ファブラーのニンフ、滅びに抗う   作:枢鹿

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書けたよ!

感想評価お気に入り誤字報告その他色々ありがとうございます!
今後も書けたら投稿していきますのでよろしく。

6/9/13:52 改行とカムラ姐さんの食事量を増量。
6/25 今後の展開につき、当時パッションで書いてた細々とした数字を修正
12/22 一部加筆修正 ストーリーに変化はなし


確認は大事。

 電源が入ったようにばっちりと目が覚めた。起床時刻ピッタリである。

それに合わせたかのように雑用係(モブニンフ)が部屋に入ってくる。手に持ったトレーの上には流動食の入ったパウチが乗っていた。

 

「おはよう」

「おはようございます戦士エマ様。朝食をお持ちしました」

「うん、頼む」

 

 手がまだついていないので食べさせてもらう。ベッドが角度を変えて身を起こしてくれたので、口元に差し出されたストローで流動食をすする。

 

 ワシともしない食感で無味の葛湯みたいなゼリーが入ったパウチにはラベルが地層か年輪のように貼り重ねられており、一番上に貼られたラベルにはベッド番号と思わしき数字に朝と殴り書かれていた。いつでもエリート赤ちゃんになれると自負する私はきっちり十秒でパウチの中身を吸い切る。

 

「ごちそうさま」

「はい、1時間後には手足の取り付けをするそうなので、それまでゆるりとお過ごしください。何かご要望はありますか?」

「いや、特に無い」

 

 そう言うと雑用係(モブニンフ)はベッドを整えてトレーを下げていった。

腹が膨れたのだが、しばらく時間があるものだし、ファブラーコロニーの課題と解決案でも整理してみようか。

 

 まず、主力鎧殻はTropaion(中量二脚)、偵察や機動力重視でEpona(軽量獣脚)といったところで、これはほとんどのコロニーでも変わらない。Kuramitsuha(軽量飛行脚)はまだアーヴドでしか運用されてない。なにかに拘りや目標があるコロニーだけが現在独自の鎧殻を開発しているだろうが、ファブラーは現在基本戦力を整えている最中だ。戦闘型ニンフだけ数えると数百には届くだろうが千に足りない。そしてそれら全員が着る分の鎧殻も未だ揃っていないのだが、これは時間が解決してくれるだろう。

 

 戦力が増えるに越したことは無いが、大量突撃で人海戦術をしてくる異形に大して安定して迎撃するためには最低3つの要素が必要だと考えている。

 

 1つは防衛戦略。寄せて尽きぬ大波のごとき異形の大群の攻勢を受け切るための防衛施設・装備・戦術。

 

 1つは上空からの支援、航空偵察と近接支援ができる軽爆撃機のような鎧殻。ニンフの中で航空支援を最も早く確立させたのはポロッカだが、より洗練した形で先取りしなくてはならない。他コロニーへの連絡手段にもなるか。

 

 1つは敵の根源地を叩く攻撃部隊。防御していても発生源を潰さなくてはジリ貧だからだ。大型で高速の輸送機が必要になる。あるいは精鋭に絞って確実に送り込めるようにする。

 

 そして大地や大気が侵食虫の毒で汚染されるのは確定事項なので、以上の全てに侵食毒の策をしなくてはならない。毒の元を根絶するか、あるいは毒に免疫を持つか…有機機械の有機的な部分を攻めてくるので、研究機関でも作らないといけないな。

 

 武器に関しても、Gladius突撃銃と、数種類の手榴弾工場を持つだけで、あとは技師による手製武器(アーヴド産)と発掘品のみである。まだファブラーオリジナルの武器は開発すらされていない。

 

 これに関しても手を付けるのに早いことは無いので、実戦を繰り返して戦功を得て、前線からの提案という形で開発を促せばいい。私達がコロニーの領域を広げれば根源地には余裕ができ、優秀な兵器を産む下地になるのだ。

どういうものが正解というのがある程度分かっている分、開発の無駄を減らせるのではないだろうか。

 

 少なくとも自決用と評されるような拳銃など作らせはしない。

 

 セルの供給に関しては下層において最も豊かと言えるだろう。セルリサイクル炉から分配されるセルの40%弱をコロニーに引き込んでおり、現在もリサイクル炉周辺地域の制圧と分配管の引き直しを繰り返している。

 

 一般的なコロニーの持つ大規模セル複製器に倍する産出量なので、将来性は抜群だ。

 下手に分配管を引き直すとセルを奪われた下流から襲撃される可能性もあるけど。

 

 アーヴドコロニーとの関係性も良好。円満に分枝したので、我が女王のニンフ時代のバディであった戦士長の引き抜きと、アーヴドコロニーの鎧殻や兵器の製造知識を持つ技師が技術を習得できるまで派遣されるそうだ。

 

 いつの間にか独立していたガリアコロニーにはそういう特典は無いらしい。ちなみにファブラーは上納品としてリサイクル炉から得られるセルの1割をアーヴドに流しているそう。

 

 我が女王(ママ上)との関係からライバル視してきているガリアコロニーを除けば隣接する窟は無いようで、そこそこ離れた所に幾つか中小コロニーがあるらしいが、当分影響はなさそうだ。

 

 戦術、戦略面は炭素生物(にんげん)に遠く及ばず。何日もかけて遠出することは滅多に無いし、ニンフ自身が弾薬をセルから生成できることもあって、戦士本人が持ち運べる量のセル補給剤と修復材で事足りてしまうため補給の概念も乏しい。

 

 また司令部の概念もなく、ざっくり東西南北に振り分けられた部隊の長が自ら兵を率いて攻防に出陣する程度であり、その際の指揮も攻めろ守れ退けぐらいなのである。

 

 それでもなんとかなっているのは主な敵である自動機械が自身を製造した工場とその周辺をパトロールする自衛程度の範囲に留まり、ニンフに対して遠征してまでの組織的な反撃を行わないからだ。

 

 そしてまだそういう工場があちこちにあるのでニンフ同士がパイを取り合うような状況になっていないという事情もある。

 

 しかしいずれ領域が拡大するにつれて、根源地から前線までの間に補給拠点を設ける必要性は出てくるし、前線の野戦病院で手足を交換修理しなくてはならない時も来るだろう。

 

 また戦線の状況を総合的に把握し、もっと大規模な部隊単位での戦闘を指揮する者が必要になる。そしてその指揮官を補佐する参謀達や情報通信を担当する膨大な数のニンフも。

 

……ニンフが愚かなわけではない。いずれも現時点では必要のないものだから無いだけだ。今はまだ影も形もない中層の窟ガーディナは、屍の山を築き上げながら戦術と戦略を獲得していった。

 

 だがホド下層の場合は必要になってからでは遅すぎる。本来のファブラーの異形や侵食対策のように。

 

「足りないものばかりだけど、まずは手の届くところからやっていくしかないか」

思考を止め、ナースコール代わりに付けられた簡易通信機を起動する。

 

 簡易通信機は頭に装着して、耳や網膜投影等で情報をやりとりできる装置だ。フック型イヤホンとレンズの無いアンダーリムのメガネを合体させたような形状をしている。意思疎通が困難なニンフの状態を有機機械技師がモニタリングするためのものだが、拡張頭環等にも実装されている文字通信の機能を使うことができる。

 

 個人向けのメッセージ機能を起動すると、リーシャ姉様とドロシャ姉様からメッセージが来ていた。リーシャ姉様は突発的な実戦でも生き延びたことを褒めてくれたり、今日は一日休みにしてくれること等を、ドロシャ姉様からはリーシャ姉様と共に戦士長に新兵の実戦には早すぎると怒られたという事や、立派に戦ったことを褒めてくれるメッセージが送られてきていた。

 

 ……それらを読んでいる間にも増え続ける”シュシュ 未読(102)”という項目がチラチラ視界に入る。一瞬意識を宇宙の猫に飛ばし、気合を入れてメッセージ一覧を開く。

 

「エマ、おはよう」

「ヒョエッ!」

シュシュ 本ニン(1)が来た。

 

「おはようシュシュ。私はまだ手も足も出せないけど、何しに来たの?」

「ぼくの鼻が治ったか確認しに来たの」

「鼻?……あ、昨日の怪我の」

「そう。鼻が利かないと色々困るから」

 

 ニンフ達は自身の家族を匂いで嗅ぎ分ける。それが嗅覚的な物なのか、単なるIFF信号(敵味方識別信号)を嗅覚として感じているのかは分からないが視界よりも重視しているようで、ともかく鼻が利かないというのはニンフにとって強い孤独感を感じる状態らしい。

 

 そうしてベッドの隣まで来たシュシュは、テープで止められたガーゼを剥がし、形状保持のための鼻栓をするりと抜いて、私を抱き上げてから首筋に鼻を埋めるようにして思いっきり深呼吸をするのであった。

 

「あっ、ちょっ、…待っ…そこに鼻を突っ込むなって!」シュゴゴゴゴォ

「んー……通信機、邪魔」フゴーフゴー

「アッアッアッ……!耳はヤメテ……」シュゴーブフーシュゴーブフー

 

「おーいエマ、手足届いたからくっつけるぞーってオマエ等何してんの?」

「ぼくは嗅覚センサーのテストをしていました」

「……そうか。感度はどうだ?違和感は?」

「感度は良好。問題ありません」

「じゃあそいつをちょっと貸してくれるか」

「……もう一服してもいいですか」

「ああ逃れられない!タトラ助けて!」

「……とりあえずシュマは整備室までエマを持ってきてくれるか。足さえ動かしてくれれば吸おうが舐めようが構わないから」

「うん。わかった」フガフガ

「アッー!」

 

 そうして手足は無事に戻ってきた。しかし何か大切なものを失った(吸われた)気がする……そしてシュシュの肌がツヤッツヤになった。解せぬ。

 

「で、私は今日一日休みなんだけど」ぼさぼさになった髪を手ぐしで梳かしながら歩く。

「ぼくもリーシャ姉様から休みをもらったよ」

「へぇ、そうn「だから今日はエマと一緒。付けたばかりの手足の様子も見ないとね」

「いやもう手足はばっちr「だからあんまり遠出しちゃだめだよ。ぼくもついて行くから。どこに行く?宿舎?ぼくの部屋?それともエマの部屋?」

 

 そもそも元から私と相部屋だろとツッコめる空気ではない、こころなしか目がグルグルしてきたシュシュに押し切られて自室にお持ち帰りされる前に適当なプランを提案して時間を稼ごうと思考回路をフル回転させる。とてもではないが自室で銃の分解整備などしようものなら脳まで吸いつくされてしまうだろう。

 

「じゃ、じゃぁ川に釣りに行こうよ」

「”川”?”釣り”?」

「うん。歩きながら説明する。こっちだよ」

 

 さて、大深度地下施設であるホドの中に川などあるのか。水が流れる川のようなものはあることはあるが、排水の濁流か浄水層から送られる送水配管くらいのものである。

 

 我らがファブラーコロニーにおいては幅100メートルはあろうかという長大、広大なベルトコンベアのことを川と呼んでいる。その川にはホド各所から廃棄されたりスクラップ回収機械(スカベンジャー)によって集められた廃棄物が絶え間なく流れているのだ。

 

 ホドはその全てがセルから出来ており、当然その中で産まれた廃棄物の大元はセルである。この川の行き着く先にあるセルリサイクル炉に廃棄物が投入され再生処理を行った後、流体セルの形で周辺地域へと再配分される。

 

 しかしこの廃棄物の中にはまだ充分生きている(・・・・・)部品がそこそこ含まれていることが分かったので、我がコロニーはそれをクレーンで掴み取って回収し再利用したり、技術向上のために解析している。

 

 私は何故か使える部品が含まれている場所から明るいオレンジの光が見えるので、そこを狙って掴み取るのである。根源地を巡るオリエンテーションから抜け出し、世代で一番落ち着きがないやつだと言われて姉から賜った拳骨の一撃の裏で、”釣り場”の管理人カムラ姐からはいつでも来ていいと言われる程度の釣果をあげていた。

 

――ホド 下層 ファブラーコロニー近郊 再生資源搬送路――

 

 浮きクラゲが防月網にかかって自爆する音が時折鳴り響くのどかな郊外に、巨大な半円状のかまぼこ屋根が地平の彼方からリサイクル炉へと続いている。その側面には後付されたような重厚な扉があり、開けて中に入ると数多のガラクタが軋む騒音が私達を迎え入れた。

 

「カムラ姐さん!邪魔するよ!」扉を抜けて直ぐの小部屋に向かって声を掛ける。騒音がひどいので基本的に怒鳴らないと声が通らない。

「なんだエマじゃないか!体がバラバラになったって聞いたけど、もういいのか!?」

 

小部屋の開け放した扉から丸々とした赤毛のニンフが顔を見せる。ニンフは基本的に皆美少女なのだが、カムラ姐さんは栄養ジャンキーなので”こいつ痩せたら美人なんだろうな…”という感想しか出てこない程度にはふくよかだ。

 

 何がとは言わないが固め濃いめ多い目の栄養剤を飲んでは栄養の過剰摂取にクラクラする感覚が良いらしい。

 先日はどこで手に入れたのか、白珠(女王専用食)をチーズみたいにおろし金で削って栄養剤にぶっかけて豪快にすすりこんで気絶していた。ディストピア飯でドカ食い気絶部するな。閑話休題。

「ぜんぶくっつけてもらったから大丈夫だよ!」

「そうか!後ろの子は!?」

「私のバディのシュシュ!一緒に釣りに来たよ!」

「そうか!よろしくなシュシュ!…で、エマ!クレーンなら4番と5番が空いてるぞ!」

「ありがと!」

「あり…と」

 

 シュシュと手を繋いで奥へと歩いていく。もうひとつ扉を開ける前に壁にかかっている防音ヘッドホンを取ってシュシュに渡し、自分も身につける。

 

 屋根があるせいで音が籠もる上にコンベアの動きに合わせてスクラップが不快な擦過音を響かせるので、これがないと色々おかしくなる。通信機能があるので、中ではこれを使って会話するのだ。

 

 扉を開けると一気に視界が開けた。上流と下流がわからないくらいの真っ暗闇だが、対岸までキャットウォークが渡されており、心もとない転落防止柵には点々とライトが灯っている。

 

 両岸から伸びたクレーンの先端と、その操縦席周りから探照灯の光がスクラップの川を照らしている。所々設けられた丈夫な足場の上では、クレーンから降ろされたスクラップを分別するニンフ達の姿が見えた。

 

「じゃあ、最初は一緒にやってみようか」

クレーンの操縦席は小柄なニンフであればなんとか二人くらいなら入れる広さがある。私はシートに座り、後ろからシュシュが覗き込む形で収まった。

「これが熱探知機で、こっちは電波探知機のスイッチ。下の画面に探知範囲が表示されるから、何か反応があったらクレーンで探知範囲ごと掴む」

「うん」

つむじに当たる息を感じながら、探すふりをしてオレンジ色に光るエリアに探査範囲を動かしていく。すると熱探知に反応があった。

「ほら、この画面の中に光ってるのがあったら、何かがそこにあるってこと。そうしたらこのボタンでロックするとクレーンが自動で今画面に写っていた場所を掴み取ってくれるんだ」

「ふーん」フンスフンス

 こいつ匂いが嗅げればなんでもいいのか。鼻を負傷した昨日から一転、とんだ匂いフェチになってしまったのだろうか。そのうち落ち着いてくれることを祈ろう。

 

 眼下の川面ではライトに照らされたスクラップの塊がクレーンに掴み取られ、分別用の台に降ろされる。 それを見た作業員達がスクラップの小山にとりついて分別作業を始めた。小さい女の子がわちゃわちゃしていてかわいい。

「なにを掴んだの?」

「それは分別してのお楽しみ。何が取れたかちょっと見に行こうか」

「そうね、行ってみよう」

 

 分別場に近づくと、作業員が使い道のないスクラップを川に投げ込んでは、何かしらの手持ち装置で山をなぞり、反応を見てはまた次のスクラップを川に投げ込んでいる。

作業員の手際は良く、山が瞬く間に分別されてゆく。私達も二人で重いものをどけたりした結果、出てきたのはニンフが1人くらい入れそうな頑丈な箱だった。

 

「なにこれ」シュシュがつぶやく。

「なんだろうね」私にもわからん。

 

よくよく見てみると、薄汚れた表面の一部に透ける素材が使われているようだった。中身でも見れないかと汚れを払い、ひんやりした表面にライトを当てると……

 

「ピャー!」目が合った。

「エマ!」悲鳴をあげた私を引き寄せて、代わりに中を覗くシュシュ。

 

透明部分は狭く、その内部にはニンフらしき顔の一部が見える。片目だけだがぐるぐる目がかっ開いてて怖い!

 

「動いてないよ。死んでるのかな」こういう時シュシュは冷静で頼もしい限りである。

「れ、冷凍されてるのかも。後ろ側からあったかい排気が出てる」これが熱探知反応の正体のようだ。

「こういうのを拾ったらどうするの?」

「わ、わかんない。今まで拾ったのは鎧殻とかニンフの死体(生体部品)とかだったし」

「とりあえず外の分別品輸送便のところまで運ぶです!」

作業員ちゃんが作業用の機械(なんか4脚の運ぶやつ)を操作して、箱ごと外に持っていった。

 

 この後はシュシュと仲良くおしゃべりしながらクレーンゲームに興じ、状態:可ぐらいのArrowhead(アーヴド産アサルトライフル)をゲットし、カムラ姐さんの運転する半装軌車(ハーフトラック)に収集品と一緒に乗せてもらって帰った。

 

……カムラ姐さん、いくら技師型だからって1対の腕で運転しながらもう1対の腕で飯食べるのはヤバいよ。巣窟(いえ)に帰ったら夕食もあるはずなのに……

 

「あの冷凍ニンフの箱もあるね」シュシュがふと指さした先には例の箱が横倒しになっており、つい視線が箱に向かったところ……また目が合った。

何だかこちらに目線を合わせてくるように感じるのは気の所為だろうか。

 

 一体こいつは何者なんだろう。冷凍されて捨てられるニンフなんてものは聞いたことがない。辛うじて判読出来そうな薄汚れた液晶パネルの表示をよく見てみることにした……

 

――ホド 下層 ファブラーコロニー近郊 廃墟――

 

「こんな所で下ろして良いのかい?」

「うん。あとは歩いて帰るよ」

「そうかい、じゃあまたね!」

 

 カムラ姐さんに頼んでニンフ冷凍庫と共に途中下車した。こいつはコロニーの根源地には置けない代物だと分かったからだ。しかし私的には重要極まりないものなので、使えるようになるその時までは隠し持っておかないと。

 

――ホドの建築物は自動機械によって無計画に増改築されており、無造作に引かれた電源がそこかしこにある。どこの発電機から供給されているかなど誰も把握できないが、誰も困らないので気にしないのだ。

 

 そんな廃墟の一室。わざわざ来ようと思わなければ誰も迷い込まないような部屋にニンフ冷凍庫を隠した。たまに様子を見に来ないといけないな。

 

「こんな所に隠して、このニンフをどうしたいの?」

「今は秘密。でもシュシュには一番最初に話すから、皆には内緒にして欲しいんだ」

「……べつにいいけど」

 

扉を閉じる。部屋に残された冷凍庫の液晶パネルには、ドット抜けしながらもこう読める文字が表示されていた。

 

Type:Mechsmith

Condition:Frozen

Warning:Corrosive Hazard(侵食汚染)

 

 この冷凍ニンフ、もとい冷凍毒ニンフはもしかしたらアーヴドで侵食の研究をしていたニンフかもしれない。

 原初のコロニーでは侵食虫を用いた兵器の研究は致命的な結果を産んで以降禁忌になったとされる。時が進んで別のコロニーにて侵食兵器が作られた時、それを産んだ技師が侵食毒の影響を受けたことで、侵食毒利用兵器の大量生産には至らなかったという。

 そんな禁忌の技術が詰まったパンドラの箱だったとしても、最後の希望を掴むために開けなければならない時が必ず来ると私は考えている。冷凍焼けする前に開けに来ないと。

 

 シュシュと手を繋ぎながら帰路を往く。

「エマは時々、よくわからないことをする」

「そうかな」

「それはコロニーのために必要なこと?」

「そうだよ」

「ぼくにはよくわからないけど、エマは何かをやろうとしてるんだね」

「……コロニーのため、女王様のために、私はやれることをやってみたいんだ」

「あの凍ったニンフも、肩にかついだ壊れた突撃銃も、みんなそのためのもの?」

「まあね」

「ふぅん」

 

シュシュはそれ以上は何も聞かず、手を握り直した後は他愛のない会話をしながら宿舎に帰った。

 

その夜――

「ピャー!」「エマ!?」

隙間という隙間からあの目が覗き込んでいる悪夢を見て飛び起きたのであった。

 




キャラが勝手に動くってそんなのあるわけねぇよって思ってたんですよ。
だって文章を産み出すのは作者の脳みそで、出力するのは作者の指なわけですから、キャラが勝手に文章を出力するわけないってね。

でもなんか気づいたらシュシュが吸ってたんだよ。なんで?

二話に入れ込もうと思ってた内容も全部いれると10000文字超えるのは確定的に明らかだったので1/3しか書けてないし、どういうことなの…

どのコロニーのニンフになりたい?

  • アーヴド
  • アルカンド
  • ガーディナ
  • ギプロベルデ
  • ヘロス
  • バウカーン
  • ポロッカ
  • ナガラ
  • ファブラー
  • アルカンド連邦構成コロニー
  • Avdraを纏った歴戦兵がいたコロニー
  • 発注したHelzの支払い拒否したコロニー
  • アルカンドに大宣教で滅ぼされたコロニー
  • その他無名の中小コロニー
  • 新たな女王のコロニー
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