ある日、ドクターの心の声が秘書オペレーター皆に聞こえるようになってしまった、そんなお話。



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第一話「チェン」

 

「ドクター、先程の書類だが纏めて整理しておいたぞ」

「そうか、助かるチェン」

 

 ドクターの執務室、そこで事務的に書類の山を処理しているのはロドスの最高責任者の一人であり、全身黒フードで顔を隠しているドクターと呼ばれる謎の指揮官。

 そんな彼の秘書として今日執務室に在籍しているのはチェンと呼ばれる龍門(ろんめん)からやって来た前衛オペレーターの龍人。

 

 彼ら2人の会話は私語も無ければ事務的な会話を繰り返すのみでお互いに必要最低限のコミニケーションしか取っていない。

 

 しかしチェンはこの状況には慣れているのか淡々と自分の任された仕事を手際よく次々に処理していく。

 

『あー、チェンちゃんとめっちゃ喋りてぇ〜』

「ん……?」

 

 そんな時だった。

 

 突然、ドクターの方から一度も聞いた事がない声の抑揚で普段絶対に聞けないようなワードが飛び込んで来たのは。

 

 チェンは一瞬何かの幻聴か?と思いながらドクターの方に目をやるがその様子は依然と変わりなく書類に向かってテキパキと作業をこなしている。

 

「……気のせいか」

 

 やはり今のは自分の気の所為だと思ったチェンは再び書類に目を向けると握っているペンを再び動かし始める。

 

『うわー! 今こっち見てくれた! なんなのあの凛々しい瞳は。チェンちゃんって本当に美人で綺麗だよな〜。仕事もキッチリとこなしてくれるし、お嫁さんになったら絶対に幸せだろうな〜』

「っ!? ドクター! キミというヤツはだな!」

「……? チェン、いきなりどうしたんだ?」

 

 ドクターから掛けられた不意の言葉にチェンは赤面しながら反射的に彼に詰め寄るが肝心のドクターは先程と打って変わりない様子で書類に手を付けており、自身の行動に酷く驚いてる様子だった。

 

「ドクター、先程だが私に何か口にしなかったか?」

「何も口にしていないが」

「それは本当か? 決して嘘偽りではないな?」

「ふむ。それならこの部屋の監視カメラを見るのはどうだ? 私の身の潔白とチェンの疑惑がいち早く解決出来ると思うのだが?」

「良いだろう。ぜひ、それを見させてくれ」

 

 そう言ってドクターは自分のパソコンを開くと監視カメラの映像を映し出し、チェンとのやり取り以外一言も喋っていないと証明した。

 

「……済まないドクター。どうやら私の早とちりだったらしい」

「別に構わないさ。それより少し休んだらどうだ? 書類は私に任せてくれても良いんだぞ」

「いや、流石にそれは私のプライドが許さない。キミには失礼な態度を取ってしまったからな。この仕事で穴埋めでもさせてくれ」

 

 そう言ってチェンは再び仕事を再開すると先程よりも素早い処理能力で山のような書類を次々と片付けて行く。

 

『おぉ、流石チェンちゃん。やっぱり秘書としても優秀だな〜。さっきは一体どうしたのかと心配したけどもう大丈夫そうだな』

 

 又もや聞こてきたドクターの声にチェンは再び視線を向けるがやはり彼の様子は依然と変わらない。それにチェンは暫くの間ドクターの動向を観察しようと思ったのか黙ったまま作業を続けて行く。

 

『あー、書類なんて良いからチェンちゃんとお喋りしてー。あんなに可愛くて、凛々しくて、かっこいいオペレーターなんてそうそうこの執務室に来てくれないんだぞ? ただでさえ、私との書類仕事をしてくれるオペレーターなんて数が少ないんだから……とは言え話す話題がないのはどうしたものか』

「…………」

 

 チェンは耳を赤くさせながら必死にドクターの事を無視して自分の作業を進めていく。これは自分の幻聴か何かだ。書類を片付けたら医療チームの元に行って何か薬でも貰って来ようと考えながら必死に緩んでくる表情筋に力を入れていく。

 

『そう言えばチェンちゃん、バカンスとかに行きたいとか言ってたよな? 彼女には色々と任務でお世話になったし、シエスタ辺りにでも休暇を与えてあげようかな』

 

 その幻聴を最後にドクターは書類仕事に区切りでも着いたのか休暇申請の書類を取り出すとその書類に自分のサインを自筆していく。

 

「チェン、仕事が終わったらこれを持って行ってくれ。中身は部屋にでも着いてから開けて欲しい」

 

 そう言ってドクターは茶袋の封筒を渡してくるとチェンは顔を背けたままそれを受け取り、先程まで聞こえてきた幻聴が全てドクターの心の声だと不覚にも理解してしまった。

 

「ど、ドクター」

「どうしたんだ、チェン」

「そ、そのだな……また私が必要なら、いつでも秘書として呼んでくれても構わないからな?」

「……? いきなりだが、どうしたんだチェン? 随分と顔も赤くなっているが」

「へ? あっ、いや、その……」

 

『チェンちゃんって本当に美人で綺麗だよな〜。仕事もキッチリとこなしてくれるし、お嫁さんになったら絶対に幸せだろうな〜』

 

「っ! な、何でもない! これで私の仕事は終わったから今日は帰らせて貰うからな!」

「ああ、ご苦労だったな。チェン」

 

 そう言ってチェンは急いで執務室から退室すると赤面する顔を腕で隠しながらドクターがプレゼントしてくれた休暇申請を大事そうに抱えながら自分の部屋へと戻っていく。

 

「……あんなの卑怯すぎるぞ、ドクターっ」

 

 ドクターのデレ落ちは止まらない。

 

 彼がその秘密を知るまでは──。

 

 

 

 





何か思い付いたので衝動的に書いた。
感想評価貰えると他キャラで続き書くかも(乞食)

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