郊外に浮浪してたら都市伝説になってた侍   作:白骨

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書きたくなったから書いた、後悔はしていない。


ジェットストリームサム

 

砂はパウダー状で軽くて実体がなくて、それがもう四方八方見渡す限りどこまでも広がってる。

 

俺の身体なんてあっという間に砂に同化して風に飛ばされてしまいそうな気がするな。

 

 

 

「おーい!サム!」

 

 

そんな郊外の砂漠を崖から眺め、アメスピもどきで口の切なさを誤魔化している時に後ろから騒がしい声が聞こえた。

 

 

「あぁ?……なんだシーザーか」

 

 

「なんだとはなんだ!そろそろ輸送の業務時間だし、休憩は終わりだぞ!」

 

 

俺は元傭兵で、悪い奴を倒していた。

 

そんな中、俺はふと思ったのだ。

 

 

 

「業務なんぞもうノルマ達成してるぞ、後は報告だけだ、ホレ」

 

「……相変わらず仕事が早いなサムは」

 

 

 

旅をして、自由に暮らしたいと。

 

ただそれだけの為にこれまでの地位を捨て、身分も消し、ただの人間としてここに行き着いた。

 

身体は少し弄ってあるが、人間だ。サイボーグになろうか迷っていた時期はあったが、それだと刺激が足りねぇ。人間は痛みが無ければただのモノで研鑽等出来ねぇ。

 

 

「なら、これからどーすんだ?」

 

「コレ吸い終わったらブレイズウッドに戻る、それまで待ってるか?」

 

「おう!当たり前だろ!だってお前はカリュドーンの子の一員だからな!一緒に帰った方が楽しい!」

 

 

そんなこんなしてる内に俺は新エリー都郊外の荒野の町であるブレイズウッドの住民の1人としてのびのびと生活している。

 

 

自分のバイクから降りて俺の端金で買ったバイクに跨ぎ、背もたれに寄りかかりのんびりするシーザーを見て軽く笑いながらオーガニックの煙を堪能した。

 

 

 

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

「ノルマを達成しても別業務があるんですのよ!」

 

「悪かったって会計担当」

 

「きぃーー!!相変わらず融通の効かない男ですわね!!!」

 

 

 

一服を終えた後、シーザーと一緒にブレイズウッドへ戻ると膨れっ面したモンテフィーノ家の令嬢が地団駄を踏んで説教し始めた。

 

シーザーはルーシーを見た瞬間逃げやがった、相変わらず逃げ足の早いヤツめ。

 

いつも喧嘩するのに今回は悪いと思ったんだろうな。

 

やれ業務は終わっても追加の依頼は沢山あるだの、もっとバイパーやライト、バーニスの分の作業手伝いを行えなど御託を並べているのを耳から耳へと通気性抜群の聴力を披露しながら周囲を見渡す。

 

その中でやけに療養用のログハウスが騒がしかった。

 

 

「……あの騒がしいのはなんだ?」

 

「私の話聞いてましたの!?……はぁ、あの騒動は先日ニュースで話題になってる人物が此方に落っこちたんですのよ。確か名前はパールマン、ヴィジョンの社長でしたわね。」

 

 

「ああ、あのポンコツお飾りか。」

 

 

確か元平社員でゴマすりしまくってた記憶があるな。情報収集してた時、経歴が社長になった時はあの会社の終わりかと思ったが上手く利用されたと聞かされた時は納得した。

 

 

「……貴方、パールマンの知人ですの?」

 

 

「だいぶ昔のな、悪人ではあるが臆病者で悪事に加担してもほんの僅か位しか関与しない小悪党ダルマおやじだぞ」

 

 

 

その発言を聞いてむむむと悩み始めるルーシー。考えが纏まったのか此方をみて驚愕の表情を顕にしながら俺に尋ねるように視線を向ける。

 

 

「……貴方、まさかサミュエ───」

 

「もう捨てた、その名は」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、腰に携えていた刀の鞘を握り指で鍔をカチリと上げた。

 

 

「初めて会った時から詮索はするなと告げたが、既に知っていたとはな家出令嬢」

 

 

次の言葉によっては斬り捨てる、それ程の殺気をぶつけた。

 

彼女は一瞬顔が青くなるも、姿勢を正しながら真剣な眼差しをこちらへと向ける。

 

 

「……御無礼を申し上げましたわ、サム。忘れて下さいまし」

 

 

たらりと流れた一滴の冷や汗を拭い、頭を下げる彼女を見て流石に殺気を飛ばすのはやり過ぎたかとすぐ刀を納める。

 

 

「悪いな、前の事に関してはもう忘れて今を生きてんだ。あの頃は殺すのが生業だった血腥い人間だったが今はただの浮浪人サム、カリュドーンの子の一員だ」

 

 

 

そう笑いながら口元の傷と髭を手で擦る。

 

先程の殺伐とした空気から一転、いつも通りの穏やかな雰囲気へと変わる。

 

 

 

「こほん、それはそれとしてコレから追加の依頼手伝って貰いますわよサム」

 

 

「相変わらず忙しねぇ令嬢だねぇルーシーちゃんは」

 

 

「貴方もその見下す態度を改善したらどうですの!?」

 

 

 

この喧騒は、いつもの事かとブレイズウッドの住民達に響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……朱鳶よ、このじぇっとすとりーむさむとは何者じゃ?」

 

 

 

新エリー都一帯の秩序を守る警察組織「治安局」の一員である青衣は都市秩序部捜査課の資料を纏めている中、気になる人物の名前を見て、班長である朱鳶へ尋ねた。

 

 

 

 

「先輩、そんな事よりそっちの資料を渡して貰っても宜しいですか?」

 

「む、答えなければうぬの目的である資料は渡さんぞ」

 

「はぁ……分かりました」

 

 

朱鳶は先輩である青衣の対応に呆れながら元々あった人物像の知識を話し始める。

 

 

 

 

「本名はサミュエル・ロドリゲス、日系と外国のハーフで実家は星見家、養子として預けられたようです」

 

 

星見家と聞いて青衣は興味深いと好奇心を顕にした。

 

新エリー都で名高い武術一家・星見家。

 

旧都崩壊前での時代での活躍により「虚狩り」と呼ばれる三代目当主の子孫である星見雅が産まれた場所である。

 

 

「星見家の剣術と元の産まれた外国の剣術を混ぜ合わせ独自に変化した剣術、ホドリゲス新陰流を生み出した男でもあります」

 

 

「む……その剣術は確か」

 

「ええ、『裏太刀』…つまり殺人剣です」

 

 

その男が産んだ剣術は身を守る為ではなく人を殺すのに特化した剣術であり、星見家の禁忌としても扱われる。

 

ある一件の事件以来、この剣術は殺人剣として公表され、星見家では封印された。

 

 

「戦闘に特化した剣術は世間では目を見張る物がありましたが、あの一件でがらりと代わりホドリゲス新陰流は闇に葬られ、それを習得した者も指名手配犯となりました」

 

 

 

「うむ、闇市場群衆惨殺事件じゃったか。一般人には被害がなくマフィアの形態が崩壊するほど裏社会の人物が斬殺された」

 

 

新エリー都でも治安局では対応できない場所もある。その範囲外の一部の町は裏社会の人物が牛耳り、治安は最悪、貧富の差が目に見える酷い格差社会があった場所だった。

 

 

「今ではチンピラしか居ない程度ではあるが、前は我らが対応出来ないほどのマフィアの溜まり場所であったな」

 

 

「ええ、その殺人剣で住民は救われた。だからその新陰流を信仰している街もあるぐらいですからね現在進行形で」

 

 

殺人剣と言われても救済された住民達にとってはまさに救世主と言わんばかりの崇拝があったらしい。

 

 

その事件以降新陰流当主であるサミュエルの元に街を救われた人の門下生が怒涛に増加したという。

 

 

 

「我らが対応できない闇の商売人やマフィアを殺人剣で始末する殺人犯。捉えきれない速度で斬殺する彼の姿に因んでジェットストリームサムと呼ばれるようになった……凄まじい男じゃな、このサミュエルという男は」

 

 

今では都市伝説として語られる彼の渾名は、マフィア達を震え上がらせる禁句に成り上がった。

 

その名を騙ってマフィアへ殴り込む事件も多発し治安局の悩みの種として産まれているので頭の痛くなる話であるが。

 

 

「では先輩、資料を」

 

「うむ、有意義な時間じゃった、ほれ」

 

 

 

話に満足した青衣は、朱鳶が必要としている資料を手渡した。

 

 

「所でそのサミュエルは今生きているのか?」

 

 

「死亡通知が提出されているので既に亡くなっています、故に都市伝説として残り続けているらしいです」

 

 

「…………そうか」

 

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

「へっくしょいッ」

 

 

バーニスが経営している改造された輸送コンテナのバーの席に座り辛めのカクテルを飲んでいたらいきなり鼻がムズムズしてクシャミをしてしまった。

 

 

「あれ〜?サミュっち風邪引いたの〜?」

 

 

笑顔で顔を伺うバーニスに対してヘラヘラ笑いながら空になったグラスを渡す。

 

 

「噂でもされたんじゃねぇのかな、バーニス、ニトロフューエル一杯」

 

 

「はいはーい!じゃあ温める為に今日の夜君のベットに入り込んじゃおっかなぁ〜!」

 

 

彼女は心配しているのだろう、否、普通に夜這いを宣告しているだけだ。

 

前やった時は朝日が見える位長時間シたってのに俺だけ足腰がしんどく、バーニスはピンピンして艶々になっていたのが納得できない。

 

 

「勘弁して欲しいねぇ……お前とすると死ぬ程疲れる」

 

 

軽めに断ろうとしたが腕を捕まれ情熱的な瞳で俺の身体を舐めるように見つめる。

 

 

「身体も心もアツアツだよォ〜!」

 

 

彼女の身体が火照るのが腕越しに伝わって来た。これはもう逃げられないと悟りながら皮肉を呟いた。

 

 

「喘ぎ声も燃え上がるってか」

 

 

 

その夜、獣のような声が1軒から響いたとか。

 




短編として書いたんですけど、気分が上がれば連載すると思います。
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