老衰……何かからくりがないとおかしいですね」
四代目
「結論から言うとOFAは最早
鍛えてないと譲渡した段階で体が爆発するのだから当然だろう。だが、そこ以外にも扱えない理由がありそうだ。
精
「確か"黒鞭"は五代目が持っている時よりも強力なんですよね? としたら……これ以上は"
四代目
「かなり近いな。強力な"個性"を複数所持しているだけで命を燃やしてしまう。よって、"無個性"の人間にしか扱えなくなってしまっている」
マイトが何歳か知らないがそれなりの歳はいっているはずだ。それで四代目のように衰えが見えていないとしたらその話は間違いないだろう。そしてこの社会で"無個性"の人間なんて、青藍島に童貞や処女がいないようにいない。
精
「だから最後の継承者になるであろう俺にOFAを完遂してほしいと言ったんですね」
菜奈さん
「
菜奈さんが美しい顔で真剣な眼差しを向ける。
菜奈さん
「君、死柄木弔を殺せるか?」
精
「無理ですね。助けますから」
即答だった。
菜奈さん
「……本気で助けられると思っているのか?」
精
「助けられるかどうかの話じゃないんですよ、助けるしかないんです」
菜奈さん
「失敗し続けた私達が別世界の人間に負債を押し付けるのはみっともない事だとわかっている……! けれどアレが巨悪となり果てたらもうだれにも止められない。赦すこともわかりあう事も叶わない救いようのない人間はいるんだよ」
菜奈さんの言うことはごもっともだ。俺は罪を犯してなお、態度を改めない人間を監獄で何人も見てきた。そういう人間はどうする事も出来ず、許されるのなら死んでもらいたいぐらいだ。
精
「でも、死柄木はまだわかりあえます。だって────手を伸ばしてきましたから」
それが心の底から助かりたいからなのか、俺を道連れにしたいからなのかは分からない。でも、伸ばした手を見なかったことにしたら、俺の最も嫌いな人間と同じことをしてしまう。
精
「理屈や道理だけで人が助けられるなら苦労はしません。本当に人を助けたいなら、時には何もかもを捨ててでも助けるんです。OFAはAFOを討つための力? そんなの俺の知った事ではありませんね。これは俺に継承された力────────だったら、
俺の言葉にマイトのオーラが泣き出した。俺は本質的にはヒーローではない。でも、その結果がヒーローに見えるというならヒーローなのかもしれない。
初代
「……君についていって良かったよ。君たちに渡って本当に良かった」
初代も満足そうに笑っている。
菜奈さん
「…………試すようなことをして……ごめんな」
菜奈さんが泣いて謝ったので、俺は駆け寄って優しく抱締めた。
精
「……女に試されるのは男の誉れですよ。期待されている何よりもの証拠ですから」
五代目
「ヒュー! カッコいいこと言うな旦那ァ!」
精
「それはそれとして泣き顔がエロすぎるので、後で一人で現れてもらって一発ドスケベセックスを────」
二代目・三代目
「「台無しだ馬鹿野郎!!!」」
ものすごい力でぶん殴られた。おかげで目が覚めてしまった。
目が覚めるとそこは病院だっ────横からそれなりの怒りを感じる。目をやるとマイトがマッスルフォームで怒っていた。
マイト
「師匠に手を出さないでもらえるかな?」
精
「思考盗聴しただろ?」
マイト
「私も継承者だからね? 朧気だけど伝わってきたからね?」
これは菜奈さんに手を出すのは相当後になりそうだ。
精
「ところで……あの後どうなった?」
俺の質問でマイトがしぼんでしまった。相当言いにくい状態になっているのだろう。だが、知らなければ何もすることが出来ない。俺は一つ息を吐いてマイトの肩を掴んだ。
精
「教師が生徒に隠し事するなよ。また爆豪みてえに面倒なことになるぜ?」
マイト
「……相変わらず容赦ないね。それじゃあ……色々話すよ」
九玉
「我だ。九玉だ。我は新たなる姿を得て、理を成すためにあんなことやこんなことをして……なに? 緑谷が……? では、第7期も必ず見るのだ」