抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
九玉
「……お前みたいに、か……緑谷、一か八かの作戦が思いついた。もし失敗したら躊躇いなく死柄木を殺せ」
そう言って我は死柄木の頭を鷲掴みにした。
九玉
「転移」
"
死柄木(九玉)
「上手くいった」
そして"
AFO
「おやおや……死柄木がいなくなったと思ったら……君は誰だい?」
緑谷が言っていたAFOの意志とはこれの事か。鬱陶しいことこの上ないが、とりあえず後回しだ。そのまま"世界移動"を使って上空に移動する。
九玉(死柄木)
「……何が起きてる……?」
死柄木(九玉)
「後で事情は話す──────破壊の理」
"エネルギー変換"と"
死柄木(九玉)
「こちらだ緑谷」
我は緑谷に声をかける。何が起きたのか分からなそうだが、この場にいたら"抹消"をかけられかねない。端的な一言を残して逃げるとしよう。
死柄木(九玉)
「なんとも姑息な手だが……これで時間を作ることは出来た。とりあえず後の話は我の配信を見ておけ」
そして我は死柄木の姿で髪を靡かせながらマキアの前に現れた。マキアは驚きながらも、嬉し涙を流して頭を垂れた。
マキア
「主殿……! 無事でよかった……!」
死柄木(九玉)
「マキアよ。皆と話がしたい。小さくなれ」
中身が我であれど見た目と声は死柄木なので、マキアはすんなりと小さくなって皆を背から下ろした。皆が心配そうにどっと駆け寄ってきた。
スケプティック
「ちっ……生きていやがったか……」
キュリオス
「あの三人は助かったかどうかわからないのに……」
スピナー
「酷いなお前ら……帰ってきたんだから歓迎してやれよ」
トゥワイス
「まあいいじゃねえか! 良くねえよ!! 心配したぜ死柄木! 大丈夫だと思っていたぜ!」
コンプレス
「……ちょい待ち、本当に死柄木かい?」
マグネ
「そうよ! 今の喋り方、九玉ちゃんみたいだったわよ!」
トガちゃん
「しかもあの髪を靡かせる癖は九玉さんのものです」
ジェントル
「それに九玉くんはどこだ? 君の手助けに行ったはずだが……」
ラブラバ
「もしかして、ヒーロー達にやられちゃったんじゃ……!?」
一部心配してない奴もいたがおよそ心配していたので事情を説明する。マキア含め全員が何がどうなっているんだという顔をしている。だから理らしく端的に説明する。
死柄木(九玉)
「要点を言うと、死柄木の中に我こと九玉が入った、オリジナルの九玉の体は無くなった、今は死柄木を救うための時間稼ぎがしたい……こんな所だ」
これだけ説明してもいまいちピンとこないようだ。どうやったら分かってもらえるだろうか。
コンプレス
「いや、何が起きたのかはこの上なく分かりやすいんだよ? ただ、その現実が受け止められてないだけなんだ」
魔術師のコンプレスが受け入れられないのだったら誰にも受け入れられないだろう。受け入れてもらうのにも時間が必要そうだが、この場にいては安心できない。マキアには地面に潜ってもらい、コンプレスの"圧縮"で皆を纏めてもらい、我の"世界移動"で河岸を変える。
ここは某所の某牛丼チェーン店。牛丼を主にとりそぼろ丼やまぐろたたき丼、焼き魚の定食やシェイクなども売っている。一度来てみたかったのだ。早速皆を"圧縮"から解放して入店する。軽快な音と共に歓迎された。
男性店員
「
死柄木(九玉)
「今から、えーっと……9名だが席は空いているか?」
男性店員
「
今は訳あって本物の我には会えないが、ここでファンサを怠るようでは配信者ではない。トゥワイスに目をやって分身の我を出現させる。
九玉(分身)
「……どういう状況だ?」
死柄木(九玉)
「おい九玉、そこの店員がファンらしいからファンサしてやれ。奢ってもらえるかもしれねえぞ?」
死柄木がここにいたらこう言うだろう。店員が目をキラキラ輝かせてワクワクしだした。
男性店員
「生こんぎょくとサインくれたら奢っちゃいますよ」
ジェントル
「良いのかい? 他のお客さんが黙っていなさそうだが……」
男性店員
「この時間帯暇ですから。ほら閑古鳥カーカーですよ。閑古鳥がどう鳴くかは知らないですけど」
店員が自慢げにガラガラの店内を見せつけてきた。これなら我々をVIP待遇しても文句を言う人はいないだろう。なら我も遠慮なくファンサができる。我にファンサをするように首で促す。
死柄木(九玉)
「ほら、やってやれよ」
九玉(分身)
「……んん、こんごきゅ~♪」
何をしているのだ我。ヒーロー襲来で着の身着のままで出てきた今の我々に支払う術はない。奢ってもらえなかったら無銭飲食になってしまう今際の際でミスしないで欲しい。
男性店員
「ピザパ回の開幕間違えた奴だぁ! あれ見て我慢できなくてピザ食べに行ったんですよ! いや~、やっぱり生は違うなあ!」
意外にも好評だったようだ。これならいけるかもしれない。
九玉
「次はサインだな。何にサインすればいい?」
男性店員
「俺のメモ帳にサインしてください! 表紙に『
片手サイズのメモ帳と虹の7色と黒の8色ボールペンを渡される。言われたとおりにサインを描いたが、これだけでは物足りないので簡易的な我の似顔絵を描いた。
男性店員
「わあ! こんなにサービスしてくれるんですか! ありがとうございます!」
まるでサンタからクリスマスプレゼントをもらった子供のように大はしゃぎしている。ファンサのし甲斐があるというものだ。
男性店員
「何食べますか! なんでも奢っちゃいますよ!」
死柄木(九玉)
「んじゃあ、この期間限定のローストビーフ丼ってのを──────」
男性店員
「っすー……それ今在庫がなくて……夕方になる前に無くなっちゃうですよ……」
スケプティック
「常に提供できない商品など欠陥ではないか。販売中止にしてしまえ」
男性店員
「すみません……シェイク飲み放題にしますので……」
ラブラバ
「シェイク飲み放題! それでいいわ! 店員さんにあんまり迷惑かけるわけにもいかないものね!」
ホークス
「この人数で急に押しかけて奢らせてる段階ですごい迷惑だと思いますけどね。店員さん、後で公安に言えば俺が立て替えますので……」
男性店員
「いえいえいえいえ! 推しに直に貢げるのはファンとして最高の名誉なので!」
こうして店員さんの好意の下、皆でシェイクを飲みながら今後について話し合う。
死柄木(九玉)
「今後の方針だが……まず今夜にタルタロスに襲撃を仕掛ける」
コンプレス
「ヒーロー達が消耗している今がチャンスと。意表を突くいいアイディアだけど、誰が行くんだい?」
質問に詰まり気味のシェイクを吸いながら考える。かなりの混戦が予想されるから少数精鋭は前提で、火力と質量を兼ね備え、機動力が確保でき、その光景を映える場所から撮影する。これらを達成できる組み合わせは────-シェイクを一気に吸い上げ飲み切り、空になったプラスチックのコップを机に叩きつけながら宣言する。
死柄木(九玉)
「我とトゥワイスと────」
トガちゃん
「店員さーん。キャラメルシェイクのおかわりお願いしまーす」
死柄木(九玉)
「では我はホークスシェイクでお願いしたい」
キュリオス
「最悪のタイミングで被った上に最悪の間違え方してるわね」
死柄木(九玉)
「間違えた。抹茶シェイクでお願いしたい」
マグネ
「そっちに訂正するのね? とりあえず九玉ちゃんとトゥワイスとホークスが行くのは分かったわ」
男性店員
「襲撃のお供にシェイクはいかがですか?」
スピナー
「バーガーにポテトつけるみたいな感覚で言うなよ。つーか店員に聞かれたぞ?」
男性店員
「気にしないでください。推しの夢は全力で応援しますので、皆さんの計画の通報するつもりはありません」
ここまで応援してくれるのは嬉しいが、どうしてそこまで応援してくれるのか気になる。折角だから聞いてみよう。
死柄木(九玉)
「何故そこまで我を……いや、九玉を応援するんだ?」
男性店員
「俺、メントスコーラとかやってた本当に最初の頃から見てたんです。企画の面白さとかリアクションの伝わりやすさとかそういうじゃなくて、自分達は楽しんでいるんだっていう姿に惹かれたからです。まあ、言ってしまえば一目惚れで推したくなったからですかね。推し活において対象が善か悪かなんてどうでもいい事です。推したいから推したい時に可能な限り推す……だから応援しているんです」
彼の熱量は確かなものだ。この熱量があれば先の戦いで消耗した分を埋めるだけの何かができるかもしれない。我に目をやって勧誘を仕掛ける。
九玉(分身)
「だったら理の会の一員に入れてやろうか? 推しと共に生活できたら幸せではないか?」
男性店員
「……すごく嬉しいですけど、丁重にお断りします。これは俺の意見ですけど、推しは手が届かないからいいんです。届かない雲の上の存在に対して、届かないと知りながらバベルの塔を築いていく……果たされないからこそ挑み続けられるんです」
彼は生粋のリスナーのようだ。ここまで言われて更に勧誘するのは彼に対しての無礼だ。我は彼を認めて軽く笑った。
死柄木(九玉)
「分かった。次の配信でSpecialThanksの所にお前の名前を入れておこう」
男性店員
「いいんですか! ありがとうございます! あ、千波刃舞は本名じゃないのでそのまま使って大丈夫です!」
店員が胸につけてる名札には鈴木と書いてあるので大丈夫そうだ。今日のタルタロス襲撃のSpecialThanksは彼に決まった。会計を店員に任せて我々は店を後にした。
男性店員
「…………サンキュー、
三人で襲撃に行く間、他のメンバーをどこかに匿う必要がある。いい場所がないか我の中にいるAFOに尋ね、どこかの洞窟に移動した。そこで襲撃の準備をしている時だった。
AFO
「君は一体何がしたいんだい?」
心の中からの唐突なAFOの質問に我は堂々と答えた。
九玉
「我の理を成す」
AFO
「具体的には何をするんだい?」
九玉
「緑谷を元の緑谷に戻し、貴様をこの世から消し、死柄木を助ける──────言ってしまえば我の望み通りにする」
AFO
「随分とやることが多いね。ただ、弔は君が殺しちゃったんじゃないかな?」
九玉
「貴様は自分の言った事すら覚えていないのか? "個性"には意思が宿ると言ったではないか。だろう? 死柄木」
我の呼びかけに応じて死柄木がボウッっと出てきた。
死柄木
「面倒だからいないふりしてようと思ってたんだがな……しかし、お前まで俺を助けようとするなんてな。緑谷に何か吹き込まれたか?」
九玉
「奴には多大な迷惑をかけた。だから、我は奴の望みを最高の形で叶えるべく動いている」
死柄木
「前に言っていた別世界から連れてきちまった件の詫びか? 理不尽極まりないことしてる割には変な所で律儀だよなお前」
九玉
「恩を受けたら礼を返す、不本意に迷惑をかけたら詫びをする……当たり前の事ではないか?」
AFO
「その通りだよ。ただ、君はそれを人に説けるほど聖人君子なのかい?」
九玉
「何かを人に説くことそのものは誰でもできる。信じてもらえるかどうかに人徳や権力が求められるのだ」
AFO
「君はそれらしいことを言うのが上手いね。流石世界の理を自称するだけはある。馬鹿な人間だったら信じちゃうだろうね」
九玉
「元より人は信じたいものしか信じぬ。何を信じるかよりも信じて何を成したかだ」
心の中での言い争いはこうも大変なのか。死柄木も苦労した事だろう。一度彼らを振り切って現実に戻り、一つ呼吸をして紫の瞳を見開く。
死柄木(九玉)
「待たせたな。これより……進化した我が力を見せに行くぞ」
ネームドの店員が出てきましたが、物語に関わるかどうかは分かりません。ただ、覚えていたらいつか良いことがあるかもしれません。