抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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7-05 『執行』

 

 ここはタルタロスの上空200m。我はトゥワイスを抱え、ホークスと共に抹茶シェイクを吸っている。マスターピース死柄木に植え付けられた"個性"の一つ、"サーチ"を使ってタルタロスを俯瞰する。各所各層に点在する反応を確認できたが、その詳細までは分からない。

 

 死柄木(九玉)

「荼毘が何処に収容されたか分からぬ以上、迂闊に攻め入るのは危険だな」

 トゥワイス

「じゃあどうすんだよ? とにかく物量で押そうぜ!」

 ホークス

「流石に補足されて空中で撃ち落とされますよ」

 死柄木(九玉)

「なら内部からか……反応がある場所には罪人にせよ諸君にせよ必ず誰かがいるということだ。それらを虱潰しに当たって、荼毘の情報や荼毘本人を手に入れればいい」

 

 シェイクを啜り切って容器を握りつぶす。この監獄の末路はこの容器よりもひどいものになるだろう。

 

 死柄木(九玉)

「下手な鉄砲数撃てば当たる……数を用意するのはトゥワイスの十八番だからな」

 トゥワイス

「任せろ! それこそ無限に────」

 

 任せろと言われたので即座にタルタロスの最深部の部屋に瞬間移動する。そこではタルタロスの制服を着た職員達がいくつものモニターの前で話をしている。

 

 職員A

「ッ!? タルタロス内に異常な"個性"の反応有り! 場所は……!? このモニタールームです!」

 職員B

「誰だ気を緩めて"個性"を漏らした馬鹿は!?」

 死柄木(九玉)

「我だ」

 

 我は全身から衝撃波を放ち職員達を壁や床に叩きつけ、トゥワイスに脳無の我の分身を出してもらい一気に制圧した。我は職員の1人に歩み寄りしゃがんで顔を近づけた。

 

 職員B

「貴様は……死柄木……!? どうやってここに……!?」

 死柄木(九玉)

「…………んん、どうだっていいだろ? それよりも荼毘はどこだ? 九玉の奴が連れてこいってうるさいんだよ」

 職員B

「畜生の悪党どもには死んでも教えん……!」

 死柄木(九玉)

「ああそうかい。んじゃ、死ぬか?」

 

 職員の左肘を手羽先のように割って骨を露出させる。血が噴き出ると同時に悲鳴が上がった。

 

 死柄木(九玉)

「もう一度聞く、荼毘はどこだ?」

 職員B

「し、死んでも言わぬ……!」

 死柄木(九玉)

「こりゃホントに死んでも言わねえな。止血と固定はしといてやるから後で労災申請しておけ」

 

 職員に簡易的な手当てを施し────

 

 アナウンス

『セキュリティレッド発令侵入者アリセキュリティレッド発令』

 

 けたたましく警報とアナウンスが流れた。"電波"での妨害が意味をなさなかったというのか。死柄木ならこうするだろうと、喉を4本の指でポリポリとかきむしる。

 

 死柄木(九玉)

「チッ、うまくいかねえな……おい、トゥワイス!」

 

 トゥワイスに目をやる。わざとらしく右手で敬礼して返答してくれた。

 

 トゥワイス

「了解だぜ! 嫌だね! ということで理不尽な行進(アンリーズナブル・パレード)!」

 

 部屋を埋め尽くすほどのトゥワイスと我が生み出される。何度見ても圧巻の光景だ。我は我達に命令を下す。

 

 死柄木(九玉)

「見せしめ用に何人か囚人を連れ出せ!」

 

 分身の我達は数秒フリーズしたが、その数秒で我が何をしようとしているのかが分かったようだ。

 

 九玉(分身)

「「「……ああ、なるほどな。遂行する」」」

 

 部屋から出て行く我達を見送り、我とトゥワイスで荼毘の場所を探す。奴の罪状は放火殺人と普通なら死刑ものなのでそれなりの深さにいるはず──────荼毘はB7階の一室にいるようだ。その場所にトゥワイスと共に瞬間移動する。そこでは荼毘が不燃性の繊維で作られた囚人服を着てベッドの上で横になっていた。我はノック代わりに部屋を監視している銃付きカメラをエネルギー波で消し飛ばした。それに気付いた荼毘がムクリと起き上がり、気だるそうに我に話しかけてきた。

 

 荼毘

「……やっぱタダで抜けるなんてできねえか。俺を殺しに来たんだろきゅうぎょ……く……?」

 

 荼毘の目には死柄木とトゥワイスが映っているのだから驚くのも無理はない。そんな荼毘にお構いなく我は計画を始めていく。

 

 死柄木(九玉)

「トゥワイス、荼毘の体を測定しろ」

 

 測定し終えたトゥワイスに荼毘を作らせる。以前の髪の黒い荼毘ではなく、白い髪の荼毘が生み出された。これなら問題ない。我は生み出された荼毘を殴り消し、トゥワイスと本物の荼毘を連れて地上へ瞬間移動した。

 

 

 すでに警備の機械が起動しており、脱走者を見つけ次第殺す準備が出来ているようだ。我は"サーチ"を使い空を見る。空に一つ反応があるのを確認し、右手からエネルギーの剣を生やす。

 

 死柄木(九玉)

「プリズンブレイクという奴だ。"Plus Ultra"壊滅の一閃」

 

 その刃を際限なく伸ばし、水平に一回転し薙ぎ払う。その軌跡通りに爆発が起き、建物と機械が崩れていく。これでどの方向から撮っても映える舞台が整った。

 

 荼毘

「プリズンブレイクって脱獄って意味だろ? 文字通りにプリズンをブレイクすんじゃねえよ……こうやってツッコめるのもここまでか」

 トゥワイス

「相変わらず派手だな! 地味すぎてつまらねえぜ!」

 

 伏せて回避していた二人を連れて我達が犯罪者たちを連れてくるのを待つ。その間にも機械たちは襲ってくるが、耳元を飛ぶ蚊のようなものなので苛立ちに任せてエネルギーで吹き飛ばしていく。機械が襲ってこなくなった頃、タルタロスの入り口から我達と大勢の犯罪者たちが出てきた。

 

 マスキュラー

「久しぶりじゃねえか死柄木! 雄英襲撃以来だなあ!?」

 治崎

「死柄木……! 貴様のせいで俺は……!」

 ダークブルーとピンクの混じった髪の美女

「アンタが噂の死柄木かい? お前なら採用されると言われたが──────」

 死柄木

「襲われたり死にたくなかったら理たる我に従え」

 

 その発言と共に我は美女の服を破り去った。美女は特に狼狽えたりせず、諦めた様子で首を縦に振った。

 

 筒美

「……私の名前は筒美(つつみ)火伊那(かいな)。元公安ヒーロー"レディー・ナガン"だ。従わなかったら碌な目に遭いそうじゃないから従うよ」

 マスキュラー

「オイオイ! 随分と敵らしく────」

 死柄木(九玉)

「黙れ」

 

 マスキュラーの顔に手を当て、有無を言わさずエネルギーで焼き焦した。あっと言うもなくオーバーウェルダンステーキに早変わりだ。それを見た犯罪者たちが一気にひれ伏し、命乞いを始めた。それに対し我はただ一言で応えた。

 

 死柄木(九玉)

「お前達も一歩でも動けばこうなる……そこで黙って我達の活躍を見ていろ。さあ、台本を考えるぞ! 理の会、集合!」

 

 我の呼びかけに応じて空からホークスが下りてくる。

 

 ホークス

「俺が上から撮影する役になるだろうとは思いますけど……」

 死柄木(九玉)

「よく分かっているではないか。しかし、ただ上から撮影するのでは意味がない。しっかりと演出を考えないとな」

 トゥワイス

「……なあ、本当に荼毘を処刑しちまうのか? 見逃してやってもいいんじゃねえか? やっちまえ!」

 

 トゥワイスが不安そうに話しかけてきた。しかし、荼毘がそれを遮って前に出てきた。

 

 荼毘

「……罪には罰を、この世の理って奴だ。俺は殺してきたんだから殺されてもしょうがねえ」

 死柄木(九玉)

「話が分かっているな。貴様の最期を配信するのだ。どのように死にたいかしっかり考えるとよい」

 

 こうして荼毘を殺す段取りを決める会議が始まった。あくまで九玉が荼毘を殺したということにしなければならない。そして、あまり時間はかけられないが失敗は許されない。これらを満たす方法は────すでに我の頭の中にあった。リハーサルで軽くカメラの動きを確認し、細かな部分を修正していく。

 

 死柄木(九玉)

「マスキュラーだけでは足りん。配信の最中に一人死ぬべきだな……治崎、お前が死ね」

 治崎

「な、何で俺なんだ……?」

 死柄木(九玉)

「幼子を利用して金儲けをしようといたからだ。とりあえず死んでくれ」

 荼毘

「諦めろオバホ。こうなった九玉はテコでも重機でも動かねえ。死を受け入れろ。ヤクザっていつでも死ぬ覚悟でやるもんだろ?」

 

 こうして段取りを決めて行く。

 

 

 準備が出来たので分身の我にスマホを渡し、瓦礫に隠れて別のスマホで配信画面を確認する。問題なく配信が開始できそうなのでOKサインを出し配信を始めてもらう。

 

 九玉(分身)

『こんばんは。九玉だ。例の約束を果たすために緊急で動画を回している。場所はあのタルタロスだ。まずはこちらを見て頂こう。これは雄英の合宿を襲撃した時の元仲間だ。名は……何だったか……マス……マスキュラー、そうだマスキュラーだ。暴力の衝動のままに殺しを行った罪人だな。我が焼き殺した』

 

 罪状を説明して末路を見せる。シンプルながらわかりやすい死刑執行だろう。

 

 九玉(分身)

『こいつはオホバ……ではなくオバホか。死穢八斎會の治崎廻と呼んだ方が伝わるか。己の欲望のために幼子の体を文字通り売りさばいた。故に────』

 治崎

『お……やじ……』

 

 治崎は頭を爆発され殺された。外道の末路にしては生ぬるいが、映える死に方なのでギリギリ良しとしよう。

 

 九玉(分身)

『そしてこちらは……新メンバーの"レディー・ナガン"だ。魅力的な女性だから加わってもらった』

 筒美

『……裸にされて、襲われたり死にたくなかったら理たる我に従え、と言われて首を縦に振るしかなかった』

 

 これでも今回も女性の裸ノルマを達成できた。SNSのトレンドは我が頂くことになる。そしてついに荼毘の処刑シーンになる。

 

 九玉(分身)

『破壊の理』

 

 紅いエネルギーに呑まれ荼毘が溶けた。そして最後の演出で我が決める場面だ。

 

 九玉(分身)

『──────次は君だ』

 

 ここで配信が終わった。完璧だ。これなら間違いなく誰もが荼毘が死んだと思うだろう。

 

 死柄木(九玉)

「これで荼毘は死んだ……残る余生は()()()()()()()()()がよい」

 

 我は隣にいる本物の燈矢に微笑んだ。先の配信で処刑したのはトゥワイスの分身で生み出した贋物だ。燈矢は複雑そうな顔で我を見ている。

 

 燈矢

「……何でこんなことするんだ? お前にとって何も利益にならないだろ?」

 死柄木(九玉)

「不完全に罪を償って半端な罪人として生きるという我からの罰であり……企画で九州に我を誘ってくれた恩返しだ」

 燈矢

「釣り合ってないだろソレ……まったく、理不尽だよ」

 死柄木(九玉)

「我が理だ。理不尽かどうかは我が決める」

 

 一役終えた我を呼び、轟家に送り届けるように指示をする。

 

 死柄木(九玉)

「これをもって理の会から絶縁だ。破門ではないから戻ることは出来ない……体を(いと)え。達者でな」

 燈矢

「…………まさか九玉お前────」

 

 燈矢が何か言いだす前に送り届けてもらった。これで一つ肩の荷が下りたが、まだまだやることはある。我は本島を目指す囚人たちに向かって言い放った。

 

 死柄木(九玉)

「貴様達は生かしておけぬ」

 犯罪者A

「なっ────」

 

 エネルギーで焼いたり、切り刻んだり、爆発させたり、"崩壊"で塵にしたり、素手で首を引きちぎったり。あらゆる方法で犯罪者達に死刑執行を下す。

 

 犯罪者B

「貴様……英雄を気取るつもりか……!?」

 犯罪者C

「貴様は捕まってないだけで俺達と同類だろ……!?」

 死柄木(九玉)

「だとしてなんだ? 真の理の前に敵もヒーローも関係ない。絶対的な力を持つ者が理となり世界を統べる……それが嫌ならば我以上の力を以って反論すればいい」

 

 抗う犯罪者達を我の独断で裁いていく。どんな"個性"を持とうが所詮一つの"個性"でしかなく、圧倒的な力を持つ我をどうすることもできない。

 

 犯罪者D

「徒に"力"を振りまくか……!」

 

 妙に殺気立っている犯罪者が出てきた。どこかで見たことある顔だが、肝心の名前が思い出せない。

 

 死柄木(九玉)

「確かヒーロー殺しの……スイテン、だったか? 力無き正義がまかり通る社会など正しい社会ではないと思わないか?」

 ヒーロー殺し

「貴様如きが正しき社会を語るか!」

 

 どこからか拾ったか奪ったかしたであろう短剣で我に切りかかってきたので、その刃を掴んで融かした。これで我に抗う術を無くしたはずだが、それでもなお我を睨みつけてきているので我の理論をかざす。

 

 死柄木(九玉)

「貴様の信念や執念は認めよう。だが、それだけでは社会は変えられぬ。信念や執念によって生み出された誰よりも強い力を持つ者が理を唱え、周りの人間が動かされ、全ての人間が従って、その時に社会を変えたと言えるのだ」

 ヒーロー殺し

「だとしたら……貴様が目指す新たな社会はどのような社会だ……」

 

 我は右手を広げて大きく振りかぶり、五指でヒーロー殺しに触れた。崩れ逝くヒーロー殺しに我は宣言する。

 

 死柄木(九玉)

「我が理の下に平等な社会だ」

 

 ヒーロー殺しから"崩壊"が伝わっていく。このまま総仕上げに入るべく、トゥワイスに指示を出す。

 

 死柄木(九玉)

「トゥワイス! 我を生み出してアジトに戻れ! このまま巻き込まれたら死ぬぞ!」

 トゥワイス

「分かったぜ! ということで俺達をアジトに連れて行ってくれ!」

 九玉(分身)

「「分かった。この女もか?」」

 筒美

「連れて行ってくれ。あんたについていけば少しはマシな世界が見れそうだ」

 

 トゥワイスと筒美が我に連れられて消えた。ホークスは飛べるので考えなくていいだろう。我はタルタロスに掌を広げて両手をつけた。

 

 死柄木(九玉)

「獄門を破りて理を成さん!!! そしてその理で世界を糺す!!! 

ぶっ壊れろ!!!!!!」

 

 全身から紅いエネルギーを放ちながらタルタロスを"崩壊"させる。波が荒れ狂い、風が吹き荒れる。その中で我は泥花の時と同じような高笑いをしていた。力の自由な行使という、力を持つ者にのみ許された快楽が全身を駆け巡っているからだ。次第に波風が止み──────辺りには元から何もなかったかのような平穏がもたらされた。闇夜に微かに揺蕩う水平線はどこまでも続いているようで美しかった。それを我の中の死柄木に見せつける。

 

 九玉

「どうだ死柄木? 貴様の力だからこそ成しえた景色だ」

 死柄木

「……悪くねえよ。悪くねえが──────俺の手で作りたかった」

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