Badass Wizard 作:ウィッドリィ
アビドス高等学校。過去の栄光を持ちながら、今では廃校一歩手前の落ち目の高校。
在校生とは、僅か五名。一般的な意見を述べるのなら、他所の学校へと転校する方が賢い選択というものだろう。
何故ここまで追い込まれているのか。それは、アビドスの存在する土地の問題があった。
数十年前から吹き荒れ始めた砂嵐。コレによって、アビドス砂漠の砂が大量にアビドスの街を襲うようになったのだ。
降り積もる砂。これらを処理するには莫大な金がかかった。それだけではなく、砂漠の気候に強い植物なども砂が降り積もる事で生育に異常が出て、結局枯れてしまう始末。
住民たちもどうにかしようと動いていたが、如何せん相手は自然だ。それも砂の処理が終わる前に次の砂が降り積もり、結果として処理が追いつかない。
嵩み続ける出費。如何に当時のキヴォトスでも最大級の学校であったアビドス高校であったとしても、その消耗は耐えられるものではなかった。
少しずつ、街を離れる人々。増え続ける出費。減少する生徒数。
金を借り、それでもどうにもならず。ついにはブラックリスト入りをしてしまう程に困窮する羽目となった。
結果、ブラックリスト入りした債務者に金を貸すなど闇金位のモノ。或いは、何かしらの裏があるブラック金融。
法外な利子と嵩み続ける借金の二重苦は、アビドスのかつての栄華を全て差し出してもまるで足りない没落の道へと蹴り落す事となった。
減り続ける生徒と住民。膨らみ続ける借金。気付けば自治区は愚か、学校としての体裁を保つ事すら出来なくなっていた。
最早、消滅まで秒読み。風前の灯火。
だがここで、運命の転機が訪れる事となる。
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先生がその土地を訪れたのは、偶然によるものだった。
山のような書類に忙殺されていた中で、ふとした時に発見した手紙。
そこに書かれていたのは、生徒からのSOS。目を通した直後に突発的に動いてしまったせいで、広大な市街地で遭難してしまう始末だった。
それでも運よく辿り着いた、アビドス高等学校。そこで先生は、この街で生きる少女たちと本格的に向き合う事になる。
武装集団を退けて、彼女らの使う武器の規格から向かったのはブラックマーケット。
そこで彼らは思わぬ事態に相対する。
曰く、ブラックマーケットはある勢力が完全に制圧し手中に収めた。
因みにこの話をしてくれたのは、ブラックマーケット内で出会ったトリニティ生だったりする。
更に、彼女らは無視できない情報を入手する。
このブラックマーケットの代表となった男が、アビドス砂漠のカイザー駐屯地を潰しに行った、というもの。
寝耳に水だ。代表の動きも、そしてアビドス砂漠にカイザーの駐屯地がある事もだ。
流石に無視できないと、一行はアビドスへとトンボ返り。そのまま、車を調達して砂漠の横断を敢行した。
そして、彼らは怪物を見る。
「何よ、アレ……!」
車内から見えたのは、巨大な炎が駐屯地を襲う場面。
遠目ではあるが、それでもハッキリと視認できる大きさであり全力で飛ばす車が道なき道を進むほどに、駐屯地は加速度的にその原型を失っていく。
「――――止まって!」
一行の中で一番の実力者であるオッドアイの少女の制止の声によって、車は急停車。
目算距離で二百メートル程か。車を降りる。
「ッ、熱い……!」
日差しの暑さではなく、炎の熱気としての熱さが肌を舐める。
警戒する一行。だが、事態は向こうから転がり込んできた。
「――――よし、ドンピシャ」
「「「「「「!?」」」」」」
突然に現れる人影に、全員が目を見開いた。
空鳴りのような音と共に現れたシルクハットを被った少年。その右手には杖を握っており、砂漠の真っただ中に居ながらロングコートを羽織ったその姿は浮世離れした印象を抱かせる。
だが、そんな一行の混乱など知った事ではないという様子で、彼は口を開いた。
「やあやあ、初めましてお嬢さん方。そして、シャーレの先生……合ってるよな?」
「え……あ、うん。そうだよ。初めまして?」
「そうだな。挨拶は大切だ。そっちのお嬢さん方は、アビドスの生徒で良いな?」
「うへー……そういう君は、ブラックマーケットの代表なんだってねぇ」
「形だけな。ああ、それとアビドスで思い出した。お嬢さん方の借金はどうする?」
「…………急に何?」
「いやな。カイザー潰してる中で、カイザーローンも潰したんだがそこの債務者の中にお嬢さん方の学校があったのさ。ただ、利子は法外でオマケに返す目途は立ってないと来た。内部整理のついでに、そのままその契約を破棄しても良いと考えたんだが………」
どうだ?と彼は首を傾げた。
しかしアビドスの面々からすれば、寝耳に水どころか寝ている所に洪水でも襲い掛かって来たかのような衝撃だ。
「ちょ、ちょっと待ってちょうだい!?え、どういう事よ!」
「ん、詳しく説明すべき」
「説明も何も、不良債権を手放そうって話だ。カイザーとしちゃ、破産してくれた方が良かったのかもしれないが、俺たちとしては回収の目途が立たない債権をそのままにするのは得策じゃない。そもそもこっちとしちゃ
「!…………どういう事?」
「あん?何がだ?」
空気が変わった。思わぬ言葉だったのだろう、二色の少女の目が細まる。
キヴォトス屈指の実力者の視線に、しかし向けられる彼もまた強者の一人。緊張する様子もなくうなじに左手を当てた。
「さっきの話。アビドスの土地ってどういう事?」
「どうもこうも、何年も前からお嬢さん方の方から借金のカタに売り払われてるぞ。帳簿とかつけてないのか?」
「そんな…………」
ショックを受けたように目のハイライトを消す少女に、さすがの彼も不味い事を言ってしまったかと気まずそうにうなじを撫でる。
とりあえずもう少し説明しようと口を開こうとして、そこで弾かれたように別の方向へと顔を向けた。
彼の突然の反応に、重大情報を落とされたアビドスの面々もまたその方向へと目を向ける。
近付いてくる、大きな砂煙と振動。
砂地の表面を掻き分けて、現れるのは無機質な白。
大きく砂を打ち上げて現れるのは、巨体。
巨大な蛇と鯨を合成したような巨大な機械だ。
その無機質な目が、向けられる。
唖然とするその大きさを前にして、しかし彼は余裕な態度を崩さなかった。
「お前か。
「――――!!」
嘲るような彼の態度に、返ってきたのはチャージを挟んだ極太の熱線。
口が開かれて放たれるそれは、如何にヘイローを持つ生徒であろうとも命に関わるであろう破壊力を持っていた。
だが――――相手が悪い。
「馬鹿が」
杖先が熱線へと向けられる。
そのまま手首を跳ねるように動かして、杖先が空へと弾かれた。
瞬間、
「!?――――」
巨体が動揺し、直後にその頭は下から上への軌道で跳ね上げられるように動いて、その巨体はもんどりうって倒れていく。
砂が舞い上がり、衝撃と突風が吹き荒れる。
風の中で、帽子が飛ばされないようにツバを摘まんで押さえながら、魔法使いは笑みを浮かべた。
「前は逃がしちまったからな。今回は違うぞ。スクラップになるまで叩き潰してやるよ」
指揮棒のように持ち上げられる杖を手に、彼は空へと跳び上がる。