Xavier the Superman   作:雑草弁士

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第14話 終幕

 僕とニャアンは、植民惑星である『トア』がある星系の小惑星帯に建設した自動工場で建造された、最新型の移民宇宙船『サワムラエイジ』を指揮して、こっそりと地球圏に来ている。目的は、シャリア・ブル中佐が表と裏で必死になって手を回して起業した、火星圏開発事業団(嘘)が集めた人材を受け取る事だ。

 火星圏開発事業団は、表向きは本当に火星圏の実験的ではない、本格的な開発を目的に結成された企業団だ。養殖を含む農林業や漁業、鉱工業、建設業、製造業、エネルギー産業、情報通信業、運輸業、金融業、学術研究、商社、その他諸々、諸々。それらが寄り集まって、一大企業体を編制している。

 ちなみにジオニックとアナハイムは、当初参入予定だったが、直前になって汚職が発覚、外された経緯がある。シャリア中佐は思わせぶりに嗤(わら)っていたが。笑(わら)っていたのではない。確実にアレは嗤(わら)っていた。怖い。

 

 そんな事を考えている間に、『サワムラエイジ』は、復興中のサイド7『ノア』1バンチコロニー『グリーンノア』に接近していた。あくまで表向きだが、ここを拠点にしている火星開発事業団はまっとうに火星圏にも人材を送り込んでいる。ただしそれにまぎれて、ニュータイプ能力者をはじめとしたサイキッカー、スキャナー、エスパー、超能力者を地球圏からかき集め、僕らに引き渡しているのだ。

 無論、地球圏火星圏木星圏といった、太陽系を離れたくない人員は、思想チェックで弾いてもいる。だが見つけた超能力者(エスパー)たちは大半が、太陽系に残っても迫害や実験材料になるだけだと理解しており、僕らの移民船に乗って系外惑星に移住することを望んだ。

 そんなこんなで、移民船は僕とニャアンの『サワムラエイジ』だけでなく、『カトーダンゾウ』やら『マタ・ハリ』やら他にも数隻ある。それらは教育が完了した、初期段階で移民した人材の中から特に選ばれた人材が指揮していた。そしてそれらが大車輪で働いて、太陽系でシャリア中佐が集めた人材を載せて、超空間航法(ハイパードライブ)で移民惑星『ロンウォール』に移してるんだよね。超空間航法(ハイパードライブ)船だってバレないように、普通の地球圏の船舶のフリして。

 

 そうして、僕らの移民船『サワムラエイジ』は『グリーンノア』宇宙港に入港して行った。

 

 

 

*

 

 

 

「……で、高級レストランで会食ですか」

 

「ああ。貴殿らと会える機会など、まず無いからな。名無しの(ネームレス)中佐にわざわざ依頼して、同席させてもらった」

 

「中佐……」

 

「ふふふ、いえその代わり、お勘定は持ってくださるそうですし」

 

 

 怪しげな仮面を被って笑声を漏らしながら、メインの合成ステーキを食べているのは、言わずと知れたシャリア・ブル中佐だ。そろそろアルテイシア公王陛下のお声掛かりで昇進の話が出ていると聞いたが、まだ中佐のままらしい。シャリア・ブル中佐のままでは動きづらくなったとかで、仮面被って名無しの(ネームレス)中佐として動いているそうだが。

 そしてシャリア中佐に『命令』ではなく『依頼』して同席してきたのは、誰あろうルナ2司令官マ・クベ中将だ。ちょっと大物すぎる。今シャリア中佐の後ろ盾になっているのは、アルテイシア公王陛下その人とランバ・ラル将軍、それにこのマ中将閣下だ。

 

 

「……流石の凄みがあるな。貴殿の極秘裏の移民プランのおかげで、地球圏火星圏木星圏ではニュータイプは『おとぎ話』扱いされている……。『おとぎ話』扱いされるほどにニュータイプの数は少なくなっており、おかげで社会的対立や軋轢はこちらの常識の範疇(はんちゅう)で留まっている」

 

「どう、いたしまして」

 

「ふ、そんなに緊張せずとも良い。ニュータイプ……貴殿や中佐によれば、ジオン・ズム・ダイクンの提唱したニュータイプとは異なり、精神感応系や特にミノフスキー粒子への干渉能力に偏って発達した超能力者(エスパー)の一種だ、という事だが。

 彼らと数百、数千光年の距離を置けるというだけで、いわゆるオールドタイプたちが異様なレベルでの拒絶反応や反感を抱く事が無い。それどころか、その存在を知らぬのだがな、一般人は」

 

「エグザベ君、このポテトの付け合わせ、美味ですよ。水耕栽培の培養野菜ではありますが、合成じゃない本物です。主菜のステーキも合成肉ですが、技術が超一流なので本物に匹敵しますね」

 

「「中佐……」」

 

 

 いや、僕が偉いさんであるマ中将の前で委縮しないように気を使ってくれたことは理解する。でもシャリア中佐……。うん、まあ、状況によってはキシリア・ザビの前でも平気でタメ口利けるのが僕だから。うん。そこまでしなくてもいいですよ。……本気で食事楽しんでるのも、何割かはありそうだな、このヒト。あとその仮面、クッソダサいです。でも口には出さないですし、思念でも漏らしませんが。

 

 ちなみにニャアンはマ中将が超偉いさんだって認識が薄いせいか、本気で食事を楽しんでいた。あー、あー。ほっぺた丸くして詰め込んで。ははは。……最低限の食事マナーは教え込んでて、よかったな、うん。少なくとも、ソースの最後の一滴(ひとしずく)に至るまで残さず食べるのは、料理人に対する最高のマナーだ。うん。

 

 

 

*

 

 

 

 あの後マ中将に、万が一にでも超空間航法(ハイパードライブ)船の技術は太陽系人類には漏らさないようにって念を押されて、食事会はお開きになった。うん、マ中将閣下がせっかく数百、数千光年の距離を離したニュータイプ能力者たちのコロニーとの再接触を、大きく懸念しているのは理解できる。僕らもシャリア中佐も、それには100%同意だった。

 

 そして翌日に、僕らは移民船『サワムラエイジ』にニュータイプ能力者たちを乗船率65%で詰め込んで、移民惑星『ロンウォール』へと出立した。まあ超空間航法(ハイパードライブ)使うから、あんまり時間掛からないんだけどね。軍用艦じゃないし二週間の航宙で、僕のイメージでは『ゆっくり』とした速度で、『ロンウォール』の小さな宇宙港へと到着した。

 うん、前にしょっちゅう使ってた宇宙巡洋艦と違って、『サワムラエイジ』始めとした移民船は、大気圏突入と大気圏内航行できるんだよね。

 

 

「やれやれ、やっと着いたね」

 

「エグザベさん、お迎えが出てる」

 

「あ。シャア……じゃない、シロウズさんだね。それと『ロンウォール』政庁の人たちも数名、そしてシロウズさんが群を抜いて一番強いけど一応SPの人たち」

 

 

 うん、元赤い彗星のシャア・アズナブル大佐は、現在はシロウズの名乗りで『ロンウォール』政庁のトップを張っている。一応初代大統領って言う立ち位置だけど、先日やった選挙でも2位にダブルスコア付けて再選されたって話らしい。

 ……まあ大統領って言っても、まだ『ロンウォール』は多く見ても1,000人ちょっとしか居ないんだけどね、人口。だからぶっちゃけ、大統領って言っても村長でしかない。規模的に言えば。

 

 そうなんだよね。シャリア中佐はイオマグヌッソ事件前後はシャア・アズナブル抹殺を念頭に置いていたんだけども。でも僕としては、せっかく用意した移民先である『トア』か『ロンウォール』の地上のコロニー……コロニーって言ってもスペースコロニーじゃなく、居留地の意味だが。その指導者役をやって欲しかったんだ。

 ぶっちゃけた話、このコロニーにはサイキッカー、スキャナー、エスパー、ニュータイプ能力者など等、超能力者の類だけを太陽系から連れて来る予定だったし。つまりはシャア的にはこの惑星『ロンウォール』は、おおざっぱな括りにはなるがニュータイプ的な存在『だけ』の世界であるのだ。

 更に言えば、地球人類の粛清を目論んだとしても、その地球は数千光年の彼方。圧倒的な距離の壁がある。そして超空間航法(ハイパードライブ)船とその建造技術については、僕とニャアンを含めた極々一部の人間だけが管理している。いかに大統領だからと言って、シャア……シロウズの影響が及ぶことは無いのだ。

 まあシロウズとしての彼は、物騒な虚無感とは縁が切れてる様にも見える。それより大統領という名の村長任務で、手一杯っぽい。それに……。

 

 

「エグザベ・オリベ……。今回は何名だったかな」

 

「シロウズさん、今回は72名です。そして……」

 

「あ、気をつけて。段差が」

 

「ありがとう、ニャアンさん」

 

「……来てくれたか」

 

 

 シロウズ氏の視線の先には、小麦色の肌をした美しい女性が居る。今回の航宙で、僕らが『ロンウォール』に連れて来たニュータイプ能力者のうち最強格の1人だ。その名を、ララァ・スンという。

 

 

「来てくれたか、ララァ・スン」

 

「何度もお手紙をいただいたのに、決心が中々つかなくてごめんなさい」

 

「いや、理解するとも」

 

 

 やっぱり直接に会うと、この2人は言葉を使わずに解かり合おうとしてしまう様だなあ。あんまりソレはお勧めできないコミニュケーション方法なんだが。

 

 

「エグザベさん。前から不思議に思ってたんです」

 

「どうしたんだい、ニャアン」

 

「なんで連れて来る人の中には、ニュータイプ能力者以外の超能力者(エスパー)少ないんですか?」

 

「あー。ニャアンみたいに、まだそのチカラの質が固まり切って無くて、訓練次第でホンモノの超能力者(エスパー)になれる人って、けっこう少ないんだ。この宇宙だと、ミノフスキー粒子が多いから、それに適応しちゃって修正効かなくなっちゃってる人が圧倒的なんだよ」

 

「そうなんですね……」

 

 

 まあ、修正効きそうな人というか少年少女は、単なる人類の変種的な位置にあるニュータイプ能力者じゃなくて、真正の多種の超能力が使える超能力者(エスパー)としての教育を、僕らというか僕がやってるけどさ。超能力の先生ができる超能力者は、僕とあと2~3人しか居ないんだ。ニャアンはロードレオン級の超絶エスパーだけど、教えるのにはあまりに向いていないんだよね。

 

 僕らは目と目で語り合ってるシロウズ氏とララァ・スンを眺めながら、たあいのない会話を続けていた。

 

 

 

*

 

 

 

 そして今、僕らは僕らの家がある、惑星『トア』に帰って来ていた。少なくとも村落レベルの人口がある『ロンウォール』と違い、『トア』に住んでいるのは基本的に僕とニャアンだけだ。太陽系との移民船も、とりあえず地球圏サイド7グリーンノアにある拠点に集まって来るニュータイプ能力者やそれ以外の超能力者(エスパー)たちの数がそろそろ頭打ちになって来たので、本数を減らしている。うん、僕らが移民船を飛ばさなくても済む様になったんだ。

 それで、僕らは日々の日常とか食生活とかを豊かにするためもあり、『トア』の開拓中コロニー、その僕らの家に帰って来て、農地開拓とか小規模な自動工場の建設とか、色々と進めている最中なのだ。惑星『トア』の開発レベルは、現状1,100人以上の人間がいる『ロンウォール』と違い、かなり遅れているんだよね。

 そんなわけで、僕は今大型の農業用トラクターで開墾したばかりの農地に、バイオ系プラントで醸成した堆肥(たいひ)を鋤(す)き込んでいる。こうやって畑の土壌改良が進めば、そのうち色々な作物を水耕栽培ではなく、ちゃんと地面で育てる事ができる様になるはずだ。水耕プラントの方が向いている野菜も多いが、大根とか長薯(ながいも)の様に地面の下で育てた方が美味しい作物も多いのだ。

 

 その時、僕を呼ぶ声が聞こえる。

 

 

「エグザベさーーーん!! そろそろお昼の準備しようーーー!!」

 

「ああ、ニャアン! ちょうど区切りがいいから、トラクターを倉庫に戻したらすぐに家に戻るよ!」

 

「はーい!」

 

 

 視線の先では、その細い身体で大きなタライいっぱいの洗濯物を抱え、僕を呼んでいるニャアンの姿があった。その幸せそうな、満面の笑み。その姿に元気をもらい、僕も満面の笑みを浮かべてトラクターを倉庫に向けて発進させる。

 

 

(ああ、家族だ。僕の、家族、だ)

 

 

 僕は胸いっぱいに幸せを噛み締め、降り注ぐ恒星の光の下、ハンドルを握った。




完結です。ラストシーン、大量の洗濯物の入ったタライを抱え、農作業に勤しむエグザベ君を小さな家の前で力いっぱい呼ぶ、幸せいっぱいのニャアン。実はソレが描きたくて、この話を始めました。農作業、開拓と言ったら、超人ロックでしょう。<偏見

うん、幸せなエグザベ君とニャアンを描きたかった。描けたでしょうか?
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総合評価:13459/評価:8.79/完結:9話/更新日時:2026年07月28日(火) 18:00 小説情報


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