抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
皆へ
元の世界に戻るために去ります。1年という短い期間でしたがお世話になりました。皆との思い出は楽しい物ばかりでした。けれど、こころぐるしいことにここに帰って来る時は本来の緑谷出久になっているでしょう。緑谷にも色々書置きを残していたので、どんどん適応していくと思います。ただ、本来の緑谷は信じられないぐらいナードなので、全くうまく喋れないかもしれません。それでも、皆なら特にガールズなら本来の緑谷と仲良くしていけると思います。皆は未来を作っていく、俺なんかよりも立派なヒーローです。皆も何かのきっかけで俺のことをたまに思い出して青春の1ページにして下さい。それでは、よいドスケベライフを。
P.S もしも辛いことに遭って諦めそうになったら、『やりたいようにやる』を心に抱いてください。
その書置きを見て俺はメチャクチャ苛立った。らしくもない丁寧な字だし、その癖に紙はノートの適当な1ページだし、そもそもこんなことぐらい直に言えや。
麗日
「デクくん……もう会えないんだね……」
芦戸
「うわーん! 出久ううう! 寂しいよおおお!」
蛙吹
「戻る方法が敵との接触である以上、こうなるのも覚悟していたけれど……やっぱりちゃんとバイバイしたかったわ」
八百万
「あの送別会の後に戻ってきてしまったから、もう一度送り出してあげたかったですわ……」
葉隠
「最近の出久は何か変だったからちゃんとお話ししたかったな……」
耳郎
「別れが辛くて気が立ってたんだね……」
女どもがギャーギャーうるせェ。こうなるから直に言えってんだ。しかも、変な色でマーカーまで引いてやがる。あのヘラ鳥*1みてェじゃねェか──────そういやヘラ鳥は直に言えないからってマーカーで情報を伝えていた。まさかこの書置きも何かあるんじゃねェか? マーカーが引いてある部分に注目する。
1年という短い期間、けれど、こころぐるしいことに、書置きを残していた、どんどん適応していく、全くうまく喋れない、特にガールズなら、皆は未来を作っていく、ヒーロー、皆も何かのきっかけで、よいドスケベライフ、もしも辛いことに遭って諦めそうになったら。
一文字目は違う。二文字目も違う。三文字目はどうだ? と、ど、ろ、き、ど、う、ガ、未、ロ、何、ド、も──────轟動画見ろ何度も。
爆豪・轟
「オイ、轟」「なあ、爆豪」
同時に気付いちまったせいで他の奴らが怪しんだ。何とか轟と2人きりになれねェか──────
轟
「爆豪と一緒に泣いてくる。邪魔しないでくれ」
よりにもよってそれはねェだろ。
梅雨ちゃん
「いいわ。男二人で泣きたい時もあるでしょうから。皆、邪魔しちゃダメよ」
いいのかよ。この蛙女はインターンで俺と轟コイツの間に友情が芽生えたとでも思ってンのか。ともかく、離れることが出来たから轟の和室で動画を見る。
爆豪
「土口が俺らにしか分からねえように伝えたってことは、あの動画しかねェだろ」
轟
「轟家に関わった俺達に見ろと言った動画……燈矢兄が殺された動画だな」
『執行』とふざけた名前の動画を再生する。3人の敵が殺される動画で、そこまで長い動画でもない。
轟
「……何でこれを何度も見なきゃいけねえんだよ……」
敵とは言え身内が殺される様を何度も見るのは辛いだろう。だから土口の真意を早く見つけ出さねェと──────5回見た辺りでうんざりしてきた。
爆豪
「言えねェ何かがあるのは分かるんだがよ……」
轟
「……悪ぃ爆豪、俺はもうこの動画を見れない」
轟がスマホを伏せて天を仰いだ。無理もないが、ここで諦めたらどうにもならない。
轟
「燈矢兄が溶けて死んでいくのが残酷すぎる……」
確かにエネルギーの熱で人を溶かすなど、俺でも思いつかないほど残酷な殺し方で──────
爆豪
「…………待てよ、確か
アイツが見た光景によると、山荘の方に現れた九玉達は殴り合って溶けて消えたらしい。当然、病院の跡地にいた方が本物だから、アイツが見た九玉達は偽物だ。確か理の会の幹部に"分身を生み出せる"奴がいた。つまり、アイツが見たのはそいつが生み出した分身の九玉達で、その分身は消える際に溶けるということだ。溶けて消える、この動画で殺されている荼毘の死に方と全く同じだ──────
爆豪
「…………あのエロ金髪め。随分と回りくでェことしやがる……!」
轟
「ああ、本当だ……あんな隠しメッセージを作ってまで俺を苦しめるなんてな……」
爆豪
「違うわバカ。兄ちゃん泣くぞ?」
轟
「…………どういうことだ?」
俺は轟に俺の推理を説明した。
爆豪
「つまり──────てめェの兄ちゃんは生きてるかもしれねェ」
俺が言い終わるや否や、轟はスマホを取ってどこかに電話をし出した。
焦凍
「もしもし!? 俺だ!」
冬美
『あら、焦凍。そんなに焦ってどうしたの?』
焦凍
「燈矢兄いるか!?」
冬美
『……燈矢兄は九玉さんに殺されちゃったでしょ? その動画だって────』
焦凍
「あの動画の燈矢兄は偽物だ! 本物の燈矢兄がいるとしたら俺の家しかあり得ねえ! もしも他の所にいたら間違いなく話題になるからだ!」
冬美
『……焦凍、現実を受け入れて』
焦凍
「じゃあ何で燈矢兄を殺した奴をさん付けで呼んだんだ!?
何で妙な所で鋭いんだ? コイツの天然は狙ってやってるんじゃねぇのか? 一瞬の静寂の後、轟のスマホから泣き声が聞こえてきた。
冬美
『……そこに誰もいない?』
焦凍
「燈矢兄が生きてるかもしれないって最初に気付いた爆豪がいる」
冬美
『……爆豪くんなら大丈夫かな。いい? これから起こることは誰にも言っちゃダメだからね?』
そう言って轟の姉ちゃんは誰かに代わった。
燈矢
『……久しぶりだな、焦凍』
焦凍
「──────ッ、とうや、にい……!」
轟が泣き出したから本人で間違いないだろう。こっから先に俺はいらねェ。俺は黙って轟の部屋を後にした。
俺は燈矢兄との会話に涙を流すしかなかった。死んだと思っていた人間にもう一度会えるなんてありえないことだろう。色々話したかったが、何も言葉が出てこなかった。
燈矢
『……実を言うと、九玉さんが俺を助けるって決めたのは緑谷がキッカケなんだ』
焦凍
「え……?」
緑谷? でもアイツは燈矢兄は死んで当然と言っていた。そんな奴が燈矢兄を助けるなんて──────
緑谷
「……とりあえずホークス
もしかして、土口はあの映像を見た段階で燈矢兄が生きていることが分かっていたのか? もしそうだったとしたら……
緑谷
「…………あの映像で殺された人間は皆死んだっていい奴らさ」
緑谷
「
あの時の発言は燈矢兄が生きていることを悟られないための振舞だったのか。もしあの場で俺が気付いたら、俺は堪えきれずに発言していただろう。だから、敢えて俺を挑発するような発言をして、俺の冷静さを欠いて有耶無耶にしたんだ。
燈矢
『正確には緑谷が助けたいと呟いていたのを聞いて、だな。九玉さんも変な所で律儀だからな』
焦凍
「緑谷……アイツそこまで考えていたのか……なのに俺は……!」
アイツを二回も殴ってしまった。後悔の念が押し寄せる。謝ろうにももう謝れない。どうすれば──────『やりたいようにやる』を心に抱いてください──────俺は緑谷に謝りたい。なら、俺だけで緑谷に会えばいい? 違う、皆も緑谷に会いたいはずだ。しっかりと言いたいことを言って、その上で別れを告げたいはずだ。
焦凍
「…………‥燈矢兄、俺は決めた」
燈矢
『何をだ?』
焦凍
「『やりたいようにやる』って」
燈矢
『……そうか、頑張れよ焦凍』
俺は電話を切って急いで共有スペースに向かった。
緑谷ロスの残響の中、俺は皆に向かって叫んだ。
轟
「皆! 俺、もう一回緑谷に会いてえ! こんな一方的な別れなんて嫌だ! もっと言いたいこと言って! アイツが作った上手いもん食いながら! もっとちゃんとした形で別れてえ! だから……一緒に緑谷を探すのを手伝ってくれねえか!?」
頭を地面に着けて頼み込む。少し間が開いて、誰かの盛大な溜息が響く。
爆豪
「……俺ァ、アイツに間違ってたら殴ってでも止めろと言われててなァ……こんなふざけた別れ方が正しいとは思えねェんだよ……! だからてめェ何かに頼まれなくてもなァ! アイツを見つけ出してぶん殴ってやる! そんで盛大に祝い殺してから送り出してやる!」
爆豪の叫びに顔を見上げる。1-Aの皆がお互いに顔を合わせて頷いた。
尾白
「俺も緑谷に教えてもらった関節技を披露していないんだ……! 緑谷を驚かせてやるんだ……!」
瀬呂
「俺もテープの結界のお披露目がまだだからな! 最後に緑谷を捕まえるのは俺のテープだ!」
口田
「鳥さんたちの合唱がやっとできたんだ……緑谷くんが見たいっていていたから、見せてあげないと……!」
上鳴
「緑谷の応援ボイスのおかげで少しは成績が良くなったんだ! 礼の言葉も言えてねえのに別れるなんてゴメンだぜ!」
切島
「そういや俺もまだステーキ奢ってもらってねえな……緑谷をダチとの約束を破るような男にはさせたくねえ!」
砂藤
「緑谷のおかげでまだまだ新作のアイディアがあるんだ! それを振舞わずに終えるなんて、シェフの名が泣くぜ!」
常闇
「まだ緑谷と
障子
「緑谷には絵を描いてもらう約束をしていたが……こうなったら、最高に複雑な構図で書いてもらうとしようか」
飯田
「緑谷くんとの勉強はとても楽しかった……しかし、まだまだ彼には学んでもらうことがあるようだな……!」
青山
「緑谷くんへの恩がまだまだ返せていないからね☆彼は強引な手が好きみたいだから、僕達もちょっと強引な方法でいこうかな☆」
峰田
「緑谷がくれるオカズがまだまだ足りねえよ! もっとオイラを満足させるようなものくれよこんじきわんこ先生!」
麗日
「しまっておこうと思ってたけど……やっぱり伝えたい! デクくんに伝えきってから別れたい! じゃなきゃ納得できない!」
蛙吹
「そうね……ちょっとはしたないけれど、私はキスだけじゃ満足できなかったのよね。別れるなら、出久ちゃんとことんやり切ってから別れたいわね」
八百万
「わ、私もですわ! あれだけ色々なことを教えて下さったのに、か、肝心な所をまだ教えてもらっていませんわ! 出久さんから教わりたいですわ!」
芦戸
「出久にはもうバレてるんだ! こうなったらとことん経験値稼ぎをしてやる! そうしてナイトクイーンになってやるんだ!」
耳郎
「ウ、ウチは出久に歪まされたんだ……! その責任を取らせてやる……! 文字通り喰らい付いてやる……!」
葉隠
「私と上手くできるのは出久しかいない! そもそも私の裸を見たんだから、相応の事をする権利があるよね!」
皆にも緑谷とやり残したことがあるようだ。これだったら──────
相澤先生
「全く……やっぱりアイツは特待問題生だったか……」
寮に相澤先生が現れて皆が静かになる。
相澤先生
「……むやみに探したって見つからないだろう。まずは奴の目撃情報が出るまで待つべきだ。そのほうが合理的だろう?」
1-A一同
「「「相澤先生!!!」」」
相澤先生
「これは俺達1-Aの問題だ。よって他の誰かの手を煩わせるわけにはいかない。もし誰かにバレたその時は……
その言葉に緊張が走る。今回の除籍処分は本当だろう。こうして俺達の緑谷捜索作戦が始まった。
年末年始の多忙により更新頻度が落ちます。ご了承ください。