Xavier the Superman   作:雑草弁士

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第5話 襲撃と、そして

 やれやれ、だ。3日後このイズマ・コロニーで会合が開かれる。キシリア様と、ワンナヴァル造船企業連合の元代表にして現サイド6大統領であるペルガミノ氏との会合だ。

 シャリア中佐から『とりあえず大っぴらになるまでソドンのクルーにもナイショですよ』との申し送り付きで教えてもらったのと、それにワンテンポ遅れる形でいつものキシリア様の連絡員から教えてもらったのと。後者については、要はシャリア中佐が変な真似しないように見張れ、ってのと、変な真似したら身体と言うか命張ってでも制止しろ、ってことだ。

 でもってサイコミュを公式に搭載していて、条約関係で大きく持ち込みやら持ち出しやら宙域移動やらに制限がかかるはずのMA(モビルアーマー)、シャリア中佐の愛機であるキケロガを、シャリア中佐のお仲間であるシムス・アル・バハロフ大尉って技官の人が持ってきたんだよね。お題目は、キシリア様の護衛……なんだけど、そのキシリア様が警戒してるのがシャリア中佐だってのが、またなあ……。

 

 

「今日はお友達といっしょかね……」

 

「なんか軍警が僕をつけ回してるんだ。たぶん、ヤバい事態だと思う」

 

 

 一時拘留されたときに、僕を殴った軍警の刑事だ。ふつうなら、僕と面識ない奴を使うだろに。今僕は、再度『(コロニー)』に降りていつもの連絡員と地下鉄で内緒話をしているところだ。

 

 

「シャリア・ブルのMA(モビルアーマー)が、緩衝空域に持ち込まれている。今朝がたからウチでも殺気立ってる。キシリア様が訪問されるこのタイミングで、いったい何のつもりだ……」

 

「……その事は、僕も当の中佐から知らされてるよ。彼は僕の心を読んで、僕がキシリア様の手の者だってことを知った上で、それを知らせて来てる」

 

「知っての通り、奴はもともとギレン総帥の配下。キシリア様に仇なすために送り込まれていた可能性もある……と思っていたが。わざわざ知らせて来るという事は、牽制か? それとも奴はオトリで本命がいるのか?」

 

「……」

 

 

 連絡員は、こちらに目を向けずに小声で呟く。

 

 

「あの木星帰りは危険だ。だから監視役として貴様がいるんだろ」

 

「彼が危険なのは100%同意だよ。でもたぶん、中佐はギレン総帥にとっても危険だと思う。というか僕が監視役? 冗談だろう。いいところ釣り糸についてる目印のウキだよ。失敗すれば釣り糸を切ればいい、ってね。じゃなければ、相手に正体がバレてるのに僕を引き上げないでそのままにするわけがない」

 

「それともう1つ。キシリア様から特命がある。万が一の場合は、言い含めていた通りに……」

 

「中佐を殺せ、か。正直悪手だと思うし、実行はするけれど遂行も完遂も不可能だよ。『今の』僕では絶対に勝てない相手だ」

 

 

 連絡員の爺さんは、小さく息を吐く。

 

 

「……裏切るつもりはないんだろう」

 

「知ってるだろう。僕はフラナガン・スクールで洗脳されてる。洗脳されてることを知ってても、動ぜず忠誠を誓うぐらいにね」

 

「……」

 

 

 そうなんだよね。神経質にも、ほどがあるってもんさ。やってられないけど、やるしか無いんだよねえ。でもさ。

 

 

 

*

 

 

 

 僕は走っていた。後ろからと、そしてニュータイプ感覚『じゃない』五感を総合して感じ取れた『気配』によれば斜め前から前方に回り込もうとしている2人の『追手』がいる。そしてニュータイプ感覚『じゃない』感覚で理解する、肌がひり付くような『殺意』の臭い。

 駄目だ、土地勘では相手の方が有利。撒けない。……対決するしかない、か。この先に、少し広めの路地裏がある。そこに走り込んで、足を止める。

 そこに居て路地裏の出口を(ふさ)ぐ様に立っていたのは、やはりあの軍警の刑事。その年かさの方。後ろから追って来て、今路地裏の入り口を(ふさ)ぐ様に立っていたのは、軍警の刑事、その若い方。年かさの方は拘留されてた時もあまり殴ってこなかったが、この若い方はちょっとしたことで殴って来たっけな。

 僕は荒い息を整える演技をしつつ、言葉を発する。

 

 

「はぁっ、はぁっ……。僕に、何の用なんだよ」

 

「他人の庭で、うろちょろされるのは、目障りだ」

 

「せっかく釈放してやったのに、今度は物騒なMA(モビルアーマー)まで持ち込んで……。いったい何を企んでいるんだ」

 

「僕は下っ端だと言った。軍隊は上意下達の見本。知るわけもないし、知ってても言えるわけもない。上と交渉してくれよ」

 

 

 そして若い方が、懐から銃を取り出す。

 

 

「戦争は、貴様らだけで勝手にやってくれ。……我々を、巻き込むな」

 

「まて! まて、まて! 僕を撃ったって、何にもならんだろう!」

 

 

 泡を食った、演技……をする。だけど心の中は、スッ……と冷えて、そう、冷静になって行く。

 年かさの方も、銃を構える。狙いは僕だ。

 

 

「警告だ。サイド6(こちら)の覚悟を知ってもらう……」

 

「馬鹿な! それこそサイド6が戦火に巻き込まれる原因、きっかけになるぞ! 冷静になれよ!」

 

 

 だが、僕の台詞になんら考え直した様子は無く、こいつらは僕の頭に照準を合わせ、引き金を……。

 

 

 

*

 

 

 

 そして僕は無拍子で一瞬でジャンプする。軍警の刑事どもは一瞬驚くが、すかさず引き金を引いて発砲。だが僕は視界の隅で、銃口の向きと引き金にかかった指の動きを確認している。

 僕は空中で大きく両腕両脚を振る。AMBAC(アンバック)と同じ理屈。MS(モビルスーツ)が手足を振って機位を変えるのと同様に、僕は2人の軍警刑事の中間で体位を大きく変えた。

 

 

バン! バン!

 

 

 映画やなんかでは『ドキュウウウゥゥゥン』とか格好良い音が響くもんだが、現実では無味乾燥な火薬の破裂音が鳴るだけだ。時間が制止したかの様な感覚。僕の強引なAMBAC(アンバック)運動で、年かさの刑事が撃った弾は僕の右腕と首の間の空間をすり抜けて行き、若手刑事が撃った弾は僕の両脚の間をすり抜けて行く。

 

 

「ぐあ!」

 

「ぎゃっ!」

 

 

 そして2人の軍警刑事は、互いの撃った弾を互いの胸や腹に受けて(くずお)れる。やれやれ、あんまりこういう綱渡りはやりたく無いもんだよ。地面に転がって汚れちゃったし。直後上空から、パーソナルジェットの音が響いて来た。

 

 

「中佐、見てたなら、助けてくれてもいいんじゃないですか?」

 

「遠かったので、ちゃんと命中させる自信がなかったんですよ。何か君が危ない、とのひらめきに従って、急ぎ引っ張り出した狙撃銃でして。自分用に調整がね。

 それに、追い詰められているにしては君が全然落ち着いていましたし。何か考えがあるなら、邪魔をするよりも任せた方が良いか、と」

 

 

 パーソナルジェットで空から降りて来たのは、やはりというかシャリア中佐だった。その手には狙撃銃があるから、助けに来たのは本当の様だ。やれやれ、この人が何か企んでいたとしても、殺すのは無理ですってキシリア様。だからナイフエッジの上を渡る様なアブナイ交渉でも、それでも諦めずに話し合いするべきだって……。

 中佐は笑って言葉を紡ぐ。

 

 

「でも、同士討ちの形に持って行けたのは幸いです。仕方なければ撃っていましたが、わたしが撃っていたら軍警にソドン立ち入り捜査の口実を与える事になりかねませんでした。そうしたらソレを阻止するために、ギレン総帥のシークレットサービスにいらない借りを作る事になってしまいましたよ」

 

「ああ、やっぱり中佐はギレン総帥とも距離を置きたいんですね」

 

「おっと、これナイショにしておいてくれませんかね?」

 

「この件に関しては口を(つぐ)んでもかまいませんけど、でもそれ以前に僕の予想としてですが、中佐はおそらくギレン総帥にも(くみ)するつもりは無いんじゃないだろうか、って『伝えて』しまってますんで。すみません」

 

「おや、ちょっと困りましたね。まあ、修正可能でしょう」

 

 

 そしてシャリア中佐は、年かさの刑事に歩み寄ると、その手にあったスマートフォンを蹴飛ばした。スマートフォンは路地裏の片隅に転がって行く。

 

 

「ぐ、た、頼む! 救急を! 救急を呼んで……」

 

「はぁ……。いくら僕でもね。殺されかけたのを助けるほど、お人よしじゃないよ」

 

「無論、わたしもね」

 

「そ、そんな」

 

 

 若手刑事は、もう息は無い。年かさの刑事の身体からも、その周囲に真っ赤な血が流れだし広がって行く。生命力が失われて行く。中佐はその血を踏まない様にひょいと跳躍して僕の方に来る。年かさの刑事は、やがて息を引き取った。

 

 

「さて、ソドンに帰りましょう」

 

「僕はパーソナルジェット無いんですが」

 

「あ。うっかりしてましたね。仕方ないです、君はいつものところに行って、連絡艇(ランチ)使って戻って来てください」

 

「はい」

 

 

 中佐はパーソナルジェットで、上空へと飛んで行く。僕は僕で、足跡とか無いことを確認しつつその場を離れる。やれやれ、だ。殺されかけて平然としてるなんて、僕もいい感じに壊れてないか?

 

 

 

*

 

 

 

 翌日の新聞に、路地裏で2人の軍警刑事が互いに撃ち合って死んだ、というのが載っていた。発見者が大騒ぎしたために、軍警より先にマスコミ……というかマスゴミと言った方が良さそうな連中に伝わってしまい、もみ消す事が不可能だった様だ。

 軍警の面子は、丸潰れだ。ものすごく大騒ぎになってると、コモリ少尉から聞いた。伝聞系なのは、僕は今イズマ・コロニー内で停泊中のソドンにはいないからだ。僕がいるのは緩衝空域内にやって来ているパプア級輸送艦改造の、簡易MS(モビルスーツ)MA(モビルアーマー)空母『クラックナックル』だ。

 この艦で中佐のMA(モビルアーマー)、キケロガを運んで来たんだけど。そのついでみたいな形で、僕のために新たに用意されたMS(モビルスーツ)を運んで来てくれたわけだ。

 

 

「シムス大尉、これがそうですか……」

 

「ああ、君のための新たな剣だ。いや、『剣』というよりも『槍』、かな? ただクセが物凄く強い上に接収した例の技術、マグネットコーティングも施されている。ますます仕上がりはピーキーになっているからな。

 キシリア様がいらっしゃるまで、日が無い。早速に機種転換訓練を始めてくれ。それと合わせて、マグネットコーティングの調整も行って行く。まだ完成した技術とは言い難いからな」

 

「わかりました。ありがとうございます。それでは早速」

 

 

 僕はこの重騎士にも見えるツィマッド社製MS(モビルスーツ)に乗り込む。そして僕は、このMS(モビルスーツ)を宇宙へと出す。いちおう目的は機種転換訓練だが、『命令として』万一の際には僕の判断で、近隣の戦闘に介入する事も許可というか積極的介入を指示されている。これはシャリア・ブル中佐の僕への厚意、だと思う。

 

 

「……なぜなら、これで条件付けが外れて、『チカラ』を使う事ができるからな。知ってる、んだよなあ……。あの人は。どうしたもんか、ね」

 

 

 僕は久しぶりに解放されたニュータイプ『能力者』としての感覚で、宇宙を感じる。感じ取る。僕はスラスターを開けて、このMS(モビルスーツ)、MS-15/Hギャンを宇宙に飛翔()ばした。




エグザベ君は、軍警刑事どもの襲撃を独力で切り抜けました。シャリア・ブルとの仲も悪くありません。まあシャリア・ブルはキシリアに適当な情報を流す窓口として使ってる感もありますがね。でも気にかけてはいる様です。
ちなみに軍警刑事の銃弾を避けるシーンは、シュウジのガンダムがシイコの置き銃撃を避けたののパクリと言うか。でも相打ちに持ち込ませるのは、オリジナルです。
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