ゴーレム操縦TS転生者の、全自動成り上がり計画 作:メギストス
ゴーレムこそ、異世界における最も夢のある存在ではないだろうか。
操って良し、乗り込んで良し。
戦闘させて良し、雑用させて良し。
主人の代わりにあらゆる雑事をこなしてくれる素敵存在。
それがゴーレムだ。
自慢ではないが、私は怠惰に暮らしたいタイプだ。
1日中スマホを見ながらダラダラしていたいし、仕事なんてお金を稼ぐための苦行でしかない。
無論、楽しいことは好きだ。
ゲームや漫画、アニメは私の生きる意味とも言える。
中でも、私はロボットが好きだ。
巨大なロボ同士が派手に戦うロボットアニメも好きだし、私のことを親身のお世話してくれるメイドロボも好きだった。
他にも、機械を身にまとって戦うメタルヒーローの類も好きかな、ロボットっぽい挙動をしてると尚良し。
だから異世界に転生し、”ゴーレムマスター”というチートを手に入れた時。
私はそうやってロボ――ゴーレムに囲まれた生活を送ろうと思ったのだ。
生活のあらゆることをゴーレムに任せ、私はただだらけているだけの生活。
戦闘だってゴーレム任せ、たまに退屈だからゴーレムに意識をインストールさせてゴーレムのパイロットみたいになって戦うこともあったけど。
本体はいつだって家でだらだらだ。
これはこれで楽しかったのだけど、私が生まれ落ちたのはとんでもない秘境で人が入ってくることもない。
だんだんと退屈になってきた私は考えた。
――そうだ、冒険者になろう。
でも、冒険者になって目立ったりするのは面倒だ。
そこで私は考えた。
冒険者家業も、ゴーレムにまかせてしまえばいいのだ――と。
□
――その日のギルドは、今日も今日とて冒険者で賑わっていた。
今日の冒険の予定について話し合うものや、昼間から飲んだくれているチンピラみたいな奴まで様々だ。
そんな冒険者ギルドに、
すると、賑やかな冒険者ギルドが一瞬だけ静まり返った。
といっても、そこまで不穏な空気ではない。
あくまで「うお……」と息を呑むような感じになっただけだ。
すぐに、騒がしさも戻って来る。
ただ、視線だけはそれ――”それ”に対して向けられていた。
ずんずんと、人より少しだけ歩幅のある歩みで、”それ”はギルドの受付へと向かっていく。
たどり着いた受付では、一人の受付嬢がこちらを見上げていた。
対して、”それ”は落ち着いた声音で――
『依頼を受けたいのですが』
――告げる。
性別のわからない、落ち着いた声音だ。
加工されている、というのは異世界の人間でもなんとなく解る。
変声の魔術とかあるからね、この世界。
「は、はい……ええと、どのような依頼をご希望でしょう」
対する受付嬢さんは、なんともいい難い少し引きつった笑みでそれに答える。
彼女とは何度か顔を合わせていて、最初に冒険者登録をしてくれた人でもあるのだが。
未だに”これ”には慣れていないのだろう。
それでも、以前よりは落ち着いて対応をしている。
多分、そのうち慣れてくれるはずだ。
『ダンジョン上層での、採取依頼を』
「か、かしこまりました。それでは……いくつか採取の依頼が出ている素材がございます。どれに致しますか?」
『ダンジョン内を探索したいので、一通りいただければ。達成できた依頼のみ報告します』
「わかりました。ティタさんはまだFランク冒険者ですから、上層の安全なエリアから出ないように気をつけてくださいね」
『はい』
――ティタ、というのが私の名前。
本来なら今ここにいる”これ”にも名前があるのだが、そこら辺を伝えるのは難しい。
なのでとりあえずは、冒険者として登録した自分の名前で呼ばれることを受容していた。
何れは、この子が108番くんという名前だってことを、皆にも解ってもらいたいなぁ。
え、余計困惑するって?
ロマンだと思うだけど、ロボを番号で呼ぶのって。
こほん。
「それでは、依頼を発行しました。くれぐれもお気をつけを」
『ありがとうございます』
お礼を言って、その場を離れる。
後はギルドを出ていくだけなのだが――”それ”が入ってきた時から向けられた視線は今もそのままだ。
ふと、私の耳――というか周囲の音を聞き取る
「にしてもすげぇよな、
「いやまぁ、
「それに?」
何気ない、男たちの会話。
目立っている”これ”に対する会話なのは明らかだが。
少しだけ、話の方向性に嫌な予感がする。
具体的には――
「――あいつの中身は、とんでもねぇ美少女だって噂だ」
ほらやっぱり。
現在の私……というか私の操る”それ”は、とてもではないけど美少女とは言えない姿をしている。
しかし、一度だけ私は自分の姿を冒険者ギルドに晒したことがあるのだ。
なぜなら、素顔を登録しないと冒険者カードが作れないから。
うーん、可能なら冒険者カードの証明写真すら”これ”で済ませたかった。
いや、そうも言ってられないのは解るけどさ。
規則なのも解るけども、それでも!
「……よし」
なんてことを考えていると、話を聞いた男がなにやら覚悟を決めたように頷く。
嫌な予感がして、急いでギルドを後にしようと思うのだけど。
「――なぁ、そこのアンタ」
男が、そのまま声をかけてくる。
しまった、余計なことを考えてたら逃げそこねた。
「随分なべっぴんさんだって言うじゃねぇか。どうだい、この後お茶でもしないかい」
――しかもナンパだ。
もう転生してかなりの時間が過ぎ、女性として生きた時間のほうが長い私だけど。
未だに男性との恋愛にはまったく興味が持てていない。
こういうナンパも、少し背中がぞわぞわしてしまうくらいだ。
そんな感覚、ないはずなのに。
『ナンパですか』
「ああそうだ。将来有望なべっぴんさんなんだろ、今のうちから仲良くなって起きてぇじゃねぇか」
『そう言われることはありがたいのですが――』
言いながら、私は”それ”の頭を動かして視覚となっている
なんというか、周囲の気配を一言で言うなら――
”あいつすげぇな……”みたいな空気だ。
全体的にゆるいけど、残念な空気。
まぁ、原因は明らかなんだけど。
私は、その理由を口にする。
『――いくら操縦者の顔が良いからと言って、
そう、今私はゴーレム越しにギルドの光景を見ていた。
本体は今も自宅――山奥の秘境でだらだらと横になっている。
会話こそゴーレム越しに行っているものの、身体的な動作はほぼ全てゴーレムの自動操縦だ。
『そもそも、この体ではお茶も飲めませんが』
「いやそこは、本体にでてきてもらってさ」
『こういった誘いを断るために、本体はここにいないのですよ』
「だめかぁ」
まぁそもそも、その”本体”も食事はできないんだけどね。
なぜならその本体もゴーレムだから。
ゴーレムを操る本体(実は人間を精巧に模したゴーレム)を操る本体(本物)みたいなややこしいことになっているのだ、私は。
ともあれ、拒絶された冒険者は残念そうに去っていった。
そりゃそうだろ、という空気が周囲に満ちる中で、それでも覚悟を持って声をかけたことだけは評価したい。
なんてことを、思ったり思わなかったりするのだった。
――
ある日、冒険者の街「エメス」に、一人の新人冒険者が現れた。
その名をティタ。
美しい絹のような金髪と、透き通るような肌。
背丈は小柄ながらも、どこか独特な色気があり。
耳が尖っていることから、周囲からは”エルフ”だと思われている。
そんな彼女の特徴は”ゴーレム”を操ること。
おそらくユニークスキルで作られただろうそのゴーレムは、ティタの思うがままに動き回り。
怠惰な彼女の代わりに、冒険者として活動するに至っていた。
周囲は彼女を、変わり者のエルフだと思っている。
しかしそんな彼女には、誰も想像しえない秘密があって――
――これは、そんなゴーレムマスターのティタが、ゴーレムを利用して冒険者として成り上がる物語。
曰く、「全自動成り上がり計画」。
なお、ゴーレムはある程度は指示を与えるだけでも動くけど、複雑な動作は意識をインストールしたりして行う必要があり、全自動というわけにはいかない模様。
ゴーレムを操縦する怠惰(本体が動かないだけ)少女の物語。
ゴーレムでロボットものみたいなことしたり、ゴーレムを身にまとうことでメタルヒーローみたいなことしたり、ゴーレムの中から美少女が出てきて少年の性癖をめちゃくちゃにしたり、TS美少女ゴーレムの腕が破壊されてメカバレが発生する展開を神に捧げたりしたいです。