抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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8-05 今を変えたいと願うならその心で今を行け

 俺は思いついた作戦を九玉さんに話す。九玉さんはその手があったかと目を瞑って笑った。

 

 九玉(分身)

「そうと決まれば早速動くとしよう。我は奴を迎えに行く。お前はヒーロー達に今の作戦を話してくれ」

 

 俺はサムズアップで快諾し、"世界移動"で雄英の寮前広場に現れる。

 

 精(変身)

「おっ、俺が氷漬けになってる……みんなよくやってくれたなあ」

 1-A一同

「「「誰!?」」」

 

 皆が信じられないものを見るような目で見て驚いている。そういえばハメドリくんのままだった。ヘルメットを外し素顔を見せる。そうしたら安堵の表情に変わり、その中から1人が嬉しそうに俺の胸ぐらを掴んだ。

 

 爆豪

「どうだ出久ゥ!俺達の力だけでてめェを止めてやったぞ!」

 精(変身)

「流石だね。皆ありがとう。おかげで良い情報を手に入れることが出来たよ。まずは俺に"OFA"を戻さないといけないから、手を放してくれる?」

 爆豪

「てめェ同士でキスでもすんのか!?そいつは見ものだな!」

 

 乱雑に突き放されて自由を手にし、氷漬けになっている俺に近づく。

 

 精(本物)

「るあああ!!!おおおん!!!」

 精(変身)

「狂犬そのものだなこりゃ。キスしたらした舌を噛み千切られそうだし、黒鞭で血を直接胃にぶち込むか」

 

 指を齧って血を出し黒鞭に編み込んで俺の口に突っ込む。そのまま今で送り込んで血を施し与える。

 

 精(本物)

「ぐがあああ!!!」

 精(変身)

「これでよし……数時間の内に俺の意識が戻るから、詳しい話はそれからにさせてもらうよ」

 

 三度アジトに戻る。そこではすでに九玉さんとあの人が話していた。これからの段取りを決める話をしているようなので、邪魔せずトガちゃんに意識を渡そう。

 

 精

(ありがとうトガちゃん。おかげで一気に物事が動き出しそうだよ。それもいい方向にね)

 トガちゃん

(役に立てたなら何よりです。私の好きを我慢しないでいい世界にしてくださいね)

 精

(俺は約束をすると一度破ってからじゃないと果たせない男だからね。約束はしないよ)

 トガちゃん

(なんですかソレ。それじゃあ、なるべくがんばってください)

 精

(好きな()のためならがんばるってのが男の子ってもんさ)

 

 今度会う時は平和になった世界で──────我慢したくないから早く来てくださいね。

 

 

 精

「────冷たっ!?!?!?」

 

 意識が戻ると同時に命の危険を覚えるような冷たさに襲われる。

 

 轟

「緑谷の意識が戻った!氷から出して温めろ!」

 

 氷を砕いて俺を取り出し、濡れたコスチュームを脱がして、タオルで体を拭いて、轟の炎とメイドイン百ちゃんの高級羽毛布団で暖まる。至れり尽くせりだ。ついでに我儘も言ってしまおう。

 

 精

「温かいココアが飲みてえ。インスタントじゃなくてココアパウダーを練った奴」

 爆豪

「白湯で我慢しろや」

 轟

「俺の手からの直飲みになっちまうがいいか?」

 爆豪

「それぐらいでちょうどいいな。オラ口開けろ」

 

 イケメンの手から出る温かな液体を口にする。やってくれるのが女の子ならこういうプレイも悪くない。

 

 切島

「つーかあんだけ激しくやってたのに骨とか折ってねーのか?」

 精

「キャシーから"OFA"継承した時に"超再生"も受け継いだからな。折った所ですぐ治る──────じゃあ今の俺最強じゃね?」

 

 "OFA"の唯一の欠点である反動を気にしなくてよくなった。そうしたら常にOFASを100%で使えることになる。実質オールマイト、いや継承してきた他の"個性"を合わせたらオールマイトの上位互換と言ってもいいかもしれない。

 

 精

「これでヒーロー側にも力が出来た……同盟を結ぶには悪くない切り札になるだろうな」

 

 皆が首をかしげている。この先どうなるかは分からないが、どのみち知ることになるだろうから今ここで言ってもいいだろう。

 

 精

「今、ヒーローと理の会で同盟を結ぶ計画が進んでいる」

 

 皆が処女が顔射を喰らったような顔をしていて、全く飲み込めていないようだ。

 

 精

「先生たちも含めて説明した方がよさそうだな。寮に呼んでくるから、皆はそれまでスマホで情報収集してるといいよ」

 

 ということで俺は布団の繭から出て職員室に羽ばたく。服を着るのも惜しいので黒鞭と煙幕で最低限隠した状態だ。澤先とマイトは人としてどうかと思うと言っていたが、キャシーとミッ先は悪くないと褒めてくれた。ともかく全員を寮の共有スペースに集める。

 

 精

「まずは理の会のアジトで手に入れた情報から話そうか」

 澤先

「まずは服を着ろ。鞭と煙で隠すなんて全盛期のミッドナイトより酷いぞ」

 キャシー

「確かそのせいで日本の法が変わったんだろ? ミスター土口然り、()()香山然り、日本はHENTAIの国ってのは間違いじゃないみたいだな?」

 ミッ先

「……貴女英語が下手なのね? Miss.(ミス)じゃなくてMs.(ミズ)よ、()()ベイト?」

 マイト

「そんなところで女の争いをしないで欲しいな……まずは緑谷少年に服を着てもらって話をしてもらおうよ……」

 

 自室に戻って久々に金色のジャージを着る。やっぱりジャージは金に限る。青や赤が悪いと言う訳ではないが、金が絶対的な一位なのだ。共有スペースに降臨したら皆がうわっ……と分かりやすく顔を引き攣らせた。金によって引き上げられた俺の魅力に嫉妬しているのだろう。嫉妬している所申し訳ないが話を始めさせてもらう。

 

 精

「まだ俺と九玉さんしか動いてないですが、ヒーローと理の会で同盟を結ぼうと思っています、というか同盟を結ばないとヒーローと理の会で戦うことになります」

 澤先

「謹慎解けて早々にこれか……相変わらずお前は勝手なことをするな?」

 マイト

「文字通り無限の戦力を持つ彼女達と戦うとなると……私達が降参するか全員死ぬまで被害も無限に増えていくだろうね」

 キャシー

「だからといって敵とヒーローが手を組むってのかい? 破天荒にもほどがあるぜ?」

 ミッ先

「普通の敵だったら無理でしょうけど、彼女達なら話は別よ。共存を望んでいるもの」

 

 山荘での戦いで九玉さんを思い知らされた人は多い。実力、思想、理不尽さ、そして共存への可能性。

 

 精

「ヒーローと理の会が戦うのはお互いにとってで無利益ですし、下手をすればそこにAFOが加わる史上最悪の戦争になりますよ」

 

 現在、死柄木withAFOは行方不明である。理の会とヒーローが戦うとなったらその混乱に乗じて多くの"個性"を奪い、奴の目論見通り魔王になってしまうだろう。"個性"の判別が出来て、触れられたら一発アウトで、どこから現れるか分からない。いくらヒーロー飽和社会だからといって、そんな奴を理の会と同時に対処できるとは思えない。

 

 精

「俺達が取れる選択は二つです。一つは九割九分九厘で破滅する戦い、もう一つはまだ幾分かの可能性がある共存……最終的な決定は誰がするかは不明ですが、俺は共存の道を選びたいです」

 

 

 爆豪

「……本気でいってんのか?」

 

 俺の意見を聞いた爆豪が詰め寄ってきたが、俺が黙って頷いたら大人しく引き下がった。

 

 爆豪

「……なら特に止めるつもりはねェ」

 精

「こないだみたいに止めないのか?」

 爆豪

「どう考えても共存の道しかねェだろ。ここで戦いを選ぶ奴はよっぽどのバカか死にたがりだけだ」

 

 他の1-Aの皆も全てを受け入れているわけではないが、ある程度は納得しているように目を瞑っている。

 

 澤先

「……お前や爆豪の言う通りだ。俺達もその結論にしか至らなかった」

 

 大人達も分かり切っていたことだと言わんばかりに渋々頷いている。

 

 精

「……あとは民衆が受け入れてくれるかどうか、ですね?」

 澤先

「それがどうにかできるなら今すぐにでも同盟を結ぶさ」

 精

「それではとっとと同盟を結んでもらいましょうか。どこで結ぶのが映えますかね?」

 マイト

「いやいやいや!?どうにかできないから踏ん切りがつかないって言ったばかりだよ!?」

 精

「どうにかできるからとっとと結べって言ってるんですよ」

 ミッ先

「相変わらず緑谷くんは手を出すのが早いわね? 何をしたのかしら?」

 精

「SNSを見てもらいましょうか。正誤はともかく情報が一番多く集まりますから」

 キャシー

「……おい何だコイツは!?幸せの青い鳥だとでも言いたいのか!?」

 

 キャシーの叫びに合わせて皆が一斉にスマホを見る。

 

 三奈ちゃん

「出久の青い鳥じゃん!? えっ、何で!?」

 精

「さっき理の会に行った際に色々あってこうなったんだ。すでに協力しているという既成事実があったら受け入れざるを得ないでしょう?」

 キャシー

「ハッハッハ!コイツはクレイジーだ!私だって思いついたとしても実行しないぞ!」

 マイト

「な、なんて事してくれたんだ緑谷少年!!!」

 

 鶏ガラジャージのマイトが俺を掴んで揺さぶる。

 

 マイト

「AFOは"OFA"を狙っているんだぞ!?それを大量にばらまいてどうするんだ!?奪われでもしたら────」

 精

「継承者の意思が"AFO"をぶち砕くでしょうね」

 

 マイトがハッとして揺さぶるのを止めた。

 

 精

「キャシーの話から考えるに、明確な意思を持って"個性"に"個性"をぶつければ壊れるはずです。そして歴代継承者はAFOに強い怒りを持っている……キャシーの"新秩序"以上に"AFO"に反発するでしょうね」

 マイト

「……そこまで考えていたのかい?」

 精

「俺の正体を隠すコスチュームを作った段階でこの作戦をやることは決めていました。理の会と接触する前に雄英に戻ったのは誤算でしたが、この作戦でAFOを倒すつもりだったのは変わらないですけどね」

 

 死柄木に"OFA"を継承させれば体は確実に耐えれるだろうし、そこからもう一度俺に継承させて分身の九玉さんに継承させてから消えてもらえばAFOも消えていなくなる。これが俺の考えた死柄木を(たす)けるプランの初期案だ。今では理の会とヒーローを繋ぐ架け橋という目的も加わってしまったが、"OFA"を活用してAFOを消すという最終目標は変わっていない。

 

 精

「モロチン、これだけで民衆が納得するとは思っていません。むしろ反感を貰うでしょう。そこで敵によって助けられた二つの存在という切り札を暴露します」

 ミッ先

「……私とナイトアイの事かしら? それだけじゃ切り札としては弱すぎるわ?」

 精

「2人にも話をしてもらうつもりではありますが、もっとすごい存在がいます……ねえ、()()()()?」

 

 俺は指を鳴らしてキャシーを指差す。キャシーは俺の言いたいことを瞬時に理解し、ウィンクで返してくれた。

 

 キャシー

()()()()()()()()()()()N()o().()1()の汚名をそう使うとはね。中々鬼畜なことを考えるじゃないかミスター緑谷?」

 精

「手段を選んでいる場合じゃないですからね。洗いざらい赤裸々に話してもらいますよ」

 澤先

「1人はスターだとして、もう一人は誰だ?切り札というからにはとんでもない存在なんだろうな?」

 

 俺は余裕綽々にして自信満々の笑みで返した。

 

 精

「とんでもない存在ですよ。なにせ世間では()()()()()()()()ですからね」

 轟

「……ッ!?本気で言ってるのか緑谷!?」

 

 いち早く気付いた轟が俺に詰め寄ってきた。今日はよくイケメンに詰め寄られる日だ。ミッ先が泣いて羨ましがることだろう。

 

 精

「こう言っちゃなんだが……本当に隠し通せると思うか?」

 轟

「それは……轟家(おれたち)が頑張って──────」

 精

「どんなに頑張ったって人間一人を隠し続けるのは不可能だ。とある県知事が己の持てる力をすべて使って一人の娘を隠したが、色んな人間の執念によって見つけられてしまった事例がある。ただのNo.1ヒーローとその一家の力だけじゃ隠し切れねえだろ?」

 轟

「そ、それは……」

 精

「それにただ暴露するんじゃない……()()()()()()()()()()()()()んだ」

 

 

 我は緑谷が言う切り札を手にするために轟家にやってきた。そこではエンデヴァーを除いた轟家の一同が居間で身を寄せて身を案じていた。一家団欒に割って入るのも忍びないが、立ち止まっている時間はないので話しかける。

 

 九玉(分身)

「お邪魔している」

 夏雄

「うおおお!?九玉さん!?びっくりしたあ!?」

 冬美

「お、お久しぶりです……連日手厚く守ってくれてありがとうございます……」

 冷

「挨拶しに来たわけではないですよね?何の御用でしょうか?」

 九玉(分身)

「燈矢の力を貸して欲しい……話をさせてくれるか?」

 

 我の呼びかけに応じ燈矢がすっと我に歩み寄ってきた。

 

 燈矢

「今更俺に出来る事なんてないと思うが……理の会に戻れって言うならお断りだぜ?」

 九玉(分身)

「理の会とヒーローで同盟を結びたい。そのためにお前に色々と話をしてもらいたい。出来るか?」

 燈矢

「流石に事情が知りてえ。色々話してくれ九玉さん」

 

 かくかくしかじかきゅうきゅうぎょくぎょく色々話す。

 

 九玉(分身)

「……簡潔に言うと、ヒーローによって生み出された敵であり、敵によって救われたお前の言葉でなければ、民衆を納得させヒーローと理の会を繋ぐことは出来ない。だから力を貸してほしい」

 

 燈矢はなんとも複雑な顔をしている。かつて荼毘だった頃、我の企画を聞いた時と同じ顔だ。

 

 燈矢

「無理だね限界……って言いたいところだが、俺には助けられた恩がある。それを果たせないままのうのうと生きていくのはもっと無理だね。だから協力するよ」

 

 我の手を取ろうとした燈矢を轟家が引き留める。

 

 夏雄

「もういいだろ燈矢兄!? これ以上辛い思いをしなくたっていいだろ!?」

 冬美

「そうだよ!やっと私達と一緒に暮らせるようになったんだよ!もうどこにも行かないでよ!」

 冷

「燈矢……私はまだあなたのお母さんとして何もしてあげれてないの……だから……お母さんらしくあなたの世話をしてあげたいの……」

 

 我とて家族の中を引き裂くような外道ではない。燈矢が考え直すというなら──────燈矢が轟家を抱きしめた。

 

 燈矢

「……その気持ちはスゲエ嬉しいよ。でも、俺だって皆の為になりたいんだ──────俺だってヒーローに憧れてた頃があったからさ

 

 いくら和解したとはいえ、父に否定され、父を憎んだ者がこうも変わるとは。

 

 燈矢

「皆が俺のために頑張ってくれたから、今度は俺が皆のために頑張る番なんだ。だから……頑張れって言って背中を押してほしい」

 

 燈矢が目元から黒い涙を流す。轟燈矢としての初めての我儘なのだろう。一同はその想いを汲み取り、泣きながら笑顔を作った。

 

 夏雄

「……絶対帰ってきてくれよ」

 冬美

「帰ってこなかったら……すっごい怒るからね……」

 冷

「あなたも……こんなに大きく育っていたのね……」

 夏雄・冬美・冷

「「燈矢兄」」「燈矢」

「「「頑張って」」」

 

 一家に背中を押された燈矢が我の手を取る。

 

 燈矢

「それじゃ、行こうぜ九玉さん。今度はしっかりと暴露配信させてくれよ?」

 九玉(分身)

「任せろ。最高の舞台を整えてやろう」

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