(取り敢えず現在が何年なのか把握しなくちゃな)
ユナンは改めて周囲を見渡した。石造りの壁と装飾の施されたアーチ。 落ち着いた雰囲気の室内。だが、改めて見ると色んなところに苔が生えていたり、崩れていたりしている。まるで何かの遺跡のようにも見える。
(何でこんな場所にいるのか、何で転生したのか、分からないことがいっぱいだ…。取り敢えず他の人をみつけよう)
ユナンは疑問に思いつつも他に人がいないかを歩いて探し始めた。
歩いて数時間後、森の中でようやく人に出会えた喜びを抑えられずユナンはそのまま声をかけた。
ユナン「……人だ!やっと人に会えた!!(小声)おーい!そこのヒッ…」
──────ゴトッ
世界が傾いた。
温かかったはずの視界が冷え、 空の色が、ゆっくりと斜めに流れていく。
「……え?」
聞こえた自分の声は、思ったよりも遠かった。
(何……が……)
首が地面を転がる。感覚はない。 ただ、土の湿った匂いと、倒れ込んだ身体の皮膚が擦れる音だけが妙に鮮明だった。
そして──
“何か”が立ち去る足音。
???「何者かと思ったが、ただのうるさい猿か……つまらん」
その声は、ひどく冷たく、 生き物に対する敬意も、悪意さえも持っていなかった。
──ただの“無関心”。
(……斬られた? 俺が……?)
意識はある。なのに身体は動かない。 視界も固定され、血が流れる感覚すらない。
それでも、確かに「死」が、自分を包み込んでいた。
(死んだのか、俺……)
頭が理解しても、心が追いつかない。 あまりにも、あっけなさすぎた。
喜びと安堵が入り混じった感情が、どこかで浮かび上がる。
(……でも、あの子供を助けて死ぬよりは、“意味”のある死……だったかもな)
納得しようとした瞬間──
何かが、逆流した。
空気が巻き戻るような違和感。 死の感覚が、剥がれ落ちていく。
ぶしゅっ──っ!
何かが“生える”ような音。 切断されたはずの首の断面が再び繋がり、呼吸器が開通し、 視界が──
「っっ、あ……ッ!」
ユナンは、咳き込みながら地面に這いつくばった。
肺が動く。心臓が打つ。神経が通い、血が流れる。
(……死んだ……はずなのに……!?)
震える指で、自分の首元を触れる。 そこには、まるで傷一つない、滑らかな肌があった。
(傷は……? 血は? 痛みは?)
なにもない。
再生したのだ。 明らかに、「人間ではない速度」で。
「……なん、だよ、これ……」
言葉が喉に詰まる。 叫びたいのに声にならない。
(あの時……俺は確実に……首を斬られた)
斬撃の重さも、風のうなりも、視界が回転するあの瞬間も── すべてが記憶に残っている。
でも、俺は死ねなかった。
「……これは……呪い……?」
呟いたその声に、誰も答える者はいなかった。