「何という事だ……!」
そこは人知の及び付かない場所、魔境と呼ばれても不思議ではない環境に暗黒結社ゴルゴムの本拠地はあった。
その奥にある大神官達が集う場所で、白いローブを纏った小柄な老人が後悔を滲ませた怒りの声を上げる。
「よもや世紀王が二人ともゴルゴムから逃げ出してしまうなど、このような事態……あってはならん事だぞ!!」
この男こそ、秘密結社ゴルゴムを指揮する3人の大神官の一人にしてリーダーを務める『智』の大神官とも呼ばれるダロムだ。
フードの中から覗くひび割れた石膏の様な顔は怒りで歪み、元々赤かった目はより赤みを増して虚空を睨む。
その場にいるのはダロムだけではない。同じ大神官バラオムと、信彦を追いかけていた大神官ビシュムがそこにいる。ダロムと同じように白いローブを纏い、長身で石の様な顔を持つバラオムが、ダロムに賛同する。
「確かに……我らの代で行われる筈だった次期創世王選定の儀でこの様な事になるとはな……。しかしどうするダロムよ。二人は世紀王の力を覚醒させている。キングストーンの加護を得たのなら厄介だぞ。連れ戻すのには、骨が折れる」
「何を呑気な事をほざいているのだ!? 貴様も大神官なら頭を使わんか! この単細胞が!!」
怒り冷めやらぬダロムがバラオムに怒鳴ながら睨むように見やる。しかし、ゆっくりと視線を逸らし、深く溜息をついて陳謝した。
「……すまぬ。頭に血が上り過ぎたわ」
「気にするな。俺も想定外の事態に面食っている。それに、お前が俺より先に激昂したのに驚いて、怒る機を逃してしまったわ」
そう言って、肩を竦めるバラオム。
事実、普段ならば気の短さで言えばバラオムの方が上なのだ。3人の大神官の内、最初に怒りを露わにするのは決まってバラオムとまで皆に認識されていた。
それが、普段冷静だったダロムが真っ先に怒り散らす事など今まで見た事が無かったため、バラオムは出鼻を挫かれダロムの窘め役に回るという珍しい事態が起きる。それだけ今回行われるはずだった儀式へのダロムの意気込みが強かったのだろう。それが台無しになってしまった事がダロムに想像以上の怒りを湧き上がらせたのだ。
「しかし、此度の事態には創世王もお怒りです。早急に対処する必要があるでしょう」
今まで沈黙を保っていた3人目の大神官、信彦を追いかけていた白いローブの女であるビシュムが口を開いた。
彼らゴルゴムの大神官は、ゴルゴムが崇める創世王と唯一意思の疎通が許されている。そして今回の事態には創世王も怒りを露わにし、「今代の大神官は揃いも揃って無能揃いか!?」ときつい言葉を3人に叩きつけていた。
これが片方だけだったならばまだやり様はあった。その残った世紀王を創世王にするべくバックアップを万全にすればいいだけの話だ。しかし両方に逃げられてしまえばどうしようもない。どちらかいずれかを必ず連れ戻さねばならない。キングストーンは2個しかないのだから。
そこで、ダロムがこの状況を一掃するべく二人の大神官に今後の方針を話し始めた。
「それぞれに怪人達を送り込み、二人が合流する前に連れ戻すのだ。既にその手筈は整えている。そろそろ追い付くはずだろう。そして!」
ダロムが手をかざすと、中空にビジョンが浮かび上がる。そこには、有名な政治家や財閥の上層部達など名だたる人物達の顔がリストアップされていた。彼らはゴルゴムに忠誠を誓い、いずれは自分達も改造手術を受けて永遠の命を手に入れようと目論んでいる者達だった。
「更に駄目押しで、日本社会に紛れ込ませている我らゴルゴムのシンパ達の力も使う。怪人の力でねじ伏せ、経済力で干上がらせ、身動きが取れなくなった所できゃつらを一網打尽にしてくれる!」
「二重の作戦と言う訳か。流石はダロム、ただでは転ばぬ奴よ」
「ふふふふ……我ら偉大なるゴルゴムが太古の時代より営々と築き上げてきた力の一端を、若造どもに思い知らせてくれるわ」
ダロムとバラオムが笑い、ビシュムが目を細める。
人々の知らぬところで、世界を我が物にせんと企む者達の策謀が、密かに動き始めた。
太陽の昇り切った真昼時、山沿いの道路を1台のバイクが駆け抜けている。
機種はSUZUKI GSX-R250。近年新しく発売された新機種だ。ブルーとホワイトに色分けされた車体に太陽の光が眩しく照りかえる。
気筒から力強い音を鳴らして走らせるそのバイクの運転手は、ヘルメットを被った秋月信彦。白いローブの女に襲われた後、拉致された場所に乗り捨てたままだった自分のバイクを回収して、今秋月邸へ戻る真っ最中だった。
バイクを回収するとき、ある事に信彦は気づいた。
一緒に拉致され、乗り捨てられていた筈の光太郎のバイクが無くなっていたのだ。
念のために近くを探しても全く見当たらないことから、信彦はある可能性を願った。
光太郎もまた、自分と同じくあの場から逃げおおせ、バイクを回収したのだと。
信彦はアクセルグリップを回し、更にスピードを上げた。今もまた自分を追いかけているはずのゴルゴムという恐ろしい追手より先に、光太郎と合流するべく。
鋭いカーブを曲がり、坂道を越え、そろそろ秋月邸のある町まで近づいて来たその時だった。
2車線の左右をブロックの斜面で囲われた道路を走る信彦は、向こう側からやってくる存在に気が付いた。
しかも対向車線ではなく、同じ車線の真向から2台のバイクが走ってきているのだ。
運転手はそれぞれ黒いライダースーツに同色のヘルメットを被り、明らかに視界に信彦がいるのが分かっていて車線を変えずに走り続けている。
迷惑な奴がいるものだと、信彦は一旦車線を変えてそれをやり過ごそうとして、自分の後方を走っているバイクもまた前方のバイクと全く同じ姿で信彦を追い越す勢いで近づいてきているのに気が付いた。
挟まれた。
不気味な状況だ。音もなく、暴走族や不良の様ではなく、明確な意思を以てこの奇行を行う。
信彦は、自分が陥った状況を悟り、もう追手が追い付いてきた事に密かに戦慄した。
早すぎる。
まるで、どこかで見透かされているかのような薄ら寒さがこみ上げてくる。
『貴方はいずれ、世界の全ての頂点に立つ王となる男なのですよ?』
ふと思い出してしまった白いローブの女の言葉。
おかしな宗教集団の妄言と切って捨てられるほど、信彦は楽天的にはなれなかった。あの不気味な女なら、どこかで此方を掌の上で弄ぶように監視する事など造作もない様に思えてしまった。
人知を超えた存在に作り変えられ、強大な力を持つ異形の者達。
改めて、自分達はとんでもない奴らに目を付けられてしまった事を思い知った気がした。
だが、驚きと恐怖に慄いている余裕も今は無い。
信彦は、此方へと向かってくる2台のバイクへ睨みつけるように目を細め、バイクの速度を最大限に引き上げた。
気筒がけたたましい音を上げる。それはもう、バイクが無理やりに限界まで引き上げられて悲鳴を上げている様であった。
向こうの2台は速度を落とす事も、車線を変える兆しもない。背後の2台も速度を上げて追いかけて来ている。
このままでは前後から挟み込まれて衝突するのは必須だ。彼我の距離も50mを切り出した。
(……やってみるか)
あわや衝突の大惨事かと思われたその瞬間、信彦はハンドルを動かして方向を変え、ブロックで組まれた斜面へ向けて走り出した。
道路を外れ、急な斜面を半ば昇るようにして走り抜け、壁走りの様な芸当をやってのけたのだ。
信彦を挟み込もうとした前後4台のバイクの運転手は信彦の取った行動に驚き、そして互いに高速で衝突した。
途中から法定速度を超えたスピードで走っていたのだ。その加速力が付いた鉄の塊がぶつかり合えば、その先にあるのは慣性の法則で生み出された暴力が待ち受けている。
凄まじい衝突音とその刹那、バイク4台による大爆発が起こった。
ぶつかった衝撃で、弾けた金属の火花が内部のガソリンに引火したのだ。
斜面から道路へ戻った信彦はその場でターンし、バイクのエンジンを切って降りた。
ヘルメットを脱いで見つめた先は炎上した4台のバイク、そこにいるであろう4人の影だ。信彦の予測が正しければ、このままでは終わらない筈だから。
炎の中で、4つの影がゆらりと立ち上がる。
体に燃え移った炎を気にする事無く、4つの影がゆらゆらと体を揺らして炎の中からその姿を現した。割れたヘルメットの奥の顔は、人間の顔をしている。だが。
信彦はその姿を見て、息を飲んだ。
五体満足で現れた4人のライダースーツから、人間ではありえない物が飛び出ているのだ。
それは、黄色と黒のまだら模様に彩られた節足状の物体だ。どことなく蜘蛛の脚に似ている。こいつらは、人間ではない。
「ギ……ギギギギ」
黒いヘルメットの奥から不気味な声が聞こえ、4人が来ているライダースーツが膨れ上がった。
「ギキイィィィィ!」
そして破裂。
現れたのは、黒と黄色のまだら模様の外皮を持ち、鋭い牙と赤い6つの複眼を額に備えた蜘蛛の異形だった。
この世の常識ではありえないようなその姿。しかし、この異形達があの白いローブの女の放った手先なら納得が出来てしまった。
蜘蛛の異形達が構えながらにじり寄ってくる。信彦を再びあの恐ろしい場所へ連れ戻すつもりなのだろう。
そうなったら、今度こそ信彦という人間ではなくなってしまう。脳を弄られ、意のままに操られる無残な傀儡と成り果てる。
信彦は、それに抗う為に立ち向かう。
そして何より、此処からそう遠くない所に秋月邸が、信彦達の家がある。
そこには妹の杏子が、もしかしたらガールフレンドの克美もいるかもしれないのだ。
其処へこの異形達を近付けさせる事など許すわけにはいかない。
だから信彦は戦う。これ以上家族を、大切な人を弄ばれない為にも。
この体は、戦う為に動作(スイッチ)を必要とする。
最初に姿を変えた時こそ激情に任せてやってのけたが、あれから今まで試してみても姿を変える事が出来なかった。
足をやや大きめに広げた信彦は、左腕を脇に強く引き絞り、右腕を脇へ引いた左手へ添えるようにして構える。両の握りこぶしが、骨が軋む程の音をたて始めた。
「変……」
射殺す様な瞳を異形達へ差し向け、右腕を反時計回りに軌跡を描いて力こぶを作る様な姿勢を作った。
「身ッ!!」
脇へ引き締めていた左腕を勢いよく右斜め上へと伸ばし、その勢いで右腕は右脇へ引く。
そうして、信彦の体内に眠る戦いのスイッチが発動する。
下腹部から月の石、キングストーンを内蔵した黒いベルト、エナジーリアクターが浮かび上がり、強く光輝いた。
光に飲み込まれた信彦の体が、改造人間としての力を活性化させられていく。
力を発現した信彦の体が、灰色の飛蝗の怪人となる。しかしそれもほんの一瞬の事だ。光は信彦を更なる姿へと変えて行く。
溢れ出した光が信彦の肉体を包み込み、強化皮膚〝リプラスフォーム”を纏わせた。
光が消えた先に現れたその姿。
白い外皮を鎧の様に纏い、透き通るような緑色の複眼と飛蝗の触角の如きアンテナを額から伸ばした異形の戦士だ。その左胸には、何かを表しているのだろう不思議な紋章が浮かび上がる。
それは太古の時代よりゴルゴムが崇めた神、創世王の器たる者。月の石をその身に秘めた世紀王、シャドームーンが近代の世に姿を現したのだ。
肉体の構築が完了すると、エナジーリアクターが再度強く輝き、関節から煙が噴き上がる。
異形の戦士へと変身を遂げた信彦は、軋む程にこぶしを握り締め、複眼に光が強く灯り出した。
「一匹たりとも生かしはしないぞ……悪魔ども!!」
異形の戦士が踏み出し、アスファルトを砕いてクモの異形へ飛びかかった。
しかし、蜘蛛の異形達はそれをみるや一斉に飛び退いて距離を取り、山林へ向かって走り出した。
〝罠”と言う言葉が信彦の脳裏を過る。しかし、此処で戦うよりかは都合が良いのかもしれない。
此処は山沿いとは言え、道路の真っただ中だ。第三者に見られてそちらへ異形達の魔の手が伸びるよりはマシだと判断する。
(それに、これは好都合だ……)
脚に力を込め、大きく跳びあがって異形達を追いかける信彦にはある確信があった。
きっとこれから行う事は、人には決して見せられないものになるだろう。
顎部クラッシャーの奥にある歯を強く噛み締め、激しい感情を心に宿して白色の異形は敵の待ち受ける山林の奥へと駆け抜けた。
林が森へと変わり始めた瞬間だった。
日差しが隠れだした森の中へ足を踏みしめた信彦へ、蜘蛛の異形達は襲い掛かって来た。
「うっ!?」
背後からの突然の攻撃だった。
強い衝撃に思わず身体が吹き飛ばされるが、異形達の攻撃はそれだけに留まらない。
今度は倒れようとした信彦の真正面から、蜘蛛の異形が白い糸に掴まりながらターザンの様に振り子の原理で以て勢いよく突っ込んできたのだ。
絶妙なタイミングだった。
最初の攻撃で吹き飛び、地面に倒れこむ前に蜘蛛の異形は信彦の顔面目がけて勢いの付いた蹴りを放つ。
「ごっ!?」
吹き飛ばされた勢いと、蜘蛛の異形の体重と加速の付いた蹴りが衝突と言う形で合わさって、それら全てを顔面で受けた信彦に思いもがけないダメージにその場で悶絶した。
だが、ゴルゴムの創世王となるべくして作り変えられたその肉体は、これ以上の攻撃を許しはしなかった。
素早く立ち上がった信彦が拳を強く握り締めると、信彦の闘志に呼応して腰部のエナジーリアクターに収められたキングトーンが輝きを放つ。
そして輝きは拳へと移り、更に力強さを増したそれでもって信彦は蜘蛛の異形へ拳を振りかざした。
「ライダァァ・パアァーンチ!!」
軋む程に握り締められたその拳が、蜘蛛の異形の一体の顔に直撃した。
すると、とてつもない力で衝突されたかのように、蜘蛛の異形の顔面は頭部もろとも吹き飛び、弾け飛んでしまった。
頭を失った蜘蛛の異形は倒れこみ、その場で激しく痙攣を起こすと体が溶けて泡立ちはじめ、次第に跡形も残らずに消えてしまった。
それを見た残りの3体の蜘蛛の異形達は相手の力に驚き、他の個体と共に信彦から間合いを取り始めた。
囲い込み、距離を取りつつも隙を見つけては攻撃を仕掛ける心算なのだろう。
その証拠に、信彦の背後へと回りこんだ一体の蜘蛛の異形は好機と見たのか、口から蜘蛛の糸を吐き出し、信彦の左脚に絡めた。
糸に気付いた信彦がそちらへ視線を向けると、今度は視界の死角に入っていた別の個体も糸を吐いて信彦の右脚に纏わせて引っ張り出した。
両の脚を捕らわれた信彦は、その場にうつ伏せに倒れこんでしまう。
それを見たもう一体はすかさず背中目がけて飛びかかった。
両腕で立ち上がろうとした信彦だったが、突然背中にのしかかる蜘蛛の異形の重みに再び地面へと突っ伏する。
とうとう捕まえた。蜘蛛の異形達は不気味な声を上げてほくそ笑んだ。
最初は仲間の一体が頭を砕かれて即死してしまい驚嘆したが、世紀王と言えど所詮はまだ生まれて間もない赤子も同然。
怪人として生まれた年季が違うのだとわが身を誇る様に異形達が声高らかに叫びを上げた。
だが、異形達は勝利が視界にチラついたことで、大事な事を失念していた。
自分達が一体何を相手にしているのかを。
ゴルゴムの大神官達が、どうして血眼になってそれを連れ戻そうとしているのかを。
異形達はその身を以て思い知る事になる。
「キングストーン………フラアアアッシュ!!」
仰向けに倒していた信彦を中心にして、突如膨大なエネルギーが溢れ出し、大爆発が発生した。
これには気を緩めていた蜘蛛の異形達もたまらず大きく吹き飛ばされ、爆発で生じた砂煙を突き破り、大地に叩きつけられる。
その隙に信彦は両脚に絡み付いた糸を引き千切り、立ち上がって異形達の行方を捜す。
土煙が空高くまで舞い上がり、辺り一帯が一時的に煙で塞がれてしまっていた。
視界が聞く限りの状況からするに、先ほどの大爆発で地面はおろか周辺の木々まで根こそぎ吹き飛ばされているようだ。
視界が遮られていたとしても、それは信彦には意味をなさない。
変身した信彦の両の複眼――マルチアイによって通常の生物では考えられないような高度な視力で以て視界を確保する事が出来る。
そして見つけた。よろよろと立ちあがり、辺りを見回している蜘蛛の異形の姿を。
信彦は駆け出した。足音が鳴り、蜘蛛の異形が此方に気付いたとしても。
そして脚力にものを言わせて大きく跳びあがり、肉薄した頃には既に信彦は準備を整えていた。
エナジーリアクターを輝かせ、手刀の形を作った右腕は光を帯びながら大上段に構えられていた。そして。
「ライダアァー・チョーーップ!!」
刀を振り下ろすかの如き勢いでその手刀を振り下ろせば、蜘蛛の異形は脳天から股下まで真っ二つに叩き斬られてしまった。
断末魔の声すら上げる暇もなく絶命し、溶けて消えた蜘蛛の異形を無視して既に発見した次の敵目がけて飛びかかった。
「ひ、ヒィィィィィ!?」
目がけていた蜘蛛の異形が悲鳴を上げてその場にへたり込んでしまった。
その姿には、獲物を狙う恐るべきハンターの如き蜘蛛の異形は既に無い。今や上位存在に食われるのを待つだけとなった哀れな生物へとなり下がる。
その姿に、信彦は煮えたぎるマグマの様に熱い怒りを覚えた。
しかし、信彦にはその怒りが何に依る物なのか理解が出来ない。
信彦は怒りのままに両の腕を蜘蛛の異形へ伸ばし、計り知れない腕力で以て締め上げながら宙づりにした。
「ヒギ、ケ……カヒャッ」
呼吸器官を締め上げられた蜘蛛の異形は口からかすれた呼吸音が漏れている。
弱弱しく上がる声に、信彦は更なる怒りを募らせた。
「ガアアアァァァァッ!!」
怒りと共に顎部のクラッシャーが開き、絶叫にも似た雄叫びを上げて信彦は握力を全開にする。
異形の首はいとも容易く捩じ切られ、首を失った胴体が首から血しぶきを上げてその場に崩れ落ちた。
煙を上げて蜘蛛の異形の亡骸が溶けていくのを、信彦は荒い息を吐きながら見ていた。
これが生物の死に方だというのか?
死ねば何も残らない、それが自分達(改造人間)の末路だというのか?
精神が落ち着きを取り戻し、次第に変身を解いて人間へと戻った信彦は、全てが溶けて無くなったその場から、視線を外す事が出来なかった。
戦いは終わった。どうやら、最後の一匹は不利と見て逃げたらしい。
しかし、これで終わるほど、信彦を追いかける者達は甘くは無いだろう。
きっとこれからも、人知を超えた恐るべき手段で自分を付け回してくるに違いない。
全貌が見えないゴルゴムの強大な影を垣間見たような気がして、信彦はぶるりと身を震わせた。
そしてその場から逃げる様に、先ほど乗り捨てた自分のバイクのもとへと駆け出す。
バイクは幸いにして健在だった。
すかさずバイクのエンジンをかけ、信彦はその場から離れる事にした。
加速したバイクは先ほどまでいた場所をはるか後方へと置き去りにし、見慣れたアスファルトと行きかう車、人々の営みを信彦の視界へ映し出してくれる。それらが全て、先ほどの異形達との戦いを嘘と思わせてくれるかのように。
ヘルメットを被って走る信彦の顔には、いつの間にか大量の汗が噴き出ていた。決して、ヘルメットで蒸れただけではない事だけは信彦自身も分かっている。
信彦の目指す目的地、秋月邸はもうすぐそこまで近づいていた。
そこに光太郎と父がいる事を祈り、信彦はアクセルグリップを回して更に加速した
信彦さん超ワイルド(震え声
最初はヒロイックな戦い方だったのですが、変更して怒りに燃える復讐者としての暴力的な戦闘を意識してみました。
戦闘方法? ライダー界のWikipediaもとい、キングストーン先生が教えてくれるそうです。
王石さん「とりあえずぶちかましなはれ」
信彦も逃げた事で上司(創世王)のかみなりを喰らった大神官達が、内心ヒィヒィ言いながら仕掛けに来ました。
したり顔がカ○ジばりに〝ぐにゃあ”するのは、意外とそう遠くないかもしれません。
信彦の変身ポーズはかなり悩みました。何せてつをと今後ダブルライダーをやりますので、妙な動きはゆ゛る゛さ゛ん゛! と言われそうですので。
自分の部屋であれこれと体を動かしながら考える事のなんと恥ずかしい事よ……!
再び不定期更新になりますが、原作を見直しながらちょくちょく書いていこうと思います。
もしかしたら、原作をそのままなぞらないで端折ったり、オリジナル的な展開もあるかもしれません。