抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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7-04 土口精の日常その11

 俺はいつかこの世界からいなくなる。だから俺が居た証として日記をつけている。大事件を書き記すのも大切だが、何気ない日常も書き記すべきだろう。これまでにあった日常をページをめくりながら思い出す。

 

 

 今日は日曜日。神様は休むかもしれないが俺は休んでいられない。なにせ、今日は透ちゃんと一緒にいる日だからだ。AM6:30、朝ごはんの仕込みが終わったので透ちゃんを起こしにいく。

 

 精

「透ちゃーん? 朝ご飯の時間ですよー? 早く来ないと透ちゃんの分まで──────」

 透ちゃん

「わあ!!!!!!」

 精

「ビュッフェーッ!?!?!?」

 

 思わずビュッフェの才能がありそうな驚き方をしてしまった。"危機感知"が反応してないから完全に油断していた。

 

 精

「ま、前にもこんなことがあったような……というか女の子が裸でうろついてちゃダメでしょ透ちゃん! 俺が襲っちゃうでしょ!」

 透ちゃん

「真面目なのかスケベなのかどっちなんだい。とりあえず服着たらすぐに来るから待ってて」

 

 数分と経たないうちに白地にピンクのチェックのシャツを着た透ちゃんがやってきた。早速二人で共有スペースに降りて朝ご飯の準備をする。熱したフライパンに無塩バターを入れて溶かし、愛用の型を置いて事前に作っておいた生地を流し入れる。ごく弱火でじっくり焼き上げ、両面に良い感じの焼き色がついたらお皿に盛り付ける。二枚分乗せてパンケーキの塔を作ったらホイップクリームを気の赴くままに乗せ、キャラメルソースを気が済むまでかける。最後にミントをちょっとだけ添えたら完成だ。

 

 精

「お待たせいたしました。『パンケーキ~キャラメル極まりキマる仕立て~』です。飲み物は百ちゃんからお裾分けしてもらった紅茶です」

 透ちゃん

「うおー! ぶ厚い! これ枕にしたい! でもそれよりも食べたい! いただきます!」

 

 透ちゃんがフォークとナイフで切り分けて、パンケーキが急に消えた。

 

 透ちゃん

「んー! ふわっふわ! スポンジ通り越して綿だよコレ!」

 精

「生地にヨーグルトと炭酸水を使っているからね。ありとあらゆるフワフワになる方法詰め込んだからね」

 透ちゃん

「生地の甘さが控えめな分、キャラメルとホイップが甘くてサイコー! 紅茶も濃いめ熱めで相性バッチリ! これを作ったのは誰だー!? シェフを呼べーい!」

 精

「ここにいます。はい、透ちゃん、あーん」

 

 透ちゃんからフォークとナイフを借りてあーんをする。差し出したパンケーキが亜空間に飲み込まれる。表情が全く分からないが、多分喜んでいるだろう。とってもかわいい。

 

 精

「ところでカロリー聞きたい?」

 透ちゃん

「フワフワで軽いからカロリーもゼロ! おかわり!」

 精

「……キャラメルとチョコどっちがいい?」

 透ちゃん

「チョコ! ソースマシマシナッツホイップ粉砂糖で!」

 

 かしこまりました。

 

 

 朝ご飯も終わって二人で透ちゃんの部屋で何をしようかという流れになる。棚の上に人形が並んでいたり、ベッドの上に大きなぬいぐるみがいたりとフツーに女子っぽい部屋だ。

 

 精

「前から思っていたことがあるんだけどさ、この際だから聞いてもいいかな?」

 透ちゃん

「エッチな質問はダメだよー? それ以外ならなんでも答えて進ぜよう!」

 精

「透ちゃんの"透明化"ってどんな原理なの?」

 透ちゃん

「ごめんわからない」

 

 下の毛も乾かぬうちに答えられた。俺はこの世界に来て"個性"についてそれなりに勉強してきたが、"個性"についてはまだまだ未開の部分が多い。ただ一言"炎を出す"と言っても単純な温度上昇だったり、化学反応だったり、そもそも炎っぽい見た目なだけで性質が全然炎じゃなかったり……要は"透明化"だけでは分からないのだ。

 

 精

「ちょっと真面目に考察したいな……本気で考えていい?」

 透ちゃん

「もちろんだよ。私も自分の"個性"をしっかり把握したいからね」

 

 許可を得たので両手を合わせて考え始める。澤先の"抹消"が効かないのは異形系という説もありそうだが、そもそも姿が見えないからの可能性が高い。身に着けている物も透明化できない。ただ、自分の体内に入ると透明になるようだ。新年の新必殺技としてでle()*1の光線を曲げていて、自分でも光の屈折を変えれると言っていた。それでも自分の姿が見えるようにはできないらしい。

 

 精

「ごめんわからない」

 透ちゃん

「出久が本気で考えて分からないんじゃ私にもわかんないや」

 精

「わからないけど、透明化を解除できるかもしれない」

 透ちゃん

「え?」

 

 ということで俺の説を立証すべく、透ちゃんと一緒にとある男子の部屋にやってきた。

 

 精

「le? おるかー?」

 

 コンコンコンとノックするとジャージ姿のleが不思議そうな顔で出てきた。

 

 青山

「今日はレディーとのデートじゃなかったのかい?☆」

 精

「女神の素顔を見るのにお前の力が必要なのさ。ガチのココア振舞ってやるから協力してくれないか?」

 

 青山は俺の提案にキラキラ輝きながら頷いてくれた。

 

 青山

「君の頼みとあったら喜んで協力するよ☆何をすればいいかな?☆」

 精

「まずは人としての尊厳を捨てる覚悟だな」

 青山

「え?」

 

 善は急げなのでミッ先に袖の下(こんじきわんこ先生の新作)を通してTDLの使用許可と観察役をお願いして、3人ともジャージに着替えて準備運動をする。

 

 精

「まずは2人とも脱いでもらおうか」

 透ちゃん

「ジャージに着替えたのに!? ていうか私はともかくなんで青山くんも脱ぐのさ!?」

 青山

「……あー、そういう事かい?☆局部は君の"煙幕"で隠してくれよ?☆」

 

 青山は何かを察したが、透ちゃんは分かっていないようなので俺の理論を説明する。

 

 精

「"個性"も身体能力の一部だ。使い続ければ疲労してまともな働きが出来なくなる。つまり……光を屈折し続ければ"透明化"が働かなくなる……はずだ」

 

 全裸になっても見えなくなるだけの透ちゃんは問題なしなので、パンイチになった青山の腰回りに黒鞭を巻き付け、そこから煙幕を出して局部を隠す。

 

 ミッ先

「その使い方いいわね。私のコスチューム問題を一気に解決できるじゃない。緑谷くん、私のサイドキックにならない?」

 精

「……見返りは?」

 ミッ先

「君だけの女になるわ」

 精

「およろことわりしくおねがいします」

 透ちゃん

「混ざってる混ざってる」

 ミッ先

「サイドキックの件は後で考えるにして、私にもやって欲しいわね。ちょっと脱ぐから実践してくれないかしら?」

 青山

「ノン淑女☆」

 精

「イエス痴女☆」

 

 二人してミッ先のジュリ扇でシバかれた。ミッ先にやるのは後回しにして、早速所定の位置について透ちゃんに向けてネビルレーザーを撃ってもらう。屈折の加減がどうなるか分からないため俺と青山は透ちゃんから離れ、万が一のために透ちゃんの傍にはミッ先にいてもらう。

 

 青山

「み、緑谷くん……☆」

 

 青山がもうヤバそうだ。確か1秒以上出すと腹を壊すとか言っていたはずだ。俺は準備しておいたバケツを黒鞭で青山の股にあてがい下着をずらす。

 

 精

「安心しろ青山。俺は育児を経験しているから下の世話は大得意だ。何だったら奥さんは俺とセックスする度に漏らしているから安心しろ」

 青山

「凄い角度から励ましてくるね……☆でも、君の恩に報いるためにはこれぐらい訳ないさ……! 輝きたいと腹の底から思えるようになったんだから!!!」

 精

「青山……お前の覚悟がしっかり伝わってくるぜ……バケツ越しにな」

 ミッ先

「ッ!? 青山くん、止めて!」

 

 ミッ先の声と同時に青山のレーザー射出を止めてもらう。腹痛で死にそうになっている青山にバケツを託し、透ちゃんとミッ先の下に駆け寄る。

 

 精

「大丈夫透ちゃ──────」

 

 俺は壊れかけのモニターのように揺れながら映る透ちゃんの姿を見て声を失った。髪は薄黄緑色で乱射のように広がり、目は弓月のようにぱっちりで上下のまつげもバッチリで、他の1-Aガールズに勝るとも劣らないダイナマイトナイスボディーで、女神だった。

 

 精

「──────美しい……ハッ!?」

 透ちゃん

「見ないでえ!」

 精

「えっ、あっ、ご、ごめん!」

 

 俺は咄嗟に両手で耳を塞いだ。透ちゃんが何かを言っているようだが分からない。何で透ちゃんの声が聞こえないんだ? ミッ先が盾になって透ちゃんの姿を隠した。

 

 ミッ先

「塞ぐのは耳じゃなくて目よ!!! あまりの美貌に動転しちゃったのは分かるけど、女の子が見ないでと言ってるのだから見ないのが礼儀よ!!!」

 

 ミッ先の叫びを聞いて俺は咄嗟に目を瞑った。俺はいろんな美女を見てきたが、透ちゃんの美しさは明らかに一線を画すものだった。そもそもが美しいというのもあるが、見れなかったものが見えるようになったという、まるで童貞が初めて家族以外の女の生の裸を見たかのような衝撃が走った。しばらくしてから誰かに肩を叩かれたので目を開ける。そこにはミッ先とジャージを着た青山と透ちゃんがいた。

 

 透ちゃん

「とりあえず無事に終わってよかったね……」

 青山

「そうだね☆とりあえず僕は片付けのためにここで失礼させてもらうよ☆ココアは今夜眠る前の楽しみだね☆」

 

 バケツを持った青山が退場する。青山のアレは無事の内に入るのだろうか。人の前で漏らすって結構傷跡になりかねないのだが。ココアのついでに一品作って慰めるとしよう。

 

 ミッ先

「それにしても……透ちゃんカワイイわね。ほら、自分でも見てごらんなさい」

 

 ミッ先が小さな手鏡を取り出して透ちゃんに見せつけた。透ちゃんは自分の顔の良さに驚き、頬に手を当てて驚いた。

 

 透ちゃん

「わー!? これが私の素顔!? すごーい! モデルさんみたい!」

 精

「……マジで言葉でないぐらい美しいよ…………」

 ミッ先

「言葉を選ばずに言うなら……同じ女として賞賛より嫉妬が出るぐらいね」

 

 ミッ先がこういうということは透ちゃんの美しさは間違いない物だろう。これはしばらく1-Aの話題を持ちきりに──────透ちゃんの体がブゥンと大きく揺れて元の透明になってしまった。

 

 透ちゃん

「あっ、戻っちゃった……出久の予想通り許容限界(キャパ)超えて一時的にバグっただけなのかも……」

 精

「透ちゃんの素顔が見たかったら青山の尊厳を捨てないとダメか……まあ、記憶にはバッチリ残ったから良しとしますか」

 ミッ先

「そうね。透ちゃんにも青山くんにも負担がかかっちゃうから、このことは私達だけの秘密にしましょう」

 

 となると透ちゃんの絵を描くのは止めた方がよさそうだ。何かの拍子で素顔バレしたらパパラッチが押し寄せかねない。

 

 ミッ先

「……さて、さっきの黒鞭と煙幕のコンボ……私にもやってもらうわよ?」

 精

「忘れてなかったんですね……透ちゃん、このことは他言無用でお願いします」

 透ちゃん

「言うつもりないよ。流石に先生からのお願いだからね。でも、エッチな所触っちゃダメだよ?」

 ミッ先

「どうかしら? 煙で隠れちゃうから……意外とバレないかもしれないわよ?」

 精

「天使と悪魔みたいな天使がいる……どっちに従えばいいんだ……!」

 透ちゃん

「どっちも天使なんだね」

 ミッ先

「私は悪魔の囁きのつもりで言ったのだけれど?」

 

 ギリギリ理性が勝ってミッ先の性感帯には触らなかった。結果として、よほど激しく動かなければ露出しないというデータが得られた。

 

 

 夕食を終え、再び透ちゃんちゃんの部屋に行く。夜になって男女が1つの部屋に2人、何が起きてもおかしくない。

 

 精

「ぶっちゃけ透ちゃんは俺とどこまでの関係を期待している?」

 透ちゃん

「うーん……正直、付き合ったら楽しそうだからって感じなんだよね……もちろん、出久の事は好きなんだけど……今の出久が好きであって元の出久が好きになれるかって言うとアレだから……」

 精

「オブラートを破って言うけど、エッチな事したい?」

 透ちゃん

「…………わ、私もお年頃の女の子だからね? そういうのに全く興味がない訳じゃないけど、やっぱ色々怖いっていうか、責任とか取れないっていうか──────」

 

 俺は透ちゃんの頭を撫でた。あまりにも明るくて、優しくて、しっかりと考えていたからだ。

 

 精

「透ちゃんは間違ってないよ。大人にならないとしちゃあいけないって訳じゃないけど……お互いが安心してそういうことができるようになってからする、っていうのはとっても大切な考え方だからね。俺だって無理強いはしないよ。あくまで透ちゃんがどうしたいかに従うよ」

 透ちゃん

「い、出久ぅ……そういうところ見せるのズルいよぉ……」

 

 顔色は全く見えないが、きっと茹で上がったかのように赤くなっている事だろう。すると、俺の胸にギュッと顔が押し付けられた。

 

 透ちゃん

「……もっと撫でて」

 精

「もちろんだよ。こういう好きの確かめ方もあるからね」

 

 頭を撫でながら指で優しく髪を梳かす。さらりとほどける髪からふわりと微かに甘い匂いが広がる。見えないからと言って手を抜いているなんてことはなく、むしろいつ見えてもいいようにきちんと手入れされていた。

 

 精

「……キス、してもいい?」

 透ちゃん

「……私の初めてのキスだぞ? お高くついちゃうぞ?」

 

 ちょっとおちゃらけた感じで言っているが、それは恥ずかしさを紛らわせるためのものだ。俺は優しく微笑んで透ちゃんの顎に手を当てた。

 

 精

「言い値で買うさ」

 透ちゃん

「じゃあ……最高のファーストキスにしてほしいな」

 

 そのまま唇を重ねる。顔のパーツの位置は脳に完璧に焼き付いているから何一つ問題なかった。ただ唇を重ねるだけの単純なキスだったが、単純故に分かりやすく興奮した。透ちゃんの唇がどんどん熱くなっていくのを感じれた。

 

 透ちゃん

「……出久より私に上手にキスできる人いるのかな」

 精

「……どうかな? 少なくとも見えない状態で一発でキスを成功させるのは難しいんじゃないかな? まあ、透ちゃんだったらいい人を見つけられるさ。透ちゃんを見つけられるいい人がいるかどうかは分からないけどね」

 透ちゃん

「あー、言ったなー? 出久のお嫁さんになっちゃうぞー?」

 

 それは困ったなあと楽しく笑い合う。例え姿が見えなくても、心から繋がっていれば問題ない。透ちゃんがいつか手にするであろう本当の愛はそういうものなのだから。

 

 

 日記帳を閉じて思い耽る。

 

 精

「キスはうまくいったけど、透ちゃんにエッチな事をするのはかなり難しいだろうな……見えないから解剖生理学の知識で入れる穴探らないといけないし、何より顔が分からないから声と性器の反応で快楽を探らなきゃいけないからなあ……緑谷のために女性が快楽を得ている時の反応を書き残しておくか」

 

 この日記帳の中身ももっと面白くなっていくだろう。俺の青春はまだまだ続いていく。

*1
青山のあだ名。

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