Xavier the Superman   作:雑草弁士

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第10話 超人が残したもの

 今、僕は宇宙巡洋艦にドッキングしていたシャトルを切り離し、眼下の惑星へと降下している。シャトルには様々な物資が満載だ。これで何度目の往復になるか。

 この惑星は、師匠が帰って行った『外』の世界に於いて『トア』と呼ばれていた星だ。奇跡的に、地球化(テラフォーミング)の処置が無しで人類居住可能な惑星の1つだ。今僕は、この惑星に小さな村落程度の小規模コロニーを建設している。

 と言うか、この物資、資材を用意したのは師匠だ。師匠はスペースノイドとアースノイドの諍いに、心を痛めていた。そして地球連邦政府と宇宙市民を、物理的に距離を離す事を考えていたんだ。だが元の世界である『外』へ帰還するのが、師匠にとっては第一義。『外』でやる事が残っていたから、どうしても帰らなければならなかった。

 そして弟子である僕に、成人後に事業を起こして、『トア』や『ロンウォール』などの系外惑星開拓を行う事を託して去って行ったんだ。地球圏からあらゆるスペースノイドを洗い浚い地球と連絡が取れない超遠距離の惑星に移住させ、超空間航法(ハイパードライブ)が行える宇宙船は僕と協力者だけで管理し、地球との行き来は不可能にする計画。

 ただしその計画を実施するかどうかは、あくまで僕の意志に任せられた。師匠はスペースノイドたちの思想にも、不穏なものを感じていたようであるし。まあそれでも、僕はもともとは計画を実施するつもりではあった。

 だけど僕が18になるかならないかの頃、宇宙世紀0079の1月。一年戦争が勃発した。サイド1、2、4、5が滅ぼされてしまって、僕の心は折れた。当時の僕は、ジオンも連邦も、中立を気取って生きのびたサイド6リーアも心底恨んでいたからね。

 そしてやる気を無くした僕は、師匠に申し訳ないと思いながらも無気力に、ただ生きるだけを目的に日々を過ごし、そしてジオンに拾われて洗脳を受けた。まあ精神を二重底にしてはいたんだけどさ。

 

 

「だけど……」

 

 

 そう、だけど。時間っていうのはやはり心を癒すための特効薬、とまでは行かないかもしれないが、有効な薬だ。フラナガン・スクールでの仲間たちの存在も、それに一役買った。まあ、だからこそミゲルの裏切りは、正直耐えがたかったんだが。

 で、僕は今、師匠の残した物資を使って『トア』と『ロンウォール』に、小規模村落レベルのコロニーを建設中なわけだ。5年近く計画発動が遅れたわけだが。本来であれば、何か別の名目で小さな企業を設立し、反陽子ジェネレーターとそれ対応のエンジンを載せた宇宙船の数を増やし、スペースノイド達を地球連邦たちの手の届かない系外惑星へと移民させるはずだったんだが。

 だが今の僕は、企業なんて作れるはずもない。それに正直、太陽系から助け出したいという人も、それほど多くは無い。というかほとんど居ない。ぶっちゃけた話、予備計画的に宇宙巡洋艦の船倉に積んでいた物資で、小規模村落レベルのコロニーを建設すればそれで事足りてしまうんだ。

 

 

(シャリア中佐と、連絡付けないとなあ)

 

 

 シャトルを地上、建設中のコロニーの隣に降ろし、念動力(テレキネシス)で船倉を開けて念動力(テレキネシス)で物資を下ろす。念動力(テレキネシス)で整地し、念動力(テレキネシス)でプレハブを組み立てる。まあプレハブって言っても、惑星開拓用の強靭でしっかりした代物だ。地球圏のビルなんかよりとんでもなく進歩してる。

 

 

(僕は『トア』や『ロンウォール』に逃がしたい人は、ニャアンぐらいしかもう居ないけど。ニャアンと僕だけじゃコロニーの運営は成り立たないしなあ。それにシャリア中佐なら、逃がしたい人たちとか多くいるかも知れない。

 シャリア中佐、何考えてるか知らないけど、悪い人じゃないからな。地球圏、なんか駄目そうな『予感(プレコグニション)』がするんだよなあ。中佐とソドンのクルーたちのうち賛同者だけでも『トア』『ロンウォール』に逃がすとか、いいかも)

 

 

 荷降ろしとプレハブ数軒の組み立てが終わったので、先日に降ろしていたトラクターを先日に建てていたプレハブ倉庫から引っ張り出して、近くの農地予定地を耕しておく。こういうのは1回じゃ事は済まないし、だから地上に降りて来たらその都度ついでに農作業している。

 農作業と言っても、開墾(かいこん)して何度も耕してるだけで、種とかまだ撒いてないけどね。一応軌道上の艦内に置いたバイオ系プラントで作った堆肥(たいひ)とか混ぜ込んで、土壌作りはやってるけどさ。

 それと次に宇宙に上がったら、小惑星帯を調査して鉱山に使える小惑星見つけないとなあ。っていうか、『外』の世界でのこの恒星系のマップは持ってるから予想はだいたいついてるけど、並行世界間誤差とかで鉱脈無かったら、目も当てられない。

 宇宙の自動工場を組み立てて、超空間航法(ハイパードライブ)できる宇宙船を量産しなきゃ。地上で使う工業製品とかも。それと艦内に生物のクローニングプラントも組み立てて、DNA情報から家畜を生み出さないと。

 まあこれらは全部が全部、師匠の残した資材やデータに、おんぶに抱っこなんだけど。バイオプラントとかクローニングプラントとか自動工場とか、『組み立てれば』出来上がるようにキット化した状態で、宇宙巡洋艦の船倉に置いてってくれたからね、師匠。艦のコンピューターのデータバンクに、『外』の進んだ技術データとか、この世界で地球に降りて集めまくった家畜や農作物他の様々なDNAデータなど等。

 ほんとに、師匠がいなくなっても大丈夫な様に、僕のために色々と残していってくれたんだ。……サイド5全滅でショック受けて、腑抜けていたのが本当に申し訳なく思う。本当に僕は、師匠の教えの半分も活かせていない。

 涼しい風が、吹き抜ける。僕は天を仰ぎながら、呟く様に言った。

 

 

「『トア』が一段落したら、また『ロンウォール』に戻らないと。あっちの作業もやらないとなあ。……いろいろ自動化されてるから念動力(テレキネシス)込みで今のところ1人でもどうにかこうにか出来てるけど。人手、欲しいなあ」

 

 

 うん、独り言だ。寂しい奴だ。うん、寂しい。僕は大きく溜息を吐いた。

 

 

 

*

 

 

 

 そしてここは惑星『ロンウォール』がある恒星系の、小惑星帯。ここには有望そうな鉱山になり得る大型の小惑星がいくつかある。そこに艦内で組み立てた、自動採掘装置を念動力(テレキネシス)でいくつも並べて組み付けて行く。

 あとは、自動工場を組み上げないとなあ。自動工場を組み上げれば、『ロンウォール』の地上で使用する工業製品とか機械とか資材とかその類は、とりあえず供給の目途がつく。というか、僕が超能力者(エスパー)じゃなかったら、念動力(テレキネシス)瞬間移動(テレポート)使えなかったら、こんな作業やってられなかったよ。

 

 

(腹減ったなあ)

 

 

 うん、腹減った。僕はとりあえず宇宙巡洋艦の艦内にある、誰もいないだだっ広い食堂へと瞬間移動(テレポート)する。そして電子レンジでハンバーガーをチンして、小規模な水耕栽培施設からむしって来た洗っただけの野菜と共にかじる。合成ミルクで腹の中に流し込み、さっくり食べ終わるとトイレを済ませて、もう一度作業に戻ろうとした。

 

 

(!!)

 

 

 次の瞬間、嫌な『予感』がした。気のせいじゃない。僕はそちら方面にはニブくて向いてないけれども、それでもはっきりとわかる、予知能力(プレコグニション)による『予感』だった。

 僕は瞬時に僕のMS(モビルスーツ)であるギャンの操縦席(コクピット)へと瞬間移動(テレポート)する。万一に備え、アイドリング状態で出撃準備態勢にしておいて良かった。念動力(テレキネシス)で宇宙巡洋艦の船倉を開放し、開き切るのも惜しんで半分ほど扉が開いたところでギャンを飛び出させる。

 次の瞬間、ギャンの周囲に光が走る。次の瞬間ギャンはその場から姿を消し、全長20mほどの巨大な姿見の鏡みたいな構造物が宇宙に浮いていた。これは『ラフノールの鏡』と言って、超能力者(エスパー)が自分の身を護るために超能力で創造し、『鏡』の中に入って防御手段として使ったり、宇宙空間を航行する手段として使ったりする物だ。本来は2mほどのサイズなのだが、ギャンを入れるために20mほどのサイズで作った。

 僕は『ラフノールの鏡』を、一気に超空間航法(ハイパードライブ)させる。宇宙巡洋艦で超空間航法(ハイパードライブ)するには、準備の時間がある程度かかる。だから今は、『ラフノールの鏡』で一気に宇宙を飛ぶことにした。超能力を使う以上、けっこう疲労が溜まるけど、そんな事言ってる場合じゃない『気がした』んだ。

 更に念動力(テレキネシス)で操作して、宇宙巡洋艦の自動制御装置を操作して、時間はかかるが僕の後を追って超空間航法(ハイパードライブ)させるようにもしている。

 

 

 

*

 

 

 

 だが、それでも駄目だった様だ。

 

 

 

*

 

 

 

(なんで……。なんでッ!!)

 

(!! ニャアン!!)

 

 

 精神感応(テレパシー)で届く、悲痛な声。悲痛な思念。ニャアンの苦悩。それ以降、僕の呼びかけにも応答は無い。一瞬不吉な想像をしてしまったが、だが彼女が五体満足で『生きて』いそうな事は伝わって来る。おそらく、思念を凝らすための余裕が無いんじゃないだろうか。彼女の超能力修行は、そこまで進んでいない。

 速度を上げるか? いや、超空間航法(ハイパードライブ)じゃあ間に合わない。ならば……。負担ではある。だけどそんな事、気にしてはいられない。

 

 

(うおおおぉぉぉ!!)

 

 

 超空間航法(ハイパードライブ)の超空間から、僕とギャンが収まった『ラフノールの鏡』が消える。消失する。

 僕は、一気に数千光年レベルの瞬間移動(テレポート)を敢行した。




超人ロック、『外』に帰って行ったとは言え、残る弟子(エグザベくん)のために色々とやってました。骨折ってました。あとアースノイドとスペースノイドの諍いについても心痛めてましたし。
まあでも、彼が居なくなって直後に一年戦争起きるとかまでは想像働かなかった模様。戦争起きるだろうとは思ってましたが、勃発する時期については見誤った様で。あとジオンがスペースノイドをブチ殺してコロニー落としやる基地外だとは思ってなかった事も。
サイド1、2、4、5が全滅して、サイド5全滅でエグザベ君の心が折れるとか、それでジオンに拾われてしまうとかも想像できなかったですし。

で、前回でキシリア様から逃走したエグザベ君は、元々のロックが立案して準備した計画を規模縮小して、避難先のコロニー……村落レベルの居住地を『ロンウォール』『トア』の2惑星に建造してます。人は居ないんですがね。
地球圏から、逃がしたい人ができたら逃がせる場所を造ろう、ってことですね。まあ地球連邦もジオン公国も、無論サイド6リーアもあんまり好いてはいないんですが、でも個々の人間まで嫌ってはいませんし、『シャリア中佐とか、逃げたいって言ったら逃がしても』とか思ってます。で、予防的に逃げ場作ってます。

そして同じ距離を歩くよりも疲れる瞬間移動(テレポート)ですが、かと言って一瞬で数千光年飛ぶには超空間航法(ハイパードライブ)よりも速いですからね。一分一秒を争うところでケチってる意味は無いので。
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