帰宅道中膝栗毛 作:William Sagagenji
僕が
それはそれとして、この世で癙蝨について一番良く知っているのは、恐らく僕だろう。此方も単に知識の話だ。
詳しくは知らないが、一番知っている。逆に言えば、一番知っている奴ですら碌に理解できていない──この表現の方が正解に近いかもしれない。
裏口を出て、戸を音を立てないように閉める。
ホテルの裏庭。裏庭と言うにはかなり広い面積を持つ、あまり手入れの施されていないその広場は、朝陽に照らされて明るい緑色をしている。しかし、敷地横にすぐ見える城塞都市の内壁が見る者を灰色の壁面で威圧する為、お世辞にも景色が良いとは言えない。屋内だというのに、何処か奇妙な圧迫感がある。
背にしたホテル、その現代文明たるコンクリート建築と地平線を遮る石の城壁に挟まれて──僕は何だか、自身の現実感を失いそうになった。
……そんな余計な事を考えている場合ではない。
緑色の広場の中央には、赤黒く禍々しい何らかの構造物が鎮座していて、その隣に一人分の人影が見える。僕はそこに向かってゆっくり歩いて近付いた。
「……んん……ん? あれ、カシワちゃん?」
一体何の作業をしていたのかは知らないが、赤黒い構造物を凝視して動かなかった人影は、僕の気配に気付いたようだ。
「おはよう、カシワちゃん! 今日も朝が早いんだね」
「おはよう癙蝨。今日は朝が早いんだな……なんだ、飯の前に起きるなんて珍しい」
「まあ、偶にはね。早起きなんて健康に悪いし、なるべくお寝坊さんでいたいんだけど……今日はホラ、色々あるんだよ」
「……そうか、そっか」
癙蝨の普段は──異世界に飛ばされる前も含めて──朝飯ギリギリまで寝ていることが多い為、こうして一日の始めに声を掛ける時は大抵寝ている。今日のように始めから起きている姿を見るのは、何処か新鮮とも言える不思議な真新しさがある。
「カシワちゃんこそ、こんな朝早くにどうしたの? 何か悪い事でもするの?」
「早いも何も、飯ができたから呼ぼうとしたんだよ。そもそも今の時間は……九時くらいかな? まあ兎に角、そこまで早い時間でもないぞ」
「え、……あっホントだ。お天道様がもうこんなに」
上を見上げて癙蝨が笑う。夾雑物の無い自然な笑みだ。
「何して……何作ってたんだ?」
癙蝨の傍らに突っ立っている、異様な雰囲気を醸し出す構造物を見て僕は尋ねた。
赤黒い構造物──癙蝨の身長より少し高いくらいの大きさで木材を骨組みとし、三つの頭蓋骨を中心として人骨と人肉と人血で飾り付けられたそれは、不思議と生臭さが存在しない謎の構造物だった。しかし見た目は……見た目だけは、何か生命に対する冒涜を感じざるを得ない。それでいて、そこには確かな美しさ──と言うより、芸術品の様な
「これ? これは『トーテム』だよ。カシワちゃんも見た事あるでしょ?」
「トーテムって……トーテムポールの事か? 確かアメリカ先住民の……彫刻?」
「違うよ。いやまあ違くはないんだけど……単に他の呼び方が思い付かなかったから『トーテム』って呼んでるだけだよ。これ自体は家に置いてあるヤツと同じ」
「家に……?」
凡そ一週間程帰ってない、そろそろホームシックを発症しそうになるのをなんとか押さえながら、我が家の面影を出来る限り精密に思い浮かべる。そうだ、帰ったらまず始めに掃除しなければ。
……果たして、目の前に鎮座するような人骨柱があっただろうか。
そういえば、確か家の物置部屋に……。
「……あの物置にある、赤い電柱みたいなアレか? それにしたって、何か形が違う気が……物置に置いてあったヤツはもっとのっぺりとした、単純な作りだったと思うけど」
「それはホラ、向こうには材料も工作道具も沢山あったからね。形を整える余裕があっただけだよ。こっちには碌な物が無いし、形も雑になっちゃう」
「……ふうん」
改めてその人骨柱を良く見てみる。
三本の木の棒が、上に細長い三角錐を形作るように──或いは三角テントの骨組みのように──組まれていて、その上には三つの頭蓋骨が飾り付けられ、それを起点として構造のあちこちに骨や血や肉で彩られている。臓器の類は無い……モツ抜きはしっかりとされているらしい。
家に鎮座するのっぺり電柱モドキとは違って、此方のトーテムはデザインに遊び心がある……様な気がする。僕が単に「シンプルイズベスト」にあまり共感を抱かないからだろうか。
「何で作ったんだ? こんな物、見ただけじゃ使用用途なんてさっぱり分からないぞ」
「……前にも説明したんだけどね」
「そうだっけ?」
癙蝨はわかりやすく大きなため息を吐くと、辺りに散らばった木材人骨工具類を掻き集めながら説明をしてくれた。
「トーテムは、簡単に言えばパソコンみたいな物だよ。術者の
「…………」
人類文明の内側にあって、科学文明の外側に位置する概念。
科学の明かりが文明を照らす前の時代の、月光の下を出歩く真夜中の明かり。
不安と不安定の象徴。
それらは一様にして、『存在はするけれど、再現性が著しく低い』と言われる技術。いや、そういった技術を一括りにして『
どうやらこの異世界にも存在する概念らしいが、当然詳しい事は分からない。僕の知った事ではない。
「僕は──魔法は使えないからな。そういった話は、教えられてもすぐ忘れるんだ」
「そういえば……そうだね、そうだったね。知識は使わなきゃ忘れちゃうもんね」
癙蝨は
癙蝨と僕との大きな違い。
僕は昼間の住人で、癙蝨は夜中の往来人。
只々、それだけの──とても
「まあ、別にいいや。また忘れちゃったら、また教えてあげれば良いんだもんね。全く、カシワちゃんは手間の掛かる生徒ちゃんだよ」
「……お手数をおかけします、癙蝨先生」
「ふふ、冗談だよカシワちゃん。どうせ私が教えてあげられる事なんて、そんなに多くないんだし」
そう言って癙蝨は、先程から掻き集めていた様々な形の木材人骨工具類を持ち、抱え上げた。
「で、えーっと、何だっけ? 朝ご飯だっけ」
「……ん、ああ、そう、そうだ。早く食べないと冷めちまうぜ」
「あんまり熱くても困るんだけどね……私、猫舌だし」
癙蝨がホテルの裏口に向かって歩き出す。
僕は何だか──どうにも愉快ではない気分になって、小さくため息を吐いてから癙蝨の後を追った。
◆ ◆ ◆
…………ブウウ──────ンンン──────ンンンン………………。
僕がウスウスと眼を覚ました時、こうした蜜蜂の唸るような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、僕の耳の穴の中にハッキリと引き残していた。
それをジッと聞いているうちに……今は昼頃だな……と直覚した。そうしてどこか近くでボンボン時計が鳴っているんだな……と思い思い、又もウトウトしているうちに、その蜜蜂のうなりのような余韻は、いつとなく次々に消え薄れて行って、そこいら中がヒッソリと静まり返ってしまった。
僕はフッと眼を開いた。
割と低い、灰色塗の天井に埋め込まれた発光体の二つがテラテラ辺りを舐め回している。その橙色に光る半導体の横隣に、大きな蠅が一匹とまっていて、死んだように
……僕は
先程までの唸るような音は、どうやら自動車の走行音だったらしい。その音は大人しく、只々エンジン音と道路の砂利共がケタケタと車を縦方向に揺らすだけである。
「おう、起きたか高校生。こんなに跳ねる車ん中で眠るたぁ、さては昨夜は夜更かししてたな、ん?」
「……いえ、単に眠りが浅かっただけですね、はい」
「そうかい」
運転席の桐切さんが笑い掛けて来るのを適当に流し、外を見る。確かにまだ寝る時間ではない。太陽は天高くに留まり、眼下をこれでもかという程照らしている。助手席では癙蝨が好奇心を剥き出しにしたまま外の光景を眺めていた。HALさんは留守番だ。
僕はというと、後部座席で荷物と共に惰眠を貪っていたようだ。成程、僕は荷物と同等物という事か──桐切さんも人を見る目があるようで。
「良い機会だし、折角色々話してやろうとしたら、まさか座ってすぐにおねんねするとは思わなんだ」
「……すみませんね、どうも最近は疲れがとれないようです」
「へえ、異世界に来て『疲れがとれない』ってのも珍しい。ホームシックかい?」
「……?」
それは、どういう意味だろうか。異世界に来て、何か疲れが綺麗さっぱり解消できるようなものがあるのだろうか。
無暗矢鱈に外へは出られない。街には浮浪者とデモ隊が徘徊し、唯一娯楽と呼べるのは、『HOTEL Midori』の向かい隣にある図書館だけ。日本食は食えないし、インターネットも存在せず、何より──此処は日本ではない。
慣れ親しんだ友人達も居ない。
「ホームシック……もあるでしょうが、それ以前に、この世界自体が疲れる要素満載じゃないですか」
「それが珍しいんだ。此処にいる……この世界にいる『元日本人』は皆、すぐにでも異世界に適応するからなあ。一週間も経ったってえのに何時までもウダウダと故郷を忘れられない高校生は、珍しいぞぉ」
「……そうなんですか?」
適応する、とは。そう簡単に適応できるものなのだろうか、この世界は。
元いた我等の輝かしき栄華の名残を幽かに残す荒廃した故郷──日本は、この胡乱な世界とは何もかもが違う。米も無ければ日本文化の影も形も無い、ホテルから一歩でも外に出れば公衆衛生は壊滅していて、大通りでは毎日のように失業者達がプラカードを掲げて行進している。そんな異世界に
此処は日本ではない。
友人達は居ない。
「勿論だとも。何せ此処は『異世界』、皆の理想の終着点。数多の妄想が辿り着いた現代のユートピア思想の、その最々先端。現実逃避の最先頭にして生産性の最後尾だぜ、高校生。何なら、アタシより若い君の方が……そういうのに詳しいんじゃあないかい?」
「……何の話です?」
「異世界の話さ」
砂利が敷かれているだけの簡素簡潔簡略設計な道路がカーブし、車がゆっくりと傾く。ジープにも似たこの車両でなければ、寝てしまうほど快適な道中とはいかなかっただろう。異世界にあって、この妙テケレンな異世界文明に囲まれる生活が続くと、こうした文明の利器だけが僕に唯一の癒しを与えてくれる。
────何で近世欧州風の異世界に
「今はもう無くなっちまったが、ついこの間までは大通りに『冒険者ギルド』があった。街に一つは『教会』があった。店が並んでいて、城壁の外には畑が広がっていて、ケモミミやエルフがうろついてて……まあ兎に角、
「……テンプレートな、異世界…………」
「皆の理想の世界だぜ、もう少し楽しそうにしても良いんじゃないかい?」
テンプレートも何も、そもそも異世界のテンプレートって何だろうか。
そもそも、異世界ってなんだ。僕は普通に『元いた世界とは違う世界』という意で──元いた世界と物理的、観念的あるいは霊的に繋がりの無い世界という意味で──言っていたけど、もしかしたら何か、それ以上の意味があるのか、僕が知らないだけで。
……何に対して楽しめば良いのやら。
こういう時こそ広辞苑の出番なのだが、残念ながら辞書は我が家に置いてきた。まずは取りに帰らなければ。帰りたい。
ミラー越しに桐切さんの顔を見ると、何だか不思議そうな顔をして此方を見ている。ミラー越しに目が合う。
……どうやら、今の会話の中には僕の知らない概念が漂っていたらしい。何処かで会話内容に齟齬が生じているように思える。
「多分伝わって無いと思うよ、迅ちゃん」と、その時、癙蝨がとんでもなく馴れ馴れしい態度でフォローに入った。「カシワちゃん、『異世界モノ』読んだこと無いんじゃないかな」
「ファッ!? うせやろ!!??」
ハンドルが急に動いたのだろう、車が左右に少しだけ揺れる。桐切さんの、上から下まで緑色で固められた理解し難いファッションセンスの中で唯一ほんのりと紅い唇が、
……どうやら、知ってなければならない事を、僕は知らなかったらしい。
「んんッ失礼……まさか知らないとは思わなんだ。最近の流行りだと思ってたんだがなあ……」
「ああ、いえ、勿論『異世界ファンタジー』というジャンルがある事は知っていますよ。確か……戦前に流行ったティーンズ・ノベルでしたっけ。最近という事も無いでしょう」
「いや、実のところ、その後結構最近になってまた流行り始めたんだよ、高校生。丁度アタシが大学に入ったくらいの頃に……ホラ、検閲緩和があっただろう?」
「ありましたね、そんなヤツ……ああ、あの緩和で『ファンタジー』のコンテンツが解禁になったんでしたっけ」
「そうそう、それでネットの懐古主義者が小説サイトに再アップロードした作品がきっかけで、『異世界ファンタジー』が復活したのさ」
「成程」
検閲緩和。
戦後に魔法絡みの社会問題が急増した事で、行政府の情報統制の強化が求められた──という背景もあって導入された検閲システム。何だかんだで近年は緩和しつつあるらしい……というのを、高校政経の授業で聞いた気がする。『
「それで……その『異世界ファンタジー』が、この世界と何か関係があるんですか?」
「関係が
「……はあ」
どうやら、その旧時代の文芸と似たような何かが、共通する何かが、以前にはあったのだろう。桐切さんは当然そのことについて知っている体で──それを話そうと思ったら、まさか相手が浅学菲才無知蒙昧な僕だったと。
不幸な事だ。
僕に読書の趣味は無い。今でこそ、情報収集の為に仕方なく図書館に通い詰めているが、別に活字ジャンキーな訳ではない。
「単に異世界って言っても、色んなのがあるよね。他に何かテンプレみたいな世界の
僕の脳髄の余りの薄弱さに呆れたのかそうでないのか、今度は癙蝨が桐切さんに話し掛ける。
「……勿論! 当然の事だが、この世界には魔法があって、それにある程度ファンタジーRPGセットが用意されてるんだ……『勇者』と『魔王』とかなあ。後は怪しい宗教団体とか……『神様』とか」
「……そう言えば、前にも言ってた気がするけど、迅ちゃんはこの世界の『神様』にはあった事があるんだっけ?」
「答えはYESだお嬢さん。この世界に飛ばされる途中でな。……と言うか、此処に来た元日本人は皆一度は会ってるはずなんだが……お嬢さん方は会ってないんだったか」
「うん、少なくとも今まで人生で出会った連中に『神様』を自称する奴は居なかったよ。神の使いを自称する奴は居たけど」
「はえ〜」
どうやら、僕は話題から置き去りにされたらしい。
前座席では、僕の知識の中で理解出来る範疇外の会話が展開され始めたので、僕は再び車窓の景色に視線を移した。
車は森を抜け、比較的背の低い草木が平坦に広がっている。進行方向の前方には地の色が少しだけ変わり、土が露出した──恐らく使われなくなった畑の跡──大地の向こうに、何かが、背の高い何かが見える。人工物のように見える。
目的地だろうか。
「あとは……そうだなあ、こんなのもある」
「??」
「────<ステータスウィンドウ>!」
突如として桐切さんが、自身の左手をハンドルから離して前方にかざし、宣言するように何かを唱える。
そうすると、そのかざした左手の方に水色半透明な四角形の……何だ? 何だ、あれは? 何か、形容し難い謎の半物質的プレート状存在が浮かび上がっていた。
凡そ現代の常識的自然科学の範疇では思いも寄らぬ事象が発生している。いや、その様子は見た目だけで言うのなら、触れる立体映像的なサムシングであろうと推測ができる……見た目だけは。問題はその投影機らしき機材が見当たらない事であり、つまり推測は間違っているのだろう。まあ全てが間違っている事を除けば大体あっているので問題はなさそうだ。
「……! 凄いや! ゲームシステム採用系異世界の完全再現だよ!! 原理は……普通の魔法に似てるけど、ハリボテじゃないならステータス管理システムを大陸規模で用意しなきゃ出来っこない……規模の暴力でゴリ押ししたシステムだね!」
「そうだろう凄いだろう。因みにこいつはこの世界の標準的で自然的な『法則』の一つでなあ、人間どころか魚類両生類爬虫類鳥類哺乳類に加え魔物魔族や一部の植物にまで──凡そ全ての生命に──『Level』やら『HP』やら何やらが設定されてるんだぜ、お嬢さん」
「カシワちゃん! 日本に戻ったら再現しよう──きっと面白い事になるよ! この際、殿下に頼めば日本規模の魔法システム管理サーバーが作れるかも!」
「えぇ……」
癙蝨が何かよく分からない──それでいて何かとんでもない事を言い始めたので、僕は身を乗り出して前部座席の……桐切さんが出現させた謎の存在を注視する。
それは…………何と言うか、一昔前の国産RPGで表示される画面のようだった。或いは、インターネットを漂っているフリーゲームでよく見られるUI……とでも言おうか。兎に角、何処かで見覚えのあるような
大きく「桐切迅」と個体識別名が書かれ、その他には「Lv.78」「種族:人間」「
「……異世界と言うより、最早ゲームですね、これは。この世界はドラクエだった……?」
「元より異世界ってそういうモンだぞ高校生、あんまり深く考えるような事でもねえしなあ」
「はあ」
表示の内容は、「Lv」が……確か「Level of Violence」の略だったか。「HP」「MP」は、それぞれヘルスポイントとマジックポイントの意だろう。「状態」は……何だろうか。麻痺とか脆弱とかいう状態異常が書かれるのだろうか。
そもそも僕はあまりゲームをしないので、そこまで詳しい事は分からない。
確かに癙蝨の言う通り、あったら嬉しい便利システムのようではある。ぱっと見た限りではマイナンバーカードの完全上位互換だ。何せ個人情報だけでなく、種族や体力などの「本人の素質」──人的資源としての価値まで管理する事が出来るのだから。正確さは知らんが。
「本来なら元日本人は皆使えるはずの機能なんだがなあ、どうやら君達は使えないらしいし?」
「ええ、そうでしょうね」
僕は試しに「すてーたすういんどう」と呟いて、左手をワイパーのように動かして件の画面が表示されるよう念じるが、残念ながらそんなものは一切出て来ない。
「すてーたすおーぷん」「うぃんどうをひらく」「z」「Enter」
……毎度の事ながら、僕だけ変に冷遇され過ぎやしないだろうか。
しかしそれは癙蝨も同じようで、何度か適当に呪文を唱えては再現できないかどうか試している。どうやらこの機能は、本人の魔法適性に左右される代物ではなさそうだ。
「因みに、魔法を使って他人のステータスを覗き見することも出来る」
「……プライバシー並びにセキュリティは?」
「無えなあ。……うーん、どらどら~? おっ、高校生君のLvは5! 雑魚だねえ」
「えぇ…………?」
個人情報と言うか何と言うか、そもそも判断基準が何も提示されてない状態でレベルの数値だけ言われても、どういった反応をすれば良いのか困ってしまう。そう思うと、他人に知られて良いものなのかそうでないのかも分からない。
……そういえば、確か「種族」って項目があったな。
「桐切さん、僕の『種族』の項目ってどうなってます?」
「えっ? ……いや普通に『人間』だけど?」
「……癙蝨はどうです?」
「どうって……んん? えーっと、『Lv.35』……『吸血鬼』!!??」
「えへへ、良くそう言われるよっ」
どうやら、異世界はかくも盲目らしい。
そんな無駄話をしていると、いつの間にか車は目的地周辺に到達していたらしく、ようやく人工物の中に──これまた城塞都市の中に入って行った。
…………ブウウ──────ンンン──────ンンンン………………。