抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
同盟を結ぶ段取りを決めるため、俺と九玉さんで話し合う流れになった。澤先がお前だけに任せるととんでもない事になるというので、学校にいる教師陣が監視についた。会議室でSNSのビデオチャット機能を使ってお互いの姿をスマホに映し出す。挨拶も抜きに早速話を進める。
精
「場所はどこにしますか? 俺としては神野区でやったら印象的だと思います」
九玉
「我をこの世に知らしめたあの場所か……復興も進んだからホールの一つぐらい借りれるだろう。日程はどうする? なるべく早い方が良いが、明日では急すぎるだろう?」
精
「明後日にしましょう。一日あれば準備は出来ます。同盟の立会人は誰にしますか?」
九玉
「偉人である根津校長と中立な立場である警察関係者がいいだろう」
精
「根津校長、塚内警部と話付けれますか?」
根津
「もちろんさ。使える人脈はどんどん使っていくよ」
九玉
「理の会は総出で同盟を結びに行くが、ヒーロー側は誰が来る? 最低でもオールマイトとエンデヴァーには来てもらはないと釣り合わないだろう」
精
「それに加えて都合のつくTOP10でどうでしょうか? マイト、今すぐ連絡して予定が合う人をピックアップしてください」
マイト
「任せてくれたまえ! 全員集めるぐらいのつもりで連絡するよ!」
九玉
「理の会としての要求は"非常時や監査時を除くヒーロー側からの不干渉"と"職業としての敵を設立する"の二点だ。ヒーロー側はどうだ?」
澤先
「"理の会による他の敵組織殲滅"と"理の会が出したこれまでの被害の補償と補填"だ。他にもあるがメインはこの二つだ」
九玉
「了解した。具体的な指示や数字は同盟を結んだ後に聞こう」
話がトントン拍子に進んでいる。同盟を結ぶ事によって不利益そのものは生じないため、お互いの要求を通しやすいからだろう。
九玉
「会場の警備及び全国の治安維持はトゥワイスが増やした我とハメドリくんで行おう。ヒーロー達には同盟に集中してもらいたい」
精
「お気遣い痛み入ります。それでは明後日に向けてお互い準備を進めましょう」
通話を切って各々準備に入る。と言っても学生である俺が同盟の現場に関わることはない。本日出来る事と言えば方々への連絡のお手伝いぐらいだ。
精
「もしもしサーさん? この度ヒーローと理の会で同盟を結ぶ事になりましたので、明後日に神野区に連れていきますね」
ナイトアイ
「急だな。だが待っていたところで事態は良くならない、準備しよう」
精
「もしもしエンデヴァー事務所ですか? 理の会との同盟を結ぶ段取りに関してエンデヴァーに伝言をお願いしたいです」
バーニン
「あの時の手の早いガキか! いいぜバッチリ伝えてやるよ!」
精
「もしもしミルコさんですか? 明後日神野区──────」
ミルコ
「分かった! 今すぐ行くぜ!」
約一名大丈夫か不安になるが俺の伝手はこれぐらいだ。後で1-Aの皆にも手伝ってもらって、なるべく多くのヒーローに立ち会ってもらいたい。それこそ、
緑谷との通話を終えた我は理の会のメンバーを集め、同盟に向けての作戦会議を始めた。
九玉
「今回の議題は"職業としての敵"だ」
スケプティック
「そもそもヒーローは
九玉
「常識が変わる時は得てして常識をPlus Ultraした時だ。貴様のような卑屈な
キュリオス
「彼はニヒリストというよりひねくれてるだけだと思うわ。指摘そのものは間違っていない──────」
九玉
「くだらぬ内訌は止めだ。職業としての敵の具体的な内容を考えるぞ。発案者である我としては"犯罪者への実力行使"と"ヒーローとの戦いによるエンターテイメント"を軸にしていこうと思う」
ヒーローは人を助ける存在だというのが世間の考えだろう。故に敵が表立って人を助けるのは受け入れがたいはずだ。その中で敵を認めさせるためには、敵は悪事を働くという従来の敵の印象を利用するほかない。この世界の際たる悪事と言えば"個性"で人を傷つける事だろう。ヒーローが持ってはいけない負のイメージを敵が背負う、このような形であれば比較的受け入れやすいだろう。
スピナー
「あくまで俺達は悪者側を演じ続けろと……」
九玉
「我々はどれだけ認められようと、罪を犯してきたことには変わりない。それを見てみぬふりして清廉潔白を貫くなどあってはならない。過去は消えない、だから受け入れる、その上で我々の可能な限りを尽くす、そして職業としての敵を認めさせる、それが理の会の使命だと我は考える」
我々の使命に一同が眉を顰める。いくら事情があれど悪事は悪事で、今更無罪放免になるとは思っていない。
ジェントル
「……九玉くんの言う通りだ。私達はどれだけ善行を重ねた所で、敵という事実は変えられない」
ラブラバ
「ジェントル……」
マグネ
「だからこそ敵として排除されるのではなく、受け入れてもらえるようにしましょうって話よね」
トガちゃん
「……そうですね。少しでも誰かが認めてくれれば、いつかは皆が認めてくれるようになるかもしれないです」
筒美
「やり方がちっと強引すぎるがな。だがこのヒーロー社会にドでかい風穴を開けるんなら、これぐらいの方法しかないのかもな」
燈矢
「ヒーローに救えない存在を、ヒーローにはできない方法で救ける……該当者だから何も言わねえけど、とんでもない話だな」
コンプレス
「敵としての人助けは了解したよ。エンターテイメントとしての方は……言うまでも無いかな?」
トゥワイス
「俺自身は戦闘に向いてないからな! 撮影や演出の裏方に回らさせてもらうぜ!」
皆程々に納得してくれたようだ。当面の間はヒーローの指示に従い活動を行う形にして、ある程度の功績を残したら理の会を基軸にして独立するという方向でまとまった。
九玉
「この同盟は我々に、ヒーローに、この世界に生きる全ての人間にとって新たな未来を切り開くものになる。必ず成功させるぞ。では、成功を祈って三三七拍子を──────」
我のスマホに一軒のメッセージが届く。差出人は緑谷だった。
秘密で進めておきたい計画があります。理の会の皆さんと話せますか?
奴は会場には来ないという話だったが、この秘密の計画のためなのだろうか。とりあえず緑谷と通話を繋げる。
九玉
「何事だ緑谷?」
精
「この同盟の真の目的は分かっていますよね?」
九玉
「AFOをおびき寄せることだろう?」
精
「その通りです。なので死ぬほど広告してください。動画にSNS、チャンネル登録者の口コミでも何でもいいので。あっ、ハッキングとか非合法なことはダメですよ?」
多大な広告をしてどこかに潜む奴に情報を与えるということだろう。それによっておびき寄せるという算段なのは分かったが、どうも腑に落ちない点がある。
九玉
「これぐらいで奴OFAが来るか?」
精
「えっ?」
奴は諸悪の根源にして史上最悪の敵だ。同盟を結んで理の会とヒーロー総出で探せば痕跡ぐらいは見つかるかもしれないが、ただ同盟を結ぶという情報を聞いただけで動くような奴には思えない。むしろ奴の警戒心を煽ってより深い闇に潜りかねない。
九玉
「我はこの事態に乗じてマキアに奴を探し当てようとさせていたが、お前は何か考えていたか?」
精
「奇遇ですね。俺も同じこと考えていました」
ついに僕と死柄木の意識は融合を果たした。これで僕は自由に動けるようになった。だから物事の判断は僕が出来る。なのにこの目に映る事実はとてもじゃないが受け入れられるものではなかった。何体もの青い鳥の化け物が街をを飛び交っている。街道の死角に紛れ"サーチ"で見てみたら、その全ての青い鳥の化け物が緑谷出久であることと、"OFA"を所有していることが判明した。
AFO
「何がどうなっているんだ……?」
しかも街中ではやけに同盟という単語が聞こえている。まさか九玉くんの言っていたヒーローとの同盟が結ばれたというのか? だとしたら
市民A
「今日ヒーローと理の会で同盟を結ぶ会議をやるらしいぜ……」
市民B
「現地で見てえけど……交渉決裂になったら大惨事になるだろうからなあ……」
市民C
「俺は推しが間近で見れるから絶対行くけどな! バイトも休みだし!」
あの悲劇が起きた神野区で新しい時代を作ろうというのか。魔王としては是非ともそれを妨げてやりたい。全てを壊して台無しにしてやりたい。人々の会話やビルの街頭モニターの情報から、今日の正午に足立区のとあるホールで開かれるらしい。
AFO
「……わざとらしすぎるね」
いくらなんでも情報が拡散され過ぎている。同盟を結んだのならまだしも、結ぶという予告だけでここまで大々的に告知をするものだろうか。九玉くんだけならやりかねないが、ヒーローも関わっているから誇大広告などしないだろう。まるで誰それ構わず見せつける露出狂のように、物陰に潜む誰かにも伝わるかのように宣伝している。
AFO
「
この同盟の表向きの目的は治安維持とかヒーローを楽させるとかくだらない物だろう。それらは全て
AFO
「つまり僕の正解は逃げることだ」
世間の目が同盟に向いている今だからこそ、僕の動きを気にする存在はない。より一層深い闇に逃げ込めば誰にも見つからない。体ももう少しで完全になるし、僕は友達が多い。日本だけでなく海外にも良い友達がいて、彼らと協力すれば同盟を壊すことぐらい訳ない。闇に紛れて更なる闇へ、誰も来ることのないであろう樹海の深くへ移動した。"サーチ"で辺りを見回す。僕に向かって真っすぐ向かっている反応が1つだけある。
AFO
「誰か来るとしたら……いや、僕を追ってこれるのはお前だけだね──────マキア」
地面がモコリと盛り上がってその中から人間大のマキアが顔を出した。
マキア
「主殿……! 本物の主殿……!」
AFO
「贋物の死柄木に騙されなくてよかったよ。ヒーローはもとより、理の会も碌な奴らではないと分かっただろう?」
マキア
「主よ……! 何故俺を置いていった……! ずっっっっっと信じて待っていたのに!! 主が俺を置き去りにして! 逃げ出した!!」
どうも様子がおかしい。巨大化する様子がなく、ただ僕に向かって喚いているだけだ。適当に話を合わせて宥めればすぐにでも落ち着くだろう。
AFO
「僕にも色々事情があったんだ。でもまたこうやって再会できたし──────」
マキア
「では何故後継を騙し裏切った!!」
理の会で何か吹き込まれたのだろうか。とは言えマキアは僕の忠実なしもべだ。話し合えば説き伏せる────
マキア
「まさか
その言葉と共にマキアに顔面を殴られる。あまりにも唐突な事過ぎて受け身も取れずに地面に倒れてしまった。
マキア
「別にそれを理由にするのは構わないが、別の誰かがそれを理由に手前を襲っても文句は言うなよ? 自分は良くて他の誰かはダメなんて……俺の理に反する」
マキアは何を言っているんだ? まるで僕と相反する存在になってしまった────いや、そもそもコイツは本当のマキアなのか? "サーチ"で映る情報はコイツがマキアだと言っている。だが僕の魂がそれを否定している────誰かがマキアに変身している。
AFO
「"変身"……まさか渡我被身子か?」
マキア
「キッショ、なんで分からないんだよ? いや、分かる訳ないか」
するとマキアの姿がドロリと溶けて、中から緑谷出久が現れた。
緑谷
「キャシーとの戦いの後からずっと隠れていたお前じゃ、トガちゃんが"OFA"を継承して、俺に継承させた、なんて知る余地もないだろうからな」