「……思念を幾つか拾えた。おおよその事情も。『向こう側』の世界とやらで、一年戦争でシャア・アズナブル大佐を白い
「そんな……。しゅうちゃ、ん、が」
「ああ、そしてララァ・スンのために世界を直接的に滅ぼして来たのが、『向こう側』からやって来た少年、シュウジ・イトウ。ララァを苦しめないために、シャアの救済に失敗して苦しむララァを殺す事で、その世界を終わらせて、そして世界を最初からやり直させる」
冗談じゃない、そっち側の事情で世界ごと滅ぼされろって言うのか。他の者たちに、僕らに、何の関係がある。ララァ・スンの境遇に同情も共感もしよう。だからって、許せる範囲を超えてるよ。自分の目的のために、イオマグヌッソで地球滅ぼそうとしたキシリアと、何が違う。いや、対象が世界そのものなだけ、より悪質だ。
そして唐突に発生する地響き。いやここは地球の軌道上に浮かぶソーラレイ施設、イオマグヌッソだから、地響きと言うのは違うが。イオマグヌッソの根幹部が、割れつつある。拾った思念を解析した結果によれば、これはシャア・アズナブル大佐がシロウズと名を変えて、『シャロンの
だがそれにより、この世界と『向こう側』の世界が繋がった。それは僕らの
乗っているのは、僕自身は面識が無いけれど、シュウジ・イトウか。この『白い
「!! キシリアさま、が……」
「……討たれた、か」
「……」
右手で操縦桿を操作しつつ、悄然とするニャアンを左手で抱きしめる。同時に僕は、頭脳を必死で回転させた。
次の瞬間、キケロガから幾条ものビームが撃ち放たれ、それを赤いガンダムがぎりぎりで
(私にはわかる! 貴方がジオンを率いるのは危険だ! 貴方はいつか、キシリア様のように地球に住む人類の粛清にたどりつく! 貴方のまとう虚無が、そう言っている!)
(未来でも見てきたような言い様だな!)
まずいかもしれない。シャリア中佐には、まだ頼みたい仕事が山の様にあるんだ。だが中佐からの思念……。
一瞬、シャリア中佐とシャアの間の戦いに介入しようかという考えが浮かんだ。だがそのとき、僕の脳裏にはシュウジ・イトウの白い
「……駄目だ。全部僕だけでやるのは無理だ。くそ……」
「……」
「……シュウジ・イトウのガンダムを、少しの間だけでも
パン!!
「!?」
突然ニャアンが、ぞの両
「エグザベ少尉! わたしが、わたしがシュウちゃんを足止めします!」
「!! ……頼める、かい?」
「はい!」
次の瞬間、コンチごとニャアンの姿が燐光に包まれて消失する。
僕は僕で、一拍遅れてギャンを発進させる。とりあえず目的は、シャリア・ブル中佐とシャア・アズナブルの交戦している宙域だ。中破している
*
赤いガンダムがバズーカを撃つ。グレーと紫のキケロガがそれを
(アルテイシア様を
(シャリア!)
シャリア中佐とシャアは、思念で絶叫しつつ相手に殺意を叩きつけ合う。僕としてはシャリア中佐は可能なら無傷で救いたいし、シャア・アズナブルも今しがた『使い道』を思いついたから生きたまま確保したい。……やるか。
僕は、
(やめるんだ! 今そんな事をしている場合じゃない!!)
((!!)エ、エグザベ君!?)
キケロガと赤いガンダムの動きが鈍る。僕はそこを狙って、2機をサイコバリアで捉え、捕えて包み込んだ。
(エグザベ君! これは君が!?)
(!! ……君は、何者だ!?)
(シャリア中佐、今は時間が無い。貴方がシャア・アズナブルを生かしておけない気持ちは重々分かる。アルテイシア……様? ああ、シャア・アズナブルの妹様なんですね)
((何故それを!))
(思考が、だだ漏れです。アルテイシア様を擁立するのに、いまさらシャアさんに出て来られても地球圏に混乱を招くだけだと言うのもわかります。シャアさんがいては、いわゆるオールドタイプの粛清、抹殺に動くであろう事も、理解しますよ。
シャアさんの側も、不確定な未来を根拠にして殺されてはたまらないのも分かりますし、自分が、自分こそが、ニュータイプ『能力者』たちを、そして人類を、救わねば、と意気込むのも理解できなくもない)
そして僕は、凄まじいまでの危機感を思念波に込めて、2人に語り掛ける。
(だがそんな事、言ってる場合じゃない。この『世界』そのものの危機なんだ。あの白い『向こう側の世界』のガンダム……。シュウジ・イトウの駆るあの機体が、『シャロンの
((……)わたしに、いや、わたしたちに何をせよ、と? エグザベ君とか言ったね?)
(『シャロンの
シャリア中佐、今後のシャアさんの処遇に関しては、ニュータイプ『能力者』たちの未来と共に、僕に『プラン』があります。この危機が落ち着いたら、ちゃんとお話しします。ですから今は……)
(……わたしは、了解した。シャリア、貴様はどうだ?)
(……わたしも了解です。シャア大佐、貴方の理性ではなく、エグザベ君を信じましょう)
そして先ほどまで死にものぐるいで殺し合っていたのかが嘘の様に、
だが、おそらく彼らは勝てない。あの白いガンダムは、単に『向こうの世界』から送り込まれて来た代物ではないと考えられる。僕の『感覚』からすれば、あれは『
だから……。
(逃げなさい!)
(え!?)
(そのモビルスーツはこの世のものでは無い! 独りでは無理だ!!)
あんな……『あんな事』が、起きる。『こんな事』が起こせる。白いガンダムが、スパークを纏って巨大化して行く。巨大に、巨大に。馬鹿みたいに巨大に。
現場に到着したシャリア中佐とシャア・アズナブルも唖然とする。ニャアンとマチュ君も、驚愕の色を隠せない。だが
(みんな!
(((!!)))
全員の機体が一斉に散じるのが『視』える。キケロガが一瞬前まで存在した空間を、超絶に巨大なビームサーベルの刃が
一方で僕のギャンは、ようやくの事で残骸の群れを回り込み、あるいは回避し、あるいは破壊して、どうにか目的の場所へと到着していた。眼前には、緑色のとんがり帽子……。
「……やるか」
僕が乗るギャンの周囲に、黒い、黒い、漆黒のエネルギー球体が幾つも、幾つも浮かび上がる。これはエネルギー吸収ボール。
これには様々な使い方、使い道があるのだが、今この場で必要なのはエネルギー吸収ボールには、『亜空間フィールド』と等しい性質がある、という事なのだ。僕は作り出したエネルギー吸収ボールをエルメス、『シャロンの
そして僕は
……シュウジ・イトウの叫び声が聞こえた。
(ララァ!? あんた、ララァに何をする!)
(シュウジ! 話を聞いて!)
(シュウちゃん!)
(僕の、僕の邪魔をしないでくれ! 僕は彼女にこれ以上傷ついて欲しくないだけなんだ! 僕の望みはただ一つ、それ以外は、それ以外はいらない!!)
シュウジの咆哮が、宇宙に響き渡った。
『失敗した』宇宙を、『
エグザベは『