Xavier the Superman   作:雑草弁士

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第6話 白いモビルスーツ

『ミノフスキー粒子の相反転現象ザザッ確認!』

 

『ゼクノヴァです! ザザザ』

 

『こんなところザザザッ起こるのか! コロニーに穴が開くぞ! ザザッザザザ』

 

 

 シャリア・ブル中佐のキケロガが、ソドンからの通信を中継して来る。キケロガは大型のMA(モビルアーマー)だから、通信機器も大型で強力な物を積める。だからこのミノフスキー粒子下でソドンからの通信を中継できるんだ。『今は』解放されているニュータイプ能力で、中佐の『声』が聞こえる。

 

 

(エグザベ君、わかっている限りの情報では、形式不明のMS(モビルスーツ)と形式不明の大型MA(モビルアーマー)が変形した巨大MS(モビルスーツ)が、キシリア様のおられるビルに向かい、進撃中です。コロニーに侵入して、キシリア様をお守りしてください)

 

(了解!)

 

 

 思念で返答し、僕はギャンをイズマ・コロニーに向けてカッ飛ばす。ジークアクスでの初陣と、あとは訓練機での訓練しかMS(モビルスーツ)戦の経験は無いのに、心は落ち着いている。というか、ジークアクスに乗っていた時よりもぶっちゃけた話、楽な感じだ。

 

 

(相手はクランバトルの機体という触れ込みで機体を持ち込み、今回にかぎると言う事で試合場をコロニー内空間に指定することで、キシリア様を狙う算段をつけた模様です)

 

(なるほど、サイド6だからこそ、できる方法ですね。ジークアクスと赤いガンダムは?)

 

(暗殺者たち、テロリストと目されている様ですが、それとグルになっていると思われて、軍警のザクの群れに追われて墜落。そしてそこで、赤いガンダムがゼクノヴァを起こしかけています。なお動きからして、今日のパイロットもマチュ君とやらではなく、君の報告にあったニャアン君とやらの様ですが)

 

 

 僕は驚愕した。そりゃまずくないか。

 

 

(ゼクノヴァ!! それじゃイズマ・コロニーが!)

 

(……いえ、あくまで感覚的なもので申し訳ないんですけどね。ソロモン落としのときに近場でシャア大佐のゼクノヴァを見た経験から言えば……。そこまでの規模にはならないでしょう。

 それより君は)

 

(了解、キシリア様のところへ急ぎます)

 

 

 僕はコロニーのハッチに到着、ギャンのマニピュレーターでエアロックを開放した。

 

 

 

*

 

 

 

(巨大MS(モビルスーツ)ですが、ソドンのメガ粒子砲を弾きました。我が軍のビグザムと同じ、Iフィールドですね。少々やっかいです。まあ対処法としては……)

 

(Iフィールドの内側から撃つか、実体弾もしくは実体剣などの運動エネルギー兵器、ですかね)

 

(そうですね。それと巨大MS(モビルスーツ)が装甲をパージした様ですが、その装甲パーツはビットと似た兵器の模様です。本体から撃たれたビームを反射し、疑似的にオールレンジ攻撃を)

 

(はい、僕にも『視え』てます)

 

 

 僕のギャンは、今戦線を上空から俯瞰(ふかん)する位置を飛翔()んでいる。周囲は静かで、僕の呼吸音だけがやけにうるさく響く。しかし静かなのは『音』だけだ。敵味方の思念が飛び交い、『ソチラ』はうるさいぐらいだ。

 

 

(キラキラ、を、かえせえええぇぇぇ!!)

 

(これだからムラサメ研は!)

 

(あれ……。エグザベくん!?)

 

(連邦の、サイコミュ兵器、か)

 

 

 あ、コモリ少尉だ。やっぱり彼女の声も聞こえるって事は、彼女自身意識してなくてもニュータイプ『能力者』としての萌芽はあるんだな。そしてキシリア様まで。思念は弱いが。

 

 

(驚きました……)

 

(中佐にも聞こえましたか。キシリア様の声)

 

(ええ……。まいり、ました、ね)

 

 

 シャリア・ブル中佐の思念が、歯切れが悪い。芸達者だな。思念だと普通、嘘とかついたり隠し事したり、こういう芸当は難しいもんなんだが。

 ……キシリア様、確認。

 

 

「キシリア様!」

 

(くっ……)

 

 

 敵の巨大MS(モビルスーツ)はキシリア様がいるビルの屋上にしがみつき、その左手の指先にあるビーム砲の砲門を輝かせる。割り込んで盾になっても、もろともに焼き尽くされるだろう。なら!

 ギャンの右手に装備された大型ランス『ハクジ』に装備されたブースターが蒼い火を吐く。ギャンは超高速で突っ込む。AMBAC(アンバック)とバーニアを駆使し、周囲から襲い来る装甲板ビットモドキを避ける、避ける、避ける……。

 次の瞬間、僕が操る槍先が巨大MS(モビルスーツ)の左掌を貫き、粉砕した。蓄積されたメガ粒子があらぬ方向へ噴出し、敵機左前腕が爆散する。

 

 

(ああああああ!?)

 

「キシリア様! お下がりを!」

 

「エグザベ少尉か!」

 

 

 そしてIフィールドの内側から、(ほとばし)るビーム。巨大MS(モビルスーツ)は肩口を吹き飛ばされ、ビルの屋上から引き剥がされる。

 

 

(だれ!?)

 

(こいつ、灰色の幽霊か!)

 

 

 うん、シャリア・ブル中佐の異名『灰色の幽霊』……。中佐のキケロガはデカいからな。コロニーへの突入に手間取ったんだ。だが、間に合った。敵の随伴機から、ビームの火箭(かせん)が打ち上がるが、中佐のキケロガは精妙な機動性でまったくその攻撃をかすらせもしない。

 

 

(気をつけろ! オールレンジ攻撃が来るぞ!)

 

(……悪いとはかけらも思わないけどね。中佐だけじゃないんだよ)

 

(何を、ぐあああぁぁぁ!)

 

 

 なんかノロノロと、敵随伴機がおそらく高速飛行形態に変形しようとしたところへ、シールドミサイルを叩き込む。爆散する敵の随伴機。そして僕のギャンは、近場に浮いていた装甲板ビットモドキを蹴飛ばす。

 蹴飛ばされた装甲板ビットモドキに、巨大MS(モビルスーツ)が撃ったビームが着弾。そのビームを巨大MS(モビルスーツ)自身に跳ね返す。無論、Iフィールドの内側だから、巨大MS(モビルスーツ)はビームの直撃を受けた。

 

 

(キラキラを、かえせえええぇぇぇ!)

 

(……)

 

 

 シャリア中佐は、黙して語らない。キケロガの有線ビーム砲がうねる様に飛び交い、Iフィールドの内側から巨大MS(モビルスーツ)を打ちのめして行く。……まだ、子供じゃないか。一瞬だけ、その『子供』が受けた強化処置の一端が、映像みたいに僕の脳裏に流れ込んで来た……。

 

 

(人の造った、ニュータイプ、か!)

 

(自らの意志で進化したボクらこそ! ニュータイプに! ふさわしい!)

 

(……ニュータイプなんて、いないよ)

 

 

 僕の強烈な否定の意志に、一瞬巨大MS(モビルスーツ)が動きを止める。そしてキシリア様が硬直するのが、ギャン操縦席の画面端に映る。そこで動けたのは、僕から『真実のニュータイプなんて、いませんよ』という言葉をあらかじめ聞いていた、シャリア中佐のキケロガだけだ。

 キケロガは、巨大MS(モビルスーツ)吶喊(とっかん)する。気を取り直したか、単なる条件反射か、巨大MS(モビルスーツ)は腹からビームを乱射。しかしキケロガはそれを回避する。回避する。回避する……!

 

 

(ふ、う、あ……)

 

((……))

 

 

 僕も中佐も、何も語らない。突入したキケロガの4門の有線ビーム砲が、2門は巨大MS(モビルスーツ)の前から、2門は後ろから、砲火を開く。着弾。そして爆散。

 巨大MS(モビルスーツ)は、キシリア様のいるビルの前で墜落、崩壊して爆発を起こした。

 僕はビル屋上でキシリア様とその御付きのアサーヴ氏をギャンの掌に乗せ、キケロガがよく見えるように差し出す。中佐は、思念ではなく通信で言う。

 

 

『エグザベ少尉、キシリア様を頼みます』

 

「了解です。ソドンにお届けします。その後は……」

 

『ええ、頼みます』

 

 

 そしてシャリア・ブル中佐の愛機キケロガは、反転すると飛翔していった。わかっている。中佐はマチュ君……アマテ・ユズリハ嬢を迎えに行ったのだ。僕も、やるべき事をやらなければ。

 

 

 

*

 

 

 

 キシリア様をソドンに届けた後、僕は再度発艦した。まだ戦闘待機の命令は解除されていない。そして僕はMS(モビルスーツ)であるギャンの操縦席にいる。つまりは、まだ僕はニュータイプ『能力者』としての精神感応力を使える状態にある、ということだ。

 そして、僕には『視え』た……。僕は街角の路地裏に、機体を着陸させる。よろよろと歩く、ボロボロの、そして頭に箱型の小さなマスコットロボットを載せた少女の前に、ギャンを着陸させる。モノアイのサーチライト機能が、彼女を照らす。

 僕はコクピットのハッチを開く。『条件付け』により、ニュータイプ感覚が働きを止めて、消えて行く。

 

 

「やっと見つけた……。君がジークアクスの、『もう1人の』パイロットだろう?」

 

「あ……」

 

 

 そう、彼女はニャアン。聞くところによれば、難民の少女。つい先頃ソドンで得た情報によれば、今回の件でクランバトル関係に軍警の捜査の手が入ったため、違法のMS(モビルスーツ)起動デバイスを運んでいた運び屋も摘発された。

 そして……。彼女はその運び屋の下っ端、受け子、だったか? 正式な用語。ソレを生業にしていた。だから彼女の家にも捜査の手が入り、彼女自身指名手配されている。

 あ、ニャアンが怯えて後ずさってる。

 

 

「あ、ちょっと待った。危害は加えない。……君は、自分でも気づいているか分からないけど、とんでもない才能を持っているんだ。ある意味では素晴らしい、けれどある意味では物凄く厄介な……」

 

「え。……わたしに、ジオンへ来い、って?」

 

「と言うか、現状それしか道が無い。はっきり言って、君にとって最善だとは絶対に言えない道だろう。だが、ここイズマ・コロニーに残るのは最悪だ。

 ……連邦のやつらがクランバトルの機体という触れ込みで戦力を持ち込みテロ行為に走ったせいで、クランバトル関連のやつらが次々に摘発されてる。……君も、違法デバイス運送の運び屋として、指名手配されている」

 

「!!」

 

 

 僕は哀し気な表情で言う。

 

 

「……君に、会いたいという方がいるんだ。恐ろしいお方だけれど、悪人かも知れないけれど、『悪い』お方じゃあない。……ようこそ、ジオンへ」

 

 

 ニャアンは、僕が操作して差し伸べた、ギャンの掌におずおずと言った様子で乗り込んだ。

 

 

 

*

 

 

 

 キシリア様のチベの艦橋(ブリッジ)で、僕はキシリア様に問いかける。艦橋(ブリッジ)の船窓からは、離れて行くソドンが見えた。

 

 

「キシリア様、よろしかったのですか? 自分がソドンを離れて」

 

「今日の働きで、シャリア・ブルが総帥のスパイではないと証明してみせた。もう少尉がソドンに居る必要はない」

 

「……諫言を、よろしいでしょうか。確かに総帥のスパイではありません。ですが今の段階では、『敵』かどうかは不明ですが『味方』でもないだろう、程度に考えておくべきかと」

 

「慎重だな」

 

 

 皮肉だろうか。キシリア様は、視線を僕の後ろに立っているニャアンに向ける。

 

 

「この少女が? ……家族や親しい友人が居るなら、いっしょにジオンへ呼び寄せてもかまわんぞ」

 

「……いえ、誰も」

 

「「……」」

 

 

 マチュ君……アマテ・ユズリハ嬢とは……。いや、何かあったっぽいな。ここで聞くのはデリカシー無いよなあ……。師匠も、女の子関連についてはほとんど教えてくれなかったからなあ。

 いや師匠自身、女の子の扱いはあまり得意じゃないって言ってたしなあ。炎の虎の話とか、精霊フランの話とか、ときどきポロっと漏らしてたりしたけど。たいていそのときの様子からは、後悔とか自責の念とか滲み出てたしなあ。

 ああいや、少なくとも『誠実であれ』とは言ってたな。いろんな失敗からの経験論なんだろう。そう、だな。僕には彼女をジオンに連れて来た責任がある。

 

 

 

*

 

 

 

 いろんな思いと想いを乗せて、チベとソドンは反対の方角へ航宙を始める。チベが目指すは、グラナダ。月の裏側の、ジオン公国の重要拠点だった。




原作本編よりもちょっとだけ活躍してます。それとニャアンがジオンに来る事は、100%最善ではない、とも言ってます。だけどエグザベ君が関わらない部分では、たとえばマチュ(アマテ)とニャアンの関係性とかは変わってません。確執も。ただマチュには、身元情報がジオンに知られているって事で、よけいにプレッシャーというかストレスが大きく大きくかかってます。ました。
そして師匠の正体、だいたいバレましたねwww
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