抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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第7期 ~理壊への道程~
7-01 理壊の始まり


 マイト曰く、俺は救助活動中に意識を失い倒れ、そのままセントラル病院に運ばれた。鼻の骨折と多少の打撲以外は問題なく、ほぼ1日眠って目覚めて今に至るというわけだ。

 

 マイト

「ここからが本題なんだ……あの作戦の成果と被害を伝えよう」

 

 まず、リ・デストロ、下典、トランペット並びに会議に集まった理の会構成員約17000人の確保に成功し、全国に点在する支部及びシンパの制圧も出来た。しかし、大半の幹部を取り逃した上、ギガントマキアの行進による被害も甚大で、ホークスが捕虜になっている。それでも、作戦参加者全員生存で作戦を終えられたのは不幸中の幸いだろう。

 

 マイト

「とりあえず……生きて帰ってきてくれてよかった。生きていればチャンスはあるからね」

 精

「そのチャンスが問題なんだよなあ……」

 

 マイトがどういうことだいと首をかしげる。俺は両手を合わせて考えながら発言する。

 

 精

「まず、俺はOFAが奪われかけた際の精神世界で、死柄木とAFOと話したんだ」

 マイト

「何だって!?!?!? AFOと!?!?!?ゴハァ!!!」

 

 マイトが血を吐きながら驚いた。俺より入院する必要があるように思えたが、目の前で九玉さんが殺したはずのAFOがいたとなったらこれぐらい驚くか。

 

 精

「OFAに歴代継承者の意志が宿っているように、死柄木に移植された"AFO"にも自分の意志が宿っているってAFOが言っていたから事実だ。で、目覚めた後に死柄木を助けようとして、九玉さんが死柄木に触れたのを見た。その後に死柄木と九玉さんの姿が消えて空が紅く灼け、死柄木だけ現れた……」

 マイト

「そ、それじゃあ……! 九玉くんは……!」

 

 普通の人間が想像するとしたら九玉さんは死んだと考えるべきだろう。しかし、俺にはそうは思えなかった。

 

 精

「その後が変なんだ。現れた死柄木の右手が紅黒くなっていて、『とりあえず後の話は我の配信を見ておけ』と残したんだ」

 マイト

「配信……!? もしかして昨日の夜に投稿された動画に何かヒントが……!?」

 精

「見たのかマイト?」

 マイト

「いや、見てはいないが、ネットでかなり話題になっているんだ! 何せ────」

 1-Aガールズ

「「「出久(いずく、デクくん、出久ちゃん、出久さん)!!!」」」

 

 俺とマイトの騒動が外に漏れていたのか1-Aガールズが一斉に病室になだれ込んでき────お茶子ちゃんが俺の顔をペタペタ触って来きた。積極的で嬉しい。

 

 お茶子ちゃん

「大丈夫デクくん!? いや、デクくんだよね!?」

 三奈ちゃん

「おおお、おち、おちちつついてお茶子! 鼻は触っちゃダメだよ!」

 梅雨ちゃん

「三奈ちゃんも落ち着くべきよ。ちょっといやらしいわ」

 透ちゃん

「落ち着いてられないよ! 私達の知ってる出久なの!? それとも知らない出久なの!?」

 耳郎ちゃん

「文化祭覚えてる!? 最高にロックに決めたあの文化祭!」

 百ちゃん

「相澤先生の話によると、戻っていないそうですが……実際の所はどうなのですか?」

 

 両手両足で持って口に咥えてなお余る花達の質問に一つずつ答えていく。

 

 精

「デクくん、というか土口精だよ。お乳突くのは2人っきりになってからにしようね。この場で突いたらいやらしいからね。だから皆の知っている出久だよ。文化祭は覚えているよ。マイクパスうまくいって良かったよ。ということで……俺はまだこの世界の世話になりそうだよ」

 

 ガールズが喜哀楽をミキサーにかけたような顔をしている。緑谷出久の体と土口精の意識が無事である事実と、緑谷出久と土口精を元に戻す作戦の失敗の事実が同時に確定したからだろう。それでも俺は笑って言葉を返した。

 

 精

「まだまだ俺と付き合えるんだから良いこと尽くしじゃない? それよりも、早く学校に戻って生還パーティー開──────」

 マイト

「いや、そんなにおめでたい雰囲気じゃないんだ……」

 

 マイトが水を差してきた。明らかにムスッとした顔で文句を言ってやろう。

 

 精

「復興や救助のためにも気持ちを前向きにした方が良いだろ?」

 マイト

「……轟少年のお兄さん……荼毘こと燈矢くんが殺されたのは知っているかい?」

 

 その突然の訃報は俺の心を一気に地獄の底まで落とした。

 

 

 マイト

「さっき言いかけたけど……昨日の夜、こんな動画が投稿されたんだ」

 

 マイトのスマホには『執行』と黒い背景に白いゴシック体で書かれた動画のサムネがあった。

 

 九玉

『こんばんは。九玉だ。例の約束を果たすために緊急で動画を回している。場所はあのタルタロスだ』

 

 九玉さんの宣言、タルタロス、執行というタイトル────まさか。

 

 九玉

『まずは……こちらを見て頂こう』

 

 カメラの視点がぐるりと回り、焼き焦げた何かの塊が映し出された。

 

 九玉

『これは雄英の合宿を襲撃した時の元仲間だ。名は……何だったか……マス……マスキュラー、そうだマスキュラーだ。暴力の衝動のままに殺しを行った罪人だな。我が焼き殺した』

 

 洸汰君を襲っていた敵だ。見るも無残な姿になっているが、可哀そうとは思えず、むしろ妥当な末路だと思ってしまった。今度はカメラの視点が足元を向く。両手両足の無い男が息も絶え絶えに血まみれになっていた。

 

 九玉

『こいつはオホバ……ではなくオバホか。死穢八斎會の治崎廻と呼んだ方が伝わるか。己の欲望のために幼子の体を文字通り売りさばいた。故に────』

 治崎

『お……やじ……』

 

 紅い拳が治崎の頭を捕らえ爆発した。四肢欠損を通り越して五体欠損になった。同情の余地なしで、むしろザマアミロと思ってしまった。またもカメラの視点が変わり、今度はダークブルーとピンクの混じった髪が特徴的な裸の美女が映った。

 

 九玉

『そしてこちらは……新メンバーの"レディー・ナガン"だ。魅力的な女性だから加わってもらった』

 ナガンさん

『……裸にされて、襲われたり死にたくなかったら理たる我に従え、と言われて首を縦に振るしかなかった』

 

 この人も全世界に裸を晒すことになってしまった。これだったら男は無条件で高評価するし、女性からの評価もマイナスがオーバーフローしてプラスになるだろう。相変わらずすぎて、不謹慎ながら笑ってしまうほどだ。

 

 九玉

『さて、ここまでが肉料理だ』

 ナガンさん

『前菜じゃねェのかよ。滅茶苦茶コース進んでるじゃねェか』

 九玉

『次が主菜だから合っているだろう? と言う訳で本日の主菜にして主賓、理の会で唯一自首して真っ当に裁かれようとした──────轟燈矢こと荼毘だ』

 

 カメラが上空を向く。闇のような空にホークスに捕まれた燈矢さんがいた。燈矢さんには一切の抵抗がない。生殺与奪を握られた人間特有の諦めが見える。

 

 九玉

『久しぶりだな。元気にしていたか?』

 燈矢さん

『……ついさっきアンタが来るまではな』

 九玉

『遺言か辞世の句はあるか?』

 燈矢さん

『……親父、母さん、冬美ちゃん、夏くん、それに焦凍……家族仲良く過ごしてくれ。俺が死ねばきっと平和に暮らせるから────』

 

 ホークスが手を放した。燈矢さんがカメラに向かって落ちていく。そして辺りに紅い光が走る。

 

 九玉

破壊の理

 

 燈矢さんに向かって紅いエネルギーが放たれた。闇夜を照らし、これからの未来を指し示すように────冷酷無慈悲に燈矢さんの体が溶けた。紅く灼けた空が再び暗沌の帳に覆われ、そこに向かってカメラが投げられる。

 

 九玉

『我は宣言通りに荼毘を殺した。我は理に背くものには容赦しない。もし背くというなら──────』

 

 声と同時に画面が羽根に覆われる。そして空から見下ろすような画角で紅く光っている九玉さんが映る。

 

 九玉

『──────次は君だ』

 

 マイトのようにカメラに向かって指を差してきた。

 

 

 そこで映像は終わった。今の部屋の空気の重さは中性子星にも勝るとも劣らないだろう──────ただ一人を除いて。

 

 精

「……とりあえずホークスも大丈夫そうでよかった」

 

 それは紛れもなく俺だった。あまりにも場違いな発言に、皆が俺の顔をグローリーホールができるぐらい睨んできた。

 

 精

「敵の手に落ちたとはいえ、生存確認できてよかったじゃないですか。『ホークスで焼き鳥作ってみた!』をやり始めるんじゃないかと冷や冷や────」

 ???

「ふざけたこと言ってんじゃねえぞ緑谷……!」

 

 いきなり誰かに胸ぐらを掴まれ何だこの焦凍どっから現れた!?と思ったら俺の病室の入り口に1-Aボーイズがいた。ガールズから心配されたからもういいんだけど────

 

 焦凍

「燈矢兄が殺されて何でそんな態度でいられるんだよ……!?」

 

 焦凍が俺を殺さんとせんばかりに圧をかけてきた。だから俺は飄々と言葉を返してやった。

 

 精

「まあ…………殺されても仕方ない人間だったから?」

 焦凍

「んだと……!?」

 精

「たとえ……悪人が心を入れ替えて生まれ変わろうとしていても……犯した罪が帳消しになる訳じゃない。言ってしまえば──────過去は消えないって奴さ」

 

 わざとらしく肘を上げて、左右の手をそれぞれの胸に手を当て、笑いながら言い放つ。

 

 精

「…………あの映像で殺された人間は皆死んだっていい奴らさ。殺されたところで何も胸は痛まない、むしろスカッとしたね。不必要に保護されて生きていて不愉快そのもの──────」

 

 急な衝撃と冷たさと痛みと共に視界が右を向いた。ちらりと横眼で見ると焦凍の右拳が固く握りしめられていた。

 

 精

「なに熱くなってんだ? 冷たかったぜ?」

 焦凍

「ふざけるなよ……! お前は人の気持ちが分かんねえのか……!?」

 精

「分かってるから悪人が死んでよかったって言ってるんだよ」

 焦凍

「俺の気持ちは考えたのか!?」

 精

「…………考えたさ。家族が殺された悲しみと家族から罪人がいなくなった喜び…………俺だったら後者の方に天秤が傾くね」

 焦凍

「お前……! ふざけん────」

 爆豪

「止めろ。それ以上言っても無駄だ」

 

 再び殴りかかろうとした焦凍を爆豪が止めた。意外と優しい所あるじゃんと笑ったら殺されそうな勢いで睨まれた。

 

 爆豪

「……本気で言ってンのか?」

 精

「俺とキスすればわかるかもよ?」

 爆豪

「……あァそうかい────邪魔して悪かった」

 

 爆豪が手を放し轟の右拳が再び俺の左頬を殴り抜ける。痛かったが頬以上に痛い箇所があるからどうってことはない。俺は焦凍を嘲笑いながらわざとらしく左頬を擦る。

 

 精

「お前まで前科持ちになったら家族が泣くぞ?」

 焦凍

「────ッ!」

 精

「一番上と下が犯罪者になったら間も犯罪者、なんて言われるかもなあ? そうしたら……せっかく俺が取り持ってやった家族愛がパーになるぜ?」

 焦凍

「て、手前……!」

 精

「流石にこれ以上殴ったら出るとこ出るぜ?」

 

 俺の言葉に皆が唖然としていた。まるでこんなことを言う奴じゃなかっただろと言わんばかりだ。

 

 お茶子ちゃん

「で、デクくん……何があったの……? 何か、変な事されたんじゃ……」

 

 お茶子ちゃんが今にも泣きそうな顔と声で尋ねてきた。だから俺は優しい満面の笑みで答えた。

 

 精

「…………心配しなくていいよお茶子ちゃん。()()()()()()()()()()()()()()だから」

 

 この言葉が止めとなって完全な沈黙が張り付いた。誰が何を言うでもなく、コツコツと俺の病室から出て行った。これで全員出て行っ──────マイトが俺の左手に手を当てていた。

 

 マイト

「…………本当に君はヒーローらしくないね」

 精

「思考盗聴しただろ?」

 マイト

「…………私も継承者だからね。朧気だけど伝わってきたよ」

 精

「不貞寝してやる」

 

 目を閉じてOFAの中にいる菜奈さんに呼び掛ける。すると菜奈さんは何のためらいもなく出てきて、俺を抱きしめてくれた。

 

 菜奈さん

「……何でわざわざこんな方法を選ぶんだ?」

 精

「……ヒーローは孤独ですから」

 菜奈さん

「…………本当に君はヒーローらしくないね。()()()()()()()()()()()別れようとする必要はないじゃないか」

 

 やっぱりバレていたか。この世界から別れるのに土口精が居てよかったなんて思われたくなかった。俺はこの世界の人間ではない。だから、この世界にいない方が良い人間として別れたかった。だから、心を痛めてでもあんなひどいことを言わなければならなかった。

 

 精

「……でも、これで心残りは無くなりました。早い所九玉さんと合流して、死柄木を助けることに専念します」

 菜奈さん

「……私と、そ、その……ドスケベセックス……をするとか言っていたが……?」

 精

「それはこれからやることの心の支えに取っておきます」

 菜奈さん

「……忘れていてほしかった……って、何をするつもりだ?」

 

 俺は菜奈さんの腕から離れて、顔を見られないようにしてから言い切った。

 

 精

「雄英高校を去ります」

 

 俺は笑って答えた。笑っている。笑っているんだ。たとえ目から涙を流していようと、笑っているんだ。

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