抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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7-09 理壊へのカウントダウン

 タルタロス襲撃後の翌朝、我はアジトでアイスミルクを飲みながら心の中の死柄木と話をしていた。

 

 九玉

(お前にはこの体と"個性"を扱えるようになってもらう)

 死柄木

(そもそも俺の体と"個性"なんだよ。そこに勝手に先生やお前が入り込んでるんだよ)

 九玉

(言い方が悪かった。"我が与えた個性"を扱えるようになってもらおう)

 AFO

(もっと正確に言うと"僕のAFOで与えた個性"だけどね)

 九玉

(……とにかく、"エネルギー変換"と"自食作用"の感覚を掴んで欲しいのだ)

 死柄木

(そいつは構わねえが、理由を聞かせろよ)

 AFO

(それは僕から説明しよう)

 

 AFO曰く、アメリカのNo.1ヒーロー『スタンドライブ』の"個性"が手に入れば世界を牛耳れるという。

 

 AFO

(『スターアンドストライプ』だね。どうやら君はカタカナが苦手なようだね)

 九玉

(なんだっていいだろう。我だけで勝てるかどうかわからない以上、死柄木も鍛えて強くなってほしいのだ)

 死柄木

(事情は分かったよ。お前の力を自在に扱えるに越したことはないからな)

 

 我々の説明を受け死柄木は乗り気になってくれた。

 

 九玉

(訓練相手はマキアに頼もう。場所も以前お前とマキアと戦った場所なら問題ないだろう。最悪、場所を転々として鍛え続ければよい)

 

 ということで理の会の皆に訓練のための暇を貰い、マキアと共に移動する。荒れた大地に再生の兆しが見えるが、これからまた吹き飛ばされることになるだろう。

 

 死柄木

「本気で来い、マキア」

 マキア

「主よ……! 新たなる力を俺に見せてくれ……!」

 

 マキアが体を大きくし臨戦態勢をとる。

 

 死柄木

(それじゃあご指導お願いするぜ、九玉先生)

 

 

 まずは"自食作用によるエネルギー生成"から教える。体組織分解して熱量を生み出すだけなのだが、闇雲に体組織を分解していては効率が悪い。そのため、率先して脂肪を分解するようにする必要がある。

 

 九玉

(つまり胸の脂肪を分解すればいいのだ)

 死柄木

(お前にはあるかもしれねえが俺にはねえよ。こんなことなら寿司だのピザだの毎日食っておきゃよかったぜ)

 

 死柄木の体はしばらく仮死状態にあったので多くの脂肪はついていない。訓練が終わったら理の会で贅沢三昧をするとしよう。

 

 九玉

(なら尻の肉でも分解するとよい。言っておくが"超再生"があるからシェイプアップはできないぞ?)

 死柄木

(そいつはダイエットが面倒になりそうで残念だ……ぐっ!? 結構痛ぇな……!?)

 九玉

(言い忘れていたが、体組織を不自然に分解しているからそれなりの痛みが伴うぞ。慣れろ)

 

 次に"エネルギー変換による射出"を教える。生み出したり吸収したエネルギーを様々なエネルギーに変える。例えば"破滅の波動"であれば運動エネルギーと光エネルギーに、"壊滅の一閃"なら熱エネルギーと光エネルギーにといったような感じだ。

 

 死柄木

(光エネルギーいるか? 無駄だろ?)

 九玉

("ショック吸収"には限度がある。エネルギー許容量を超えた分はダメージになる。あと見栄えの問題だな)

 死柄木

(配信業やってる奴からしたら見栄えは大事だろうな)

 

 今教えた二つを早速実践してもらう。マキアの攻撃を避けながらエネルギーを生み、出力を考えてエネルギーを放つ。実戦でやってみるとかなり難しいようで、被弾したり腕が弾け飛んだりと前途多難のようだ。

 

 死柄木

(お前こんな複雑なことやってたのかよ……!)

 九玉

(これに加えて"世界移動"もやっている。"世界移動"は流石に教えられない。悪用云々ではなく脳の処理ができないからはずだ)

 死柄木

(ただ移動するだけにそんな難しい事は必要ねえだろ……‥! それでマキアの攻撃を避けてやる……!)

 

 意気込んだ死柄木の顔面をマキアの巨拳が捕らえる。ゴキバキと骨を砕きながら吹っ飛ばされる。

 

 マキア

「主殿!?」

 死柄木

「だ、大丈夫だマキア……すぐ治る……」

(……何でできないんだ……?)

 九玉

(アレは瞬間移動ではない。平行世界移動の連続だ)

 

 我の世界移動の原理はこうだ。

 1."観測"によって平行世界を見つけ、入れ替わる場所を見つける。

 2.場所を見つけたら"入れ替え"によって、その場所の空間に存在する物と我を入れ替える。

 3.入れ替わったら一呼吸して、元の世界に戻るように1と2を繰り返す。

 

 九玉

(平行世界間での時間の流れは同じではないため、1から3が一瞬で起きたように見えているのだ。その結果が瞬間移動に見えるだけだ)

 死柄木

(ただでさえエネルギーの扱いで精一杯なのに、説明された上でよく分かんねえ力の事なんか考えられねえわ)

 AFO

(別世界の僕はそんな複雑な"個性"も作れたんだね。ただ、移動の性能だけに限れば、黒霧の方が単純で大人数に対応しているね)

 

 一々癪に障る物言いだが事実だから受け入れるしかない。時間をかけて死柄木の訓練を行うとしよう。

 

 

 トゥワイス

「────ってことがあってよ。九玉・フォー・死柄木が帰って来るまでの間、何をするか決めてくれよ」

 

 我も中々大変なことをしているようだ。分身とはいえ我であることに変わりはない、理の会のトップとして成すべき事を成そう。

 

 九玉(分身)

「本人AFOがいない間に殺す計画を考えようか」

 コンプレス

「いきなり物騒だね。九玉くんが彼を憎んでいるのは重々承知しているけどさ」

 スピナー

「だが、言うほど簡単に殺せるのか? 2つの"超再生"を上回る力などそうそう出せないだろう?」

 九玉(分身)

「幸いここには人殺しのプロがいる。聞いてみるとしようか」

 

 我は筒美に目を向ける。理の会の正装である黒いスーツと、それに合わせたミニスカートが非常に様になっている。もし許されるなら秘書として雇いたいぐらいだ。

 

 筒美

「公安にいた時すらこんなミニスカ着たことねえよ。お前どんな趣味してんだ?」

 九玉(分身)

「美人がミニスカを着ると数字が伸びる……この世の理だ」

 キュリオス

「諦めなさい新人。それを断ったらミルコのコスプレさせられるわよ」

 スケプティック

「『我が理だ』の一点張りで強行させられるぞ。男も問答無用で着させられたからな」

 トガちゃん

「アレは見てて面白かったです。ラブラバちゃんがハッキングで身長とスリーサイズぶっこ抜いて、仁くんに作らせて……」

 マグネ

「投票で誰が一番似合ってたか集計したけれど、皆女性に入れるのを日和っちゃって……たしかジェントルさんが一位になったのよね?」

 ジェントル

「思い出させないでくれ……アレは軽くトラウマなんだ……」

 ラブラバ

「大丈夫よジェントル! その……似合っていたわ! ミ、ミルコ本人よりも似合っていたわ!」

 ホークス

「フォローになってないと思いますよソレ。というかそんなバカな事やってたんですね……俺も知らなかったなあ」

 

 昔話に花を咲かせるのも悪くないが、今はAFO殺害計画について話すべきだ。一つ咳払いをして話の舵を戻す。

 

 九玉(分身)

「さて、筒美にミルコのコスプレをさせる話だが──────」

 筒美

「舵戻せよお前の欲駄々洩れじゃねえか。自分で言うのもアレだが、殺しのプロだからAFO殺害計画考案に指名したんだろ」

 九玉(分身)

「そうだったな。ではAFOにミルコのコスプレをさせる話だが──────」

 筒美

「わざとやってるなら頭撃ち抜くぞ」

 

 筒美が右腕を銃に変え、髪を弾丸にして込めた。銃口は我の眉間辺りを睨みつけており、一切の震えがない。しかし、構えているだけでしかないとも言える。ここはひとつ実力を見て見よう。

 

 九玉(分身)

「……折角だ。試しに撃ち抜いてみ────」

 トゥワイス

「──────ってことがあってよ」

 

 この様子なら筒美の腕は確かな物だ。殺害計画を練る上で間違いなく力になるだろう。

 

 九玉(分身)

「さて、AFO殺害で重要な事だが、死柄木の体の主導権は死柄木と中にいる我がほとんど握っている。故にAFOはほとんど外に出てこれない上に、我らが乗っ取り返せる。故に奴にバレてもいい」

 筒美

「後にも先にもない凄い前提条件だな……だが、わざわざ私を指名するほど理由ではないな?」

 九玉(分身)

「……死柄木を助けながらAFOを殺したいのだ」

 

 我の発言に一同が驚く。そんなに素っ頓狂なことを言っただろうか。

 

 九玉(分身)

「……最近、死柄木がAFOにとっていいように扱われているように思えてな」

 

 マスターピース計画の際に"AFO"と共にAFOの意識を植え付けられ、自分の意志を貫くのにはかなりの枷となるだろう。もし、我や土口がいなければAFOに乗っ取られていたかもしれないと思うほどだ。

 

 九玉(分身)

「言ってしまえば同情や哀れみでしかないが……それでも死柄木を助けてやりたいと思っている。死柄木をAFOの呪縛から放つにはAFOを殺すしかない。殺しで誰かを救ってきたとなったら……()()()()()()()()()()()()()()()

 

 筒美が腕を元に戻し、頭をかいて溜息を吐いた。

 

 筒美

「……私がタルタロスに収容された理由を知っているか? 当時の公安の会長と揉めて殺したからだぞ? 結局殺しじゃ解決できない──────」

 九玉(分身)

「だがお前は今まで殺しで人々の安全と平和を守ってきた。それは変えようのない事実だ。手段の正当性など理たる我が良いと言えばそれまでだ」

 

 物事の是非など時代と共に如何様にでも変わる。故に我は結果を見る。どんなに正当な過程だろうと、結果を残さねば意味がない。逆に、どんなに卑劣な手段だろうと、結果が出たのであれば意味はある。

 

 九玉(分身)

「誰かを殺めたとしても、それで誰かを助けることが出来たのであれば──────お前は間違いなくヒーローだ。だからお前に頼みたいのだ。我を助けてほしい

 

 我は筒美に手を差し伸べる。不可能を成すために手段は選ばない。たとえ一人では出来そうにない事でも、誰かと手を組めばできるはずだ。

 

 筒美

「──────ッ、なんで、私なんだよ……」

 

 筒美が自分の手を見つめる。次第に筒美の息が荒くなっていく。まるでおぞましい何かを目の当たりにして恐怖しているようだった。

 

 筒美

「私にそんな資格はもう──────」

 九玉(分身)

「なら言い方を変えよう──────()()()()()

 

 筒美の手を無理やり掴み、我の下に引き寄せる。

 

 九玉(分身)

「懇願ではなく命令という形だ。我が我の手で理を創れるように、お前もお前の手で誰かを助けられる。資格がどうこうとのたまうのなら、理たる我を助けるという最大の大義名分の下に資格を与えよう。否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 筒美は正に呆気にとられたと言わんばかりに口をぽかんと開けている。そしてハッと正気を取り戻し我の眼をじっくりと、紫玉の瞳を品定めするように見つめている。

 

 筒美

「……あんたの作る未来はどんな未来だ?」

 九玉(分身)

「我が理の下に誰もが平等な未来だ。そこには既存の正義も悪もなく、我の理が定める英雄(ヒーロー)(ヴィラン)によって永遠の平和が紡がれる未来だ」

 

 我にとって平和とは不変ではない。不変は停滞を生み、停滞は衰退を生み、衰退は滅亡を生む。しかし、闇雲に変化し続けていけば混沌を生み、混沌は無秩序を生み、無秩序は破滅を生む。故に管理された中で変化し続ける事こそが一番の平和だと考える。我の理論を聞いて筒美が諦めたように笑う。

 

 筒美

「……馬鹿でも天才でもない、単純にイカレてるよお前」

 九玉(分身)

「最初に職業としてのヒーローを作った者もそう言われただろうな」

 筒美

「そこまで言い切れるなら私の負けだ。協力するよ。お前の作る未来が見てみたくなった」

 

 

 筒美の協力を得ることが出来たので作戦を考えていく。

 

 筒美

「そもそも本人にバレていいなら、死柄木の中にいるお前と話すのが一番良い。連れ戻すことは出来ないか?」

 九玉(分身)

「訓練のためスマホの電源は落としておくそうだ。ある程度扱えるようになったら向こうから連絡してくるらしい」

 筒美

「死柄木・フォー・九玉の情報を知りたかったんだが、それは後で本人から聞くとするか。まず、どうやって殺したい?」

 九玉(分身)

「そうだな……奴が最も嫌がる方法、つまり"OFA"で殺される事だろうな」

 

 何だそれはと聞かれたので"OFA"についてザックリと説明する。それを聞いた筒美が口元に手を当てて考え込む。

 

 筒美

「なら、その緑谷って奴を仲間に入れる必要があるな」

 九玉(分身)

「それと緑谷には我の定めるヒーロー第一号になってもらいたい」

 筒美

「じゃあ、まずは緑谷と会って話をする必要があるな」

 九玉(分身)

「奴は寮生活を強要されている。よほどのことがないと出てこないぞ」

 筒美

「となると、よほどのことをこちらで起こす必要があるな」

 

 配信者として色々やってきたから、よほどのことを起こすのは得意だ。ではどのような企画で緑谷を連れ出すか。緑谷は女好きだったから理の会の女子達を分身させて町中に放つか?

 

 筒美

「だったらお前を街中に放つ方がよっぽどよほどのことになるだろうよ。お前みたいなイカレ野郎が全国各地に現れたらヒーローもお手上げだ」

 九玉(分身)

「それだ。それでいこう。それではこれより理の会恒例、企画会議を始める」

 

 一同がそんなノリで決める物じゃないだろと言わんばかりにあちゃーと言っている。その上で、やはり筒美に相談してよかった。さあ、緑谷を呼び寄せる最高の作戦を考えるとしよう。

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