Xavier the Superman   作:雑草弁士

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第4話 犯人みつけた

 僕は『地下鉄』内でキシリア派の連絡員の爺さんと話をしていた。ジークアクス捜索の途中で、ジオンに悪感情を抱いている無法者たちに関係者だとバレて、集団で殴られた傷がちょっとだけ痛い。いや、制圧すればできたんだけど、あまり派手にやると軍警が出張って来てヤブヘビになるし。だから痛み分け、って程度にして逃げて来た。

 まあ、殴られるやり方は上手い方だから、たいして傷は重くもない。痛いは痛いんだけど。

 

 

「……昨日も出たらしいな、赤いガンダム」

 

「ええ。シャア大佐じゃあないのはまず確実です。中佐の意見も、そして戦ってみた僕の意見もそうです」

 

「……キシリア様は、君のMS(モビルスーツ)が盗まれた件も、中佐の図り事ではないかと疑っておられる」

 

「それは違いますね。少なくとも、僕が見た『感じ』では、あの人にとっても想定外だった模様です」

 

「君は人がいい……。シャリア・ブルを信用し過ぎるな」

 

「それは無論ですがね。最強ニュータイプ『能力者』の前では、基本隠し事はできませんよ。『ある程度』は信じておかないと。……『手足』が勝手な判断をするな、と怒られそうですが、シャリア・ブル中佐とは積極的な敵対よりはナイフエッジの上での交渉を、とお伝え願えませんか」

 

「ふう……。伝えるだけなら、やっておこう」

 

 

 ああ、気が重いよ。まあシャリア中佐が何かしら企んでるのはたぶんそうだけどさ。

 

 

 

*

 

 

 

 CGを使ったモンタージュ写真を片手に、ジークアクス捜索のかたわら僕は人探しを続けている。と言っても人探しの対象者は、結局のところジークアクスを盗んだ女学生だ。あんな馬鹿な真似をやらかす不良学生だと思ったから、裏社会側から情報を辿れるか、と思ったんだけどな。

 結局はちょっと痛い目に遭って、痛い目を見せて終わっただけだ。どういう事だ? 不良学生って見立ては、間違ってたかもしれないな。制服の上にVネックのセーターを羽織っていたから、制服から学校の判別は困難だが。

 軍警のデータベースが使えればなあ。だけど流石に表からの交渉では無理っぽい……。弱みを見せるような物でもあるし。

 

 

「中古MS(モビルスーツ)の管理情報も無いなんてな。形だけでも戦後5年だろ? 治安が悪いどころじゃないだろう」

 

 

 地下鉄の駅で、ベンチに座り独り言を呟く。目を瞑り、目を開ける。目の前を、2人の女学生が通り過ぎた。僕は眉根を寄せる。片方の女学生に、強烈な既視感(デジャビュ)を感じたからだ。間違いない。あのときジークアクスを奪って大暴れした、あの女学生だ。

 僕は立ち上がり、後を追う。2人の声が、切れ切れに聞こえる。

 

 

「……今夜のクランバトル、何時から?」

 

「あと1時間。そろそろ行かないと」

 

 

 これは、間違い無さそうだ。と思ったとき、彼女らを制止する声が響く。

 

 

「そこ! 止まれ!」

 

「! あー、この娘友達で……」

 

「お前、難民だな。ID、早くしろ」

 

 

 背の高い方の女学生は、難民だった様だ。軍警の職質に遭っていた。背の低い方、ジークアクスを奪った少女の『内圧』が高まって行くのが、肌で感じられる。こんなのニュータイプじゃなくたって、わかるほどだ。僕は溜息を吐いて、前に出る。いや暴発されて軍警に捕まられたら、こちらもたまった物じゃない。

 

 

「すいません。僕はその娘たちの知り合いなんですが」

 

「なんだ貴様。関係ないやつは……。!?」

 

「『旅行中』の、『ジオン公国の者』です。地位協定は、ご存じで?」

 

 

 僕の差し出した身分証明のカードに硬直する軍警。うん、こういう事するから嫌われるんだよな。うん。うん。

 軍警たちは顔を見合わせると、悪態をついて退散する。背の低い少女は、焦った表情だ。背の高い少女も、おそらく状況がヤバい事を察した模様。

 

 

「さて君たち。今から上に浮いてる『母艦』に連絡して、迎えを出してもらうから。ちょっと付き合ってもらえるかな」

 

「あ、あの! わたしたち急用があって!」

 

「知ってる。クランバトルに出る、んだろう?」

 

「!!」

 

「そっちの赤髪の方の娘、クランバトル登録名は、マチュ、だったかな」

 

「あ、あんたあのときのパイロッ……」

 

 

 瞬間、『マチュ』の足が飛んで来た。的確に僕の金的を狙っている。僕はその攻撃を両手をクロスさせて受けるとそのまま腕を大きく回してその脚を天高く巻き上げた。相手は派手に転倒したが、その勢いで転がって立ち上がり、駆け出す。

 

 

「ニャアン! 左!」

 

「!」

 

 

 なるほど、こっちの背の高い長髪の娘は『ニャアン』、か。懐の軍用スマートフォンで、2人の写真もこっそり撮影済み。……変態じゃないぞ?

 そして彼女たちは右と左に分かれて駆けだした。僕は左右に顔を向けると、頭の中にこの辺りの周辺模式図を描く。スクールと軍とで、こういうのは勉強させられるからな。まあそれ以前に、『師匠』にいろいろと勉強させられもしているんだが。

 だが……。

 

 

(ハイバリー高校の校章……。有名なお嬢様学校じゃないか。裏社会に情報が無いと思ったら……)

 

 

 僕は急ぎ軍用スマートフォンで、彼女の写真と学校名を、母艦であるソドンに送った。

 

 

 

*

 

 

 

 そして目の前で、小柄な少女の後ろ姿が荒い息をしている。

 

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

「鬼ごっこは、終わりかい?」

 

「!?」

 

 

 振り向いた少女『マチュ』に、僕は言い放つ。

 

 

「おっと、『チカンです、助けて!』とでも叫ぶつもりかな? だったら僕は、『盗んだ物を返せ、この泥棒!』とでも大声で叫ぶことにしようか。民衆がどっちを信じるかは不明だけど、軍警が来ればおそらく双方拘留されて詳しく調べられる事になる」

 

「く……」

 

「それに、盗んだ『モノ』はなんとしても返して欲しいんだけど。あれ、『ウチの国の軍隊』の秘密兵器なんだよ。クランバトルに出て、海賊放送とは言えテレビに出していいものじゃあ無い……。

 なあ、マチュ君、いや『ハイバリー高校2年『アンヌ・マテス』クラスのアマテ・ユズリハ』君?」

 

「!!」

 

「お母さんの会計監査局外交3部部長タマキさんと、サイド6リーア政庁のユズリハ外交官にもお話を通さないと……」

 

 

 いや、仕事早いねソドンのクルーたち。学校名と顔写真送ったら、学校のイントラネットをファイアウォール貫いてハッキング、学生名簿から該当者情報をブッコ抜いてくれたよ。

 次の瞬間、突然アマテ君が土下座をして来る。

 

 

「おねがい! 今行かないと! 今クラバに出ないと、莫大な違約金、皆が! 皆! 地球に! シャトルの代金!」

 

「? シャトルとか地球とか何の話だ? いや、残念だけど時間切れだ」

 

「!!」

 

 

 僕は軍用のスマートフォンの画面を見せてやる。そこには開始されたクランバトルの様子が映っていた。

 

 

「そんな……。え!? ジークアクスが!?」

 

「何!?」

 

 

 僕は彼女に見せていたスマートフォンをひっくり返し、その画面を覗き込む。画面の中では、ジークアクスが赤いガンダムと共に宇宙を飛んでいた。だがそのマスクは下りたままで、顔を隠している。……オメガサイコミュは、動いていない。どうやら操縦系の故障は、ある程度修復できた様だ。

 

 

「……動きが君の乗ってた時とは違う。君が現れなかったから、急遽代役パイロットでも立てた、か」

 

「そん、な」

 

「……今回の敵は、リック・ドムか。地球上で使われた重MS(モビルスーツ)であるドムを宇宙用に改修した機体だ。強敵だ」

 

 

 推力は、最新機であるジークアクスに匹敵する。そして技量も……。ここで機動を見ている限りでは、練達の腕利きだ。

 更にリック・ドムは対パイロット用兵装の電磁ワイヤーを撃ちだした。素人くさい動きのジークアクスを集中して狙っている。電磁ワイヤーでジークアクスが絡めとられる。

 

 

「……ジークアクスのパイロットは、今強烈な電撃を受けている。あれはそういう兵器だ。パイロットを倒すための、ね。君がここで足止めされてなければ、今頃君が電撃で死にかけてたはずだが」

 

「死にか、け?」

 

「そのぐらいの出力はある兵器だ。……え?」

 

 

 その瞬間まで、ジークアクスは殴られ、蹴られ、なぶられていた。電撃で死にはしなくとも意識を失ったか、戦意喪失した、と思った。けれど。

 ジークアクスが、『キレ』た。そう感じた。ニュータイプ的感覚じゃない。今の僕は、機体を降りてるから、『条件付け』によってニュータイプ能力は発動しない。そうじゃなく、その『雰囲気』が明らかに見てわかる様に変わったんだ。

 

 

 

*

 

 

 

 そして、ジークアクスのマスクが跳ね上がる。カメラアイが、激情に輝く。オメガサイコミュ、起動した。

 

 

 

*

 

 

 

 敵機2機が、1機足りないけど教本に載ってた戦術、ジェットストリームアタックを掛ける。

 

 

「って言うか、1人足りないけど黒い三連星だったのか!?」

 

「何それ!?」

 

「軍を辞めたっていうか辞めさせられたって聞いたけど、超人的レベルのパイロットだよ!」

 

 

 だけどジークアクスは、僚機であるMAV(マヴ)の赤いガンダムの頭を引っ掴んで、盾にッ!? 赤いガンダムは盾にされたってのに気にも留めず、いつもとはちょっと違う、ゆるやかな動きだけどシールドでジャイアントバズのバズーカ弾丸を斜め上へ弾き飛ばし、ビームサーベルでジャイアントバズの砲身を斬り飛ばす。

 そしてジークアクスは赤いガンダムの陰から飛び出し、もう1機のリック・ドムにヒートホークを振るう。よく見えなかったが、それで何か損傷を負ったようなリック・ドムも、さっき前衛やっててジャイアントバズを失ったリック・ドムも、推力全開で離脱する。そうして再度ジェットストリームアタック!? そして目くらましの拡散ビーム!?

 いや、ジークアクスの方もダミー風船(バルーン)を射出する。先頭のリック・ドムはヒートサーベルでそれを斬り払った。しかしもうそこにはジークアクスは居ない。先頭のリック・ドムがヒートサーベルで赤いガンダムを突き刺すが、赤いガンダムはシールドを犠牲にしてそれを受け流す。

 ジークアクスが、赤いガンダムの陰から飛び出し、ヒートホークで斬りかかる。拡散ビームによる目くらましが、まったく効いていない。後衛の傷ついたリック・ドムが、前衛のリック・ドムを護らんと陰から飛び出し、ジークアクスにゼロ距離でジャイアントバズを撃つ。

 だが。

 

 

「のけぞって(かわ)した……」

 

 

 できるできないで言えば、僕にも可能だが。だがやりたいとは思わないし、やらなければならない状況に追い込まれたくもない。だがジークアクスは、あくまで『自然』にソレをやってのけた。そしてジークアクスは、のけぞった勢いのまま回転して赤いガンダムの背中からビームサーベルを抜き放つ。

 そして、声が聞こえた。さすがにこの強さの思念をばら撒かれたら、能動的に『チカラ』を使えない『現状』の僕でも受け取れる。受信できる。

 

 

『わたしが合わせなくていい! 世界の方でわたしに合わせてくれる! 自由だ!!』

 

 

 歓喜のその声と共に、リック・ドムが真っ二つに切り裂かれる。斬り裂かれる。殺意はある。敵意もある。だが何よりも、歓喜の感情があった。これは……。ニュータイプの感覚が目覚めたことで、たぶん『酔って』るな……。

 そうしてもう1つ解かった事がある。このパイロット、あのもう1人の……。難民の少女、ニャアンとか言った娘だった。

 

 

「あ」

 

 

 呆然としたもう1機のリック・ドムだったが、その隙を突いて赤いガンダムが残ったビームサーベルでその首を刎ねた。しかし次の瞬間、リック・ドムは爆散。リック・ドムはあの重量を飛ばすために機体内部に大量の化学燃料や推進剤を積んでるからな。それに引火したんだろう。

 今回のクランバトルも、ポメラニアンズの勝利に終わった。僕は溜息を吐いて、アマテ君に向き直る。そしたら、僕の顔を土と砂が襲った。アマテ君が反射的に、それはもう脊髄反射みたいな感じで地面の土砂を掴んで投げつけたんだ。予想もできなかったけど、予想しておくべきだったな。

 (まぶた)を閉じて、砂や土が眼に入るのを阻止する。そして顔の土を払って目を開けたら、アマテ君が必死に走って行く後ろ姿が見えた。と、手に持った軍用のスマートフォンが鳴る。

 

 

「はい、エグザベ少尉です」

 

『わたしです。シャリア・ブルです。今夜のガンダムクアックス、パイロットは違いましたよね?』

 

「はい。今夜のパイロットも、予測はついてますが、難民なので登録情報を軍警データベースから抜くのは……。実際に盗んだ方のパイロットはいったん確保して話を聞こうと思ったんですが、油断して逃げられました。今から追います」

 

『いえ。尻尾は掴んだんです。とりあえず泳がせておいてください。最終的に赤いガンダムといっしょに、一網打尽にしましょう』

 

「……了解です。ではいったん帰艦します」

 

 

 そしてシャリア中佐は言った。

 

 

『グラナダのシムス大尉に連絡して、キケロガを持ってきてもらいます。可能な限りの手札を揃えておきましょう。……君の機体も、ね。マグネットコーティング処置も、済んでいるそうです』

 

 

 僕の新しい機体が何になるのかは、たぶん想像がついた。ジオンの機体でフィールドモーター駆動の物、それでいてガンダム並のフレーム強度を持つのは数少ないというか、『アレ』しかないから。さて、どう動けばいいのかな。




原作と違い、ロッカーには入りませんでした。そしてマチュの情報すべてソドン側にブッコ抜き済み。
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