デーモンルーラー 〜アプリを入れたら剣が出てきた〜 作:JOJI
ワイワイガヤガヤと騒がしい高校の昼休み。春頃に2年に上がりクラスが変わって少し経ち早くも仲のいいグループが出来上がっているこの頃。とある教室の片隅に片手の箸で弁当を続きながらもう片方の手でスマホを続いている男性がいた。伸ばした黒髪を寝癖も直さずにボサつかせており、整った顔立ちをしているが少し猫背で身長は高いのにどこか目立たない印象を受ける。彼の名は
名前は子供の頃はかっこいいと思っていたが、中学を卒業する頃には若干長い名前に面倒くささを感じている。見た目はちょっとモブ気味、友達も少なく昼食を共にしようにもわざわざ別のクラスまで出向いて行く勇気も無く、モソモソと1人で飯を食べる姿は日常に溶け込むモブであった。
「おい、今月の七海ちゃんの雑誌見たか?」
「ああ、見た見た。凄かったよな〜。あの豊満なパイに挟まりたいぜ…」
前の席の男子は何やら最近話題のアイドルの話で盛り上がっている。陽キャならここでその話に便乗し出すかもしれないが、悲しいかな彼はこの手の話にはとんとついていけない。アイドルや芸能人などに興味が無いからである。
そもそも、同じクラスであってもまだ顔と名前が一致していない相手に話しかけられるほどの度胸は彼にはなかった。
学校に通い勉強し、放課後はバイトをして帰って寝る。そんな毎日を過ごしていた左文字であるが、この日転機が訪れる。
この日、彼はバイトのシフトに入ってなかったため学校が終わり次第家に帰っていた。左文字は田舎の実家から出て都会で一人暮らしをしている。親の仕送りを家賃等に当てバイトの給料で食いつなぐ日々である。初めの頃は一人暮らしであっても1Kの部屋は少々広く感じていたが、今ではもうちょっと広い間取りを選べば良かったと思っている。
学校のカバンを置き、早めにシャワーを済ませて食事の支度をする。コンビニ弁当などを買う余裕などなく、スーパーで慎重に吟味しできるだけ節約した食材をできるだけ日持ちする食事を作る。
「今日は肉じゃがにするか…」
冷蔵庫にあったじゃがいもと豚肉を見てそうそうに献立を決めて料理を始める。これといった工夫も無くレシピをチラ見しながら作り終わり。ご飯と共に掻き込む。そして、食べ終わった箸休めにスマホを見る。
「うーん、まだ終わってないな…」
何かと言うと、新作のアプリゲームである「デーモンルーラー」というアプリのダウンロードである。昼休みに興味本位でダウンロードしようとしたが思ってたより容量が多いので帰ってからWiFiでダウンロードする様に設定しておいたのである。
しかし、諸々の支度が終わってもようやく八割ほど終わった所だ。ちょうどいいので皿を洗い余った肉じゃがをタッパーにつめて戻ってみるとようやく終わっていた。
ベットに腰掛けてさてやるかとアプリを起動すると、真っ黒な画面となった画面に白文字でロゴが浮かび上がる
―― Produced by Xenon
雲海を進むようなグラフィックを背景に、小さな光点が軌跡を残し複雑な動きで魔法陣を描きだす。複雑に描かれた魔法陣が次々現れ、明滅しながら回転する。やがてそれは幾重にも重なり、気付けば一つの魔法陣となっていた。
どこか幻想的で美しいアートのような画像に左文字が知らず見入っていた瞬間――。
「ッッ!? グッあ!? な、んだ!?」
突然、鼻の奥にツンとした刺激が走る。それが眉間まで広がり、まるで見えない手に頭の中を弄り回されているような感覚が続く。痛くも痒くもないが未知の刺激に思わずスマホ投げ出して左文字は頭を抱える。しかし、その感覚は唐突に終わる。
「なんなんだ…は?」
しかし、異変はそれだけに終わらなかった。投げ出したはずのスマホは何故か宙に浮き画面が光り輝いているからである。そんな、非現実的な光景に思考が停止して呆然と見ているとスマホの中から光が溢れ出して地面に落ちてくる。
徐々に光が収まると現れたのは、西洋風の剣である。全長は約90cm、刀身は両刃であり、黒い鍔はたいした装飾は無く透明な宝石が中央に嵌められているのが特徴的だ。
「…」
「お、ようやく出てこれたか! お前が俺の主か!よろしくな!」
全くの予想のつかない自体に思考が停止した左文字に対し、かなり気さくな挨拶してくる剣らしきもの。よく見ると宝石のような所に顔のような模様が浮かび上がっている。何故剣が喋っているのか、何故スマホから出てきたのか、主とはなんだ、これは夢かと。
しかし、混乱した頭で導き出した回答は…
「…あ、どうも」
フランクな挨拶に対しては、あんまりな挨拶である。
「とりあえず、貴方は一体…?」
時間を置いて、ようやく頭が回ってきたは左文字は必要か分からないがお茶を用意して机を壁際まで寄せて壁に立てかけるように置いた正体不明の喋る剣と向き合い話す。
「俺については俺がでてきたそのスマホに書いてあるはずだからそいつを見てくれ。」
「スマホ…?」
そう言われたので恐る恐るスマホを見てみると、アプリの欄にはステータスにスキルにアイテムなど色んな項目があった。とりあえずステータスの項目を押してみると
名前:田中涼介 種族:人間
レベル:1 経験値:00 所有DP:00
No.1
名前 『』 種族:インテリジェンスソード
レベル:1 経験値:0 スキルポイント:0
HP:30/30 MP:5/5
スキル: 自動修復 気配察知 剣術(初級) 強化(初級)
というふうに書いてあった。名前は空白であったが種族にインテリジェンスソードと書かれてあったためそういう種族なのだろう。それなりのオタクであった左文字はインテリジェンスソードという種族は創作などでは意志のある剣として描かれていたのを思い出す。
「名前の所が空白になってますけど…?」
「あぁ、名前は従魔になる際に捨てることになってんだ。まぁ、もともと名前があったかどうかも覚えてねぇけどな。」
「従魔?」
「簡単に言えばデーモンルーラーで、主と契約した悪魔ってとこだな。」
「…えぇ」
いきなりなんだそれ、新作のアプリ入れたら喋る変な剣をプレゼントってどうなってんだ返品できるかなと左文字は思う。
「悪魔と契約って…俺って知らないうちに何かあなたに捧げたんですか?」
「んな事しねぇよ。俺は主が集めるDPを分けてもらえればいいんだ。」
「DP? 確か、そんなこと書かれていましたね。なんですかそれ?」
「あぁ、まぁ悪魔とかが持っているエネルギーみたいなもんだ。俺の体もDPでできてるんだぜ。」
「な…る…ほどぉ…」
さっぱり分からん。まぁ、漫画とかで見る気とか魔力とかそんな感じのものだろうか。
「ん? 俺が集めるんですか? そのDPってやつ。」
「いや、俺と一緒に悪魔と戦って集めるんだぜ!」
「ゲームでですか?」
「何言ってんだ、現実に決まってんだろ」
「あなた、戦えるんですか?」
「何言ってんだ、俺は剣だぜ? 使うやついねぇとただの置物だ。主はおかしな事言うんだな!」
「…」
そっちこそ、何言ってんだ。かの有名な害獣も「僕と契約して魔法少女になってよ!」というこちらに選択権を与えてくれるものだ。ただ、アプリをダウンロードしただけで変な剣をポンと出して悪魔と戦えって頭イカれてるのか。
「…ふぅ…まぁ、考えては見ますよ。俺も忙しいので、バイトをして金も稼がないと生活出来ないんですよ。なので悪魔退治にかける時間はありません。」
「ほぉ、人間の世界も大変だな。だがよ、DPは金に変えられるから小遣い稼ぎくらいにはなるんじゃねぇか?」
「…なんですと?」
彼の頭に過ぎるのはRMT――リアルマネートレーディング、仮想通貨を現実の通貨で売買する行為――という言葉浮かぶ。
彼のバイトはそれほど割のいいものでもない。やりがいはそれなりにあるし賄いがあるので飯代が浮く。しかし、それだけだ。時給は1200円、1年ほどやっているのでいくつか昇給しているがそれでも遊びたいざかりの彼には足りない。
「DPは一体いくらに替えられます?」
「さぁ? 知らねぇがアプリに説明が乗ってるんじゃねぇか?」
所有DPという欄を押してみると説明に交換レート1DP五百円という表記がある。なるほど、かなりの値段である。
「DPの入手は難しいものですか?」
「いや、いっちゃん雑魚の悪魔でも2以上はあるはずだぜ」
「ほう…」
アプリにある図鑑という項目をタップし最初に目に付いた餓鬼という悪魔をタップしてみると所有DP3という表記がある。オカルトにも多少の教養がある左文字は餓鬼という悪魔というか妖怪というかまぁ、ここは悪魔といくとしてその悪魔が下から数えた方が早い階級という事を察する。
「その1番雑魚の悪魔は、今の俺でも倒せますか?」
「あたぼうよ! 見たところ主は剣を習っていたように見えるしな。俺のスキルの補助があれば有象無象の悪魔なんぞちょちょいのちょいよ!」
「ふぅん…」
正直いって進んで危険なことはしたくは無い当たり前ある。訳あって昔は死ぬ思いをして鍛錬を詰んだ過去があるがここ数年は完全にそんなことからは離れて暮らしていたため体は訛っているだろう。それに進んで自らの手で生き物を殺したことはなく、殺すとしても部屋にたまに現れるかの虫くらいなものだ。しかし、現金な話だが金は欲しい。この現代社会において金はいくらあっても困らないものであるし、シンプルに生活が楽になる可能性がある。よって
「分かりました。やりましょう、悪魔退治。」
「よっしゃ、そう来なくちゃな! なら、これからは相棒同士だ! だからその堅苦しい話し方は無しな!」
「分かった。あ…と、そういえば名前が無いんだったか」
「ああ、だから相棒がつけてくれよな! カッコイイ名前で頼むぜ!」
「ハードル上げるなぁ…剣か…」
彼はネーミングセンスには自信が無い。故にここは有名な剣から引っ張って来ることにした。
「うーん、悪魔だし、魔剣系みたいな方がいいよな…じゃあ、バルムでどうかな?」
書籍ニーベルンゲンの歌で登場するジークフリートという英雄が愛用したバルムンクという剣から取ったものだ。安直だが響きもちょうどいい。
「バルムか、良いじゃねぇか! なら、これから俺は【バルム】だ! よろしくな相棒!」
「ああ、よろしくバルム。」
正直、まだこの光景が現実なのか分からない。愉快な夢という可能性もある。なら、楽しんだもん勝ちだ。そういう考えである。
感想と高評価よろしくお願いします。そして原作の方も読んでみてください